NFT関連法の最新の動向: 日本

By 岩倉正和、五十嵐敦、と高山大蔵、TMI総理律法律事務所
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日本の非代替性トークン(NFT)市場は2021年初めに出現しました。その後、数多くの企業がこの成長と拡大を続けるビジネスに参入しています。日本にはアニメ、漫画、ゲームなどの国際的に競争力のあるIPが豊富なこともあり、これらの分野におけるNFT関連ビジネスは極めて活発になっています。また、スポーツの分野でも多くの企業がNFT関連ビジネスを立ち上げています。

Masakazu Iwakura, TMI Associates
岩倉正和
シニアパートナー
TMI総合法律事務所(在東京)

一方、現行の法規制の中には、新たにNFT関連ビジネスを始める際の障害になっているものがあります。本稿では、Asia Business Law Journalの2021年9月/10月号に掲載された「非代替性トークン(NFT)を取り巻く規制の比較」のうち、日本の法令におけるNFTの位置付けについて、その後の進展を概説します。

前回記事の掲載以降、NFTに関する新たな法規制は制定されておらず、また政府によるガイドラインなども発信されていません。しかし、国会議員や関連業界団体において、プロジェクトチームがいくつか結成され、現行の法規制に関して既に生じている問題や今後生じる可能性のある問題についての調査、法的解釈の整理、法改正の必要性の政府への陳情が行われています。

本稿では、日本におけるNFT関連ビジネスにおいて現実に問題となっている2つの重要な法的論点を取り上げ、議論の進捗状況を説明するとともに、解決に向けての指針を示します。

賭博に関連する法令違反

まず、日本の刑法では、賭博行為(偶然の勝敗により財物の得喪を争う行為)は一切禁止されており、賭博行為を行った者には刑罰が科される可能性があります(刑法第185条)。

世界中で人気が高まっている関連ビジネスの1つに、「NFTのランダム型販売」があります。例えば、NFTデジタルトレーディングカードを販売する際、企業は、通常、複数のNFTをランダムに組み合わせてパッケージを作成します。購入後でなければ、パッケージの内容を知ることはできません。

Atsushi Igarashi, TMI Associates
五十嵐敦
パートナー
TMI総合法律事務所(在東京)

しかし、このようなNFTのランダム型販売において運営者が二次流通市場を形成した場合に、賭博罪を構成するか否かについて議論が生じています。

議論となっている理由は、一次流通市場でパッケージとして購入されたNFTが、二次流通市場でより低い価格で取引された場合を考えてみれば明らかです。この場合、購入者は一次流通市場で実際に支払った価格よりも価値の低いNFTを取得したと考えられ、購入者は差額に相当する財物を失したとみなすことができます。このような懸念により、多くの企業が二次流通市場を伴うランダム型NFT販売の開始を躊躇している現状がありました。

この問題に関して法律の専門家の多くが強く示唆している見解は、二次流通市場の利用者によってなされる価格形成は、一次流通市場の販売者によってなされる販売価格の形成から分離した状況に基づいているため、一次流通市場の利用者が取得したNFTの価値を算定する際に二次流通市場の市場価格を考慮するべきではないというものです。

従って、NFTをランダム型で販売する際に二次流通市場を併設することが賭博罪に該当すると評価されるべきではありません。こうしたなか、2022年10月12日に、多数のコンテンツ関連企業が加盟する業界団体である一般社団法人Japan Contents Blockchain Initiativeが、他のブロックチェーン関連業界団体と連名で、ランダム型NFT販売に関する業界ガイドラインを公表しました。

このガイドラインでは、販売者が二次流通市場において販売価格や再販価格を設定せず、かつ、自らNFTを購入または再販しない限り、販売者が自ら二次流通市場の運営及び管理を行うことには問題がなく、賭博罪には該当しないとの見解が示されています。

また、同ガイドラインには、一次流通市場においてランダム型販売に加えて個別の販売も行う場合には、ランダム型販売の販売価格は、出現するNFTについて個別販売時に設定された販売価格の最低価格を超えてはならないとも記載されています。ガイドラインのこのような記述は、業界団体の見解に過ぎないため、実際にこの種のビジネスを運営するにあたっては、注意深く検討する必要があり、この点についての規制当局による公式見解の提示が待たれます。

とは言え、このようなガイドラインの公表は、二次流通市場を併設したNFTのランダム型販売に向けて事業運営者を後押しするものであり、日本のNFT関連ビジネスのさらなる発展の契機になると考えられます。

預託サービス

次に、現在、プラットフォーム上におけるNFT取引は、その大半が暗号資産により支払いが行われています。そして、プラットフォーム上の利用者間のNFT取引の安全性を確保するために、プラットフォーム事業者がエスクローサービスを提供することが求められています。

Daizo Takayama, TMI Associates
高山大蔵
アソシエイツ
TMI総合法律事務所(在東京)

すなわち、(取引の安全性のために)プラットフォーム事業者は、単に取引を仲介するだけではなく、販売者のために購入者から代金を受け取り、NFTの引き渡しの確認後、販売者に代金を送付するサービスを行うべきであるということです。このようなエスクローサービスは、例えばE Commerceなどにおいて、既に日本で活発に行われています。

しかし、暗号資産に関してエスクローサービスを提供しようとする場合、プラットフォーム事業者は、購入者からの受領と販売者への送付の間、暗号資産を管理することになります。この行為は、資金決済法に規定された「他人のために暗号資産の管理をすること」という定義に該当する可能性があります。そのため、同法に従い、暗号資産交換業者としての登録を受ける必要があるのではないかが問題となります。

しかし、日本において暗号資産交換業者として登録を受けるためのハードルは極めて高く、財政基盤、管理体制、コンプライアンス体制の整備を含め、様々な要件が課されます。したがって、プラットフォーム事業者の主要事業が暗号資産交換業ではない場合、この登録を受けることは必ずしも容易ではありません。この問題は、利用者間のNFT取引の安全性確保にとって明らかに重大な障害となっています。

この点、現在E Commerceにおいて提供されている金銭のエスクローサービスに関しては、プラットフォーム事業者が一時的に金銭を管理することは、実質的には販売者に代金を送付するという自身の義務を履行するための準備行為に過ぎず、したがって他人のためにする金銭の管理とはみなされません。つまり、この行為は、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律により禁じられている「預り金」ではないことになります。

これを踏まえ、多くの法律の専門家は、金銭のエスクローサービスと暗号資産のエスクローサービスにおいて、異なる取扱いをするべきではないと考えています。また、利用者間のNFT取引においてプラットフォーム事業者が提供する暗号資産のエスクローサービスは、他人のための暗号資産の管理とみなされるべきではないと示唆しています。従って、このようなサービスの提供のために、暗号資産交換業者としての登録を受けることを要件とするべきではありません。

もっとも、暗号資産の保管に関しては、金銭の保管と比較して流出のリスクが高く、またマネーロンダリング防止のためにより慎重な対策が求められることから、一定のガイドラインが必要だと考えられます。これを受け、2022年4月に、国会議員の有志メンバーがNFTに関するホワイトペーパーを公表し、暗号資産交換業を主管する金融庁に対し、この点に関するガイドラインの策定を要請しました。各事業者においては、今後の金融庁によるルール策定の進展を見守ることを推奨いたします。

結論

NFT関連ビジネスの拡大に伴い、その成長を阻害し得る問題が、上記の関心を集めた2つの法的論点の他にも多数生じています。

現行の法規制の枠組みを適用する際にNFT関連事業をどのように捉えるべきか、また、新たな法規制を制定するべきかという問題についても活発な議論が交わされており、現在日本政府の重要な検討事項にもなっています。

市場参加者は、日本の法規制の直近の動向に留意する必要があり、そして豊富な専門知識を備えた弁護士に助言を求めることが必要です。

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