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中国

中国の不動産市場は、2022年以降、継続的な下落傾向にあり、投資額も販売額も大幅に減少しています。土地のプレミアム率は過去10年間で最低ですが、競売や売却に出されている土地区画の競売不成立と撤退の合計率は、依然として高い水準にあります。

国家統計局が発表したデータによると、昨年、不動産開発会社が購入した土地の面積は、2021年比で53.4%減少しました。土地取引額は48.4%下落、住宅の新規着工面積は39.4%減少、商品住宅の販売面積は24.3%縮小、そして開発投資は10%収縮しました。

このように悲観的な業界背景に対するシステミックなリスクを防ごうと、中央政府は、「住宅は住むためのものであり、投機の対象ではない」という原則を守りつつ、不動産市場を安定させるための一連の法律、規制、政策をさまざまなレベルで導入してきました。

これらの措置は各都市に合わせて異なり、開発、建設、投資、融資、販売など多様な側面を網羅し、堅実な住宅需要とグレードアップした住宅需要の双方をサポートして不動産業界の安定を促進することを目標にしています。

主な取り組み

Hao Han
Hao Han
パートナー
Zhong Lun Law Firm
北京
電話: +86 10 5957 2010
Eメール: haohan@zhonglun.com

土地の供給と開発の最前線で次々に実施されている政策は、「住宅の供給、人々の生活、社会の安定を保証する」市場志向を標榜しています。これらの政策は、不動産開発会社が直面するリスクに対処するため、市場経済化と法の支配を優先し、プロジェクトの円滑な完成と引き渡しを保証するものです。

最高人民法院、住宅都市農村建設部、中国人民銀行が2022年1月に共同で公布した「プロジェクト建設のための商品住宅販売前資金の使用を確保するための人民法院の保全・執行措置の規制に関する通達」は、販売前資金の預託口座に関する保全・執行措置を実施する際には、比例原則を堅持し、誠実かつ理性的な執行を強化するよう求めています。

その目的は、建設会社に対する中間建設費の支払い遅延を防止することです。そうした遅延は、商品住宅プロジェクトの進行を妨げ、完成と引き渡しに悪影響を及ぼし、住宅購入者の権利と利益を損なう可能性があります。

その後、中国銀行保険監督管理委員会は、「商業銀行が発行する保証状による販売前預託資金の代替に関連する業務についての通達」を出しました。この通達は、預託された販売前資金の代替として、保証状を使用することを認めており、定評のある不動産開発会社がこれらの資金を効果的に活用することを可能にします。

さらに、上海、広東、四川、武漢、南京など、中国のいくつかの地域でも支援政策が導入されています。それらには、土地競売に参加するための履行保証の有効な形態として要求保証を認めること、開発会社の信用実績に基づいて売却前資金の預託枠を調整すること、流動性を向上させるために開発会社が所定の預託額以上の資金を引き出しての使用を認めること、などがあります。

一方、低迷する住宅販売を押し上げるための各種政策では、規制緩和が大きく取り上げられています。これらは、住宅購入のコストとリスクを軽減しつつ、合理的な住宅需要を満たすことに重点を置いています。

2022年、人民銀行と中国銀行保険監督管理委員会は共同で「初めての住宅購入に対する新規個人住宅ローンの金利政策の動的調整に関する、長期的メカニズムの確立に関する通達」を発表しました。これは適格都市における、初めての住宅購入者向けの商業用個人住宅ローンの金利フロアの段階的引き下げを概説しています。

Shi Yi
Shi Yi
パートナー
Zhong Lun Law Firm
北京
電話: +86 10 5957 2169
Eメール: shiyi@zhonglun.com

また同年、財政部と国家税務総局は「既存住宅売却後の新規住宅購入支援に関する個人所得税政策に関する公告」を発表し、既存住宅を売却してから1年以内に市場で新築住宅を購入した納税者は、既存住宅に支払った個人所得税の全部、または一部の還付を受けることができるようになりました。還付金額は、新居の購入価格と既存住宅の売却価格の差額に基づいて決定されます。

2023年、自然資源部と中国銀行保険監督管理委員会は共同で、人民と企業の便宜のために、不動産の「抵当権付譲渡」サービスを提供する協調努力を行う、という通達を発表しました。この通達は、抵当権付き不動産譲渡にプレミアムサービスを提供するための、部門間協力の必要性を強調しています。

最高人民法院の最新のガイダンスである「商品住宅購入者の権利保護に関する回答」は、住宅購入者の権利をさらに強化しています。これは、購入者が居住目的で商品住宅を購入し、住宅価格を全額支払った場合、購入者の物件引渡請求権が、建築費、抵当権その他の請求権のいずれにも優先することを定めたものです。

さらに、地方自治体は、住宅ローンによる中古住宅の取引の許可、住宅購入の制限の緩和または解除、不動産業者の手数料の上限引き下げ、取り壊しや再定住の対象となる既存住宅に対する金銭補償の補完である「住宅クーポン」政策の試験的実施など、さまざまな措置を実施してきました。

新開発モデル

投資と資金調達に関しては、不動産セクターの債務リスクを解決し、新たな開発モデルへの円滑な移行の促進に重点が置かれています。2022年、中国人民銀行と中国銀行保険監督管理委員会は共同で、「不動産市場の安定的かつ健全な発展のための金融支援の確保に関する通達」を発表しました。

これは、住宅供給を保証するための積極的な金融サービスを提供し、苦境にある開発会社が直面するリスクへの対処や、段階的な財務管理政策の調整、住宅リースに対する金融支援の強化などにおいて協力する必要性を強調したものです。

発展改革委員会、中国証券監督管理委員会、中国証券投資基金業協会などいくつかの部門も、都市開発、建設、運営への民間資本の参加を促す文書を発表しました。

彼らはインフラ分野での不動産投資信託(REIT)の試験的プログラムを推進し、REITの原資産の範囲を、手頃な価格の賃貸住宅や商業施設に拡大しています。こうした施策の目的は、投資の出口となる機会を創出することです。

河南省や安徽省などでは、定評のある開発会社が、資金調達のために債券を発行するのを支援したり、不良プロジェクトのM&Aを促進したりする地方政策も実施されています。これらの政策はまた、商業銀行が不動産市場への融資支援を強化し、不動産救済資金を効果的に活用するよう促すことの重要性を強調しています。

2023年7月に国務院が採択した「メガシティおよびスーパーシティにおける、都市内村落の再開発の積極的かつ着実な推進に関する指導意見」によると、メガシティやスーパーシティにおける、都市内村落再開発の積極的かつ着実な推進は、人々の生活向上、内需拡大、質の高い都市発展のために極めて重要です。これは、潜在的消費とともに、内需を刺激するという明確なシグナルです。

さらに、その後の中国共産党中央委員会政治局(政治局)の会議では、需給が大きく変化した中国不動産市場の新たな状況に対応するため、各都市の特性に応じて不動産政策を最適化し、政策ツールキットを十分に活用すべきであることが初めて示されました。その目的は、住民の堅実な住宅需要と、より良い住宅への欲求に対して、より良く対応し、不動産市場の着実かつ健全な成長を後押しすることです。

政治局会議はまた、もっと手頃な価格の住宅を建設・提供する努力をすること、都市内村落の再開発や通常および緊急用の公共インフラの建設を強力に推進すること、各種の遊休不動産の再生・改修を行うことを求めました。

さまざまなレベルにおいて、中央政府と地方自治体が、より高い水準の市場支援と、より多様な支援手段を備えた不動産施策を展開することが期待されます。

政策の進展

国家統計局が発表した2023年1月から6月までのデータによると、不動産市場の安定を図るこれらの多様な政策の実施により、全体的な下落傾向は緩やかになっています。

とは言え、不動産市場全般はまだ低水準にあり、市場の信頼感も完全には回復していません。

短期的には、不動産部門における債務リスクの防止と解決が、中心的な課題であることに変わりはありません。これにより、債務再編、破産更生、紛争解決、そしてこの機会を捉えての不動産会社への投資など、リーガルサービス市場にホットスポットやビジネスチャンスが生まれました。

一方、不動産業界の特性が「在庫に基づいた開発、産業化、金融化」へと進化し続ける中、不動産市場は、困難な問題にもかかわらず、変革とグレードアップのプロセスをたどることでしょう。こうした移行には、成長痛が伴うかもしれませんが、業界の長期的発展にはそれが不可欠です。

Zhong Lun Law Firm

ZHONG LUN LAW FIRM

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20 Jin He East Avenue, Chaoyang District
Beijing100020, China

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インド

インドの不動産投資へのナビゲーション

インドでは、タウンシップ、住宅・商業施設、病院などのプロジェクトを含む建設開発部門で、最大100%までの外国直接投資(FDI)に対する(政府承認を必要としない)自動承認が認められており、2023年第2四半期には、それが最近のFDI総額の9%という大きな割合を占めています。

本稿では、FDI、不動産投資信託(REIT)、破産、ストラクチャードファイナンスなど、この活気あるセクターに対する現在の規制の枠組みを分析します。

建設におけるFDI

100%の FDI が認められているため、投資家はプロジェクトの完了時、あるいは道路、水道、街路灯、排水、下水道といった基幹インフラの開発後にイグジットすることができます。

Hardeep Sachdeva,AZB & Partners
Hardeep Sachdeva
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各段階は、個別のプロジェクトとみなされます。FDI の各トランシェに関して計算される3年間の譲渡禁止期間の満了を条件として、投資家はプロジェクト全体が完了する前でも、その外国投資からイグジットして資金を本国に送金することができるのです。しかしホテル、観光リゾート、病院および教育機関への投資には、このイグジット規制は適用されません。

また、非居住のインド人から同じく非居住のインド人への譲渡で、投資の送還を伴わないものも、譲渡禁止期間や政府の承認なしに認められています。

ただし、農場建設、譲渡可能な開発権の取引、または土地や不動産の売買で利益を得る不動産事業に従事するインド企業に対しては、FDIが認められていないことに留意する必要があります。

タウンシップ、住宅・商業施設、道路または橋梁、REIT、教育施設、レクリエーション施設、都市・地域レベルのインフラなどの開発、および賃貸料やリース料など不動産譲渡に該当しない収入は、いわゆる不動産事業とはみなされません。

インド国内に支店または事業所を有する外国企業が、事業遂行のために不動産を取得しようとする場合は、「2019年 外国為替管理(非債務証券)規則」が適用されます。

これには、インド準備銀行(RBI)に対して所定の申告を行う必要があります。これをインド国内で受領した資金で支払うには、通常の銀行チャネルを通じて、インド国外からの対内送金、または NRE/FCNR (B)/NRO 口座からの引き落としによって行うことができます。

投資信託

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Ravi Bhasin
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不動産セクターにおけるもう一つの最近の動きは、個人投資家と機関投資家の双方がREITモデルを採用していることです。現在、5件のREITが登録されており、このうち3件が合計でグレードAのオフィス・スペースの11%を保有しており、今後このセクターは最大68%急上昇すると予測されています。

REITは、一般に指定スポンサー、運用会社、受託者、投資単位保持者で構成され、「1982年インド信託法」に基づく信託であるため、主としてインド証券取引委員会(SEBI)のREIT規則によって管理されています。

この REIT規則は、REIT資産の価値の80%以上が、完成済みで賃料および/または収益を生む不動産に投資されていなくてはならないと定めています。残りの20%は、建設中、または完成済みであるが賃料を生み出さない物件に投資されている必要があります。

投資家の利益を保護し、投資家が充分な情報を得て RIET投資の意思決定ができるよう、同規則では、登録評価人により、すべてのREIT資産の完全な評価を毎年行うなど、一定の定期的評価について定めています。このような評価報告書を受領した場合、それを15日以内に指定証券取引所、および投資単位保持者に提出することが義務付けられています。

破産および倒産

「2016年 破産倒産法」(IBC)は、破産や倒産の法律の既存の枠組みを整備し、破産と清算のプロセスを合理化したものです。

IBCは、企業債務者の債務不履行が発生した場合に、金融債権者、営業債権者、または企業債権者が破産処理手続を開始することを可能にしています。これは、破産処理手続開始申請書の提出から180日以内に解決されなくてはなりません。

IBCは、ステークホルダーである住宅購入者と不動産開発業者、双方の利害関係を伴うインドの不動産破産に対し、決定的な影響を与えてきました。住宅購入者にも、最近の法改正や最高裁判決によって、より大きな権利がもたらされました。

Abhishek Awasthi, AZB & Partners
Abhishek Awasthi
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以前は、彼らの役割が「その他の債権者」としての認識に限定されていました。しかし2018年の法改正以降、住宅購入者は金融債権者として認められ、債務不履行に陥った不動産会社に対して、破産手続を開始する権利を有しています。この権利には、プロセス開始に必要な住宅購入者数の最低基準値が適用されます。

不動産開発業者にも、不動産会社の破産処理計画を模索・決定する際の、より大きな柔軟性が、インド破産倒産委員会によってもたらされました。2022年に更新された「法人に関する破産処理手続規則」では、債権者委員会は、法人債務全体に関する処理計画が受理されなかった場合でも、法人債務者の1件または複数の資産に関して、新たな処理計画を模索することができるようになりました。

処理専門会社は、企業債務者の資産の評価を最大化するためのマーケティング戦略に、予算を配分することもできます。この改正は、企業債務者の個々の不動産プロジェクトに特化した処理を可能にするもので、それらはプロジェクトの規模、開発タイプ、完成段階、立地などの要因によって変わります。

利益保護

IBCとは別に、貸手が債権を回収するためのもう一つの主な手段が、「2002年 金融資産の証券化および再建ならびに担保権の実行法」(SARFAESI法)によって規定されています。

債務者が有担保債務の返済を怠った場合、有担保債権者は当該債務者の口座を不良資産に分類し、担保権を行使して被担保資産を占有する手続を開始することができ、それは民事裁判に比べて、より早く債権回収するプロセスです。

借手に対しては、定められた期間内に債務を全額弁済するよう事前通知を送付する必要があり、弁済されなかった場合、SARFAESI法の規定に基づいて強制執行手続が開始されることがあります。

SARFAESI法が不動産開発業者、住宅購入者、銀行の間の金融契約を管理し、執行を促進する一方で、「2016年 不動産の開発・販売規制に関する法律」(RERA)は、不動産プロジェクトの建設、開発、マーケティングにおける割当先(購入者)とプロモーターの利益のバランスをとる主要な法律です。

RERAのもとでは、不動産プロジェクトのプロモーターと割当先とに、一定の責任が課されます。プロモーターには、認可された計画や不動産プロジェクトの完成スケジュールなどの関連情報を、割当先に開示する義務があります。

一方、割当先は、プロジェクト・プロモーターとの売買契約、および有担保債権者との融資契約に従って支払いを行い、債務不履行の場合は利息を支払う義務を負います。

「Union Bank of India 対 Rajasthan Real Estate Regulatory Authority 他」の件において、最高裁はラジャスタン高等裁判所の判決を支持し、RERAは特別な法律であり、紛争が発生した場合には SARFAESI法の規定に優先するという原則を再強調しました。

ここで重要なのは、最高裁がさらに踏み込んで、有担保債権者である銀行がSARFAESI法の第13条4項の規定に頼る場合、RERA当局者は、銀行に対する住宅購入者からの苦情を受理する管轄権を有するとしたことです。

借入による資金調達

外国の法域からの貸手も、RBIが随時更新する「対外商業借入、貿易債権および仕組債に関するマスター・ディレクション」(ECB枠組み)の対象となります。この枠組みは、融資が自動ルートまたは承認ルートに該当する場合に、借手と貸手が充足しなくてはならない一定の条件を定めています。

それに替えて、外国の貸手や投資家が利用するもう一つのルートは、「2008年 SEBI(債務証券の発行および上場)規則」に従って、上場か非上場かを問わず、インド企業の有担保非転換社債を引き受けることです。

担保権は、非居住インド人(NRI)に代わって担保を保有し、借手のコンプライアンスを監督する責任を負う債権受託者に、有利に設定されます。NRIである引受者は、外国ポートフォリオ投資家としてSEBIに登録されていなくてはなりません。

2021年の法改正に基づき、RBI は「2019年 外国為替管理(債務証券)規則」を改正し、外国人ポートフォリオ投資家(FPI)が、中期枠組みまたは任意留保ルートのもとでREITやインフラ投資信託が発行する負債証券に投資できるようにしました。ただし、FPI が1件の REIT で保有できる投資口の上限は10%とされています。

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日本

民法は日本の不動産に適用される基本的な法律であり、土地と建物の所有権の分離を定めています。所有者は不動産を使用し、そこから利益を得、処分する権利を持っています。アパートやコンドミニアムなど、構造上区分され、複数の所有者により所有される建物の区分所有については、建物の区分所有等に関する法律が規定しています。

不動産の保有については、信託という仕組みも一般的に使用されています。信託では、信託受託者が法的所有者となり、実質的所有者が受益権を保有しますが、これは主に税制上の優遇措置を得ることを目的としています。外資系企業が日本の土地や建物を直接所有したり、信託受益権を保有したりすることは可能です。しかし、外資系企業は、法人税や源泉徴収税などの税務上の問題を考慮し、自己勘定で不動産を購入せず、不動産保有のための手段を確立する傾向があります。

賃借権は一般的なものであり、民法などの法律によって規定されています。賃借権者は一定の法的保護を受けることができます。不動産登記法は、不動産の所有権などの登記手続きを定めており、これには、所有権、不動産の利用に関する権利、担保権などを記録する不動産登記制度が含まれます。

所有権の種類

Hiroshi Niinomi
新家寛
パートナー
西村あさひ法律事務所
東京
電話: +81 3 6250 6523
Eメール: h.niinomi@plus.nishimura.com

民法では、複数の団体や人が共同で不動産を所有することを認めており、この場合の所有権を共有持分権と呼んでいます。共有持分権者は、一定の制限に従い、共有契約に基づいて不動産の利用、管理、変更の方法について合意することができます。

建物の区分所有等に関する法律は、不動産の一部を構造上区分して、一つの不動産として利用することや、区分所有権その他の所有権の対象とすることを認めています。一般に、建物の管理および共用部分に関する規則は、同法に従って定められています。共有持分権や区分所有権を取得する際には、共有契約書やその他の規制を必ず確認する必要があります。

また、主に税務上の理由(取得税や登録免許税など)から、信託受託者と不動産所有者との間で締結される信託契約に基づく受益権という、ある種の所有権を保有することも一般的に行われています。受託者は、他方の個人または団体の利益のために不動産の所有権を保有します。

また、民法は、不動産の利用に関して、賃借権と地上権についても規定しています。借地権は最も一般的なタイプの土地利用権であり、借地借家法が適用されます。同法は、借地人に対する法的保護についても規定しています。たとえば、標準的な賃借契約は、賃貸人に正当な理由があり、賃借人に少なくとも6カ月前に解除の通知をしない限り、解除することはできません。

一方、定期賃借契約は、同法に基づく一定の手続きを満たすことを条件に、正当事由なしに解除することができます。たとえば、賃貸人は、契約の締結に先立ち、賃貸借が更新されない場合の具体的な条件について、書面を交付して説明しなければなりません。

同法は、建物賃貸借の場合は賃借人が建物の占有を取得した時点で、土地賃貸借の場合は建物の所有権が登記された時点で、賃借権が発生すると認めています。登記料が必要となるため一般的ではありませんが、賃借権を登記することもできます。

不動産の所有権や地上権に「根抵当権」を含む抵当権を設定することは可能であり、通常行われています。抵当権が設定されても、必ずしも所有権が移転するわけではありません。当事者は、単純な合意と登記によって抵当権を設定することができます。特に留意すべき点として、抵当権を設定する当事者は、自身が処分権限を有することを確認すべきであることが挙げられます。

抵当権者は、他の債権者よりも先に自身の債権の弁済を受ける権利を持ちます。同一不動産に複数の抵当権が設定されている場合、優先順位はその登記が行われた順序に従います。抵当権は、抵当地上の建物を除き、基本的に対象不動産の不可分の部分を対象としています。

抵当権の実行には、競売によって担保権を行使する担保不動産競売と、不動産からの収益を被担保債権の弁済に充当して担保権を行使する担保不動産収益執行があります。

民事執行法に基づく不動産担保権の行使は、所定の書類がすべて提出されなければ開始されません。

所有権の構造

Koki Hara
原光毅
パートナー
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東京
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外資系企業が日本の土地や建物を直接所有することは可能ですが、会社法に基づいて設立された株式会社(KK)や合同会社(GK)などの日本で設立された法人を通じて所有する方法が一般的です。KKは「stock company(株式会社)」と翻訳されることが多く、一方、GKは通常、「Japanese limited liability company(日本の有限責任会社)」と翻訳されます。

不動産金融市場では、二重課税を避けるため、商法に基づく匿名組合(TK)契約や、資産の流動化に関する法律に基づく特定目的会社(TMK)契約を締結した上で、GKを利用するのが一般的です。

どの構造が適切かを判断するには、規制(特別目的会社の種類や会社の資産の種類に応じて、異なる規制がスキームに適用される)、明確な税務意見書の必要性、管理コスト(TMK構造を使用した場合、コストが高くなる)などの複数の要素を検討する必要があります。TK契約は二重課税の回避を認めていますが、日本の法律には明確に規定されておらず、この点に関する法的見解を示すことは容易ではありません。

GKは、1つの主体を社員とし、1人の個人を職務執行者に任命するだけで設立できるため、ガバナンスの面でより柔軟性と簡易性に優れています。一般社団法人(ISH)では、定款に基づき一旦選任された役員について、株主が変更や選任をすることが認められていません。そのため、株主の介入を受けない会社として、ガバナンスの中立性確保や倒産防止を目的として多く利用されます。

TMKについては、GK-TK構造とは異なり、特別な税務上の取り扱いの要件が税法で明確に規定されています。したがって、これらの要件を充足すれば、投資家は二重課税を回避することができます。TMKは、KKの普通株式と同様の特定株式と優先株式の2種類の株式を発行することができます。

優先株主の議決権には制限があります。資産の流動化に関する法律では、ガバナンスの観点から、取締役1名と監査役1名を置くこと、具体的な資産流動化計画を作成し、当局に提出すること、計画に変更があった場合は報告することが義務付けられています。

法務デューデリジェンス

Naoto Yamamoto
山本直人
パートナー
西村あさひ法律事務所
東京
電話: +81 3 6250 6632
Eメール: na.yamamoto@plus.nishimura.com

不動産所有権の移転または取得は、不動産登記法に従って登記されない限り、第三者に対して主張することはできません。新規取引に関する登記申請書が提出されると、申請手続きが完了するまで登記済証は発行されません。したがって、取引前に対象不動産の登記を確認するのが一般的な慣行です。

登記内容に不備がないことを確認した上で申請しなければなりません。登記簿に記載されていない第三者が真の法的所有者である、あるいは所有権を有していると裁判所が判断するかもしれないというリスクは、わずかであるものの、あり得ます。登記の要件は厳格であるため、このようなリスクが現実になる可能性は低いとはいえ、基本的に法務デューデリジェンスは、リスクを軽減するための十分な方法だと考えられています。したがって、日本では権原保険は一般的ではありません。

法律顧問は通常、現地でのデューデリジェンスを行わないので、地域の規制、建築や建設、環境、都市計画や用途地域、実際の境界に関する事項など、実地のデューデリジェンスが必要な問題は、デューデリジェンスの対象に含まれないことになります。上記の事項を対象とする鑑定書、技術報告書、物件報告書の作成を依頼することもできます。

実務上、顧問弁護士は一般的に、対象不動産に関する重要な契約書、報告書、書類、証明書などを検討し、購入者が当該不動産を取得することを妨げるような重大な問題がないかどうかを確認します。

デューデリジェンスの範囲には、対象不動産の権利関係(売主が所有者であるか、竣工しているか、担保権が存在するか)、テナントと賃貸借契約、不動産に関するその他の契約(不動産管理契約など)、不動産に適用される規制、環境問題、境界、訴訟などが含まれます。

対象物件のコストや特性に応じて範囲は異なりますが、登記事項証明書の確認は不可欠です。報告書などに何らかの問題が見つかった場合には、法律顧問が法的観点から詳細に調査します。

デューデリジェンスは一般的に以下の手順で進められ、最終報告書が提出されるまでに1カ月~2カ月を要します。まず、法務デューデリジェンスの範囲を決定する必要があります。対象物件に関する情報パッケージが、秘密保持契約または意向表明書に従って購入候補者に提供されます。場合によっては、売り手と購入候補者の間で質疑応答の時間が設けられることもあります。購入候補者は、法務デューデリジェンスの結果に基づいて、取引を進めるかどうかを決定します。

Nishimura & Asahi Logo

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Otemon Tower, 1-1-2 Otemachi, Chiyoda-ku
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マレーシア

工業団地への投資

マレーシアは新産業マスタープラン(NIMP 2030)を発表したばかりで、産業開発のリーダーとして国の軌道を推し進め、富の創出への国内連携を拡大し、グローバル・バリューチェーンを強化することを目指しています。

2023年9月1日に発表された NIMP 2030 は、ミッション指向のアプローチを採用し、政府が推進しようとする21の分野を特定しています。

その中には、航空宇宙、電気・電子、デジタル・ICT、食品加工、医療機器、製薬、自動車、製造業、グローバル・プロフェッショナル・サービス、ゴム及びパーム油製品などがあります。

なぜマレーシアなのか?

多くの利点がある中でも、マレーシアは東南アジアの戦略的位置にあって世界につながる経済域であり、広範な地域パートナーシップとグローバルな貿易上のリンクによって補完されています。

Lim Yoke Wah, Halim Hong & Quek 律师事务所
Lim Yoke Wah
パートナー
Halim Hong & Quek
クアラルンプール
電話: +603 2710 3818
Eメール: yokewah@hhq.com.my

ASEANの玄関口であるマレーシアでは、現在、地域間・二国間あわせて14以上の自由貿易協定(FTA)を締結しています。マレーシアはまた、ASEAN加盟10カ国と地域FTAパートナー5カ国が参加する、世界最新で最大の貿易圏である「地域的な包括的経済連携協定」(RCEP)にも署名しています。

マレーシアはビジネスに適した国際的なデスティネーションとしての評判も確立しており、現在、50カ国超から5000社を超える外資企業が進出しています。それらの企業を後押ししているのは、経済および規制上の枠組みと、競争力のあるビジネスの迅速な確立を保証する積極的な支援政策です。

この強固な金融インフラ、円滑なビジネス・エコシステム、有利なビジネス促進政策を活かして、マレーシアは著名な多国籍企業の地域的・世界的ハブになっています。その中には、ファーウェイ、ネスレ、インテル、シャープ、ブラウン、フォルクスワーゲン、BMWといった世界的な製造大手も名を連ねています。

マレーシアには、自由貿易を促進し、主要なビジネス・インセンティブを提供する、有利なインフラと投資規定を備えた5つの経済回廊があります。すなわち、イスカンダル・マレーシア、東海岸経済地域、北部経済回廊地域、サバ開発回廊、およびサラワク再エネ回廊です。

インフラとコネクティビティ

マレーシアはまた、特定工業団地、専門工業団地、自由工業区など500を超える工業団地を有しており、インフラストラクチャーの継続的な開発とアップグレードに取り組んでいます。これらを補完しているのは、通信技術の拡大、高速道路網の成長、効率的な港湾、そして定評ある国際空港です。

クラン港とタンジュン・ペレパス港(PTP)は、世界海運評議会による世界のコンテナ港トップ20にランクされており、クラン港は12位であり、また PTP は地域の積み替えのハブになっています。

6カ所の国際空港のほかに、16の国内空港、18の飛行場があり、増大する旅客需要に対応し、主要な貿易と航空のルートを支えています。

教育と訓練

Zach Shaw Ke-Wei, Halim Hong & Quek 律师事务所
Zach Shaw Ke-Wei
ビジネス開発ディレクター
Halim Hong & Quek
クアラルンプール
電話: +603 2710 3818
Eメール: zach.shaw@hhq.com.my

マレーシアは教育に多大な投資を行っており、教育への公的支出総額のGDP比は、アセアン諸国中でトップです。産業界で即戦力になる人材の育成に向けた政府の努力は、INSEAD大学、グーグル、アデコがまとめた「グローバル人材競争力指数 2022」において、同国が133カ国中45位に順位を上げたことにも反映されています。

民間分野向けの産業訓練も、人材育成基金(HRDF)によって促進されています。この基金に拠出している製造業やサービス業の会社は、自社の労働者の訓練費用を負担する助成を受けることができます。

さらに、人的資源省の下にある国家職業訓練評議会は、すべての訓練提供者のために、職業訓練および産業訓練プログラムの包括的システムの計画と開発のコーディネーションにあたっています。

同評議会はまた、国家職業技能基準(NOSS)の開発も継続しており、これまでに800を超える修了証書、卒業証書、高度卒業証書の資格を取り扱っています。

法規

工業用や製造業用不動産の所有権と取引の記録には、トーレンス制度が採用されています。所有権の登録は、その文書に名前が登録されている所有者に対して保証されます。外国人所有地が国内法によって「工業」のカテゴリーに該当する場合、その土地は工業目的にのみ使用されなくてはなりません。

具体的には、工場、作業場、鋳物工場、倉庫、埠頭、桟橋、鉄道、その他の建物、設備の建設・維持管理であり、それらが製造、製錬、発電または配電、物品または商品の組立・加工・保管・輸送または流通、その他、国家当局が定める目的の一つ以上に使用または関連するもの、と指定されています。

土地の開発を計画している所有者は、その使用が、国家当局によって課されたカテゴリー、明示的条件、黙示的条件、利益制限に違反しないことを確認する必要があります。

一方、「1976年 都市および国土計画法」は、都市および国土計画を管理・規制しています。計画の許可を得ていない開発は、許されません。

「1974年 環境品質法」は、公害を防止、軽減、管理し、産業および非産業活動から生ずる潜在的な廃棄物や汚染物質から、環境を保護します。

「1975年 産業調整法」は、製造業の秩序ある発展のための調整を行い、製造活動に許可を与えるものです。

外国人による土地取得

不動産を取得しようとする場合、外国人投資家は以下を考慮することが推奨されます。

その土地の所在する州によって、最低基準価格が定められています。他の要件を満たす前に、該当する州の最低基準価格を必ず確認してください。

その閾値(threshold)は、不動産購入の最低価格が各州によって定められていることも意味します。外国人に対する閾値は州によって異なり、州当局者が適切と考える状況に応じて、随時改定されます。

一例として、外国人がクアラルンプールで土地を取得する際の最低基準額は、現在、100万マレーシア・リンギ(21万3000米ドル)です。

国の同意も必要で、それは国内法第433B条に規定されています。外国人購入者は、指定弁護士を介して申請書と手数料を提出する必要があります。

州当局はすべての書類を審査した上で承認を付与しますが、非マレーシア人の購入者に対しては、承認の条件として一回限りの税を課すこともあります。このような課税は現在、ペナン州、マラッカ州、パハン州、ジョホール州で課せられており、税率は各州で異なり、また随時改定されます。

価値が2000万リンギ以上の不動産を直接取得し、その結果ブミプトラ(先住民)利害関係者、および/または政府機関が保有する不動産の所有権が希釈化する場合、それらすべての不動産取得については、経済計画ユニットの承認が必要となります。この要件は、非ブミプトラ利害関係者が株式取得を通じて間接的な不動産取得を行い、その結果として、ブミプトラ利害関係者、および/または政府機関の所有する会社の資産総額の50%超を所有することで支配権の異動が生じ、かつその不動産価値が2,000万リンギを超えるようになった場合にも、適用されます。

リースおよび借地権

国内法では、「登記が免除される借地権」を3年を超えない期間の借地権と定義し、リースの場合は3年を超えるが、土地の全部については最長99年、土地の一部については最長30年に制限するとしています。

占有の自動的な保証はありませんが、当事者は、期限満了前にリースまたは借地権を更新するための行使可能なオプションについて交渉し、合意することができます。

登録リースは、所定の書式によって登記しなくてはなりません。不動産や土地のリースを希望する外国人は、国の同意を得る申請を行う必要があります。

要点

マレーシアは、東南アジアにおける戦略的立地にあってグローバル経済とつながり、多数の貿易協定を締結しており、ビジネス環境も友好的であることから、工業団地への投資に数多くのメリットがあります。

強固な金融システム、協力的な政策、そして多国籍大企業の存在は、産業投資の一大デスティネーションとしての同国の地位を裏付けています。

マレーシアは先進的なインフラや卓越したコネクティビティ、そして教育と産業訓練へのコミットメントを大切にしており、投資家は熟練した労働力と一流の物流機能を確保することができます。

このようなダイナミックな状況にあって、マレーシアはチャンスが集まる所へと導く灯台であり、投資家がその野心的な工業用不動産の新規開拓に参加するよう招いているのです。

投資家には、法と規制を遵守することにより、この国の産業変革において自らの地位を確保し、この国の成長と繁栄に貢献するとともに、本当に「本当のアジア(Truly Asia)」の体験を享受していただくことができます。

Halim Hong & Quek

HALIM HONG & QUEK (HHQ)

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電話: +603 2710 3818

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