ロシアにおける事業構築戦略

    By Georgy Daneliya、Elena AndrianovaとIvan Zaraiskiy、SEAMLESS Legal
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    2022年から継続している世界的な地政学的情勢を背景に、多数の国がロシアに対して制裁措置を課しており、ロシアで事業を展開する国際企業は、その遵守に関する課題に直面しています。たとえ制裁措置の影響を直接受けない業界であっても、企業が市場で事業継続することが難しくなっています。

    一方、ロシア当局は他国の制裁への対処として、特別な「対抗措置」を講じています。これには、ロシア市場からの外国資本の流出を遅らせることを主な目的とする、特定の制限や特別な承認制度が含まれます。

    対抗措置の適用対象は、主に、ロシア政府が「非友好的」だと判断した国・地域に居住する外国人投資家です。対抗措置の適用対象リストには現在、日本、EU全加盟国、米国、カナダ、シンガポール、韓国など、ロシアに制裁を課している国々が含まれています。

    こうした中、国際的な企業グループは、ロシア市場に関して、制裁遵守に向けた圧力と自社の事業上の利益とのバランスを取り、ロシアでの事業継続に伴うリスクを抑制しつつ、過剰遵守という罠に陥らないよう努めるという戦略を取っています。

    現状では、「非友好的な」国・地域の多くの投資家がロシアからの撤退を余儀なくされていますが、他方、中国、インド、トルコの企業やロシア企業などには、欧米企業の撤退によって空白になった、極めて大きな市場シェアを手にする機会が訪れています。本稿では、不本意な選択を迫られた場合に取り得る主な戦略を、実例に即して概説します。

    外国企業がロシアでの事業を停止する際の戦略

    Georgy Daneliya, SEAMLESS Legal
    Georgy Daneliya
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    SEAMLESS Legal
    モスクワ
    Eメール: georgy.daneliya@seamless.legal

    外国企業が、制裁遵守に向けた圧力や風評リスクに対処するためにロシア市場での事業活動の停止を決断した場合、通常、以下の選択肢のいずれかを選びます。

    ロシア事業の売却 このアプローチでは、ロシアで保有する子会社または資産について、第三者である買い手(通常はロシアの大手企業グループ)への売却、または子会社の現地経営陣への売却(マネジメント・バイアウト)を目指します。

    ロシアの対抗措置では、外国の「非友好的」株主がロシア子会社の株式を売却する場合、ロシア当局による特別な承認の取得が必要です。大半の場合、承認は外国投資管理政府委員会から与えられます。特別なリストに含まれる一部の企業については、承認はロシア大統領から与えられます。

    承認手続きは複雑で時間を要します。実際には、「ファストトラック(迅速な手続き)」が適用されるのは注目度の高い案件だけであり、大半の申請の承認手続きには4カ月~6カ月を要します。売却が承認された場合には、承認手続きにおいて売却取引の条件が定められます。

    市場価値、購入価格、割引き
    承認申請には、譲渡される株式の市場価値を記載した企業評価報告書を添付しなければなりません。この報告書は、ロシア当局が承認した鑑定人名簿に掲載されている鑑定人が作成する必要があります。

    鑑定人が企業の実際の市場価値を決定した場合、外国人株主はその半額以下で株式を売却するよう求められています。承認したロシア当局は、外国人申請者への購入代金の支払いを、1年または2年の分割払いにすることも決定できます。

    撤退料
    上述の委員会は、売却の取引を承認するとともに、ロシア政府への具体的な支払い、すなわち「撤退料」を課します。現時点で適用されている撤退料は、売却資産の市場価値の15%です。撤退料は通常、買い手側に課され、取引完了後1カ月以内に支払う必要があります。適用される要件や撤退料の額は頻繁に変更されます。そのため、最近では、委員会は売却対象企業による撤退料の支払いを認めるようになりました。

    主要業績評価指標
    委員会は、売却対象企業が売却後3年間に達成しなければならない主要業績評価指標(KPI)を定めており、買い手はこれについて検討し、合意する必要があります。この背後にあるのは、買い手は買収した企業の事業の発展に尽力するべきであるという考え方です。そうでなければ、委員会は取引を許可しないはずです。KPIには、一定数の従業員の維持、一定レベルの収益性の達成、納税額など、買い手側のコミットメントが含まれる場合があります。

    戻し
    委員会は、当事者間の買い戻しの取り決め(コールオプション)を制限しています。このような取り決めが承認されることは稀ですが、承認された場合には、その期間は2年を超えることはできません。売却対象企業の買い戻し価格は、買い戻し時点の企業の市場価値に基づいて決定しなければなりません。

    清算
    適切な買い手がいない場合、外国人株主がロシア子会社の単なる清算を選択することもあります。他の場合であれば標準的なこの手続きにも、上述の売却取引と実質的に同様の承認が必要です。これに加えて、外国の「非友好的な」株主への清算金の分配は、さらなる制限と個別の承認プロセスの対象になります。

    休眠
    上記のような難しい問題を踏まえ、外国企業が正式な承認手続きを回避し、ロシア子会社を休眠状態に置くという選択をすることもあります。この場合、ロシア子会社は事業活動を停止しますが、法人としては存続し、最低限の報告と管理業務のみを行います。従業員の多くは解雇されることになります。

    このような休眠会社には対抗措置に関連する特別な規制はないため、この戦略を実施するにあたって特別な承認は必要ありません。この戦略のもう一つの利点は、休眠会社をいつでも「目覚め」させ、事業活動を再開できることです。

    残留と適応を選択した外国企業の戦略

    Elena Andrianova, SEAMLESS Legal
    Elena Andrianova
    シニア・アソシエイト
    SEAMLESS Legal
    モスクワ
    Eメール: elena.andrianova@seamless.legal

    統計の提供は本稿の目的ではありませんが、さまざまなソースの情報からは、多くの外国人投資家が、「非友好的」な国・地域の投資家も含め、何らかの形でロシア市場にとどまっていることが見て取れます。これらの外国企業がリスクに対処するために取る手段には、以下のようなものがあります。

    許容される範囲内への活動縮小
    大半の対外制裁は、ロシア国内の事業を完全に禁止してはいません。対外制裁の規定により企業が中止しなければならないのは、通常、ロシアに関連する特定の事業活動、特定の製品の納入、取引の締結、指定された団体への支援などです。

    したがって、効果的なコンプライアンス体制を備えた企業は、業務プロセスを再編し、リソースをロシア国内に維持するとともに、少なくとも一部の市場シェアを守ることが可能な形で、再配分する方法を見出しています。一部の企業は制裁対象のロシア企業との取引を回避していますが、以下で述べるように、供給や活動の削減を決定する企業もあります。

    供給の削減
    日用品(FMCG)、農業、ライフサイエンス業界の企業は、制裁リスクを軽減するため、自社のロシア製品ポートフォリオから一部の製品を除外しています。この選択肢では、事業活動を完全に停止するのではなく、許容される最小限の活動に限定します。

    企業は制裁による制限に従って、あるいは自社独自の検討結果に沿って、どの製品を除外の対象にするかを決定します。後者では、多くの場合、その製品が人々の生活にどの程度不可欠かという点での評価も含まれます。たとえば、医療機器製造企業の中には、美容器具の供給は停止する一方で、心臓外科手術やX線診断のための機器などの納入は継続している企業もあります。

    市場開拓活動の縮小
    制裁や外国企業グループのグローバル方針では、多くの場合、ロシアへの新規投資が禁止されているため、外国企業の一部は、市場開拓と見なされかねない事業活動を中断または終了しています。これには、ロシア市場向けの新製品の開発、ロシアでの製品試験、種々の広告活動などが含まれます。企業はこのようなアプローチを取りながら、ロシア市場で事業活動を継続しています。

    販売許可の譲渡
    一部の製品(医薬品、医療機器、食用サプリメント、化粧品など)の販売には、有効な販売許可証が必要です。以前は、実際には販売をロシア子会社や現地代理店に委託していても、多くの場合、外国企業は自社名義の許可証を保有していました。

    現在では、制裁措置のために、許可証の保有者であることが問題になる可能性があります。そのような外国企業の多くが、法律で認められている場合には、許可証の返上(その結果、製品が流通しなくなる)ではなく、現地代理店への譲渡を選択します。

    ロシア市場にとどまる場合に考慮するべき事項

    Ivan Zaraiskiy, SEAMLESS Legal
    Ivan Zaraiskiy
    アソシエイト
    SEAMLESS Legal
    モスクワ
    Eメール: ivan.zaraiskiy@seamless.legal

    持株会社
    2022年に制裁が開始されて以降、ロシア市場にとどまることを望むグループ企業の間で、ロシア子会社の持株会社を、「非友好的な」国・地域から特定の中立的な国・地域に移転する傾向が見られました。

    しかし、実際にこれを実行するのは難しくなっています。仮に実行できたとしても、海外からロシア企業の事業を運営することは困難です。現在、外国人株主は子会社の経営に関する責務をロシアに移転しており、ロシア人管理職の経営への関与度を高めています。

    契約と制裁
    制裁がロシア国内の取引先との契約の履行に影響を及ぼす場合に、外国企業が制裁を不可抗力として契約を解除しようとすることがあります。理論的には、制裁措置が不可抗力であると認められる可能性があります(ただし、多くの「前提条件」が伴います)が、実際には、ロシアの裁判所はこの見解を認めることに極めて消極的です。その上、ロシアの法律では世界的な制裁は正当だと認められていません。

    裁判所は通常、2014年以降に起こったすべての政治的出来事に照らして、制裁はもはや「異常」なものではないと宣言します。したがって、不可抗力条項は、たとえ制裁措置に直接言及していたとしても、不履行責任に対する「防弾の(確実な)」保護にはなりません。

    一般的に望ましいのは、不可抗力条項に依拠するのではなく、ロシア国内の取引先との契約に、次の事項を盛り込むことです。(1)契約の履行に影響を及ぼす新たな制裁措置が導入された場合、契約を一方的に解除する権利、(2)「制裁措置」として当事者が理解している内容、および制裁措置が契約の履行に影響を及ぼすことを、当事者が証明する方法についての明確な説明。

    一方的な解除が契約に基づくものであっても、企業の行為が不誠実だと判断されれば、裁判所が認めない可能性があります。そのため、一方的解除権を行使する際には、ロシア国内の取引相手に何らかの代替案を提案し(代替となる製品・サービスの調達先に関する情報の提供など)、今後の契約履行が不可能である理由を説明するなど、善意の行動を取ることが推奨されます。

    インセンティブ
    ロシアからの撤退には煩雑な手続きが必要となる一方で、ロシアでの事業の継続や開始を決定した企業には、さまざまな優遇措置が提供されます。

    公共調達
    ユーラシア経済連合(EAEU:ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス)で生産された製品については、公共調達において種々の便宜が提供されます。たとえば、入札の目的に応じて、一部のEAEU製品には外国製品よりも高い納入価格(基本的に15%)が認められます。外国製品の調達は、利用可能な国内またはEAEUの類似品がない場合にのみ可能です。

    ロシアの輸出規制の非適用
    ロシア政府は、特に実験機器や産業機器に対し、広範な輸出制限を課しています。製品の種類や輸出先の国・地域に応じて、輸出の全面禁止または特別許可の取得が規定されています。一方、大半の規制は国内で生産された製品の輸出には適用されません。

    一般的な投資優遇措置
    最も利用されている投資優遇措置は、特別投資契約(SPIC)と投資促進・保護協定(SZPK)です。基本的には、どちらにおいても、いわゆる「安定性条項」(規制環境が悪化しないことの保証)、優遇税制、補助金が投資家に提供されます。双方の主要な意図は共通していますが、どちらが特定の投資プロジェクトの目標に適しているかを決定するには、いくつかの重要な相違点について検討する必要があります。

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