バングラデシュにおける外国人投資家の仲裁問題

By Sameer Sattar、Sattar&Co
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外国からの直接投資(FDI)は、バングラデシュのような新興国の経済発展を牽引する重要な原動力です。相手国にFDIを行う手法はいくつかありますが、最も一般的な手法はクロスボーダー合弁事業か、現地企業の株式を直接取得することです。

バングラデシュへのFDIは、同国の経済成長や既存の投資環境によって、魅力的なものとなっています。また、バングラデシュには、外国人投資家に有利な厳格な国内法が整備されています。

本稿では、日本の投資家への指針として、バングラデシュへの投資を検討する際に、外国人投資家が現地の相手側と交渉する上で留意すべき重要な特定分野の紛争解決を取り上げます。

紛争解決

1980年に制定された外国民間投資(促進・保護)法の第4条では、政府は外国民間投資に対して公平かつ公正に扱い、バングラデシュにおいて確実に保護され安全が確保されると説明しています。

Sameer Sattar, Aバングラデシュにおける外国人投資家の仲裁問題
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しかし、そのような保護は民間レベルには及ばない場合があり、FDIに関わる商業当事者の関係を規制しない可能性もあります。従って、外国人投資家が自身の投資について懸念を持ち、適切な法的保護を公平に受けられるかどうかを心配するのは、理にかなった妥当なことであると考えられます。

外国人投資家にとって、当事者間の適切な紛争解決メカニズムを決定することは極めて重要な関心事項です。多くの合弁事業や買収において、交渉の大半は紛争解決条項に費やします。なぜなら、紛争解決メカニズムが、最終的にFDIに関連する当事者の関係を規制するものであり、当事者の権利、責任、義務は、まさに当該条項に左右されるためです。

当事者が迅速かつ効果的な訴訟手続きを利用できるよう、適切な紛争解決手段を確立することが重要です。合弁事業や買収に関連して何らかの紛争が起きた場合、訴訟または仲裁によって解決される必要があります。

バングラデシュでの訴訟は遅延によって滞るため、一般的に外国人投資家は国際商事紛争を解決する最も望ましい方法として、仲裁を選ぶ傾向にあります。仲裁手続きは柔軟で、紛争を内密にすることで紛争解決における当事者自治が認められています。

仲裁法

バングラデシュにおける仲裁は、1985年に国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)が策定した「国際商事仲裁に関するUNCITRALモデル法」を主な根拠とする2001年の仲裁法に準拠しています。仲裁合意の定義、仲裁人の数、当事者自治などに関する法律の条項はモデル法に類似しており、一字一句そのまま使用されている箇所も少なくありません。

しかし、同法はモデル法のすべての条項を採用しているわけではありません。また、バングラデシュは1958年の「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(ニューヨーク条約)の締約国であることに留意することも重要です。

ニューヨーク条約とモデル法を契機として、仲裁法は外国の仲裁判断を承認し執行する仕組みを導入しました。そのため、外国の仲裁判断とは、バングラデシュ以外の国での仲裁合意に従って下される判断を意味します。

仲裁法第45条によって、外国の仲裁判断は、仲裁合意の全当事者に対して拘束力を持ちます。このような仲裁判断は、現地の裁判所の判決としてバングラデシュの地方裁判所によって執行されることが可能です。しかしこのような執行には第46条に規定された例外があり、立法機関は現地の裁判所が外国の仲裁判断の執行を拒否できる事由を制限しています。

第46条が規定する事由には、仲裁合意の当事者が無能力であること、当事者が準拠した法律の下での仲裁合意が無効であること、紛争の対象がバングラデシュの法律に基づく仲裁解決の対象とならないこと、外国の仲裁判断の承認および執行がバングラデシュの公序良俗に違反することなどがあります。

上記の事由は、不適切な仲裁判断を確認するために規定されていますが、その一方で、バングラデシュの裁判所が、外国の仲裁判断を過度に拡大解釈することによって、その執行を阻止する余地を十分に残しています。

仲裁の背後にある考え方は、現地の裁判所による訴訟の必要性を回避することですが、このような条項は、裁判所の役割の全てを代替するものではないと考えられています。問題の緊急性が高く、早急な対応が必要な場合には、裁判所の介入の必要性が極めて重要になります。例えば、当事者が仲裁裁判所の命令に従うことを拒否した場合、または当事者の一方が即座の救済措置を必要としているにもかかわらず、仲裁裁判所がまだ設置されていない場合、裁判所の介入が不可欠です。

このような司法介入は通常、同法第7条Aに基づき行われ、同項には、バングラデシュの裁判所は仲裁手続き前、あるいは手続き継続中、または国内もしくは外国の仲裁判断の執行までの間、妥当または適切と思われる暫定的な保護措置を取ることができると規定されています。

この点において、第3条では、バングラデシュで生じると見なされる仲裁のみが同法の適用範囲であるという、制限的な「属地主義」を具体的に説明していることに留意しなければなりません。つまり仲裁地がバングラデシュの領土内にある場合、同法が適用されることになります。仲裁手続きがバングラデシュで行われない場合、当事者は第7条Aの定めにより暫定的な救済を利用することができません。

大きな混乱

しかし、同法の第3条は現地の仲裁の現場に大きな混乱をもたらしました。「HRC Shipping対MVX-Press Manaslu他」の事例では、バングラデシュ最高裁の高等裁判所部門は、第3条の「バングラデシュの・・・場所」という用語の拡大解釈を選択しました。その見解では、同法はモデル法に詳述されているように、国際商事仲裁で生じる紛争を公正かつ効率的に解決するために、統一的な法的枠組みを確立するという精神で作成されたというものでした。

一方、その後「STX Corporation対Meghna Group of Industries」で出された判決では、高等裁判所部門の別の裁判所が、第3条1項の文字通りの解釈を採用しました。

このような解釈を裏付けるものとして、同高等裁判所部門は、「Unicol Bangladesh対Maxwell」の判例を引用しました。この判例では、最高裁判所の上訴部が、第3条1項はバングラデシュで行われる仲裁に関しては適用が制限されると述べています。

このように、バングラデシュの裁判所が、同法、具体的には第3条の範囲を決定する上で、相反する判断を下していることが確認できます。STX Corporationの事例の裁定では、バングラデシュの裁判所は、仲裁が国外で行われた場合、たとえ仲裁手続きを支援するためであっても、いかなる暫定的な救済措置も発することができないと判定されました。それに対して、先のHRC Shippingの事例では、第3条をより自由に解釈し、仲裁地がバングラデシュ国外であっても適用されるとしました。

こうした相反する見解や解釈によって、バングラデシュの裁判所がこのような仲裁手続きにどのような支援を行うかが不明瞭となり、バングラデシュの企業との国際仲裁手続きに関わる外国人投資家に、大きな不安と懸念を抱かせることになりました。

不安の解消

同法の範囲についての問題は、つい最近の事例である2019年の「Southern Solar Power他対Bangladesh Power Development Board他」でも再度発生しましたが、ここでは高等裁判所部門によって現在における最新の傾向が示されました。

Southern Solarの事例では、STX Corporationの事例で下された見解とは全く対照的に、高等裁判所部門はHRC Shippingの事例での立場に立ち返り、バングラデシュ国外で行われた仲裁に関連したものであっても、第7条Aに基づく申請を十分に受け入れる権限があるという裁定を示しました。 高等裁判所部門は、第3条の文言は、国外での仲裁(foreign-seated arbitration)に関する管轄権を排除しようとするものではないと述べました。禁止する用語が使用されていない場合は、同法の関連条項が適用される可能性があります。

Southern Solarの事例で示された見解は、STX Corporationの事例で示された保守的で制限的な見解に比べると、大胆かつ毅然とした対応であるかのように思われます。

したがって、外国人投資家や国際社会は、Southern Solarについての裁定から大きな安心感を得ることができます。この事例に従い、立法機関は現在の不確実性を排除するために仲裁法を改正する措置をとることが予想されます。

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