特許制度の比較:中国

    By Yuan Yue、中国国際貿易促進委員会特許商標事務所
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    最近、中国最高人民法院(SPC)が知的財産訴訟の管轄に関する新たな規定を発表し、こうした訴訟の管轄がさらに複雑になりました。この規定によって、あらゆる知的財産訴訟の管轄規定が包括的に整備されるわけではなく、これまでのその他の規定が改正されるにすぎません。従って、この規定を読むだけでは、各訴訟の具体的な管轄を明確に理解できない可能性があり、過去の規定と組み合わせて解釈する必要があります。

    SPCは4月に「知的財産民事・行政訴訟の第一審の管轄に関する規定(Provision on the Jurisdiction of Intellectual Property Civil and Administrative Cases of First Instance)」および「知的財産民事・行政訴訟の第一審に係る基層人民法院の管轄に関する基準の印刷・配布に関する通知(Notice on Printing and Distributing the Standards for the Jurisdiction of Primary People’s Courts Over Intellectual Property Civil and Administrative Cases of First Instance)」を公布し、5月1日に施行しました。本稿では、特許訴訟の管轄の変更に焦点を当てます。

    Yuan Yue
    Yuan Yue
    弁護士
    中国国際貿易促進委員会特許商標事務所(北京)
    電話:+86-10-66046479
    Eメール: yuany@ccpit-patent.com.cn

    本規定の第1条では、発明特許の所有権・侵害についての紛争、実用新案特許、植物新品種、集積回路配置設計、技術秘密、コンピュータ・ソフトウェア、独占権に関する紛争といった7種類の特殊な訴訟について定義しています。これら7種類の民事・行政訴訟の第一審は、知識産権法院、省・自治区・中央政府直轄市の政府所在地にある中級法院、およびSPCが指定する中級法院の管轄となります。法律に知識産権法院の管轄に関する規定がある場合は、その規定が優先されます。

    実際、同規定の施行前は、いくつかの基層法院が短期間、特許紛争を管轄していたことを除けば、これら7種類の訴訟の管轄は、同規定に記載されているものと実質的に同じでした。同規定の施行前は、意匠特許の所有権・侵害についての紛争や知財契約紛争もこの7種類の訴訟と同じ管轄区分でした。同規定の施行後は、これらの紛争の管轄は、他の中級法院や基層法院に拡大されました。

    これは、昨年9月にSPCが打ち出した「四審制審理レベル機能の位置づけ改善のための改革計画(Reform Plan on Improving the Positioning of Trial Level Functions of Four-Level Courts)」において、中級法院と基層法院の機能をさらに向上させるという中央政府の要求に応えたものです。

    具体的には、同規定の第2条において、意匠特許の所有権・侵害についての紛争の民事・行政訴訟の第一審の管轄は、知識産権法院に加えて、すべての中級法院に拡大されることになりました。従って、将来的には、北京、上海、広東、海南など、すでに知識産権法院がある地域を除き、その他の地域では中級法院が、第一審の意匠特許民事・行政訴訟を管轄することができます。

    また、同規定では、SPCの承認を得て、基層法院が、第一審の意匠特許民事訴訟を管轄できると定められています。どの基層法院が承認されるかについては不明ですが、最初に承認される基層法院には、北京の海淀区人民法院が含まれる可能性が高いと思われます。

    北京知識産権法院は、知的財産権の再審査審決および無効審決に対する上訴に関する行政訴訟を多く引き受けており、その訴訟件数は他の知識産権法院や裁決機関よりはるかに多いため、一部の訴訟を基層法院に移管することが急務となっています。また、海淀区人民法院は、実用新案特許および意匠特許紛争を審理するパイロット裁判所として2011年にSPCに承認されましたが、これについては2014年の北京知識産権法院の設立に伴い終了しました。従って、海淀区人民法院は意匠特許民事訴訟を審理することができますが、実際に審理することになるかどうかはまだ不明です。

    同規定の第3条には、第1条および第2条に定められている以外の知的財産民事・行政訴訟の第一審は、SPCが決定した基層法院が管轄すると記載されています。第1条および第2条で定められている以外の特許訴訟には、主に契約に関する紛争があります。これまでは、特許契約に関する紛争にも集中管轄が必要でしたが、今後は指定された基層法院が管轄することになります。本条に定められているように、SPCが決定する地方の基層法院については、付属通知書に詳細を記載します。

    北京や上海だけでなく、他の地域の基層法院でも、こうした訴訟の管轄において訴訟対象件数の上限が設定されていることに注意すべきです。地域によって基準が異なるため、詳細については通知書をご参照ください。上限を超える訴訟、ならびに国務院の部局、県級以上の地方自治体、および税関の行政行為に関わる訴訟は、同規定の第2条2項に従い、中級法院が管轄するものとします。

    各地の高級法院が知的財産訴訟の第一審を管轄する基準については、2017年に公布された関連規定で決定されているため、同規定では言及されていません。2017年の規定に準じ、また同規定に定められている発明特許に関する契約上の紛争事件やその他の契約上の紛争が基層法院の管轄であるという事実を考え合わせると、高級法院が知的財産民事・行政訴訟の第一審を管轄する具体的な基準は以下の通りです。

      1. それぞれの管轄に重大な影響を及ぼす知的財産民事訴訟、および主要かつ複雑な知的財産行政訴訟の第一審
      2. 「上述の7種類の訴訟」の第一審のうち、訴訟対象額が2億元(3000万米ドル)以上のもの、もしくは訴訟対象額が1億元以上で、外務、香港、マカオ、台湾、または管轄外の当事者に関わるもの
      3. 訴訟対象額が50億元以上のその他の一般的な知的財産民事訴訟

    上記の分析から、特許訴訟に関して、以前の規定から最新の管轄規定への主な変更点は、意匠特許の所有権・侵害についての紛争を管轄する中級法院が追加されたこと、また契約上の紛争に関する訴訟が基層法院の管轄に移管されたことであると分かります。

    詳細な検討

    こうした変更は、これまで集中管轄権を持っていた裁判所にどのような影響を与えるでしょうか?訴訟数が減少すると、これらの裁判所の審理サイクルは大幅に短縮されるのでしょうか?

    現状に関する限り、同規定は取扱件数を減少させるという点において中級法院にプラスの影響を与える可能性があります。しかし、意匠特許の所有権・侵害についての紛争は現在も知識産権法院の管轄であり、訴訟全体のごく一部にすぎない契約上の訴訟件数のみが減少するため、知識産権法院に与える影響は大きくありません。

    上海知識産権法院が発行した「上海知識産権法院知識産権司法保護状況白書(the white paper on Judicial Protection of Intellectual Property in Shanghai Intellectual Property Court)(2021年)」によると、同年の訴訟受理件数は5432件で、そのうち契約上の訴訟は10.5%の572件でした。北京知識産権法院の場合、管轄変更が与える影響はさらに少なくなっています。

    2021年の訴訟受理件数は約3万件で、そのうち契約上の訴訟が占める割合はわずか約1.7%の500件ほどにすぎません。よって、契約上の訴訟を基層法院に移管したとしても、各知識産権法院の取扱件数に大きな影響は与えないでしょう。

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