日本企業のためのインドの知的財産保護

By Joginder SinghとRajeev Kumar、LexOrbis
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インドは世界第2位の人口を擁する、世界最大の民主主義国家であるとともに、世界最大の英語圏国家です。インドの人口は2011年から2036年の25年間で、12億1100万人から15億2200万人へと25.7%増加すると予測されています。また、若年人口は世界最大であり、科学、技術分野の人的資源においても世界第3位を誇ります。

日本企業のためのインドの知的財産保護 Joginder Singh
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世界銀行の「2020年版ビジネス環境ランキング」において、インドは2014年の142位から順位を79上げ、2019年には63位へと躍進しました。グローバル・イノベーション・インデックス(2021年)では、2つ順位を上げ、46位にランクインしました。コロナ禍は思わぬ足かせとなったかもしれませんが、専門家の大半がインド経済にとって最悪の事態は脱したと考えています。

インドでは世界最大規模のワクチン接種プログラムがすでに開始されており、政策立案者は復興に向けたプロセスに取り組み始めています。今年は景気後退を回避し、一定水準の経済成長を見込める可能性があります。すでに世界で最も急速な経済成長を達成した国の1つであるインドでは、2022年の経済成長率が6.7%となり、この1年で世界最速の経済成長を遂げると予測されています。2022年から2023年のインドの実質GDP成長率は8~8.5%になる予測です。

日印関係はこれまで非常に強固であり、両国の人々は何世紀にもわたって文化交流やビジネス交流に取り組んできました。今日の世界において、インドと日本のパートナーシップはさらに強化する必要があります。強固な知的財産の管理体制が企業投資の傾向に与える影響については広く認識されています。知的財産保護におけるこれまでの二国間協力は、申し分のないものでした。

知的財産権の影響は業界によって異なる場合がありますが、特に大規模な財政投資を行った後に、事業利益保護の目的で知的財産権を取得し、行使する重要性については疑う余地がありません。それに関していえば、インドでは特許意匠商標総局(CGPDTM)を通じて知的財産保護を簡単に取得することができ、これには複数のメリットがあります。

インドは大規模な消費者基盤を有する巨大市場です。この事実だけでも、インドでの知的財産権の登録は無視できるものではありません。また、知的財産権の保護を得るためにかかる全費用は、米国やEUのような先進国や地域と比較するとはるかに低額です。官庁への手数料(official fee)も外国の主要国に比べれば僅かな額であり、知財サービスの代理人料金(professional fee)も、非常に競争の激しい市場であるインドでは適正です。もう一つのメリットは、特許意匠商標総局(CGPDTM)では英語を受け付けているため、インドでのIP出願や審査の際にインドの言語に翻訳する必要がないことです。このため、出願先国の言語での翻訳を必要とする中国、ブラジル、韓国などの国々と比較すると、知的財産保護にかかる全体のコストを大幅に削減することができます。

日本企業のためのインドの知的財産保護 Rajeev Kumar
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特許意匠商標総局(CGPDTM)が発行した2019~2020年度の年次報告書では、知的財産権の枠組みを強化するとともに、その枠組みをその年の世界標準に合わせる継続的な取り組みが説明されています。手続きの簡素化とIT化、ならびに技術労働人口の増加により、申請処理にかかる時間が大幅に改善され、これまでの滞貨が減少しました。

当年度における特許出願件数は11.1%増加しました。国内出願は2018~2019年の33.6%から37.05%に増加し、特許付与と特許処分はそれぞれ63.16%、9.95%に増加しました。特許の付与については、2018~2019年の15,283件から、2019~2020年には24,936件となり、63.16%という驚異的な伸びを示しました。

商標については、出願件数が着実に増加しているにもかかわらず、審査通過期間は1カ月未満で推移しました。規則改正やプロセスの再構築による手続きの改革が行われ、商標出願の第一段階での受理率は約50%に上昇しました。
意匠についても、新規出願の審査期間は1カ月未満で推移しました。2019~2020年の意匠出願は前年比13.55%増加し、審査は7.76%増加しました。一方、意匠登録および処分についてはそれぞれ前年比29.2%、28.8%の増加となりました。

著作権登録局は、コンピュータ化およびプロセスの再構築により、引き続き実績が改善されました。当年度は、異議申立てに必要な1カ月の待機期間の後、引き続き新規出願の審査が行われました。著作権出願は20.02%増加し、著作権登録は9.6%増加しました。

インドの全般的なIPエコシステムを改善するために、ここ数年、さまざまな取り組みが行われてきました。最も重要な改善点の1つは、インド特許庁(IPO)が通常ルートに基づく特許出願の審査時間を大幅に短縮したことです。現時点で、審査請求日から審査開始までの平均期間は12カ月未満です。また、以前は出願から特許付与までに7~8年かかっていましたが、現在は通常、2~3年以内に付与されます。同様に、他の形態の知的財産についても、継続的な採用、プロセスの改善、技術の体系的導入により、滞貨が解消されました。

また、インドと日本は、3年間の試行的な特許審査ハイウェイ(PPH)協定を締結しました。従って、日本の出願人は、日本の特許庁(JPO)が許可した対応する特許に基づき、インドで迅速な特許審査を要求することができます。PPH試行プログラムは3年目を迎え、これまでのところ順調に進んでいます。試行期間終了後、日印PPHが恒久的に実施されることを期待するのは当然のことでしょう。IPOとJPOとの間のPPHがうまくいけば、その後、米国特許商標庁(USPTO)や欧州特許庁(EPO)など他の主要特許庁とのPPHが検討されることが十分に予想できます。

また、適格基準を条件として出願人が迅速な審査手続を利用した場合、付与期間は出願日から1年程度にさらに短縮することが可能です。IPOは、発明分野に特化した審査ガイドラインの発行に伴い、コンピュータ実装発明、医薬品、バイオテクノロジーをはじめとする特許審査の質の向上を図っています。

IPOはまた、特許法と規則に関するさまざまな慣行や手続きを合理化するために特許マニュアルを改訂し、特許出願人が利用しやすい環境を整えました。IPOでは、さまざまな課題の発見と解決、異なる慣行の合理化のために、多種多様なステークホルダーとの議論を重ねています。商標、意匠、著作権など、他の形態の知的財産に関しても同様の議論と改善が行われています。

インド政府は2021年7月、「インドにおける知的財産権制度の見直し(Review of the Intellectual Property Rights Regime in India)」を開始し、商業に関する議会の省別常任委員会(Department Related Parliamentary Standing Committee on Commerce)が、ステークホルダーから寄せられた意見についての報告書を発行しました。この報告書によって、国全体の成長と発展にとってイノベーションと創造性が社会のさまざまな領域に及ぼす影響がいかに重要であるかが認識されました。よって、インドの知的財産法に近いうちに好ましい大きな変化が起こる可能性があります。

インド最高裁判所は、コロナ禍による世界的な健康危機によって引き起こされる混乱を認識し、2020年3月15日から手続き期限を延長しています。当裁判所は最近、2020年3月15日から2022年2月28日までの期間を、インドのあらゆる一般法および特別法に定められた期限に算入しないという指令を出しました。また、この期間中に期限が終了する場合は、2022年3月1日から少なくとも90日間の猶予が与えられるという判示も行いました。2020年3月15日以降のコロナ禍期間中に当たる期間が、90日を超える場合は、2022年3月1日から、期間の計算が行われることになります。

近年明らかになった注目すべき傾向として、審査の待ち時間の短縮、知的財産出願の迅速な処分、知的財産出願数の着実な増加、継続的かつ進歩的な法改正、画期的な判決につながる執行または無効化のための知的財産訴訟件数の増加などが挙げられます。こうした傾向はすべて、技術移転を奨励し、外国からの直接投資を急速に増加させるうえで役立つインドの知的所有権制度が確立されることを意味します。

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