米国における外国投資のコンプライアンス上の課題

By Jeffrey L Kessler、Eva W ColeとHeather P Lamberg、Winston Strawn
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米国は依然として最大の外国投資先ですが、特定の法規制により、米国でビジネスを行おうとする外国人にとってさまざまな課題が生じています。これらの法規制に従わない場合、民事および刑事罰、多大な管理上の負担、法的費用、事業目標の未達成にいたる可能性があります。本稿では、企業が米国に投資する際に直面する際の主な課題と、考慮すべき特定のコンプライアンス・リスクについて説明します。

合併と買収

合併を規定する米国の主要な実質的独占禁止法であるクレイトン法の第7条では、合併の効果によって実質的に競争を減殺し、または独占を生み出す傾向がある場合には、いかなる企業または個人も、直接的または間接的に他の企業の株式または資産を取得することが禁じられています。

Jeffrey L Kessler, 米国における外国投資のコンプライアンス上の課題
Jeffrey L Kessler
共同会長(Co-Executive Chairman)、独占禁止法/競争法の共同議長
Winston Strawn(ニューヨーク)
電話: +1 212 294 4698
Eメール: jkessler@winston.com

合併に関する独占禁止法適用の審査を規定する主要な手続法であるハート・スコット・ロディノ(HSR)法に基づき、一定規模の取引は、その完了前に連邦取引委員会(FTC)と司法省反トラスト局(DOJ)に報告する必要があります。HSRの取引規模と当事者規模の基準を満たす取引当事者は、取引の完了前に政府に通知書を提出し、法に定められた待機期間を守らなければなりません。HSR法に基づく報告義務は、その取引が実質的に独占禁止法上の問題を引き起こしているかどうかには関係ありません。

FTCとDOJは合併の執行を分担しており、どちらの機関も取引の審査や異議申し立てを行うことができます。特定の取引をどの機関が審査するかという問題は、伝統や、各機関が培ってきた特定の業界に関する専門知識に大きく左右されます。また、州司法長官は、クレイトン法に基づいて、単独で合併を差し止めるための明確な権限を有しています。州司法長官は一般的に、リソースが限られているため、連邦政府機関が実施する審査に「便乗」します。

合併の課題の大半は本質的に水平的であり、関連する反トラスト各市場で起こりうる反競争的効果を評価します。課題の中には、通常、情報交換の問題や、合併後の事業体が一方の当事者の競合他社に不利益をもたらす能力に焦点を当てた、垂直的な懸念を伴うものもあります。政府と取引当事者は、通常は分割などの救済策を交渉する場合もありますが、政府、州、民間の当事者が、取引を阻止するために訴訟を起こすこともあります。

HSR法に基づき報告義務のない取引、あるいは報告・清算された取引は、後に第7条やその他の独占禁止法に基づき異議が申し立てられる可能性があります。FTCとDOJは、報告義務のない取引を把握するために取引報告書を定期的に監視し、顧客やその他の第三者からの苦情を受け付けています。

投資委員会 米国企業が米国以外の企業に所有または支配されることになる企業取引については、対米外国投資委員会(CFIUS)として知られる省庁間政府グループによって国家安全保障上の懸念があるかどうかが審査されます。CFIUSは、阻止には及ばない取引に制限を加えることができます。CFIUSの懸念事項となり得るものやそのリスクに対処する最善の方法を評価することは、米国以外の投資家が関与する買収または投資案件において重要な手段です。

対象となるのは、以下のいずれかに該当する米国企業です。(1)米国市民の機密性の高い個人データを収集または管理する米国企業、あるいは(2)重要な技術を生産、試験、または開発する企業は、米国政府にとって特定の国家安全保障上のリスクとみなされます。機密性の高い個人データには、特定の識別可能なデータ(例えば、個人の経済的困窮状態または経済的困難を見極めるために使用できる財務データ、消費者レポートのデータ、または個人の健康データなど)および個人の遺伝子検査の特定の結果が含まれます。

重要技術には、米国軍事品目リストに含まれる防衛物資やサービス、商務省規制品目リストに含まれる特定の品目、特定の原子力関連施設、機器、部品、コンポーネント、材料、ソフトウェアおよび技術、輸出管理規則に基づく特定の品目を含む特定の薬剤および毒素、2018年輸出管理改革法に基づき輸出の規制対象となる新興技術や基盤的技術が含まれます。

CFIUSへの義務的な届出は、実質的な持ち分(substantial interest)を十分に取得することになる特定の取引や、特定の規制対象技術が関係する場合に必要となります。委員会への届出が承認されれば、セーフハーバーの対象となる可能性があり、その場合は、政府は買収後に売却を命じることができません。

米国への投資を検討している日本企業は、対象企業の知的財産、技術、市場占有率、対象企業が米国政府に供給を行っているか、軍事基地の近くにあるか、当該取引がサイバーセキュリティや個人データに関わるものかどうかなどを含め、対象企業について徹底的に調査する必要があります。

輸出および貿易管理

輸出管理制度は、指定された商品、技術情報、サービスを米国以外の人や目的地に移転することを制限したり、または要件を課したりすることによって、米国の国家安全保障、外交政策、国内の経済的利益を促進するものです。こうした制度には、米国国務省の国際武器取引規則、米国商務省の輸出管理規則、外国貿易規則などがあります。

Eva W Cole, 米国における外国投資のコンプライアンス上の課題
Eva W Cole
パートナー、独占禁止法/競争法の共同議長
Winston Strawn(ニューヨーク)
電話: +1 212 294 4609
Eメール: ewcole@winston.com

経済・貿易制裁の規制により、国家安全保障、外交政策、経済に脅威を与えると合理的に考えられる指定国またはその国民との取引が禁止または制限されます。貿易制限もまた、増大するテロ組織、麻薬密売人、その他何らかの理由で取引禁止当事者と特定された相手との取引を対象とします。米国財務省の外国資産管理局がこうした規制を管理しています。

米国商務省と財務省が管理する反ボイコット法は、イスラエルに対するアラブ連盟のボイコットなど、米国以外の国が行う制裁的なボイコットに企業が従うことを禁止しています。

米国の貿易管理は複雑ですが、積極的に実施されています。違反すると、民事・刑事上の罰則や、多大な管理上の負担や法的費用につながる可能性があります。これらの規則に関連する可能性のある取引を検討している日本企業は、資格を有する弁護士と慎重に協議した上で、取引を行う必要があります。

データプライバシーに関する懸念事項

プライバシー法は、個人を特定できる幅広い種類の情報を収集、利用、共有する企業に広範な要件を課していますが、この複雑かつ矛盾の多い内容を盛り込んだプライバシー法が目まぐるしい変化を遂げているのが、現在の米国のプライバシー規制に関する状況です。連邦電話消費者保護法、イリノイ州バイオメトリック情報プライバシー保護法(Illinois’ Biometric Information Privacy Act)、カリフォルニア州消費者プライバシー法などの特定の法律には、私訴権が含まれており、上限なしの法定損害賠償を規定しているため、リスクにさらされる機会が増加しています。

独立禁止法について考慮すべき点

企業が米国でビジネスを行う場合、各種法律や規制を遵守する必要があります。特に関心の高い領域の1つが、競争を促し消費者を保護することを目的とした独占禁止法です。反競争的行為を禁止する主な連邦法には、シャーマン法、クレイトン法、連邦取引委員会(FTC)法があります。独立禁止法を執行するのは、FTC、司法省反トラスト局、および民間の原告です。

Heather P Lamberg, 米国における外国投資のコンプライアンス上の課題
Heather P Lamberg
パートナー、独占禁止法/競争法の議長
Winston Strawn(ワシントン)
電話: +1 202 282 5274
Eメール: hlamberg@winston.com

また、各州にはそれぞれ概ね連邦法を反映した不正競争防止法がありますが、追加的な行為を禁止している場合もあります。州司法長官と民間の原告が、州の独占禁止法を執行します。民間の当事者が損害賠償を請求する訴訟を起こすと、受けた損害の3倍額に相当する金額と弁護士費用を受け取ることができます。また、差止による救済を受けることもできます シャーマン法第1条は、取引を制限する不合理な契約、結合、共謀を禁止しています。第1条の違反には合意が必要であり、これには非公式の「紳士協定」や暗黙の了解も含まれます。

米国司法省は、競合企業間の価格固定や生産量制限、不正入札、市場や顧客の割り当てなどの約因のない合意を刑事訴追する独占的な裁判権を有しており、これらは経済的な根拠や結果にかかわらず違法とみなされます。刑事違反については、企業の場合は、当該犯罪による利益または損失の2倍、または1億米ドルを上限とする罰金、個人の場合は100万米ドルを上限とする罰金が科されます。個人の場合は、最長で10年の懲役が科される場合もあります。

その他の種類の独占禁止法違反は民事で執行され、一般的には反競争的損害と競争促進的正当性のバランスをとる「合理の原則」の基準に基づき分析されます。これには、流通網のさまざまな階層を占める当事者間の垂直的協定など、取引を制限するその他の協定が含まれます。

シャーマン法第2条では、独占、独占の企て、取引を独占するための共謀を禁止しています。独占であると主張するには、被告が関連市場において独占力を有し、排他的行為によってその力を獲得、強化、維持していることが必要になります。

FTC法は不公正な競争方法を禁止し、そのような行為を調査し禁止する権限をFTCに与えています。クレイトン法は、一部の状況において反競争的な抱き合わせ販売や排他的取引協定、および特定の役員兼任を禁止しています。

贈賄・汚職の防止

米国の海外腐敗行為防止法(FCPA)は、ビジネスを獲得または維持するために汚職の意図を持って、外国公務員に「価値のあるもの」の支払い、贈答、申し出を行うことを禁止しています。FCPAは、米国の法律に基づいて登録された企業、または米国に所在する企業に対して適用されます。企業は、その従業員、または企業のために行動していた第三者の不正行為に対して責任を問われる可能性があります。 FCPAの贈賄禁止条項に基づく刑事罰では、企業の場合は当該犯罪によって得た利益の最大2倍、または違反行為1件につき最大200万米ドル、個人の場合は最大10万米ドル、最高5年の懲役刑が科されます。

コンプライアンス・プログラム

企業がベストプラクティスに従ったにもかかわらず、法律に違反した場合、政府は減刑に同意するか、あるいは刑事訴訟を行わない決定をする可能性があります。司法省の指針では、企業のコンプライアンス・プログラムが、それぞれの業界、リスクプロファイル、および事業を行う地域に特化して確実に調整が行われるよう指示しています。

Winston Strawn

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