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接続性、効率的な法制度、豊富な選択肢により、国際紛争解決におけるシンガポールの評判が高まっている。

国際貿易・投資の対象先としてアジアに対する注目度が高まる中、シンガポールは当地域のクロスボーダー紛争解決において、信頼できる中立的な場として有利な位置に立っています。シンガポールでは、法的エコシステムに対して強固な政治的・司法的支援が向けられており、リーガルサービスの自由化と法的枠組みの強化に向けた政策が展開されています。

シンガポールは、法の支配に基づき、公正で人々から尊重される、効率的な法制度を築いてきました。2020年の世界正義プロジェクト(World Justice Project)の法の支配指数(Rule of Law Index)では、128カ国中12位となり、さらに、汚職のなさ、秩序と治安、規制執行、民事司法、刑事司法の項目では地域トップになりました。これらはすべて、商業的権利の保護と執行を促進する環境の強化につながります。この点は、世界銀行の報告書である「ビジネス環境の現状2020(Doing Business 2020)」でも認められています。シンガポールは契約執行の容易さにおいて、190カ国中トップになりました。こうした中、シンガポール法の受け入れは進んでいます。2019年にシンガポール法曹協会が委託した調査では、アジアにおけるクロスボーダー取引の準拠法に、シンガポール法が英国法に次いで2番目に多く採用されていることが明らかになりました。また、法律事務所のWhite & Caseによる2021年国際仲裁調査では、ライオンシティ(シンガポールの愛称)はロンドンと並んで世界で最も人気のある仲裁地になりました。

Una Khng
Una Khng
ディレクター
商事紛争部門責任者
Helmsman(在シンガポール)
電話: +65 6011 0898
Eメール: una.khng@helmsmanlaw.com

シンガポールでは、法的エコシステムに対して、強固な政治的・司法的支援が向けられており、リーガルサービスの自由化と法的枠組みの強化に向けた政策が、展開されています。また、シンガポール国際商事裁判所(SICC)に、シビルロー(大陸法系)とコモンロー(英米法系)の両法域の、著名な国際的法律家が加わったことにより、シンガポールの世界レベルの司法制度はさらに拡充されています。その結果、シンガポールは、商業分野で経験を積んだ弁護士などの優秀な法律家を引き付けており、優秀な仲裁・調停専門の弁護士も増加しています。

シンガポールの一連の国際的な紛争解決プラットフォームであるSICC、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)、シンガポール国際調停センター(SIMC)では、案件が増加の一途をたどっています。 これらのセンターは相互に補完しており、それぞれが独自の特長と長所を備えているため、商業分野の当事者は必要に応じて適切な選択をすることが可能です。

多くの場合、紛争解決メカニズムの選択において、重要な考慮事項となるのは執行可能性です。この点シンガポールは、仲裁判断、裁判所の判決、調停による和解の効果的な執行を円滑にする、種々の多国間条約や二国間条約を締結しています。「1958年外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(通称:ニューヨーク条約)の締結国は169カ国に上り、これにより仲裁判断は広く執行力を持つようになりました。国際調停による和解契約の執行は、「調停に関するシンガポール条約」(署名国:55カ国)によって拡充されています。SICCが上級裁判所として下した判決は、「2005年ハーグ裁判管轄の合意に関する条約」による場合を含め、ほぼすべての主要な商事裁判管轄とその他の裁判管轄の多くで執行することができます。

利用可能なメカニズム

最も利用されることの多い紛争解決メカニズムは、訴訟(国内の裁判所または国際裁判所)、仲裁、調停の3つです。仲裁と調停は、完全に同意に基づくものです。両当事者は、紛争前に(例えば、契約の仲裁または調停条項によって)合意することも、紛争後に仲裁または調停について協議して合意することもできます。このような合意がない場合は、仲裁廷に管轄権がないため、調停人が当事者の間に立って交渉を促すための根拠がないことになります。つまり、関連する契約や請求がある場合などに、第三者を仲裁や調停に参加させるには、一般的に、第三者を含むすべての当事者が同意しなければなりません。

一方、裁判所の管轄権は、該当する法律により定められています。法令により管轄権に関する当事者の合意が必要な場合もありますが、一旦裁判所が管轄権を掌握した後は、強制管轄権を行使することができ、当事者の合意がなくても第三者を手続きに参加させる権限を付与されます。また、紛争解決の内容も、メカニズムに応じて異なっています。裁判所や仲裁廷の手続きは審判手続であり、紛争の判決は、当事者に対して拘束力のある裁定で終結します。一方、調停は当事者間の交渉を促進するものであり、当事者が相互に受け入れ可能な解決策に到達することを目的としています。そのため、当事者は決定過程に直接関与し、結果に対してより良い影響をもたらすことができます。もう一つの違いは、仲裁や調停の手続きは自動的に機密として扱われるのに対し、裁判手続には、一定の例外を除き、一般的に公開裁判の原則が適用されることです。

最後に、事案の実質的な本案(merit)に関する第一審判決については、当事者が上訴に関する権利の制限や放棄に合意していない限り、一般的に上訴する権利があります。しかし、現時点では、シンガポールで行われた国際仲裁で下された裁定に対して、上訴する手段はありません。裁定を無効にするには、裁判所に申請する必要がありますが、詐欺、自然的正義の違反、管轄権逸脱、手続きの不備、公共政策の違反などの理由によるものに限られます。調停に関しては、成立した和解は本質的に合意に基づき契約されたものであるため、上訴はできません。

また、国内の裁判所での訴訟と、国際裁判所での訴訟には違いがあります。例えば、シンガポール国内の裁判所では、判断が必要な外国法の問題は、事実に関する問題とみなされ、専門家による鑑定意見によって証明されることになります。外国法の専門家は、裁判では証人として召喚され、反対尋問を受けます。その結果、多大な時間や費用が発生する可能性があります。これに対し、SICCの手続きで生じる外国法の問題は、SICCが許可した場合、証拠の代わりに提出書類に基づいて決定することができます。許可が下りれば、弁護士は外国法についての書類を直接SICCに提出することができ、専門家証人の召喚に要する時間と費用を、節約することができます。

現代社会における相互のつながりの拡大は、シンガポールの裁判所に提起される商事紛争に関与する、外国人当事者の増加にもつながります。これらの外国人当事者は、シンガポールの裁判の手続きやプロセスに詳しくない可能性があります。これは特に、シビルローの法体系に属する地域出身の当事者に当てはまります。また、外国人当事者は、出身地の既知の弁護士に訴訟手続の代理を依頼することを望むかもしれません。しかし、一般的に外国人弁護士は、シンガポール国内の裁判所では弁論権がありません。

SICCの手続規則では柔軟な対応が認められており、当事者のニーズと目下の紛争に適するように手続きを調整することができます。SICCは、適切な場合には、シビルローの法体系に属する当事者が、より精通している手続きを採用することができます。外国人弁護士はSICCに登録することができ、登録後は、シンガポールと実質的な関係がないSICCの事案において、当事者の代理人を務めることができます。

最新情報

シンガポールの裁判所とSICCは最近、新たな手続規則、すなわち裁判所規則2021とSICC規則2021をそれぞれ制定し、各規則は4月1日に発効しました。裁判所規則2021は、規則の文言を簡素化・近代化し、手続きを合理化するものです。裁判所規則2021により、裁判所は訴訟の進行状況を、より詳細に管理できるようになりました。この規則による手続きの改革には、当事者が訴訟を細分化して行うことを防ぐための裁判の係属申請の一本化や、専門家による鑑定意見の使用に、裁判所の許可を要件とすることなどがあります。

同様に、SICC規則2021により、SICCの手続きも改革されています。SICC規則2021は、特に、国際商事訴訟を容易にすることを目的としており、多様な紛争解決メカニズムや法的伝統から、国際的なベストプラクティスを取り入れています。既存の裁判手続の主要な特徴の多くは維持されていますが、いくつかの新しい取り組みが導入されています。例えば、訴訟提起のプロセスが簡素化され、手続きの開始方法が一つになりました。申し立てられた請求は、3つの裁定手段のうちの一つによって決定され、当事者や係争の必要性に応じて、手段ごとに異なる法的論拠や証拠の提示方法が取られます。また、技術、インフラ、建設については専門分野リストが導入され、技術的に複雑な事案には専門の裁判官が対応します。

直近では、複数当事者による国際的な事業再生・倒産手続に関する規則を新たに定めた、命令23Aが制定され、10月1日に発効しました。これは、シンガポールの事業再生と倒産を取り巻く状況を、進展させる重要な一歩です。

国際仲裁の面では、「1994年国際仲裁法」が2020年12月に改正されました。これにより、複数当事者による仲裁において、当事者間の合意により、仲裁人の指名手続が定められていない場合のために、仲裁人の指名について所定の方法が規定されました。また、仲裁地と裁判所が機密保持義務を強制する権限が、明示的に認められました。

その他の改正案については、現在も検討されています。これには、裁定の範囲外で生じた法律問題について、当事者が仲裁メカニズムに合意している場合、上級審への上訴権を組み込むことを、当事者が選択できるようにすることや、仲裁裁定の無効事由の放棄または制限に、当事者が同意できるようにすることなどが含まれます。また、シンガポールでは最近、訴訟資金調達に関しても、さまざまな改革が進行しています。国内の仲裁手続と国際仲裁手続、特定のSICCの手続き、および関連する裁判手続と調停手続で、第三者資金調達が可能になりました。また、昨年5月より、弁護士はこれらの手続きにおいて、クライアントと成功報酬型の契約を締結することができるようになりました。これらすべての要因により、紛争解決ハブとしてのシンガポールの魅力はさらに高まっています。

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