ブラジルにおける最近の知的財産保護対策

By Rana Gosain、Daniel Law
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ブラジルにとって日本はアジアにおける重要な戦略的パートナーです。両国の正式な関係は、1895年の「友好通商航海条約」の調印にまでさかのぼることができます。

現在、特に科学、技術、イノベーション(通信、人工知能、ロボット工学、医学・健康、5Gインターネットなどの分野)に関連する両国間の協力には極めて大きな機会が存在しています。

ブラジルの知的財産法についての最近の動向のうち、ブラジルでの今後の投資機会を検討している投資家にとって興味深いものを以下にまとめました。

国家戦略

ブラジルは、近代化や競争力の強化を図るための取り組みに投資してきました。このような段階には、重要な国際協定の批准、新しい戦略の定義、法規制の策定、公開協議プロセスの実施、制度、裁判所、法執行機関への重要な改革の実施などが含まれます。

Rana Gosain, ブラジルにおける最近の知的財産保護対策
Rana Gosain
シニアパートナー
Daniel Law(リオデジャネイロ)
電話: +55 21 2102 4205
Eメール: rana.gosain@daniel-ip.com

2021年、ブラジルはグローバル・イノベーション・インデックス(GII)第14版報告書において「オーバーパフォーマー」と呼ばれる19カ国の1つに選ばれましたが、これはイノベーションと技術の発展という点で予想以上の成果を上げていることを意味しています。現在57位のブラジルは目覚ましい進歩を遂げ、順位を5つ上げ、2012年以降最大のランクアップを果たしました。

ブラジル政府の取り組みの1つに、創造性、イノベーションへの投資、知識へのアクセスを奨励するために、バランスのとれた効果的な国家知的財産制度の構築を目標とした新たな国家知的財産戦略(estratégia nacional de propriedade intelectual:ENPI)があります。

現時点では当戦略の行動計画で想定される取り組みの70%以上がすでに進行中です。

特許

ブラジルではまだ特許についてかなり遅れていますが、昨年のデータによると、ブラジル特許商標庁(PTO)による取り組みは正しい方向への一歩であると見なすことができます。

世界知的所有権機関(WIPO)による最新の報告書「世界知的財産指標2021年」によると、ブラジルは2020年に前年比86.4%増の特許を付与し、中国(17.1%)、インド(11.8%)などの他の新興国を上回りました。2021年には特許承認までに要する期間が平均9.5年から6.8年に短縮されました。こうした結果は、2年間で特許未処理案件を80%削減することを目指すブラジルPTOの野心的な計画が大きく影響しています。

  • また、ブラジルの裁判所、議会、制度においてもここ数年で特許に関して大きな進展がありました。以下にその例を紹介します。 · 2020年、ブラジルPTOがバイオテクノロジー分野の特許出願に対する新たな審査ガイドラインを発表しました。その最終文書は、バイオテクノロジー関連発明についての特許問題に関するブラジルPTOによる再検討に加えて、以前実施された公開協議中に提出された提案をまとめた最終結果です。

  • 22021年、「(遺伝資源への)アクセスと利益配分に関する名古屋議定書」がブラジルで発効しました。この議定書は、遺伝資源とそれに関連する伝統的知識へのアクセスと、その利用から生じる利益の配分ルールを定めた生物多様性条約を補完する多国間協定です。

  • 2021年にはブラジル最高裁判所による違憲訴訟(ADI第5529号)の画期的な判決により、特許の有効期間を承認日から10年とするブラジル産業財産法の条文(第40条補項)が無効とされました。これにより、国内の知財専門家の間で大きな議論や論争が起こりました。 · 2021年、ブラジル議会は、ブラジル産業財産法の物議をかもした条文を破棄し、それによりブラジルのFDA(食品医薬品局)に相当する、ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)による特許出願審査への事前承認が廃止されました。現在、本条文は廃止されましたがこの問題は依然としてさまざまな法案や訴訟の論点になっています。

  • 2021年、ブラジルPTOは、ソフトウェア関連発明がどのような状況で特許が付与される可能性があるのか(つまり、技術的な問題を解決する技術的解決策と定義され、技術的効果を生み出す状況)を説明する有益なガイドラインを発表しました。

ここ数年でブラジル特許法が大幅に改正されましたが、出願人は、(主にブラジルPTOのファストトラックプログラムを使用して)特許手続きをスピードアップするために複数の仕組みを簡単に利用することができます。 例えば、ブラジルPTOは相手国当局と複数の特許審査ハイウェイ(PPH)協定を締結しており、最新の規則では、企業が1つの法域(第1庁)で特許を出願し、別の国(先行庁)でさらに審査を実施することができます。

ブラジルと日本のPPH協定は昨年末に更新され、さらに5年間延長されます。

そのため、例えば日本で最初に出願し、対応する出願が欧州で出願され許可された場合、出願人は欧州の請求項を使用してPPH申請を行い、ブラジルでの特許手続きをスピードアップすることができます。

その他の知的財産分野

ブラジル政府が最近実施したその他の知的財産保護の分野での取り組みは、徐々に成果が表れています。例えば、以下のような例があります。

  • 2019年、ブラジルで新たなフランチャイズ法が制定されました。ブラジルのフランチャイズ制度に画期的な変化が起こったわけではありませんが、同法によって、用語や概念が更新され、フランチャイズ開示文書に表示義務のある情報が一部挿入され、ブラジルのフランチャイズ制度に新たな規則が導入されます。

  • 2019年、マドリッド協定議定書がブラジルで発効しました。この議定書により、単一の商標出願で100カ国以上での保護申請が可能となります。これはブラジルの国際関係構築計画の戦略的な一歩でした。この議定書を採択することで、海外での商標登録手続きが迅速化かつ簡素化されました。これまでは、海外で商標登録を希望する企業は希望する国ごとに個別に出願し、各国の知的財産庁でそれぞれの料金も負担しなければなりませんでした。これまでのところ、本議定書はブラジル側から見ると、うまく機能しているように思われます。

  • 2019年、ブラジルPTOは工業意匠に関する手続きを簡素化し、重要な問題点を明確にするガイドラインを発表しました。例えば、通常の図だけでは請求する対象物の具体的な装飾の特徴を明らかにするには不十分である場合、審査官が容易に理解できるように、断面図や拡大図などの補助図が認められることが明確に示されました。PTOにおける意匠出願に関連する審査基準の最近の変更・改善により、今後、知的財産保護戦略においてPTOが利用する可能性が増えるため、こうしたことは重要です。

  • ブラジルPTOは2021年、新しい規則を発表し位置商標の形式の商標登録を規定しました。これにより、この種の登録をすでに認めている他の法域(欧州特許庁、ドイツ、アルゼンチン、カナダなど)と歩調を合わせることになります。この動きは、新しいタイプの商標(色彩、音、動き、位置、3D図などに関連する商標)の保護に関する総合的検討という点でも重要です。

  • 2021年、法務公安省と国立消費者局(National Secretariat for Consumer Affairs)は、海賊行為、密輸、脱税、知財関連犯罪に対抗するための新しい国家計画を承認しました。この計画は4年間(2022年~2025年)継続し、短期、中期、長期の対策を想定し62の対象を網羅しています。同計画では、デジタル上の著作権侵害対策に重点が置かれる一方で、物理的な場所での著作権侵害に関連する活動も含まれます。

知的財産と裁判所

ブラジルの裁判所は、国内外の請求人に同様に効果的な解決策を提供します。ブラジルには独立した司法組織があり、必要な場合に差止命令が広く利用できます(実際、米国など他国と比較すると、このような救済を受ける基準は高いとは言えません)。

ブラジルの各州には独自の司法制度があり、どの州の裁判所でも侵害訴訟を起こすことができます。原則として、侵害訴訟は侵害被疑者が主たる事業所を置いている州で起こさなければなりません。ただし、侵害行為が発生した場所であればどこでも提訴することができます。

専門裁判官は現在対応が不可能です。しかし近年、多くの知的財産専門裁判所が設立されています。リオデジャネイロにはブラジルPTOに対して起こされた訴訟を審理する特別な裁判管轄権を持つ連邦地方裁判所が4つあります。同様に、リオデジャネイロからの控訴を決定する権限のある第二巡回区連邦控訴裁判所には、知財案件を専門に扱う2つの裁判部があります。

州レベルでは、ブラジルの主要都市すべてに知的財産を含む商法と会社法を専門とする裁判所があります。例えば、リオデジャネイロには知財案件を含む商法案件を審理する裁判管轄権を持つ7つの州立裁判所があり、サンパウロにも最近同様の裁判所が4つ設立されました。

Daniel Law

Daniel Law
21/F, Av Republica do Chile, 330, West Tower
Rio de Janeiro – 20031 170, Brazil
電話: +55 21 2102 4212

www.daniel-ip.com

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