アジアの商標法の比較: ベトナム

    By ヌエン・アン・チュアンとトリ・ヌエン, Bizconsult
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    グーグル、テマセク、ベイン・アンド・カンパニーが毎年発表している共同調査報告書「e-Conomy SEA」の最新版によると、ベトナムのデジタル経済は東南アジアでも群を抜いたペースで成長していて、2025年には490米億ドルに達すると見込まれる。こうしたインターネット経済と貿易の急成長に伴う変革に伴い、知的財産法を含む政府の政策と法環境の見直しと刷新が求められている。

    過去16年を振り返ると、知的財産法は、ベトナムの社会経済的な発展を促し、同国における知的財産の創出と保護のための幅広い強力な法的手段を作り出す上で、大きな役割を果たしてきた。

    2023年1月1日に発効した知的財産法は、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)と、EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)に準じた知的財産権の保護を目指して、知的財産権保護に関する従来規定を援用するとともに、「インダストリー4.0」時代に備えるために改定され補完された。

    指針の明確化

    ヌエン・アン・チュアン
    マネージングパートナー
    Bizconsult(ハノイ)
    電話: +84 90 340 4242
    Eメール: tuanna@bizconsult.vn

    ベトナムの知的財産法を、CPTPPおよびEVFTAが定める国際的な保護基準に沿った内容にするための取り組みの一環として、ベトナムは、2023年1月14日以降、音商標の登録出願を受理し始めた。ベトナムがこの種の非伝統的商標の登録を認めるのは、これが初めてとなる。音商標を登録出願するには、伝統的商標の登録出願に必要となる文書に加えて、音声ファイルと音商標のグラフィック表示を添付しなければならない。

    改正知的財産法の下で周知商標は、ベトナムの領土全域にわたって、関係する市民に広く知られている商標として再定義された。この定義は、知的財産法第75条、および他の国際的な規則が定める周知商標の基準体系と一致する。この再定義により、周知商標は全消費者に広く知られている必要があるとする、旧知的財産法の定義が修正された。加えて、第75条に定める基準の一部または全部を満たす場合、周知商標と認められる。

    悪意を理由に商標の登録出願が却下されるか、または登録抹消となる可能性が明確に認められた。ただし、改正知的財産法第96条および第117条に記された悪意の定義を、明確にする必要がある。

    さらに改正法では、登録出願を却下できる2つの事由が新たに追加された。商標は、商品固有の形状であるか、その商品の技術的特徴によって定義される商標である場合、または著作者の承諾を得ずに著作物の複製を含む場合、商標として保護する対象とみなされない場合がある。

    実用的で具体的な指示

    改正法では、「著作者」「共同著作者」という言葉の法律的な定義が改められた。その結果、著作者とは、著作物を直接に創造した者をいい、共同著作者とは、二人以上の者が、その者の寄与を組み合わせて完成した著作物を作り出す趣旨で、著作物を直接に創作した場合における著作者の一人を指す。

    他人の著作物の創作中において、その者を支援し、意見を交換し、または資料を提供した者は、著作者または共同著作者ではない。

    トリ・ヌエン
    アソシエー
    Bizconsult(ハノイ)
    Eメール: lynn@bizconsult.vn

    改正法は、ロイヤリティ、権利管理情報、公衆へのコミュニケーションを含む新たな定義を定めるとともに、知的財産法の従来条項との整合性を確保するための他の定義の改定(すなわち、二次的著作物、公表著作物、録音、録画、複製など)も行っている。

    改正法は著作者に、著作物に関連する財産権を譲り受けた組織または個人に、著作物を命名する権利を譲渡することを認めている。

    また知的財産法は、旧条項に記載された複製物の作成と使用に沿って、著作権および関連する権利の侵害に対して、一定の例外も定めている。第25(a)条はそれ以外にも、障がい者、障がい者の養護者、および法が定める障がい者の利益のために設立され運営される権限ある組織に対して適用される、著作権侵害に対する一定の例外を認めている。

    これらの例外は、障がい者に配慮した法律の策定、および著作権保有者と著作物を入手し活用する組織や個人の利益の調和を目指すものである。

    知的財産の侵害を特定して、知財分野の紛争解決において著作権侵害に対処する仕組みを強化するために、著作権および隣接権の侵害に関する条項がさらに改正され、明確化されている。

    改正法によると、通信事業者は、インターネットおよび電気通信ネットワーク上での著作権と隣接権の保護に関連して、法的責任を負う。

    例えば通信事業者は、著作権と隣接権の侵害行為を防止するために、確認、監視、情報処理および連携の体制を整備しなければならない。加えて通信事業者は、一定の場合において責任を免除される。

    改正知的財産法の細則となる関連政令は、旧知財法の一定の条項の施行細則を定めた、2018年の政令22号に取って代るものである。現在、この新たな政令の第3案が公表されており、2023年に正式に発表される予定だ。

    特許に関する規定の強化

    秘密の発明と安全保障に関する特許管理に関連する規則は、以前は、知財法実施の細則である2010年の政令122号およびこれを補足する2006年の政令103号で定められていたが、今回初めて改正知的財産法に正式に盛り込まれた。

    この展開を受けて、特にベトナムで発明を利用する意向がない企業の場合、海外での早期出願が促されるだろう。

    改正知的財産法には、発明の公表に関する条項があり、これに該当する発明は新規性を持たないとみなされる。具体的には、発明登録出願の出願日前または優先日前に別の特許出願が提出されているが、当該出願日またはその優先日以降に公表された場合、その発明は新規性があるとみなされない可能性がある。

    改正法では、登録特許の全部または一部の取消を行える一定の例を示すことにより、特許権による保護の取消を明確に定めている。この改正により、関係当事者は、特許権による保護の取消を求める権利を行使しやすくなった。

    工業意匠

    改正知的財産法は、EVFTAに準じて、複合製品の組立部品の外観、およびその製品または複合製品を使用する際に見える外観を追加することで、工業意匠の定義を改正している。

    新たな知財法で見落としてはならない工業意匠登録の重要な改正点は、今回初めて、出願人が出願時に延長の申立てを正式に提出した場合、登録出願の公開を出願日から最大7カ月まで延長できるようになったことである。

    展望

    改正知的財産法は、いくつかの点に関しいまだ曖昧で不明確であり、4つの政令と2つの通達を含む知財関連の細則の改正、修正または差替えを行う必要がある。とはいえ、改正知的財産法に基づく修正と補足によって、ベトナムは国際条約や一般的な慣行をおおむね遵守した状態になっており、これは歓迎すべきことである。

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