各国の M&A 関連法規の比較: インド

By Raghubir Menon、Jeel PanchalとKetayun Mistry、Shardul Amarchand Mangaldas & Co
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インド

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M&A活動は、魅力的なバリュエーションとリターンがの長期投資を求める企業の動向によって、2022年にはパンデミック前の水準に戻りました。その結果、企業の効率性を高めて先進的な改革を実施しようとする政府の努力に後押しされ、またインド企業が投資や買収による成長可能なレベルに達したことから、インドは望ましいM&A投資先国となりました。

Raghubir Menon
Raghubir Menon
パートナー兼M&A・プライベートエクイティ部門リージョナルヘッド
Shardul Amarchand Mangaldas & Co
ムンバイ
Eメール: raghubir.menon@amsshardul.com

インドの魅力は2022年、M&A取引件数と取引額がこれまでのすべての記録を上回る結果を導きましたが、これは拡大、統合、そしてインド市場への新規参入に牽引されたためです。記録的な水準のキャッシュが市場に投入され、優良資産も利用可能になったことから、取引組成が活発化し、取引額は139%増加しました。

同国の規制の枠組は、利用する投資手段のタイプによって、さまざまな分類を伴う多様な投資経路を提供しています。これにより、国内外の投資家は、仕組取引を通してインドの急速に拡大するセクターを活用することができます。

インドにおけるM&Aは、主として2013年会社法、1999年外国為替法とそれに付随した外国直接投資政策方針並びにインド準備銀行が発行した通達・通知・マスターディレクション、1992年インド証券取引委員会法とそれに伴ってインド証券取引委員会(SEBI)が発行した通達・通知・ガイドライン・ディレクション、2022年競争法、並びに上記法律に基づくさまざまな規則によって管理されています。

重点分野

ネット・ゼロ・エミッションを達成するために不可欠な手段として、インド経済ではグリーン・ファイナンスが注目を集めています。より環境に優しい経済への移行は、サステイナブルな投資手法、再生可能エネルギー資産、炭素税回避などの取り組みによって進められています。

グリーン・ファイナンスの機会への関心の高まりは、銀行、ノンバンク金融機関、ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティファンドなどに見られます。

銀行、金融サービス、保険、ヘルスケア、エネルギー、製造業などの伝統的セクター(への投資)は、50%増の280億米ドルとなりました。

環境・社会・ガバナンス(ESG)投資は、2022年にブレイクアウト・テーマとして浮上し、クリーン・エネルギーと電気自動車への投資が先導役となって、約79億米ドルに達しました。

ESG 投資

Jeel Panchal, Shardul Amarchand Mangaldas & Co in Mumbai
Jeel Panchal
シニア・アソシエイト
Shardul Amarchand Mangaldas & Co
ムンバイ
Eメール: jeel.panchal@amsshardul.com

2022年の省エネルギー(改正)法の告示と共に、規制当局はESGへのフォーカスを強めています。その対策には、再生可能エネルギーの発電・配電プロジェクトに対する100%外国直接投資の認可、投資信託のESGカテゴリー導入、グリーン・エネルギーへの転換を促進するための3500億インドルピー(43億米ドル)の支出、「国家グリーン水素ミッション」の承認、SEBI並びに2013年会社法に定める事業責任とサステイナビリティに関する報告の枠組みに基づいた、ESG関連開示の義務化などがあります。

インドにはまた、多くのESG注力型のファンドが参入しており、明らかな牽引力があることを示しています。一例として、Aavishkaar Group のインパクト投資部門で、ムンバイに本社を構える Aavishkaar Capital は、ドイツの投資・開発銀行KfWと共同で、2億5000万米ドルのESG優先ファンドを立ち上げると発表しました。同ファンドは、アジアとアフリカへの投資に重点を置いて中堅企業のESG活動を強化し、成長資金を提供します。

企業側もまた、ESGへの取り組みを進めています。例えば、JSWセメントは、MUFGバンク・インディアと40億インドルピー(5000万米ドル)の初のサステイナビリティ連動ローンの契約を締結しました。同社はサステイナビリティへのフォーカスを一層強めつつ、この資金を投入して年間2500万トンの生産能力目標を達成する計画です。

保険

プライベートエクイティ投資の増加とともに、カスタマイズされたリスク商品の出現や、経験豊富なアンダーライターのエコシステムの発展、そしてソリューション志向のカウンセリングを提供するアドバイザーなどが、保証・賠償保険への道を開く重要な指標の一部を成しています。

保証・賠償保険市場とコンフォート保険事業者の発展に伴い、「免責金額」(タイトルリスクの免責額ゼロを含む)の削減、保険料の引き下げ、および被保険者側に有利な条件が、保険商品の価値提案の説得力を増しています。

バリュエーション

安定と低金利と右肩上がりのバリュエーションが10年間続いた後、M&A業界の主な懸念は、膨張したバリュエーションと、投資家の期待と投資企業または売手からの希望価額との大きなギャップでした。流動性が世界中で逼迫する中、バリュエーションは健全な数値に戻りつつあります。投資家は、フィンテック・セクターのみならず、エドテック(教育xテクノロジー)や、動きの速い消費財セクターにおいても、デューデリジェンスを適時に実行し、バリュエーション指標を見直すようになっています。

取引組成における課題

Ketayun Mistry, Shardul Amarchand Mangaldas & Co in Mumbai
Ketayun Mistry
アソシエイト
Shardul Amarchand Mangaldas & Co
ムンバイ
Eメール: ketayun.mistry@amsshardul.com

インドはESGセクターへの資金流入を徐々に増加させていますが、依然として課題に直面しています。多くのセクターは、単に製品の特性や使用している技法が原因で、ESGに貢献することができないのです。企業は、意識的にESGに向かって移行し、より環境に優しいエネルギー源や再生可能エネルギーを利用したビジネスモデルに資本を投資する必要があります。2023年競争法(改正)も、クロスボーダー市場に影響を与える重要な規制の先駆けとなりました。

AmazonやGoogleに代表されるような、コンプライアンスに違反したコングロマリットに対して、その取引を精査したり多額の罰金を課したりすることになるため、ディールメーカー達の間には、厳格な規制の遵守や進行中の取引への影響に関して、不確実感やさらなる懸念が広がっています。

データ保護に関しては、現在インドには独立した法律がなく、個人データの使用は2000年情報技術法によって規制されています。2022年のデジタル個人データ保護法案の導入に伴い、規制当局は、国内外における限定的な目的でのデジタル個人データの処理に対して監視を強化しています。

データ保護への注目度が高まることにより、買収者は対象企業のビジネスモデルを調査し、保有・移転するデータ量を確認するようになるでしょう。

成長の傾向

受託製造、再生可能エネルギー、製薬、ヘルスケアなどの業界におけるM&Aには、プライベートエクイティ投資会社、コングロマリット、ユニコーンが資産を買収し、それらを組み合わせてプラットフォームを構築するというシフトが起きており、それが追い風となっています。例を挙げると、インドのコングロマリットITCは、健康食品ブランドのYogabar への戦略的投資によってその地位を強化し、栄養志向のヘルシーフード市場のシェアを急速に拡大しました。Zomato は、デリバリーサービスの Blinkit を買収したことによってライバル Swiggy との競争を有利にし、即時デリバリー市場に浸透しました。

企業買収が急増する中、HDFC銀行と Housing Development Finance Corp の株式交換による、待望かつ前例のない合併が完了間近となり、純資産約1,680億米ドルのインドで5番目の企業価値となる銀行が誕生するなど、大型案件も見られます。また、Reliance Venture がドイツの小売会社 Metro AG のキャッシュ・アンド・キャリー事業であるMetro Cash & Carry India を買収し、Reliance Industries の小売帝国を拡大したことも、注目に値します。

企業の経営陣や投資家もまた、資本コストの上昇に対応して、資本配分のハードルを上げており、グループ組織の一員として利益拡大の可能性に確信が持てないような不採算会社や非中核事業を売却しています。債務削減は、事業売却の重要な理由の一つです。例えば Citibank はクレジットカード事業で勢いを失い、その支出率は2018年の11% から 2021年の6%へと低下しました。2021年、Citibank はリテールバンキング事業を、クレジットカード発行会社として第4位の Axis Bank に売却することを決定しました。Axis Bank は、Citibank のコンシューマー事業とノンバンク金融資産事業を約1160億インドルピーで買収し、クレジットカード・メンバーが約250万人増加して、インドにおけるトップ3に入るカード事業者となりました。

一方、インド準備銀行は、2022年外国為替管理(外国投資)規則、2022年外国為替管理(外国投資)規制法、2022年外国為替管理(外国投資)ダイレクション(これらを総称して「OI(外国投資)ガイドライン」)を導入し、より広範な経済活動を対象とし、承認の必要性を軽減するなど、既存の規制構造の合理化と自由化を行いました。これらの「OIガイドライン」の強化は、今後数十年に渡っての取引組成を容易にしようという政府の目標に対する、国内外のプレーヤーの信頼を高めるでしょう。

要点

インドは今や世界経済における重要なプレーヤーの一国であり、その経済規模は2025年までに5兆米ドルになると予想されます。このため同国は投資や買収の対象として魅力的な市場となっており、取引価額で見ても市場は一貫して成長し続けています。筆者は現在、マクロ経済要因が今年の成り行きを左右すると予想しております。PwC のインド案件に関する報告書は、エネルギーおよびインフラ部門、製造業、ESGが好調な年となると示唆しています。

さらに、金融サービス、テクノロジー、ヘルスケア、エネルギーと電力、および資本財が、価値創出と市場シェアの両面で引き続き活発な動きを見せると予想されます。インド企業とのM&A案件を組成する際には、グローバルプレーヤーも国内プレーヤーも、法律や規制の変化に合わせると同時に、インドにおける取引組成の過去の例との関係も重視する必要があります。

Shardul Amarchand Mangaldas & Co

Express Towers, 23rd Floor

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Maharashtra – 400 021, India

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