日本企業によるインド投資の展望

By Gaurav Dani、Saurav KumarとSwathi Sreenath、IndusLaw
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インドと日本は長年にわたり友好を深めてきました。戦略、経済、政治面での連携のほかにも、文化的、精神的な結び付きに根ざした強固な協力関係を築いています。事業環境の向上、技術革新の促進、製造業と投資の活性化にインドが積極的に取り組んでいることもあり、両国の経済的な相互協力関係は、年々強まっています。インドはさまざまな課題を抱えつつも、過去最高水準の輸出、外国投資の増加、グローバルな協力関係の拡大を背景に、世界で最も急速な成長を遂げている国の一つになっています。

本連載の前回の記事では、日本の投資家にとっての投資機会、政府政策、今後の注目分野について取り上げました。本稿では、インドに進出する際に考慮が必要な投資構造、事業運営、税務についての要点と、目前に迫っている投資機会について概説します。

投資構造および事業運営に関する問題

Gaurav Dani
Gaurav Dani
創業者兼パートナー
IndusLaw
ニューデリー
Eメール: gaurav.dani@induslaw.com

インドでは、インド準備銀行(RBI)が各種規則、規制、プレスノート、マスターディレクションを通じて外国投資の枠組みの明確化を進めてきました。投資家がインド企業と取引を行う際には、特定のガイドラインや条件に注意を払う必要があります。これには、価格設定、繰延対価、補償の取り決め、ダウンストリーム・インベストメント、収益保証の制限に関する規則への準拠が含まれます。

新たな投資構造の出現に伴い、当事者にとっての運用上の柔軟性が増すとともに、法令遵守の徹底が図られています。以下では、準拠の必要がある規則について一部解説します。

繰延対価 居住者と非居住者間の資本性金融商品の譲渡について、インドの規則では、対価が全体の25%を超えず、譲渡契約日から18カ月以内に支払われる場合に限り、対価支払いの繰り延べが認められます。このような制約を回避する方法として、取引代行業者に株式を預託し、一定のスケジュールに従って当該株式を購入する義務を負担することが考えられます。アーンアウト方式を採る取引形態も広く普及しています。この種の取引では、対価の一部が業績指標に基づく管理報酬としてプロモーターに支払われます。

外資系企業(FOCC)による取引 既にインドに進出している外国投資家が買収により拡大を目指す場合、インド子会社を介する投資に求められるコンプライアンスが比較的緩やかであることを考慮すると、ダウンストリーム・インベストメント(インドに設立済みの事業体を介した投資)が有利な手法になる可能性があります。しかし、繰延対価と報告に関する取り決めの機微を考慮する必要があります。FOCCへの、またはFOCCによる譲渡の繰延対価について、RBIは価格設定に関して具体的なガイダンスを公表していません。したがって、このような取引を処理する承認取引銀行(AD)の見解に基づいて価格が設定されることになります。一般的な見解では、少なくとも有価証券の公正市場価値に相当する対価を前払いする必要があり、残額は(繰延対価に関する他の規則に準拠しつつ)繰り延べることが認められます。

レイヤリング インドでは複雑な企業構造の悪用を防ぐため、会社法により、企業が2層を超える子会社を持つことが制限されています。ただし、1社または複数の完全子会社で構成する1つの層は、層の数を算定する際に考慮の対象になりません。しかし、完全子会社に対するこの免除規定が、子会社の第1層のみに適用されるのか、それともどの層にも適用されるのかは明確ではありません。現時点の一般的な見解は、この免除は最終持株会社の完全子会社にのみ認められ、それを超える層には認められないというものです。

税務上の留意点

Saurav Kumar
Saurav Kumar
パートナー
IndusLaw
ニューデリー
Eメール: saurav.kumar@induslaw.com

法人税やキャピタルゲイン税をはじめとして、インドにおける投資の構造に影響を及ぼす可能性のある税務上の考慮事項があります。そのような投資構造に影響を及ぼし得る税務上の主な留意点には、以下が含まれます。

二重課税回避協定(DTAA) インドへの投資は、種々の戦略上・税務上の理由から、さまざまな国・地域にある持株会社を通じて組成されることが多くあります。このような場合、企業にとって有利な課税制度を備えた国・地域にある中間持株会社を通じて投資することで、二重課税のリスクを回避できる場合があります。以前は、モーリシャス、キプロス、シンガポールの各国とインドとのDTAAに基づき、有利なキャピタルゲイン課税制度の適用が認められていたため、多くのインド企業やインド企業への投資家がこれらの国で中間持株会社を設立していました。しかしこれらのDTAAはその後、改正され、有利な制度の一部は廃止されました。

インドは二重課税を避けるために、日本を含め100を超える国々と二国間租税条約を締結しています。納税者は、インド法または日印DTAAのうち、より有利な方に基づいて課税を受けることができます。日本の投資家は、特に配当所得、ロイヤルティ、技術料に対する課税に関して、インド国内のより高額な税率ではなく、日印DTAAに基づく優遇税率を利用できる可能性があります。

繰越欠損金 1961年所得税法では、企業は事業損失を事業利益と相殺できる状況になるまで8年間、繰り越すことが認められています。ただし、同法では、(特定のスタートアップ企業を除き)損失が発生した年度と相殺が計画されている年度の両方の末日において、会社の議決権の51%以上を占める株式の実質的支配者が同一でなければならないと規定されています。したがって、投資家は、事業について過去に発生した納税債務と今後発生する可能性のある納税債務、および自らの投資によって生じた事業損失を繰り越せるかどうかに留意する必要があります。また、投資家は上述のような問題に対処するために、合併(最長8年間は相殺が可能)などの代替手段を検討することもできます。

新たな機会

Swathi Sreenath
Swathi Sreenath
プリンシパル・アソシエイト
IndusLaw
ニューデリー
Eメール: swathi.sreenath@induslaw.com

グジャラート国際金融テック・シティ 日本の投資家が最大のチャンスを見出せる機会の一つは、グジャラート国際金融テック・シティ(GIFTシティ)にあるGIFT国際金融サービスセンター(GIFT IFSC)です。この最先端の金融ハブが目指しているのは、ドバイ、シンガポール、香港といった他の金融センターと同様に、幅広い金融機関を誘致することです。GIFTシティに設立された事業体は、統合された単一の規制当局の規制を受け、適用される規定の一部が国内法による規定よりも緩和された、「軽減された」規制制度の対象になります。規制の軽減に加えて、GIFTシティでは10年間の法人税免除、キャピタルゲイン税および物品・サービス税の免税といった優遇措置も提供されます。3年足らずの間に、HSBC、ドイツ銀行、バークレイズ銀行、MUFG銀行などのグローバルな金融機関をはじめとして、500社超の企業がGIFTシティに設立されました。

インセンティブ制度 過去数年にわたり、インドは、年間生産量や売上高などの指標に基づいて製造業者に補助金を直接支給し、輸入が大半を占める品目での国内生産を拡大する制度を導入してきました。この生産連動型インセンティブ(PLI)制度は、自動車・自動車部品、太陽電池、食品加工などの分野に導入されています。先端化学セル(ACC)蓄電池と化学分野向けのPLI制度の入札が現在進行中であるのに加え、公表された2024年の予算に従い、バイオ製造とバイオファウンドリーを対象とする制度の導入も予定されています。

不動産 このところ、2016年不動産(規制・開発)法などの大規模な法改正、物品・サービス税の統合、不動産投資信託(REIT)の普及推進を背景に、外国人投資家にとってインドの不動産セクターの魅力が一段と増しています。住友、三菱、丸紅などの日本企業は、商業用・住宅用不動産セクターに多額の投資を行っています。IT産業が目指すべき国(IT destination)としてインドが台頭する中、商業用不動産に対する需要が特に高まっており、良質なオフィススペースが求められています。不動産ビジネスブームは、日本の得意分野として知られる建材、電気製品、衛生陶器製品などの関連分野の企業にもチャンスをもたらします。

グリーンエネルギー インドは、グリーン水素やアンモニア、電気自動車(EV)、太陽エネルギー、風力エネルギーなどの技術の推進に精力的に取り組んでおり、グローバル・サウスにおけるクリーンエネルギーへの移行を先導しています。インドでは、これらの技術の普及のため、EVの販売、先端化学セル電池の製造、水素電解槽のインセンティブ施策や、資金面での優遇措置(グリーンクレジット、グリーンデポジット、税金還付など)などの制度を導入してきました。インドが設定している再生可能エネルギー開発目標では、2030年までに再生可能エネルギーの設備容量を現在の約175GWから500GWに拡大することを目指しています。日印クリーンエネルギー・パートナーシップの目的を踏まえ、インドはグリーンエネルギー分野の日本企業の投資先として推奨されています。

結論

日本企業のインド投資の今後の見通しはさまざまな点で有望です。このような良好な投資見通しの基盤をなしているのは、両国の歴史的な友好関係であり、これが両国の経済的な結び付きも強めています。

時を経て、投資家は経営効率を最大化し、将来の法廷闘争を回避するために、革新的な投資構造の選択肢を検討しています。こうした構造の微妙な特徴を理解するには、法務チームや承認銀行との協力が不可欠です。

しかしながら、インドではGIFTシティ、現地製造業、不動産、グリーンエネルギーなどに関して新たなビジネスチャンスが生まれており、日本の投資家にとって有望な投資先であることに変わりありません。両国の協力関係は今後も深まっていくことでしょう。そこには、双方の国にとって有益な成長がもたらされる大きな可能性があります。

IndusLaw-2021

INDUSLAW
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Japan Outbound Investment Guide

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