インドにおける仲裁の現状

    By Ila Kapoor, Shruti Sabharwal と Surabhi Lal, Shardul Amarchand Mangaldas & Co(ニューデリー)
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    インドは、紛争解決の代替的メカニズムとして仲裁を推奨する措置を講じてきており、1996年に仲裁調停法(以下「仲裁法」)を制定してからは、より効率的で安全な仲裁プロセスを促進しています。同法には、2015年と2019年に大幅な改正が行われました。

    裁判所もまた、判決を通じてこの目標を推進する上で、重要な役割を果たしてきました。しかし、裁判所はほとんどの場合において、こうした主義を推進してきましたが、時折、相反する判決が下されて、仲裁法の改正を引き起こすという後退もありました。

    本稿では、仲裁合意の印紙貼付に関する最高裁判決、仲裁人選任段階における裁判所の調査範囲の限定に関する最高裁判決、そして仲裁における第三者資金提供に関する高裁判決という、最近のインドにおける3件の司法判決に焦点を当てます。

    印紙税契約

    Ila Kapoor
    パートナー
    Shardul Amarchand Mangaldas & Co(ニューデリー)
    電話: +91 11 4060 6060 (Ext. 4152)
    Eメール: ila.kapoor@amsshardul.com

    NN Global Mercantile対lndo Unique Flame & Anrの件では、仲裁合意を含む契約書に、インド印紙税法(1899年)に基づく印紙税が支払われていなかったため、最高裁判所が最近下した判決は、かかる契約書によって裁判所が仲裁人の選任について決定を行うことはできないとしました。

    これにより裁判所には、仲裁合意について決定を行う前に、該当する書類に適切な印紙税が支払われていることを確認する必要が生じました。最高裁は、実体法(この場合はインド印紙税法)の運用によって強制力を持たない契約は、インド契約法(1872年)のもとでは有効な契約にはならないとしました。

    この決定は、裁判所による審判機関の選任を遅らせるために利用されるのではないか、という不安感が広がるなど、その誤用の可能性と影響に関して、仲裁界に懸念を生じさせています。もう一つの懸念は、原契約に印紙が貼付されていなかった、あるいは印紙添付が不十分であったという理由で、裁定に対する当事者の異議申立てが助長されることです。

    外国人投資家は通常、インドの実体法を知らず、契約の執行可能性をインド側の取引相手に委ねることが多いため、ここに危険信号がついたことになります。この不法性が是正されるまで、契約書に印紙が貼付されていないという事は、仲裁手続を開始する際のアキレス腱と言うべき弱点になります。これに関しては、印紙の事後貼付が罰金の対象となるばかりか、長く煩雑な手続を要する可能性があるのです。

    この判決は、現在進行中の仲裁への影響について何ら見解を示していませんが、インド司法当局は、同判決が導く可能性のある幾つかの法的障害をいち早く認識し、それに対処しています。

    直近では、7月4日にデリー高裁で開かれたArg Outlier Media Private対HT Mediaの裁判で、裁定債務者は、NN Globalの判決において、印紙添付が不十分または不適切であった契約が仲裁人による仲裁を受けるに至らなかったことを理由として、裁定の無効を求めました。

    高裁は、この理由で裁定を無効とするという訴えを退けました。この判決では、仲裁合意を含む当該契約は、適切な印紙貼付がされていなかったため、証拠として認められるべきではなかったとしています。しかし、ひとたびそれが認められた以上、その結果である裁定を、かかる理由で非難することはできません。

    この判決により、NN Global判決の実質的な影響によって、異議申立てが増加するという懸念が緩和されました。これは確かに正しい方向への一歩ではあるものの、高裁の判決は、この判決によって生ずる仲裁人選任の遅延の可能性には触れていないため、まだ先に道のりがあります。

    また、最高裁が、印紙貼付不十分な仲裁合意の執行可能性に関わる別の判決において、救済申立ての審理に同意したことから、トンネルの終わりに光を見ることもできます。

    これが明確になるまで、当事者らは契約書にインド印紙法に基づく印紙が貼付されていて執行可能であることを確認し、紛争が発生した場合の潜在的遅延を回避するよう、努力すべきです。

    二段階調査

    Shruti Sabharwal
    Shruti Sabharwal
    パートナー
    Shardul Amarchand Mangaldas & Co(ニューデリー)
    電話: +91 11 4060 6060 (Ext. 6010)
    Eメール: shruti.sabharwal@amsshardul.com

    今年4月、最高裁判所はNTPC Limited対SPML Infraの裁判において、仲裁法に基づく裁判所の事前照会管轄権の問題を取り扱い、仲裁人を選任する際の裁判所の調査範囲が限定的であることを強調しました。

    この事件で争点となったのは、当事者間に紛争が存在しないという理由で、仲裁審判所の選定に対して相手方当事者が提起した異議でした。相手方当事者は、相手方当事者のすべての義務が充分に免除されたと述べた和解契約を、その根拠としていました。

    最高裁では、この文脈における紛争の存在は、仲裁人を選任する付託裁判所が決定すべきか、それとも審判所の検討に委ねるべきか、という点が争われました。

    過去においては、裁判所は当事者を仲裁に付託する前に、主張の信憑性を一応検討しなくてはならないという立場でした。それらの判例は、インドで行われる仲裁への司法の介入を最小限に抑えるという考え方と合致しなかったため、立法府は2015年の法改正によってこれに介入しました。これにより、仲裁人を選任する裁判所の権限は、仲裁合意が当事者間に存在するかどうかを検討することであり「それ以上でも、それ以下でもない」と限定されたのです(2017年、Duro Felguera対Gangavaram Portの件)。

    NTPCの判決は、司法の介入を最小限に抑えるという立法の趣旨を反映したものです。それはさらに、裁判所は2つの限定的な調査を行う必要があることを明らかにしています。

    第一に調査するのは、仲裁合意の存在と有効性です。それには、契約の当事者たちが誰であるのか、そしてそれらの当事者がこの裁判の当事者たちであるのかを審査する必要があります。

    第二の調査は、紛争が仲裁可能であるかを審査することに限定されます。裁判所はまた、第二の調査とは「この請求が仲裁不可能であることには一抹の疑いもない」という結論に至る事実を、一応精査することであると明らかにしました。

    最高裁が定めたこのルールは明確です。仲裁不可能との異議に対する一応の審査で、結論が出ないと判断された場合、紛争は仲裁に付託されます。第二の調査は、仲裁不可能であることが明白な場合に、仲裁を強制されることから、当事者を保護することに限定されているのが明らかであり、枯れ枝を切り払うのを目的にしているのです。

    この決定は、仲裁不可能性に関するすべての問題については、仲裁審判所が優先的に決定するという原則を補強しています。これにより、仲裁を遅らせる目的で、選任段階で異議を申し立てようとする当事者らは、その前によくよく考えるようになるため、裁判所による仲裁審判所選任がより効率的、かつ迅速に行われるようになります。

    第三者資金提供

    Surabhi Lal
    Surabhi Lal
    シニア・アソシエイト
    Shardul Amarchand Mangaldas & Co(ニューデリー)
    電話: +91 11 4159 0700
    Eメール: surabhi.lal@amsshardul.com

    デリー高等裁判所が今年5月に下した、Tomorrow Sales Agency対SBS Holdingsの判決は、これまで法的に認められた原則ではなかった、仲裁への第三者資金提供の法的有効性を明確にしました。しかし、この慣行は裁判所の判決の中では暗黙のうちに認められてきました。

    高裁は、裁定権者が申立人とその第三者資金提供者に対して、仲裁裁定を執行できるかどうかという問題を取り扱っていました。申立人は、裁定を充足させることができませんでした。その後、裁定権者は申立人の仲裁に資金を提供している第三者に対して、裁定額の支払いを要求しましたが、拒否されたのです。

    裁定権者は、裁定額の担保命令、資産および保有資産の開示、裁定債務者および第三者資金提供者からの資産移転を規制する命令という形での、暫定的な救済を求めました。

    この救済措置は、高裁の単一の判事によって認められました。しかし控訴審では、複数判事による法廷(division bench)においてこの命令が覆され、資金提供者は裁定執行の対象となる裁定債務者としては扱えないという理由で、資金提供者を相手取った暫定救済の要求が却下されました。

    高裁は、第三者による資金提供の目的、すなわち司法へのアクセスを確保するためということを強調し、仲裁における資金提供に関して、透明性と情報開示のための規制を整備することは必要であるが、「第三者資金提供者に、その者が負担に同意していない債務を課すこと」を法律が認めるとすれば、それは逆効果であるとの見解を示しました。

    この判決は、とりわけ強制執行の当事者となることから第三者資金提供者を保護することにより、第三者資金提供をさらに合法化する一歩です。

    願わくは、立法府が裁判所の見解に耳を傾け、インドにおいてこれまで、不安と心配を抱えて行われていた第三者資金提供に関して、正式な規制を整備してほしいものです。

    結論

    インドにおける仲裁の状況は、速いペースで進展しています。概して、裁判所は一貫して商業的に健全で、仲裁に適した判決を下していると言ってよいでしょう。立法府もまた、既存の法的枠組みにおける、予期せぬ落とし穴を修正する措置を講じているところです。

    6月14日、政府は仲裁法の改革を提言するための、15名から成る専門家委員会を設置しました。この委員会は、数ヵ月以内に報告書を提出する予定です。

    仲裁界の著名人を含むこの協議プロセスによって、現行制度の明らかな痛点が改善され、インドが国内外のユーザーにとってより仲裁に適した法域となることを期待しています。

    SHARDUL AMARCHAND MANGALDAS & CO

    Amarchand Towers
    216 Okhla Industrial Estate, Phase III,
    New Delhi – 110 020, India
    電話: +91 22 4933 5555
    Eメール: connect@amsshardul.com

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