各国の M&A 関連法規の比較: 香港

By Virginia TamとBeatrice Wun, K&L Gates
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香港

香港は中国の特別行政区であり、独自の法制度を持っています。国際的な取引の中心地であり、高度な金融・専門サービスを提供できる金融センターでもあります。大中華圏との強い経済的結びつきを維持し、国際的な企業や投資家が中国やその他の地域市場にアクセスするための、貴重な足がかりとなっています。香港での取引は、香港という場所の性質上、複数の司法管轄区域にまたがって実施されることが多くあります。したがって、コストと時間の点で効率よく、円滑に取引のプロセスを進めるには、現地で適用され得る法規制や異なる商慣習・市場慣行に、適切に対応することが重要になります。また、当事者の懸念を解消し、リスクを軽減できる形で、適切に取引が構成されるよう図る必要もあります。

会社条例

Virginia Tam, K&L Gates
Virginia Tam
パートナー
K&L Gates
香港
電話番: +852 2230 3535
電話番: Virginia.Tam@klgates.com

香港における株式の取得は主に、香港の制定法の一部である会社条例(Companies Ordinance)によって規定されています。会社条例は、香港で設立された企業および香港に事業所を置く海外企業の登録、記録管理、申請に関する要件について定めています。また、香港で設立された企業の所有権や経営権や、それらの企業と第三者との取引についても規定しています。

香港で設立された企業が、買収の際に下記の行動を取る必要がある場合、同条例が定める一定の制限に従わなければなりません。

  • 減資。この場合、減資後に企業に支払能力があり、利害関係のない株主が特別決議で減資を承認する必要があります。
  • 自社株購入のための資金支援。この場合、支援実施後に企業が支払能力を有し、さらに次のいずれかの要件を満たす必要があります。支援額が法定限度額である5%以内であること、または、支援が定められた期間内に株主によって承認されること。
  • 配当宣告および配当実施。この場合、企業が十分な配当可能利益を有しており、配当額は所定の計算式を用いて単体ベースで計算される必要があります。
  • 法定の少数株主排除(スクイーズアウト)権の行使。この場合、買い手の株主は定められた期限内に権利を行使し、他の株主に対して買収提案を行い、90%以上の株式を取得しなければなりません。
  • スキーム・オブ・アレンジメント。この場合、裁判所が提案を承認し、スキームの影響を受ける利害関係者による投票が実施され、投票結果が法定要件を満たしている必要があります。
  • 他の企業との合併。この場合、双方の企業が同一グループに属しており、吸収される企業を含め、合併に関与するすべての企業が支払能力を有し、合併する企業それぞれの株主が特別決議により合併を承認しなければなりません。

テイクオーバー・コード

Beatrice Wun, K&L Gates
Beatrice Wun
アソシエイト
K&L Gates
香港
電話番: +852 2230 3553
電話番: Beatrice.Wun@klgates.com

香港の上場株式の買収は、主にテイクオーバー・コードによって統制されますが、これは制定法ではなく、法的執行力を持たない一連の規範です。この規範に違反した市場参加者は、「cold shoulder(冷遇措置)」命令によって不利益を被る可能性があり、そうなると事実上、現地市場で事業を行うことができなくなります。

テイクオーバー・コードは、株式公開買付け、支配権変更取引(どのように支配権が取得される場合であっても)、自社株買い、株式の非公開化の実施を対象としています。この規範は、「公開会社」が買収される際には、すべての株主が平等かつ公平に扱われるべきだ、という原則に基づいています。

以下の状況では、香港内外の買収者にこの規範が適用されます。

  • 買収者が株主に対して株式売却を勧誘する任意公開買付けを行う場合、規範に定められた価格条件、時期、仕組みに従って募集を実施しなければなりません。
  • (1)買収者が最初に30%の株式保有の上限を超えた場合、または(2)買収者の株式保有率が30%から50%である場合に、任意の12カ月間に、株式保有率が2%以上増加した場合(規制当局から免除を得た場合を除く)、買収者は、強制公開買付けを実施し、所定の計算式を用いて計算された金額と同じ対価で株式を売却する選択肢を、他の株主に対し提供しなければなりません。
  • 買収者が企業を非公開化する場合、その取引は、規範の基準に基づき、存続株主の支持を得る必要があります。

上場規則

上場規則(Listing Rules)は、香港唯一の証券取引所を運営する香港証券取引所によって制定されています。香港証券取引所は、香港政府が単独の最大株主として支配権を持つ上場会社です。同証券取引所に上場している会社には継続的な義務があり、その取締役には上場規則に準拠する契約上の義務がありますが、規則には法的執行力はありません。

買収者には上場規則が適用されないとしても、上場規則が定める上場会社に対する要件のために、取引の進行が遅滞し、手続きに関する不確実性が増し、買収コストが増加する可能性があります。

証券先物条例

証券先物条例(Securities and Futures Ordinance)は、金融仲介業者などの資本市場・金融市場参加者の行為について規定しています。同条例は香港の制定法の一部であり、違反した場合、民事上および刑事上の責任を問われる可能性があります。買収に最も関連性のある条項には、以下のものがあります。

  • 香港の上場企業の取締役、最高経営責任者、大株主は、当該企業に対する議決権持分を開示しなければなりません。
  • 香港の上場企業は、重要な非公開情報を取り扱う際には所定の基準に従う義務があります。
  • インサイダー取引やその他の類型の市場不正行為は刑事犯罪に該当します。

印紙税条例

印紙税条例(Stamp Duty Ordinance)は、香港で設立された企業の株式、香港の上場株式、および香港に所在する不動産のあらゆる譲渡について、印紙税の支払いを義務付けています。株式譲渡には従価印紙税を支払う必要があり、その額は時価または支払対価のいずれか高い方の0.26%です。不動産譲渡の場合はより複雑で、印紙税は4種類あり、売主と買主の地位、および不動産の性質と用途に応じて支払います。

取引構造

香港には、会社条例に基づく同一グループ内の企業の合併を除き、裁判所が関与しない合併の制度はありません。香港企業の買収は、株式売却または資産売却を通じて行われます。

香港の上場株式の取得は、株式発行会社の設立地に関係なく、市場買付け、市場外取引および公開買付けの申し出に加えて、企業の本拠地の法律で認められているその他の手段により、実施することができます。

外国投資

香港の「積極的不干渉主義」の原則は広く知られていますが、それにもかかわらず、香港政府は近年、経済の方向性により積極的に関与するようになっています。香港政府は、対内投資促進のための財務的インセンティブについては、重要性の高いものを提供していませんが、ここ数年、海外の人材を積極的に誘致しようとしています。

一般原則として、香港では、外国人投資家は香港の投資家と同等に扱われます。以下にその例を挙げます。外国人投資家は香港で設立された企業を完全に所有・管理することができます。外国投資には政府の承認は必要ありません。住宅用不動産購入において非居住者に課される追加印紙税を除き、外国人投資家は香港の投資家と同様に土地を伴う不動産を所有することができます。

M&Aの主要な動向

特別目的買収会社(SPAC)。2022年、香港証券取引所はSPACを対象とする新たな上場プロセスを導入しました。SPACとは、過去の事業実績や収益を生み出す事業を持たない「空箱」企業です。SPACは、後日、実際に事業を行う他の企業と合併することを前提に、現時点で上場することができます。

香港のSPAC制度は、逆合併の対象である最小限の事業しか行っていない企業に対する警戒心と、香港の競争力を維持するために市場の資金調達の新たなトレンドを認める必要性との、均衡を図ろうとする同証券取引所の努力を反映しています。しかし、香港のSPAC制度は、投資家の適格性、SPACのプロモーター/ディレクターの資格要件、de-SPAC(非上場企業との合併)ターゲット企業の適格性などの点で、ナスダックの制度に比較してはるかに厳格です。

セカンダリー上場制度。2018年以降、香港証券取引所は、上場規則に合致しない加重議決権構造や変動持分事業体のスキームを持ち、米国に上場している「中国概念(China concept)」企業に対応するため、セカンダリー上場制度を大幅に変更してきました。変更後の制度では、加重議決権構造を持たず、プライマリー上場している大中華圏の非イノベーション関連企業は、時価総額や規制遵守の実績に関する要件に準拠の上、同証券取引所にセカンダリー上場を求めることができます。また、2017年12月15日以前に適格取引所に上場していた大中華圏に「重心(center of gravity)」を置く企業や、適格取引所に上場している非中国系企業は、同証券取引所への重複プライマリー上場を選択できるようになりました。

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