NFT関連法の最新の動向: インド

By Manisha SinghとSimrat Kaur,LexOrbis
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この数年間、世界中で非代替性トークン(NFT)が熱狂的な関心を集めています。インドでも、NFTの人気と価格は飛躍的に高まっており、NFTに付随する法的問題も急激に増大しています。本稿では、これらの問題の一部に光を投げかけています。

Manisha Singh LexOrbis
Manisha Singh
創業者兼パートナー
LexOrbis(在ニューデリー)
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Eメール: manisha@lexorbis.com

まずNFTの基本について説明します。NFTはブロックチェーンを基盤とするトークンで、基礎となる資産に紐づけられた固有のIDが付与されており、複製や改ざんを行うことはできません。NFTとして取引されている作品の大半は、写真、芸術作品、ビデオクリップなどです。

NFTに関連して、この種の作品の著作権に対する侵害が広範に生じていますが、それには2つ種類があります。一つは、NFTの制作者や販売者による無許可のミンティングや発行です。もう一つは、購入者による無許可の複製や販売です。

この問題の根深さは、世界最大のNFT取引市場のOpenSeaが、今年初めに、無料出品ツールの利用制限に関する声明を公表したことからも、見て取ることができます。その声明によると、「このツールを使用して制作された作品の80%超が、盗作、偽造コレクション、スパムだった」のです。

しかし、NFT制作者やプラットフォーム利用者の反発を受けて、この機能は元に戻されることになりました。その結果、偽造NFTコレクションは依然として、市場に溢れるほど出回っています。

現行の法令の適用領域外

このような侵害は、従来とは異なる形態を取っているとはいえ、インドの現行の著作権法の対象になります。1956年インド著作権法第14条では、原作の著作権所有者が、複製や改作を制作する権利を含む諸権利すべてを保有すると定められています。

著作権のある作品をNFTとしてミンティングまたは発行し、購入できる状態にすることは、その作品の複製を制作し、それを買い手または潜在的な買い手に伝えることを意味します。著作権所有者の許可または承認がない場合、このような行為は無許可の複製および販売となるため、著作権法第51条に基づく著作権の侵害に該当します。

NFT購入者による侵害という点から見れば、それと知らずに侵害している場合が多いといっても過言ではないでしょう。一旦NFTを購入すれば、基礎となる資産やIPも購入者が所有することになるという理解に基づいて購入が行われることがよくあるのですが、その理解は誤っています。

NFTを購入しても、基礎となるIPが合意書面により譲渡されない限り、購入者は自動的にIPを取得するわけではありません。NFT購入者が基礎となるビデオクリップや芸術作品の複製を作成し、商業的用途に供している場合、自身が取得したのはIPではなく、原作の署名付きの複製または受領書であるメタデータ・ファイルに過ぎないことを認識していません。

待たれる裁判所の判断

この領域で生じている侵害の性質が特異であるため、裁判所がこの問題をどのように捉え、新たに出現した事象に現行の法令をどのように適用するのかを見定める必要があります。

Simtrat Kaur, LexOrbis
Simtrat Kaur
アソシエイトパートナー
LexOrbis(在ニューデリー)
Eメール: simrat@lexorbis.com

インドではまだ、NFTに関連する著作権侵害や商標権侵害について、裁判所は判断していません。しかし、他の司法管轄で提起されている訴訟を、参考にすることができます。最初に思い浮かぶのは、米国で起こったエルメスが関わる紛争です。2022年初め、フランスの高級ファッションブランド、エルメスが、ロサンゼルス在住のアーティスト、メイソン・ロスチャイルドを提訴しました。この訴訟においてエルメスは、彼が「メタバーキン」という名称の、同社を象徴する商品である「バーキン」バッグに、極めて類似するNFTを制作したと主張しました。エルメスは、この行為はオフラインの世界(仮想世界ではない現実の世界)での偽造と同じであり、このアーティストは実際の偽造品の販売で利益を得た場合と同様に、NFTの販売により数千ドルの利益を得たと申し立てました。

裁判所の決定はまだ下されていませんが、その決定は、メタバースでの侵害の捉え方について多大な影響を与えることになるでしょう。

アジアでも画期的な動きが見られます。中国の裁判所が初めて、NFTに関連する著作権侵害訴訟で判決を下したのです。「fat tiger」のイラスト・シリーズの著作権所有者であるShenzhen Qice Diechu Cultural Creativityが、BigverseというNFTデジタルアート取引市場の運営者であるHangzhou Yuanyuzhou Technologyを訴え、そのプラットフォームの利用者が、問題となった著作権を有する作品と同一のデジタル作品のNFTを、制作・販売したと主張しました。

原告は、そのNFTプラットフォームには著作権侵害への寄与という罪状があると主張しました。裁判所は原告に有利な判決を下し、プラットフォームに対し、損害賠償の支払いとともに、このNFTへのアクセスを遮断するか、譲渡できなくすることを命じました。

インドでも、侵害への寄与についての責任が著作権法に規定されています。しかし、2000年情報技術法第79条は、利用者の行為に対する仲介者の責任をすべて免除しています。NFTプラットフォームに関しても、仲介者の立場にあり、免責条項の対象になるという主張が認められる可能性が高いとみられます。

デジタルNFT取引市場では、売り手と買い手は暗号通貨を用いてNFTトークンを売買します。従って、このような市場は、NFT資産の買い手と売り手の間で仲介者の役割を果たす、オンラインプラットフォームなのです。

デューデリジェンス

しかし、第79条に基づく保護を得るためには、仲介者は、デューデリジェンス上の義務の一部を履行する必要があります。仲介者は、自身のプラットフォームが違法行為を助長するために悪用されていることを認識した場合、合理的な注意を払い、迅速に措置を講じなければなりません。

2021年の情報技術規則(仲介者ガイドラインおよびデジタルメディア倫理コード)に規定されている措置を実施、または遵守しなかった場合、寄与者または助長者として、利用者の行為の責任を問われる可能性があります。

アマゾンやフリップカートなどの電子商取引プラットフォームや、YouTubeなどの娯楽プラットフォームはすべて、この措置を実施しています。従って、NFTプラットフォームも同様の措置を講ずるべきです。NFTはブロックチェーンを基盤としているという特質があるため、固有の問題が生じるかもしれません。しかし、デューデリジェンスに不備があった場合の主要な責任と義務は、他のプラットフォームと変わりません。

コンテンツの提供のみを行っているオンラインプラットフォームとは異なり、NFTプラットフォームはNFTを制作するための技術を提供し、売買の際にスマート契約を自動生成していることに、留意する必要があります。つまり、コンテンツに関して果たしている役割は、受動的なものではありません。電子商取引プラットフォームと同様に、権利侵害に当たるコレクションの存在を認識していながら削除しなかった場合に、責任を負わせることが不可欠です。

口座認証システムや「コピーミント(真正なNFTコンテンツの複製を作成すること)」を特定、除去、防止するための、何らかの自動システムを備えていなければ、十分に整備されたデジタルプラットフォームとは言えません。一例を挙げると、OpenSeaはそのようなシステムを導入しています。OpenSeaのウェブサイトには次のような記載があります。「当社は、コンピュータービジョン技術を用いる、新しいコピーミント防止システムにより、OpenSea上にあるすべてのNFT(新たにミンティングされたものも含む)をスキャンします。このシステムにより、スキャンしたものを真正なコレクションと照合します。まず、コピーミントが最も多いコレクションから着手し、原作を反転・回転させたり、配置を変更したりしただけのコピー作品を検出します。今後数カ月にわたり、この機能を拡充するとともに、モデルの訓練を継続し、検出能力を向上させていきます」

当プラットフォームには、さらに以下のような記載もあります。「当社のユーザー保護チームはプラットフォームを怠りなく監視し、発見次第、あるいはユーザーからの報告があり次第、不正コンテンツを除去しています」

仲介者規則のデューデリジェンス条項に関する申し立てに対処するためには、すべてのNFTプラットフォームが、このような措置を講ずる必要があります。これを怠った場合には、侵害に寄与した責任を問われるべきです。

商標の保護?

特に商標に関しては、ニース分類の第9類への登録がNFTにおける商標保護の前提条件とされるべきか、という別の問題が浮上します。

例えば、靴を販売するブランドが、自身のブランドのために第25類の登録を行った場合、このブランドの名前を表示した同じような外見の靴の画像をミンティングしたNFT制作者に対して、権利侵害を主張できるでしょうか。もしできないとしたら、メタバースで自社のブランドを保護しようと望む企業やブランドはすべて、第9類に自社のブランドを登録するよう期待されていることになります。

第9類に自社のブランドを登録したとしても、メタバースで仮想商品のブランドが実際に使用されていることを示せない場合、5年が経過した後に、どのようにしてそれを維持すればいいのでしょうか。理想を言えば、第9類への登録を義務付けるべきではなく、複数の類に関連する要因が考慮されるべきです。しかし、裁判所がこの点をどう判断するかは、まだ明らかではありません。

著作権のあるコンテンツについて、著作権所有者が何らかのデジタルな用途のために、ライセンシーにライセンスを付与した場合、そのライセンスにNFTミンティングが含まれていること、または含まれていないことを、契約で明示的に規定し、ライセンシーが契約の曖昧な、または広範な文言や条項を悪用しないようにすることが重要です。

説明責任が鍵

上記の例が提起する問題や疑問は、ほんの一握りにすぎませんが、NFTの人気が高まるにつれて、さらに多くの新たな問題が現れるでしょう。

侵害に該当する行為についての世間の認識を高めることで、事態を大きく改善できるかもしれません。少なくとも、それと知らずに行われる権利侵害を食い止めることはできるでしょう。しかし、NFT偽造問題に対する、何らかの現実的な解決方法を最終的に得るためには、YouTubeやアマゾンなどの他の仲介者の例に倣い、NFTプラットフォームに説明責任を負わせることが必要でしょう。なぜなら、著作権所有者が、個々の侵害者を追跡し、それぞれを追及することは、実質的に不可能だからです。

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