フィリピンにおける仲裁の現状

    By Jose Martin R Tensuan, Antonio Eduardo S Nachura Jr と Maria Celia H Poblador, ACCRALAW法律事務所(マニラ首都圏)
    0
    185
    LinkedIn
    Facebook
    Twitter
    Whatsapp
    Telegram
    Copy link

    香港

    インド

    日本

    フィリピン

    シンガポール

     

    最近の法学の発展を受け、フィリピンの仲裁実務はさらに充実してきました。このような発展は、仲裁手続きの完全性、有効性、合理性を確保するために不可欠な法的・政策的原則に基づいています。

    フィリピンでは、立法府と裁判所が仲裁に対して、継続して明確に親和的な姿勢を取っており、仲裁は、成長の続く活発な法務分野になっています。このことは、フィリピンの現行の仲裁法および仲裁手続き規則からも明白です。これらはすべて、世界で策定され、実践されている主要原則に合致しています。

    概括すると、フィリピンには、回復・成長を続ける経済によって支えられ、法理論により補完される法的・政策的枠組みが備わっており、これによりフィリピンは、当地域において、仲裁と裁判外紛争解決における競争力のあるハブとしての地位を確立しています。

    当事者自治は依然として最も重要

    Jose Martin R Tensuan
    Jose Martin R Tensuan
    シニアパートナー
    ACCRALAW法律事務所(マニラ首都圏)
    電話: +632 8830 8000 ext. 8071
    Eメール: mrtensuan@accralaw.com

    Colmenares対Duterteの裁判(2022年)において、フィリピン最高裁判所は、フィリピン政府が中国輸出入銀行と締結した、特定の融資契約を対象とする仲裁契約に規定された法および裁判地の選択条項の有効性を認めました。

    この条項には、融資契約、ならびに当事者それぞれの契約上の権利および義務は中国法に準拠し、それに従って解釈されること、また、融資契約に起因するいかなる紛争も、中国国際経済貿易仲裁委員会または香港国際仲裁センターが所管する仲裁において、それぞれの規則に基づいて解決されると規定されていました。

    一部の特別利益団体が、この条項はフィリピンにとって著しく不利な内容になっており、国家は独立した外交政策を追求しなければならないという憲法上の指針に反していると、激しく非難しました。この指針では、フィリピンは他国との関係において、特に国家主権と国益を重点的に考慮するよう求められています。

    この問題の解決に当たり、最高裁判所は当事者自治という仲裁の基本原則に関する条項を支持しました。最高裁判所は、商事契約に関する紛争の仲裁は「私人によって進められる、純粋に私的な裁定システムであり、有効で拘束力があり、執行可能であると常に認識されてきた」ものであり、仲裁契約は自由に解釈されるべきであり、それらの効力を認める解釈を採用すべきである、と判示しました。

    また、外国の要素を含む契約については、lex loci intentionis(当事者が意図した法)の原則に従い、契約当事者の法の選択が尊重されると付言しました。最終的に裁判所は、当該条項はフィリピンの法律、道徳、公序良俗に反するものではなく、特別利益団体が主張する憲法違反の発生は、融資契約に規定された準拠法と紛争解決メカニズムが、フィリピンに実際の不利益をもたらしたことを証明できない以上、推測の域を出ないと判断しました。

    手続きへの参加の不適用

    Antonio Eduardo S Nachura Jr
    Antonio Eduardo S Nachura Jr
    パートナー
    ACCRALAW法律事務所(マニラ首都圏)
    電話: +632 8830 8000, ext. 8073
    Eメール: asnachurajr@accralaw.com

    Lone Congressional District of Benguet ProvinceLepanto Consolidated Mining Company and Far Southeast Gold Resourcesの裁判(2022年)において、最高裁判所は、仲裁契約の当事者ではない者が仲裁手続きに参加できるか、あるいは仲裁手続きの結果である裁定の承認や取り消しに関する司法手続きに参加できるかという問題について判断を示しました。

    1990年にフィリピン政府と、ある鉱山会社数社の間で、ベンゲット州で採掘事業を行うための鉱産物分配契約が締結されました。契約の満期到来に先立ち、鉱山会社は25年を契約期間とする契約更新に関心を示しました。

    しかしフィリピン政府は、更新するためには、まず暫定的に制定された先住民族権利法(IPRA)に基づく手続きを実施する必要があると主張しました。鉱山会社は、この新たなプロセスの適用を非難し、仲裁手続きを開始しました。仲裁廷は鉱山会社を支持する裁定を下しました。しかし、フィリピン政府の申し立てにより、現地の裁判所によってこの裁定は最終的に取り消されました。

    この事案がフィリピン控訴裁判所で審理されている間に、地方政府の構成単位の一つであるベンゲット州は、IPRAによって保護されている住民の代表であり、鉱産物分配契約の更新によって影響を受ける立場にあるとして、手続きに参加する許可を求めて申し立てを行いました。控訴裁判所は第一審裁判所の判決を破棄しましたが、ベンゲット州の手続きへの参加を認めませんでした。

    手続きへの参加に関する問題の解決に当たり、最高裁判所は、フィリピンの仲裁法および手続規則、特に裁判外紛争解決に関するフィリピン裁判所特別規則(ADR特別規則)には、仲裁契約の当事者以外の者が参加する方法は規定されていないと判示しました。

    ADR特別規則の特定の規定は、通常の裁判手続きに適用される参加に関する規則の仲裁への補充的適用、あるいは仲裁に関連する裁判手続きへの適用でさえも認めていません。

    仲裁手続きに参加する方法が設けられていないことは、フィリピンの仲裁法および規則の目的、すなわち、紛争解決における当事者自治、または当事者が任意に取り決めを行う自由を尊重し、紛争を迅速かつ効率的に解決し、訴訟の濫用を抑制するという目的に合致しています。

    相互に対等な機関

    Maria Celia H Poblador
    Maria Celia H Poblador
    シニアアソシエイト
    ACCRALAW法律事務所(マニラ首都圏)
    電話: +632 8830 8000, ext. 8337
    Eメール: chpoblador@accralaw.com

    ASEC Development and Construction CorpToyota Alabangの裁判(2022年)では、1件の建設契約と仲裁契約に関する紛争が2カ所の仲裁裁判所で審理され、それぞれ別の建設仲裁手続きを経て、2つの相反する仲裁裁定が下されたという事案が審理されました。

    この事案の当事者は、自動車販売店のショールームの建設契約を締結していました。所有者が請負業者の作業範囲から、特定の建築工事を除くよう求めましたが、これに伴い契約価格の減額が生じるため、請負業者がこれに異議を唱え、当事者間で紛争が生じるに至りました。

    請負業者は、フィリピン建設業仲裁委員会(CIAC)において仲裁手続きを開始しました。CIACは、フィリピン法において、建設に関する仲裁・紛争に対して原管轄権および専属管轄権付与されています。

    仲裁は第1仲裁裁判所で行われ、請負業者に有利な最終裁定が下されました。所有者はこの結果を受け入れず、控訴裁判所に司法審査を求めました。

    この控訴の係属中に、所有者は遅延を理由として建設契約を解除しました。このため、請負業者は再びCIACで仲裁手続きを開始しました。今回は、未払いとなっている工事進行基準に基づく請求の支払いを受ける権利が主な争点になりました。

    その結果、第2仲裁裁判所は所有者を支持する判決を下しました。そして、第2仲裁裁判所は、所有者が除いた作業の評価についての、第1仲裁裁判所の事実認定を実質的に覆しました。その結果、請負業者はこの事案を控訴裁判所に上訴しました。

    これらの控訴は控訴裁判所で統合され、最終的に、除かれた作業の問題について、所有者に有利な判決が下されました。

    請負業者はさらに上訴し、最高裁判所は、第2仲裁裁判所が下した最終裁定を、第1仲裁裁判所がすでに解決していた、除かれた作業の問題に対して第2仲裁裁判所が判断した部分について、取り消しました。

    最高裁判所は、2つの仲裁裁判所は相互に対等な機関であり、どちらの仲裁裁判所も、他方の仲裁裁判所が以前に解決した問題について、覆したり、取り消したり、別の裁定を下したりすることはできないと判示しました。

    したがって、第1仲裁裁判所の事実認定に関する上訴が係属中であったとしても、第2仲裁裁判所はその事実認定に拘束されることになります。そうでなければ、当事者は自身に有利な裁定を得られるまで、仲裁の申し立てを重ねるようになりかねません。

    規定期間

    Maynilad Water ServicesNational Water and Resources Boardの裁判(2023年)では、国内の仲裁裁定の確認を求める申し立てを実施する時期に関する規則についての問題点が解明されました。

    この事案は、事業許可契約に起因する国内の別個の仲裁に関するもので、主な争点は、許可水道事業者は利益が規制価格上限の対象となる公益事業者であるか、また、法人所得税を事業支出として処理することを禁止されているかどうか、という点でした。仲裁手続きのうち1件では、許可水道事業者が勝訴しました。

    許可水道事業者は、自らに有利な裁定の確認を求めるに当たり、ADR特別規則第11.2に基づく規定期間(すなわち、裁定の当事者の受領から30日経過後であればいつでも)の適用を主張しました。相手側はこれに異議を唱え、フィリピン国内の仲裁に適用される仲裁法第23条の期間(すなわち、裁定が下された後1カ月以内であればいつでも)を代わりに適用すべきであると主張しました。

    最高裁判所は、ADR特別規則の第11.2は、仲裁に関するフィリピンの主要法である裁判外紛争解決法の明示規定によって、仲裁法第23条に優越する効果を持つと判示しました。しかし最終的に、許可水道事業者に有利な裁定は公序良俗を理由に取り消されました。

    上述のような進展からも明らかなとおり、フィリピンの仲裁実務は基本原則にしっかりと根ざし、賢明な司法機関に巧みに導かれています。フィリピンは仲裁実務に関して独自性のある立場を占めており、今後の飛躍的な発展に向けて機が熟しています。

    ACCRALAW

    22/F, ACCRALAW Tower, 2nd Ave cor 30th St
    Crescent Park West, Bonifacio Global City
    Taguig, Metro Manila, 1635 Philippines
    電話: +63 2 8830 8000
    Eメール: accra@accralaw.com

    LinkedIn
    Facebook
    Twitter
    Whatsapp
    Telegram
    Copy link