回復基調にある日本のアウトバウンド投資

By 高畑正子、日本組織内弁護士協会(JILA)
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ロナ禍により、日本は世界最大の投資国の座を追われました。世界的に景気回復が進む中、インフラ分野や再生可能エネルギープロジェクトへのさまざまな投資を通じて、日本は自らの地位を取り戻そうとしています。

国連貿易開発会議(UNCTAD)が発行した最新の「2021年世界投資報告書」によると、世界の海外直接投資(FDI)額は、2019年の1兆5,000億米ドルから2020年の1兆米ドルへと35%下落しました。海外直接投資の主要プレーヤーとしての日本も例外ではありません。

回復基調にある日本のアウトバウンド投資 高畑正子
高畑正子
副理事長
日本組織内弁護士協会(JILA)
東京

昨年6月に発表された本報告書では、日本のFDI流出額は、2019年の2,270億米ドルから2020年の1,160億米ドルへと49%の大幅な減少となり、中国に次いで世界第2位となりました。中国のFDI流出額は2019年の1,370億米ドルからわずかに減少して2020年には1,330億米ドルでした。

しかし、2022年1月にUNCTADが発表した最新の「世界投資トレンドモニター報告(Global Investment Trends Monitor)」によると、世界のFDI額は、2021年には力強い回復を見せ、9,290億米ドルから推定1兆6.500億米ドルへと77%増加し、コロナ前の水準を超えました。この報告書によると、投資家は、インフラ部門への投資、および再生可能エネルギーや産業用不動産プロジェクトへの融資に意欲的です。

日本のFDI流出額は、ゆっくりですが着実に回復基調にあります。ワクチン接種の遅れや厳しい国境管理の長期化などの影響もあり、日本の多国籍企業はかつてない苦境に直面してきました。しかし、日本経済がコロナ前の水準に戻る中、日本の投資家はポスト・コロナの回復の中で大きく成長に向け貢献を始めています。

国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関連する分野への投資は、こうした回復の原動力となる主な要素の1つであり、これは先進国の大半の投資家の傾向と同じです。

ESGコンプライアンス

日本の多国籍企業は、環境問題、ダイバーシティとインクルージョン、ガバナンスなどさまざまな問題について、透明性および説明責任を持って事業を遂行しなければなりません。

東京証券取引所のコーポレート・ガバナンス・コード(コード)の基本原則2では、サステナビリティの重要性を、企業の社会的責任やスチュワードシップ・コードを踏まえた株主との関わり方とあわせて、「環境、社会、ガバナンス(ESG)の側面を持つ持続可能な成長への取り組み」として定義しています。

コードの基本原則3でも、スチュワードシップ・コードを踏まえた透明性および説明責任の確保に必要不可欠な、上場企業のESG要因などの開示ルールが示されています。国連のSDGsへの関心が高まる中、基本原則3の補充原則への最近の改訂では、持続可能性を達成するための具体的な成長戦略や気候変動リスクが事業活動に与える影響に関連するさらに詳細情報などの開示要件が導入されました。

一般的に、世界的に展開している大企業は、ESG要素の重要性を認識し、自社の事業活動を国際基準に適応させなければなりません。一部の日本企業はその規模に関係なく、ESGへの取り組みがあらゆる分野で企業価値に影響を与えることを認識しながらも、ESGでの認知度を高めることに労力を費やしていると言えるでしょう。

帝国データバンクが実施した2021年7月の調査によると、国連のSDGsに向けた活動の中で最も力を入れている上位3項目は、目標8(働きがいも経済成長も)、目標7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)、目標13(気候変動に具体的な対策を)でした。日本の多国籍企業は再生可能エネルギー分野のプロジェクトへの投資に積極的ですが、このことは自社のESGパフォーマンスや日本のFDI流出額の回復に寄与するでしょう。

2050年に向けたカーボンニュートラルの実現

2020年10月、当時の日本の菅義偉首相が、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを宣言しました。「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が経済産業省(METI)によって実施され、それに続き2021年には、2050年のエネルギーミックスと共に第5次エネルギー基本計画の見直しが行われました。

日本は脱炭素へと舵を切りましたが、2021年11月にグラスゴーで開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)において、日本は、気候変動アクションネットワーク(CAN)から、気候変動対策に消極的な国に贈られる「化石賞」を受賞しました。

日本の岸田文雄首相はCOP26で、温室効果ガス排出削減に貢献するため、アンモニアや水素を使った発電を推進するアジアの途上国を支援することを約束しました。最近の日本のFDI流出額は、主に途上国におけるエネルギーやインフラ分野に向けたこうした政府の取り組みによって牽引されています。

ESGコンプライアンスへの圧力の高まりや、カーボンニュートラルに向けた国家的目標は、日本企業がエネルギー分野をはじめ、さまざまな分野で環境に配慮したビジネスモデルや事業を行うべきであると強く示唆しています。日本の2050年のエネルギーミックスにおいて約50~60%を占める再生可能エネルギー発電への投資が、唯一の解決策というわけではありません。

企業は、事業モデルや業務モデルを根本的に変革する方法を模索する可能性がありますが、それは、カーボンニュートラルな社会において持続可能な企業となるための長期的なプロセスとなり得るでしょう。また、日本は2030年のエネルギーミックスの26%を占める石炭火力発電(炭素の回収・利用・貯留、カーボンリサイクルなどのグリーンイノベーション技術を導入済み)の廃止を決定していないことにも留意すべきです。

高畑正子は、東京を拠点とする日本組織内弁護士協会副理事長で、JILAの国際仲裁委員会international arbitration committeeの議長を務めています。

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