ロシアにおける知的財産保護と紛争処理

By Vladimir BiriulinとSergey Medvedev、Gorodissky & Partners
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ロシアの知的財産法の歴史は1992年に始まります。当時、ロシアはドイツの法制度を参考にして知的財産保護法案を作成しました。つまり、この法律は制定当初から確固たるものでした。経済面と政治面のさまざまな関係が急速に進展していたため、知的財産法は経済環境の変化に応じて毎年のように改正されてきました。

中でも最大の改正が実施されたのは2008年のことです。すべての知的財産法がロシア連邦民法第4法典に統合され、複数の章として含まれるようになりました。これに伴い、知的財産法を構成する法令すべてが大幅に見直されました。連邦民法第4法典に統合される前には、知的財産法には328の条項がありましたが、その半数超、正確には169の条項が改正または補完されました。さらに7つの条項が追加されました。

Vladimir Biriulin
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Gorodissky & Partners
ロシア
Eメール: BiriulinV@gorodissky.com

2008年以来、知的財産法は常に立法府の関心の的でした。2008年から2024年までの期間に法令は37回改正され、重要なものも、そうでないものも含め、さまざまな変更が加えられました。最新の改正は今年2月10日に施行されたもので、民法第1248条の改正により、裁判所における原告と、特許庁(Rospatent)の特許紛争審判室(Chamber of Patent Disputes)における上訴人の、勝訴後の賠償請求権の均衡が図られるようになりました。

現在、連邦民法第4法典には、著作権および関連する権利、発明、意匠、植物品種、動物品種に関する特許、原産地呼称、地理的表示についての規定が含まれています。

出願に関する統計は2022年分までしか入手できませんが、2022年に最も出願件数が多かったのは米国で、発明特許出願が1556件、商標出願が2667件でした。中国は特許出願が1252件、商標出願が3998件、日本は特許出願が605件、商標出願が648件でした。

ロシアの特許庁は出願人に協力的で、特許や商標の登録は1年未満で許可されます。ロシアにおける特許出願件数が例年に比べて少ないため、他国で公開された特許出願書類に記載されている、ロシアでは保護されていない発明をロシア企業が使用するという事態が生じています。

不当な商標出願

外国の知的財産権所有者が、ロシアでどの程度、知的財産権を執行できるのかという点に懸念を持っていることは少なくありません。報道などで示唆されていることとは反対に、執行状況は極めて安定しています。ロシア市場から撤退した企業の商標と同一または類似の商標を登録しようとするロシアの「商標トロール」の企ては、すべて失敗に終わっています。外国企業の懸念に対処するため、ロシア特許庁は声明を発表し、商標登録の要件に変更はなく、商標トロールの企てはすべて阻止されると明言しました。

ユーラシア特許

ロシアは、8カ国が加盟するユーラシア特許条約の加盟国の一つです。加盟国は、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、ロシア、タジキスタン、トルクメニスタンです。ユーラシア特許庁は、ロシア語による特許および意匠出願を受理し、翻訳を要することなく全加盟国で直ちに有効となる特許を付与します。これは、出願者にとって執行と収益性の点で有利に働きます。

並行輸入

Sergey Medvedev, Vladimir Biriulin
Sergey Medvedev
パートナー
Gorodissky & Partners
ロシア
Eメール: MedvedevS@gorodissky.com

ロシアでは国内の権利の消尽が認められています。ロシア当局が 「特別軍事作戦」と呼ぶ軍事行動の開始後、外国企業の一部が市場から撤退し、その結果、特定の製品が不足する事態になりました。これを受け、産業貿易省は並行輸入が許可される製品のリストを公表しました。このリストには市場に不足感がある製品が掲載され、製品の追加や除外のために定期的に見直しが実施されます。

時には、外国企業がまだロシアから撤退していなかったり、製品を市場に供給していたりする場合でも、誤って製品がリストに掲載されることがあります。その場合、知的財産権所有者の要請があれば、リストは速やかに修正されます。

リストに掲載されていない製品がロシアに持ち込まれた場合、知的財産権所有者に対して、代理人を通じてその製品がロシアで禁止されるかどうかが通知されます。大半の事例では、輸入者は製品を再輸出しなければなりません。製品が安全上の要件に適合しない場合は、廃棄を命じられます。

ライセンス

当事者間で合意された範囲において、知的財産についてライセンス契約を締結することができます。ライセンス契約は文書で作成し、両当事者が署名する必要があります。ライセンス契約については法的確認(Legal confirmation)は不要ですが、特許と商標に関しては特許庁への登録が義務付けられています。登録知的財産に関して登録されていないライセンスは、(民法第1232条第6項に従い)許諾されていないとみな

されます。そのため、たとえば、ライセンスが未登録である場合は、それが排他的ライセンスであろうと非排他的ライセンスであろうと、未登録のライセンシーにサブライセンス権を付与することはできません。また、排他的ライセンスが未登録である場合、未登録の排他的ライセンシーには第三者(権利侵害者)に対する執行権は認められません。ただし、そのような場合の執行権は法律(民法1254条)に基づき行使することができます。

ライセンス契約に含めなければならない重要条項には、以下のようなものがあります。

  • ライセンス契約の主題(すなわち、該当する場合の、登録番号および/または許諾される知的財産権の説明)
  • ライセンス対象の製品または役務の詳細(商標ライセンスの場合のみ)
  • ライセンスの種類(すなわち、単独、排他的、非排他的のいずれか)
  • 使用分野または許可された使用分野
  • ライセンスが認められる領域(特に指定がない場合はロシア全土)
  • ライセンス期間(特に指定がない場合は5年間)
  • その他、ライセンス契約に規定されている制限や条項

ロシアでは契約自由の原則が適用されます。したがって、当事者は一般的に、関連法規に反しない限り、ライセンス契約においていかなる条件についても合意することができます。

執行

裁判所:ロシアでは、知的財産権に関する出願人が取得した権利の行使を支援するため、さまざまな手段が提供されています。ロシアの全地域で裁判が可能になるよう、約100カ所の商事裁判所が設置されています。これに加えて、知的財産を専門に扱う裁判所も1カ所あります。一般的に、知的財産権侵害の場合、原告は地方裁判所に訴訟を提起します。判決に不服がある場合は知的財産裁判所に上訴することができ、さらに最高裁判所に上訴することができます。

例外的に、憲法裁判所が事案について意見を述べる場合もあります。商事裁判所は法律に基づいて自由に判決を下すことができます。裁判実務を合理化するため、最高裁判所は時折、商事裁判所の判決を調査し、裁判所の判決をまとめた報告書を発行しています。この報告書は1年に1度か2度発行され、他のすべての裁判所の指針になります。

特に述べておきたいのは、裁判所は政治的配慮に縛られることなく、厳格に法律に基づいて判決を下すということです。一例として、Yokumi Tradingというロシア企業が「Kioshi」というブランドについて商標を出願した事案があります(出願番号2020759150)。特許庁は、出願された商標がKashiという米国企業が所有する「KASHI」という商標およびその他の商標に類似しているとして、登録を認めませんでした。出願人は知的財産裁判所に上訴しようとしましたが、2023年3月24日付で判決が下され、登録は認められませんでした。

特許庁傘下の特許紛争審判室は準司法機関です。そこでは知的財産に関するさまざまな申し立てが調査されます。数多くの事例が調査されますが、以下に2つの事例を挙げます。1例目は、日本企業のキヤノンが「技術的カートリッジ」に関する特許第2754838号を取得し、ロシア企業のTopprintがこれに異議を申し立てた事例です。特許は、多少変更されたものの、有効性を認められました。

2例目は、ロシア企業のSojuz-Obuvがロゴについて商標登録第890294号を取得したことに、日本企業のアシックスが異議を申し立てた事例です。Sojuz-Obuvのロゴは、アシックスが先に登録した商標登録第71296号と類似していました。Sojuz-Obuvの商標登録は2022年12月6日付の決定において、すべて取り消されました。

税関:上述のとおり、ロシアでは国内の権利の消尽が認められています。ロシアの税関は知的財産所有者の権利の保護に努めており、商標所有者が商標を登録できる知的財産登録簿を備えています。このデータベースはロシア全土のすべての検問所で利用でき、不審な製品が発見された場合には、税関は直ちに権限のある代理人を通じて特許保有者に侵害の疑いを通知します。

知的財産所有者が侵害を確認した場合、模倣品は破棄され、侵害者は行政裁判手続きに従い罰金を科されます。知的財産所有者は、民事訴訟を提起することもできます。その場合、はるかに軽い立証責任を負担することで損害賠償や補償金を請求できる可能性があります。

他にも、独占禁止当局が知的財産権の執行を行っています。不正競争行為があった場合、知的財産所有者は管轄当局に申し立てを行うことができます。

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