日本における仲裁の現状

    By 湯浅 紀佳そして伊藤 大智, 三浦法律事務所
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    「日本が仲裁地として選ばれることが少ないのは、仲裁手続で使用される言語は日本語が前提となっており、外国人弁護士や当事者にとって不利であることが主な理由だ」、また、「英語に堪能な仲裁人はほとんどおらず、日本人弁護士のみが依頼人の代理人を務めることができる」と、広く信じられています。

    しかし、日本全体に起こっているグローバル化により、こうした誤解は解消されてきました。

    使用言語については、2018年から22年にかけて、主要な国際仲裁機関である日本商事仲裁協会(JCAA)における国際仲裁事件の41%が英語を使用しており、英語が主な使用言語の一つであることがわかります。

    英語で仕事ができる日本人仲裁人も増加しており、また、2018年から22年に JCAA の国際仲裁事件に選任された仲裁人の38%は日本以外の国籍で、その出身国は12ヵ国に及びます。法改正により、外国人弁護士も国際仲裁事件の代理人として認められるようになりました。

    明らかに、仲裁の場としての日本に影響していると思われていたデメリットは解消されたのです。

    仲裁法改正

    Norika Yuasa, Miura & Partners
    湯浅 紀佳
    パートナー
    三浦法律事務所
    東京とサンフランシスコ
    電話: +81 3 6270 3509

    日本の仲裁法(以下、「AAJ」)は、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)の国際商事仲裁モデル法の規定に従い、2003年に制定されました。

    しかしながら、2006年のモデル法改正を反映するAAJの改正は行われませんでした。本年4月、ついにそれが実現し、AAJはモデル法の最新版に沿って改正されました。

    具体的には、2023年改正で、仲裁裁判所が権利や証拠を保全するために出す命令である、暫定措置の種類と執行要件が定められたのです。

    この執行は、係争中の財産や権利に対する著しい損害や急迫の危険を回避するために必要な措置、および/またはそれを回復するための措置と、財産の処分、審理妨害、証拠隠滅、その他の行為を禁止する措置とに大別できます。

    暫定措置の執行を得ようとする当事者は、裁判所に対して、その強制執行等を許可する決定を求める申立てをすることができ、執行拒否事由があると裁判所が認める場合を除き、当該申立ては承認されることになります。

    また、2023年改正以前は、申立人が裁判所に対して執行命令を求める申立てをする場合において、仲裁判断書が日本語以外の言語で作成されているときは、日本語訳文を裁判所に提出する必要がありました。仲裁判断書はかなり長文になることが多いため、この翻訳要件は当事者らにとって実務的な負担を強いるものでした。

    しかし2023年の改正により、一定の場合には日本語訳を提出しなくても、執行命令を求める申し立てができるようになります。

    さらに、仲裁地が日本国内にあるときは、東京地方裁判所および大阪地方裁判所にも競合管轄権が認められることとなりました。両裁判所には、仲裁事件に精通した裁判官がいます。

    2023年の改正は、2023年4月28日の公布日から1年以内に発効することになっています。遅くとも、2024年5月以降の運用は、このAAJ改正に基づいて行われます。

    日本の仲裁のメリット

    Daichi Ito, Miura & Partners
    伊藤 大智
    アソシエイト
    三浦法律事務所
    東京
    電話: +81 3 6270 3562

    2023年改正に加えて、仲裁地として日本を選ぶことには他にもユニークな利点があります。まず、日本は大陸法に基づく国家です。したがって、日本で大陸法仲裁人を任命することは容易です。

    2010年以来、JCAAの仲裁判断が日本以外の裁判所で否定されたケースはなく、最高裁で仲裁廷の判断が覆ったケースもないことを考えると、日本の裁判所のみならず、日本以外の裁判所も仲裁廷の判断を尊重しており、その判断が安定していることは明白です。

    アメリカ、ヨーロッパ、アジアの中間点に位置する日本は、地理的な観点からも、仲裁人、弁護士、当事者、証人にとってアクセスが便利です。そのため、第三者裁判管轄地として選ぶには好都合な場所です。日本で仲裁が行われる可能性が高い東京と大阪は、世界で最も治安環境が良い場所でもあります。

    加えて、日本の弁護士数は、国民一人当たりで見るとかなり少ないのです。これは、研修制度と司法試験制度の難易度の高さを裏付けています。弁護士になることの難しさは、法廷弁護士と事務弁護士の間の違いがなく、すべての弁護士は法廷弁護士を目指して訓練されることに由来しています。それゆえ、仲裁手続に携わる弁護士の質は高いレベルに保たれているのです。

    仲裁費用

    JCAA 仲裁人に支払う報酬一覧

    請求額/経済価値 仲裁人の数 事務手数料 仲裁人報酬
    商事仲裁(タイムチャージ、上限) 対話型仲裁(固定報酬)
    2000万円(13万6000米ドル) 1名 50万円 200万円 100万円
    1億円 1名 130万円 400万円 300万円
    1億円 1名

    3名

    100万円

    400万円

    1,200万円

    3,360万円

    300万円

    900万円

    出典:JCAA公式サイト(https:jcaa.or.jp/arbitration/costs.html)

    仲裁費用

    仲裁手続の期間と費用についても、見てみましょう。上に示したJCAAの仲裁人に支払う報酬の一覧表を見ると、その金額は他国の仲裁人に比べて明らかに低いことがわかります。

    日本での仲裁手続に要する期間も、短い傾向にあります。2013年から22年までに、JCAAにおいて手続開始から完了までに要した期間の平均は、12.9ヵ月でした。

    仲裁地として日本を選ぶことに大きなメリットがあるのは明らかです。原則として、簡易手続は書類のみによるものであり、3ヵ月から6ヵ月以内に仲裁判断を下すよう合理的な努力が払われます。

    さらに、日本国籍の仲裁人または大陸法の仲裁人が選任された場合、早い段階で争点を特定するための手続が行われ、証拠開示や文書開示の手続は行わないため、手続全体を可能な限り簡潔にできます。

    文書作成は、当事者双方が特定の文書または特定カテゴリーの文書の相互開示を要求するため、非常にコストが高く、時間もかかります。文書作成を限定するというアイデアは、仲裁の費用と時間を節約する場合に、よく提案されます。

    結論

    仲裁地として日本を選ぶことに大きなメリットがあるのは明らかです。

    上記のように、日本は仲裁地としての魅力を益々高めています。しかしながら、この国が選ばれることはまだ限定的です。そのため国際仲裁に関する議論が加速しており、新たな国際ハブの開発についても検討が進められています。

    将来的には、日本人が関与する仲裁手続の場所としてのみならず、日本が国際仲裁事件の第三者裁判管轄地となる日が来ると、執筆者は考えております。本稿がその一助となれば幸いです。

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