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この数年間、世界中で非代替性トークン(NFT)が熱狂的な関心を集めています。インドでも、NFTの人気と価格は飛躍的に高まっており、NFTに付随する法的問題も急激に増大しています。本稿では、これらの問題の一部に光を投げかけています。

Manisha Singh LexOrbis
Manisha Singh
創業者兼パートナー
LexOrbis(在ニューデリー)
電話: +91 98 1116 1518
Eメール: manisha@lexorbis.com

まずNFTの基本について説明します。NFTはブロックチェーンを基盤とするトークンで、基礎となる資産に紐づけられた固有のIDが付与されており、複製や改ざんを行うことはできません。NFTとして取引されている作品の大半は、写真、芸術作品、ビデオクリップなどです。

NFTに関連して、この種の作品の著作権に対する侵害が広範に生じていますが、それには2つ種類があります。一つは、NFTの制作者や販売者による無許可のミンティングや発行です。もう一つは、購入者による無許可の複製や販売です。

この問題の根深さは、世界最大のNFT取引市場のOpenSeaが、今年初めに、無料出品ツールの利用制限に関する声明を公表したことからも、見て取ることができます。その声明によると、「このツールを使用して制作された作品の80%超が、盗作、偽造コレクション、スパムだった」のです。

しかし、NFT制作者やプラットフォーム利用者の反発を受けて、この機能は元に戻されることになりました。その結果、偽造NFTコレクションは依然として、市場に溢れるほど出回っています。

現行の法令の適用領域外

このような侵害は、従来とは異なる形態を取っているとはいえ、インドの現行の著作権法の対象になります。1956年インド著作権法第14条では、原作の著作権所有者が、複製や改作を制作する権利を含む諸権利すべてを保有すると定められています。

著作権のある作品をNFTとしてミンティングまたは発行し、購入できる状態にすることは、その作品の複製を制作し、それを買い手または潜在的な買い手に伝えることを意味します。著作権所有者の許可または承認がない場合、このような行為は無許可の複製および販売となるため、著作権法第51条に基づく著作権の侵害に該当します。

NFT購入者による侵害という点から見れば、それと知らずに侵害している場合が多いといっても過言ではないでしょう。一旦NFTを購入すれば、基礎となる資産やIPも購入者が所有することになるという理解に基づいて購入が行われることがよくあるのですが、その理解は誤っています。

NFTを購入しても、基礎となるIPが合意書面により譲渡されない限り、購入者は自動的にIPを取得するわけではありません。NFT購入者が基礎となるビデオクリップや芸術作品の複製を作成し、商業的用途に供している場合、自身が取得したのはIPではなく、原作の署名付きの複製または受領書であるメタデータ・ファイルに過ぎないことを認識していません。

待たれる裁判所の判断

Simtrat Kaur, LexOrbis
Simtrat Kaur
アソシエイトパートナー
LexOrbis(在ニューデリー)
Eメール: simrat@lexorbis.com

この領域で生じている侵害の性質が特異であるため、裁判所がこの問題をどのように捉え、新たに出現した事象に現行の法令をどのように適用するのかを見定める必要があります。

インドではまだ、NFTに関連する著作権侵害や商標権侵害について、裁判所は判断していません。しかし、他の司法管轄で提起されている訴訟を、参考にすることができます。最初に思い浮かぶのは、米国で起こったエルメスが関わる紛争です。2022年初め、フランスの高級ファッションブランド、エルメスが、ロサンゼルス在住のアーティスト、メイソン・ロスチャイルドを提訴しました。この訴訟においてエルメスは、彼が「メタバーキン」という名称の、同社を象徴する商品である「バーキン」バッグに、極めて類似するNFTを制作したと主張しました。エルメスは、この行為はオフラインの世界(仮想世界ではない現実の世界)での偽造と同じであり、このアーティストは実際の偽造品の販売で利益を得た場合と同様に、NFTの販売により数千ドルの利益を得たと申し立てました。

裁判所の決定はまだ下されていませんが、その決定は、メタバースでの侵害の捉え方について多大な影響を与えることになるでしょう。

アジアでも画期的な動きが見られます。中国の裁判所が初めて、NFTに関連する著作権侵害訴訟で判決を下したのです。「fat tiger」のイラスト・シリーズの著作権所有者であるShenzhen Qice Diechu Cultural Creativityが、BigverseというNFTデジタルアート取引市場の運営者であるHangzhou Yuanyuzhou Technologyを訴え、そのプラットフォームの利用者が、問題となった著作権を有する作品と同一のデジタル作品のNFTを、制作・販売したと主張しました。

原告は、そのNFTプラットフォームには著作権侵害への寄与という罪状があると主張しました。裁判所は原告に有利な判決を下し、プラットフォームに対し、損害賠償の支払いとともに、このNFTへのアクセスを遮断するか、譲渡できなくすることを命じました。

インドでも、侵害への寄与についての責任が著作権法に規定されています。しかし、2000年情報技術法第79条は、利用者の行為に対する仲介者の責任をすべて免除しています。NFTプラットフォームに関しても、仲介者の立場にあり、免責条項の対象になるという主張が認められる可能性が高いとみられます。

デジタルNFT取引市場では、売り手と買い手は暗号通貨を用いてNFTトークンを売買します。従って、このような市場は、NFT資産の買い手と売り手の間で仲介者の役割を果たす、オンラインプラットフォームなのです。

デューデリジェンス

しかし、第79条に基づく保護を得るためには、仲介者は、デューデリジェンス上の義務の一部を履行する必要があります。仲介者は、自身のプラットフォームが違法行為を助長するために悪用されていることを認識した場合、合理的な注意を払い、迅速に措置を講じなければなりません。

2021年の情報技術規則(仲介者ガイドラインおよびデジタルメディア倫理コード)に規定されている措置を実施、または遵守しなかった場合、寄与者または助長者として、利用者の行為の責任を問われる可能性があります。

アマゾンやフリップカートなどの電子商取引プラットフォームや、YouTubeなどの娯楽プラットフォームはすべて、この措置を実施しています。従って、NFTプラットフォームも同様の措置を講ずるべきです。NFTはブロックチェーンを基盤としているという特質があるため、固有の問題が生じるかもしれません。しかし、デューデリジェンスに不備があった場合の主要な責任と義務は、他のプラットフォームと変わりません。

コンテンツの提供のみを行っているオンラインプラットフォームとは異なり、NFTプラットフォームはNFTを制作するための技術を提供し、売買の際にスマート契約を自動生成していることに、留意する必要があります。つまり、コンテンツに関して果たしている役割は、受動的なものではありません。電子商取引プラットフォームと同様に、権利侵害に当たるコレクションの存在を認識していながら削除しなかった場合に、責任を負わせることが不可欠です。

口座認証システムや「コピーミント(真正なNFTコンテンツの複製を作成すること)」を特定、除去、防止するための、何らかの自動システムを備えていなければ、十分に整備されたデジタルプラットフォームとは言えません。一例を挙げると、OpenSeaはそのようなシステムを導入しています。OpenSeaのウェブサイトには次のような記載があります。「当社は、コンピュータービジョン技術を用いる、新しいコピーミント防止システムにより、OpenSea上にあるすべてのNFT(新たにミンティングされたものも含む)をスキャンします。このシステムにより、スキャンしたものを真正なコレクションと照合します。まず、コピーミントが最も多いコレクションから着手し、原作を反転・回転させたり、配置を変更したりしただけのコピー作品を検出します。今後数カ月にわたり、この機能を拡充するとともに、モデルの訓練を継続し、検出能力を向上させていきます」

当プラットフォームには、さらに以下のような記載もあります。「当社のユーザー保護チームはプラットフォームを怠りなく監視し、発見次第、あるいはユーザーからの報告があり次第、不正コンテンツを除去しています」

仲介者規則のデューデリジェンス条項に関する申し立てに対処するためには、すべてのNFTプラットフォームが、このような措置を講ずる必要があります。これを怠った場合には、侵害に寄与した責任を問われるべきです。

商標の保護?

特に商標に関しては、ニース分類の第9類への登録がNFTにおける商標保護の前提条件とされるべきか、という別の問題が浮上します。

例えば、靴を販売するブランドが、自身のブランドのために第25類の登録を行った場合、このブランドの名前を表示した同じような外見の靴の画像をミンティングしたNFT制作者に対して、権利侵害を主張できるでしょうか。もしできないとしたら、メタバースで自社のブランドを保護しようと望む企業やブランドはすべて、第9類に自社のブランドを登録するよう期待されていることになります。

第9類に自社のブランドを登録したとしても、メタバースで仮想商品のブランドが実際に使用されていることを示せない場合、5年が経過した後に、どのようにしてそれを維持すればいいのでしょうか。理想を言えば、第9類への登録を義務付けるべきではなく、複数の類に関連する要因が考慮されるべきです。しかし、裁判所がこの点をどう判断するかは、まだ明らかではありません。

著作権のあるコンテンツについて、著作権所有者が何らかのデジタルな用途のために、ライセンシーにライセンスを付与した場合、そのライセンスにNFTミンティングが含まれていること、または含まれていないことを、契約で明示的に規定し、ライセンシーが契約の曖昧な、または広範な文言や条項を悪用しないようにすることが重要です。

説明責任が鍵

上記の例が提起する問題や疑問は、ほんの一握りにすぎませんが、NFTの人気が高まるにつれて、さらに多くの新たな問題が現れるでしょう。

侵害に該当する行為についての世間の認識を高めることで、事態を大きく改善できるかもしれません。少なくとも、それと知らずに行われる権利侵害を食い止めることはできるでしょう。しかし、NFT偽造問題に対する、何らかの現実的な解決方法を最終的に得るためには、YouTubeやアマゾンなどの他の仲介者の例に倣い、NFTプラットフォームに説明責任を負わせることが必要でしょう。なぜなら、著作権所有者が、個々の侵害者を追跡し、それぞれを追及することは、実質的に不可能だからです。

LexOrbis

LexOrbis
709-710 Tolstoy House
15-17 Tolstoy Road
New Delhi – 110001, India
電話:+91 11 2371 6565
Eメール: mail@lexorbis.com

www.lexorbis.com

日本

日本の非代替性トークン(NFT)市場は2021年初めに出現しました。その後、数多くの企業がこの成長と拡大を続けるビジネスに参入しています。日本にはアニメ、漫画、ゲームなどの国際的に競争力のあるIPが豊富なこともあり、これらの分野におけるNFT関連ビジネスは極めて活発になっています。また、スポーツの分野でも多くの企業がNFT関連ビジネスを立ち上げています。

Masakazu Iwakura, TMI Associates
岩倉正和
シニアパートナー
TMI総合法律事務所(在東京)

一方、現行の法規制の中には、新たにNFT関連ビジネスを始める際の障害になっているものがあります。本稿では、Asia Business Law Journalの2021年9月/10月号に掲載された「非代替性トークン(NFT)を取り巻く規制の比較」のうち、日本の法令におけるNFTの位置付けについて、その後の進展を概説します。

前回記事の掲載以降、NFTに関する新たな法規制は制定されておらず、また政府によるガイドラインなども発信されていません。しかし、国会議員や関連業界団体において、プロジェクトチームがいくつか結成され、現行の法規制に関して既に生じている問題や今後生じる可能性のある問題についての調査、法的解釈の整理、法改正の必要性の政府への陳情が行われています。

本稿では、日本におけるNFT関連ビジネスにおいて現実に問題となっている2つの重要な法的論点を取り上げ、議論の進捗状況を説明するとともに、解決に向けての指針を示します。

賭博に関連する法令違反

まず、日本の刑法では、賭博行為(偶然の勝敗により財物の得喪を争う行為)は一切禁止されており、賭博行為を行った者には刑罰が科される可能性があります(刑法第185条)。

世界中で人気が高まっている関連ビジネスの1つに、「NFTのランダム型販売」があります。例えば、NFTデジタルトレーディングカードを販売する際、企業は、通常、複数のNFTをランダムに組み合わせてパッケージを作成します。購入後でなければ、パッケージの内容を知ることはできません。

Atsushi Igarashi, TMI Associates
五十嵐敦
パートナー
TMI総合法律事務所(在東京)

しかし、このようなNFTのランダム型販売において運営者が二次流通市場を形成した場合に、賭博罪を構成するか否かについて議論が生じています。

議論となっている理由は、一次流通市場でパッケージとして購入されたNFTが、二次流通市場でより低い価格で取引された場合を考えてみれば明らかです。この場合、購入者は一次流通市場で実際に支払った価格よりも価値の低いNFTを取得したと考えられ、購入者は差額に相当する財物を失したとみなすことができます。このような懸念により、多くの企業が二次流通市場を伴うランダム型NFT販売の開始を躊躇している現状がありました。

この問題に関して法律の専門家の多くが強く示唆している見解は、二次流通市場の利用者によってなされる価格形成は、一次流通市場の販売者によってなされる販売価格の形成から分離した状況に基づいているため、一次流通市場の利用者が取得したNFTの価値を算定する際に二次流通市場の市場価格を考慮するべきではないというものです。

従って、NFTをランダム型で販売する際に二次流通市場を併設することが賭博罪に該当すると評価されるべきではありません。こうしたなか、2022年10月12日に、多数のコンテンツ関連企業が加盟する業界団体である一般社団法人Japan Contents Blockchain Initiativeが、他のブロックチェーン関連業界団体と連名で、ランダム型NFT販売に関する業界ガイドラインを公表しました。

このガイドラインでは、販売者が二次流通市場において販売価格や再販価格を設定せず、かつ、自らNFTを購入または再販しない限り、販売者が自ら二次流通市場の運営及び管理を行うことには問題がなく、賭博罪には該当しないとの見解が示されています。

また、同ガイドラインには、一次流通市場においてランダム型販売に加えて個別の販売も行う場合には、ランダム型販売の販売価格は、出現するNFTについて個別販売時に設定された販売価格の最低価格を超えてはならないとも記載されています。ガイドラインのこのような記述は、業界団体の見解に過ぎないため、実際にこの種のビジネスを運営するにあたっては、注意深く検討する必要があり、この点についての規制当局による公式見解の提示が待たれます。

とは言え、このようなガイドラインの公表は、二次流通市場を併設したNFTのランダム型販売に向けて事業運営者を後押しするものであり、日本のNFT関連ビジネスのさらなる発展の契機になると考えられます。

預託サービス

次に、現在、プラットフォーム上におけるNFT取引は、その大半が暗号資産により支払いが行われています。そして、プラットフォーム上の利用者間のNFT取引の安全性を確保するために、プラットフォーム事業者がエスクローサービスを提供することが求められています。

Daizo Takayama, TMI Associates
高山大蔵
アソシエイツ
TMI総合法律事務所(在東京)

すなわち、(取引の安全性のために)プラットフォーム事業者は、単に取引を仲介するだけではなく、販売者のために購入者から代金を受け取り、NFTの引き渡しの確認後、販売者に代金を送付するサービスを行うべきであるということです。このようなエスクローサービスは、例えばE Commerceなどにおいて、既に日本で活発に行われています。

しかし、暗号資産に関してエスクローサービスを提供しようとする場合、プラットフォーム事業者は、購入者からの受領と販売者への送付の間、暗号資産を管理することになります。この行為は、資金決済法に規定された「他人のために暗号資産の管理をすること」という定義に該当する可能性があります。そのため、同法に従い、暗号資産交換業者としての登録を受ける必要があるのではないかが問題となります。

しかし、日本において暗号資産交換業者として登録を受けるためのハードルは極めて高く、財政基盤、管理体制、コンプライアンス体制の整備を含め、様々な要件が課されます。したがって、プラットフォーム事業者の主要事業が暗号資産交換業ではない場合、この登録を受けることは必ずしも容易ではありません。この問題は、利用者間のNFT取引の安全性確保にとって明らかに重大な障害となっています。

この点、現在E Commerceにおいて提供されている金銭のエスクローサービスに関しては、プラットフォーム事業者が一時的に金銭を管理することは、実質的には販売者に代金を送付するという自身の義務を履行するための準備行為に過ぎず、したがって他人のためにする金銭の管理とはみなされません。つまり、この行為は、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律により禁じられている「預り金」ではないことになります。

これを踏まえ、多くの法律の専門家は、金銭のエスクローサービスと暗号資産のエスクローサービスにおいて、異なる取扱いをするべきではないと考えています。また、利用者間のNFT取引においてプラットフォーム事業者が提供する暗号資産のエスクローサービスは、他人のための暗号資産の管理とみなされるべきではないと示唆しています。従って、このようなサービスの提供のために、暗号資産交換業者としての登録を受けることを要件とするべきではありません。

もっとも、暗号資産の保管に関しては、金銭の保管と比較して流出のリスクが高く、またマネーロンダリング防止のためにより慎重な対策が求められることから、一定のガイドラインが必要だと考えられます。これを受け、2022年4月に、国会議員の有志メンバーがNFTに関するホワイトペーパーを公表し、暗号資産交換業を主管する金融庁に対し、この点に関するガイドラインの策定を要請しました。各事業者においては、今後の金融庁によるルール策定の進展を見守ることを推奨いたします。

結論

NFT関連ビジネスの拡大に伴い、その成長を阻害し得る問題が、上記の関心を集めた2つの法的論点の他にも多数生じています。

現行の法規制の枠組みを適用する際にNFT関連事業をどのように捉えるべきか、また、新たな法規制を制定するべきかという問題についても活発な議論が交わされており、現在日本政府の重要な検討事項にもなっています。

市場参加者は、日本の法規制の直近の動向に留意する必要があり、そして豊富な専門知識を備えた弁護士に助言を求めることが必要です。

TMI Associates

TMI Associates

23/F, Roppongi Hills Mori Tower
6-10-1 Roppongi, Minato-ku
Tokyo – 1066123, Japan
電話: +81 3 6438 5511
Eメール: info_general@tmi.gr.jp

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台湾

台湾では、NFT(非代替トークン)と呼ばれる暗号通貨やブロックチェーンの技術を応用した新しい仕組みが注目を集めています。しかし、現在のところ、NFTの出現と発展に具体的に対処する規制はなく、規制当局はこうした動向についての、いかなる公式見解も示していないようです。

現地の状況から考えると、NFTや、関連する活動あるいは取引の分類については、既存の法律や規制のみに照らし合わせながら、臨機応変に決定しなければなりません。

証券・金融法

Abe Sung, Lee and Li
Abe Sung
パートナー
理律法律事務所(台北)

NFTの代表例として挙げられるのが、デジタルアート作品、音楽作品、収集品、スポーツカード、写真集などであり、その分類は、特にその仕組み、および関連する資産または利益などの要因によって決まります。

金融監督管理委員会(FSC)の黄天牧(HUANG Tien-mu)委員長は、2021年11月および2022年3月に、NFTは芸術作品であると考えられるため、その販売提供は、仮想通貨と見なされるべきではない、と述べました。また、黄委員長は、NFTを将来的に規制する必要があるかどうかは、NFTが金融の安定性に与える影響をはじめ、さまざまな要因によって決まるだろうと語りました。

従って、NFTが「芸術作品」であるならば、既存の金融法や金融規制によって規制されるべきではないと思われます。

NFTは、独自の原資産と関連があり(あるいは独自の原資産を表し)、同一資産に関連する、あるいは同一資産を表すNFTが複数存在しない限り、NFTが現行の金融商品規制の対象となる有価証券や、その他の金融商品と見なされる可能性は低いと考えられます。

しかしながら、NFTへの投資が可能であるため、金融法や証券規制が適用される可能性もまだ完全には排除できません。

興味深いことに、金融監督管理委員会は7月に、現地の承継銀行に対して、仮想資産の決済方法として現地のクレジットカードの使用を明確に禁止しました。それに伴い、現地の承継銀行は、クレジットカード決済の目的で、仮想資産サービスプロバイダーを契約業者として承認してはいけないことになりました。次に、仮想資産にNFTを含めると解釈すべきか否か、という問題が発生しました。

ブロックチェーンや暗号通貨業界の関係者と、金融監督管理委員会と現地銀行によって組織された協会との間で、この点についてある程度の議論がなされたものと理解しています。しかし、たとえ金融監督管理委員会が、あたかもNFTは単なる芸術作品やクーポンのようなものであり、投資的な性質は持ち合わせていないとして、仮想資産禁止の対象とすべきではないという意見を述べたとしても、実際のところ、現地の承継銀行が、NFTに投資的な性質があるかどうかを確かめることは、容易ではないでしょう。

よって、現地の承継銀行が、NFT関連のサービスプロバイダーを、クレジットカード決済の契約業者として認めるかどうかは、依然として個々のケースごとに行われる各銀行内部の評価や判断に委ねなければなりません。

NFT所有者の権利および利益

Eddie Hsiung, Lee and Li
Eddie Hsiung
アソシエイトパートナー
理律法律事務所(台北)

NFTの所有権は、その仕組みや原資産によって異なります。例えば、デジタルアート作品のNFTを購入者に移転した後、NFT所有者となった購入者は、原資産を入手することができます。しかし、これは、原資産であるデジタルアート作品のコンテンツの所有権を、自動的に取得できるということではありません。

条件にもよりますが、NFTの購入者は、該当のデジタルアート作品を鑑賞する権利を得ただけであり、例えば電子ファイルなどの形式で、アート作品の所有権を取得したわけではありません。

例えば、スニーカーなどの有形資産を表すことを目的として、またそれを意図して作られたNFTに関しては、当該NFTの移転が、譲受人へのスニーカーの引き渡しと同等であると見なされるかどうかが問題となるでしょう。もし同等と見なされるのであれば、台湾の民法では、そうした移転が、スニーカーが保管されている倉庫業者に対する請求権と同等と見なされることになります。NFTの購入者は、購入の決断をする前に、NFTと、それに関連する資産や利益の観点から、当該NFTのあらゆる法律上の権利、所有権、利益について慎重に評価および理解したほうがよいでしょう。

NFTの作成者または発行者は、商品の説明や保証についての正確さを重視するとともに、過剰な宣伝を回避することに重点を置き、提供条件(あるいはそれと同等のもの)に、所有者が取得できる権利を明記するのがよいでしょう。

例えば、所有者に当該資産を鑑賞する権利だけがあり、コンテンツの所有はできない場合、その提供条件の中に、NFTのデジタル所有権の提供を含めるべきではありません。さもなければ、民事上の紛争や消費者紛争、さらには刑事責任にまで発展する可能性があります。

実際には、NFTを上場し取引できるマーケットプレイス、プラットフォーム、あるいは取引所が今後出現することも予想されます。一般的な電子商取引プラットフォームと同様に、こうしたマーケットプレイスの標準的な条件には、登録ユーザーやメンバーの権利や義務を明記する必要があります。

マーケットプレイス事業者は、NFTの発行または上場の許可を行う前に、NFTの作成者または発行者による法律違反、または第三者請求による潜在的な責任を回避するために、商業上および法律上必要なデューデリジェンス調査を実施する必要があります。マーケットプレイス事業者と、NFTの作成者または発行者との間の契約書には、発生する可能性のある負債の分担について明記する必要があるでしょう。

NFTの提供や原資産の入手が、セキュリティ侵害、ハッカーによる不正侵入、サービスの中断や関連ネットワークの技術的な不具合などの、技術リスクにさらされる恐れもあり、その結果、提供自体が不可能になる場合すらあります。NFTの作成者やマーケットプレイス事業者は、適用法で認められている範囲内で、適切な免責事項を組み入れることによって、リスクに対処するのがよいでしょう。

知的所有権

原資産に、アート作品、写真作品、音楽作品、また録音・録画が含まれている場合、著作権をはじめとする知的所有権が、NFTにとって重要な問題となることがあります。NFTの作成者または発行者は、NFTを発行する前に、知的財産所有者から必要なライセンスや許可を取得する必要があるでしょう。

NFTのマーケットプレイス事業者は、関連するリスクを軽減するために、適切な調査を行う必要があるかもしれません。NFT所有者が、NFTに関連する権利や使用権のみを所有・行使し、知的所有権をはじめとする第三者のいかなる権利も侵害しないよう、マーケットプレイスの条件に従って保証することが重要です。

メタバースおよびNFT

「超越」という意味を表す接頭辞である「メタ」と、「ユニバース(宇宙)」の混成語であるメタバースとは、一般に、拡張現実(AR)または仮想現実(VR)などの技術や、VRヘッドセット、ARグラスなどの専用デバイスによってアクセスされる、非常にインタラクティブな仮想世界、あるいはデジタル空間のことを意味します。NFTは、このメタバースに不可欠な要素と考えられています。例えば、従来のゲームでは、プレイヤーはゲーム内の資産を購入するために支払いを行いますが、ゲーム内の資産の大半は、プレイヤーに対してその使用を認めているにすぎず、ゲームソフトメーカーによって無効にされることすらあります。こうした状況は、資産をトークン化し、ゲーミングNFTを作成することで対処することができる、と考える業界関係者もいます。そうすることで、ゲーム内の資産をゲーム外に持ち出したり、複数のプラットフォーム間で移転できたりするので、移動可能なゲーム資産の概念を実現することができます。

もし、これがゲームソフトメーカーの真意であるならば、法律的な観点から考えると、ゲームソフトメーカーはまず、NFTの購入者が、NFTの仕組み次第で、ゲームの原資産を「所有」できるように、ゲームに適用される条件を修正する必要があるかもしれません。また、当初のゲーム資産は、ゲームソフトメーカーによって提供された適用条件やライセンスの対象であるため、ゲーム資産を異なるプラットフォーム間やゲーム間で持ち出したり移転したりできるように、ゲームソフトメーカー間で合意を図ることが必要でしょう。

マネーロンダリング防止

デジタル通貨プラットフォームの運営業者および取引に関しては、最新の改正マネーロンダリング防止(AML)法によって、仮想通貨プラットフォームおよび取引ビジネスが台湾の規制制度に組み込まれるため、それに基づいて、指定範囲に該当する事業者は、金融機関に適用される関連規則の対象となります。

行政院(内閣)は4月、AMLについての通達を公布し、仮想通貨のプラットフォームおよび取引業務における事業者の範囲を説明しました。金融監督管理委員会は、仮想通貨プラットフォームおよび取引業務を取り扱う事業者に対して、法律を規定し、テロへの資金供与対策を講じるAML規制を公布することによって、同通達に従いました。同規制に基づき、暗号通貨資産プラットフォームや取引業務を取り扱う指定事業者は、特に、内部統制や監査機構、疑わしい取引の報告手続き、さらに顧客の本人確認手続きなどを確立する必要があります。本通達および規制はどちらも2021年7月に施行されました。

NFTマーケットの関係者が、AMLについての通達で説明された指定範囲に該当するかどうかは不明です。本通達に基づく「仮想通貨」という言葉がNFTも含むと解釈されるかどうかが重要な問題です。仮想通貨がNFTを含む場合、マーケットプレイス事業者およびNFT管理関連サービスを提供する事業者をはじめとする市場関係者は、AML規制に従い、上記の義務を履行することが義務付けられます。

これによって、関連するNFT市場関係者のコンプライアンスコストが大幅に増加することになると考えられます。実際のNFT取引には莫大な資金が関わる可能性があり、このことがAMLに関する義務をある程度正当化する可能性があります、こうした状況を考慮すると、業界関係者は、規制の動向をじっくりと見守ったほうがよいでしょう。

Lee and Li

Lee and Li
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Eメール: attorneys@leeandli.com

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