各国の M&A 関連法規の比較: ベトナム

By Tram Ngoc Bich Nguyen、Duong Duy NguyenとNguyen Khoi Le、Tilleke & Gibbins
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トナムへの外国投資は引き続き有望です。外国投資庁による2023年の直近の報告では、1月1日から3月20日の期間に外国人投資家が新たに登録した資本金、株式購入のための調整後拠出資本金および資本拠出の総計は54億5000万米ドル近くとなり、外国投資プロジェクトからの実現資本金は43億米ドルを超えると推定されています。

Tram Ngoc Bich Nguyen, Tilleke & Gibbins
Tram Ngoc Bich Nguyen
パートナー
Tilleke & Gibbins
ホーチミン市
電話: +84 28 6284 5668
Eメール: tram.n@tilleke.com

これらの統計は、投資先としてのベトナムの魅力が高まっていることを浮き彫りにし、また、その経済が力強く成長していることを反映しています。テクノロジー、メディア、通信などのセクターでは、急速なデジタル化を受けてM&A件数が増加すると予想されます。自動車産業と工業製造業では、持続可能性に関連して事業売却が実施されるとみられます。

2015年以降、ベトナムでは法的枠組みの強化と市場統制の効率化に向けてさまざまな施策が実施されてきました。その結果、税制、投資、競争、電子商取引の各分野において政府による監督が改善されました。間接移転に関する課税の抜け穴がふさがれ、投資と競争に関する規則の強化により競争条件が平準化され、電子商取引のための明確な枠組みが確立されました。

重要な法律問題

事業活動はベトナム標準産業分類に従って分類されます。この分類に基づき事業運営に必要な認可、許可、規制が決定されるとともに、特定分野への投資を検討する外国人投資家に向けたガイドラインが定められています。

外資規制は、事業活動に基づいて実施され、外国人の所有権の制限や、株式保有や事業要件などの外国人投資家に課される条件が含まれます。これらの制限は、ベトナムが締結した国際条約と国内法によって規定されます。

外資規制の例には、以下のようなものがあります。

  • 外国人投資家は広告事業の資本金の99.99%までしか所有できません。
  • 外国投資を受けた企業の建物購入は自社で使用する目的に限られ、他者に転貸することはできません。
  • 外国人が100%所有する銀行の所有者は、少なくとも100億米ドルの資産を保有していなければなりません。
  • 病院プロジェクトに投資する外国人投資家は、少なくとも2000万米ドルをプロジェクトに出資しなければなりません。
Duong Duy Nguyen, Tilleke & Gibbins
Duong Duy Nguyen
シニアアソシエイト
Tilleke & Gibbins
ホーチミン市
電話: +84 28 6284 8184
Eメール: duong.n@tilleke.com

このため、外国人投資家がM&Aを実施するにあたっては、現地投資家と同じように対象企業や資産を取得できないため、より多くの労力が必要になります。これにより、規模や大きさがグローバルなプレーヤーと競争できる水準に達していない地元企業が守られ、成長・発展するための時間を与えられることになります。

計画投資局、計画投資省、国家競争委員会などのベトナムの規制機関は門番の役割を果たし、M&Aの実施許可に先立って、外国人投資家の財務能力やM&A取引の市場への影響を評価します。また、銀行資金の移動や法的所有権の移転に関する承認も行います。

外国人投資家の中には、外資規制を回避して投資を実行するために、斬新な構造の取引の組成に多大な時間と資金を投入する者もいます。そのため、ベトナムの規制当局は学習し、適応しています。

2020年、ベトナムでは投資法が制定され、2021年に施行され、これにより重大な変化がもたらされました。同法には、投資家の「見せかけ」の取引に対してベトナムの投資登録当局が法廷で異議を申し立て、対象企業の事業の一部または全部を終了させることができるプロセスが規定されています。このリスクは外資規制の回避を意図する取引構造すべてに及びます。

また、ベトナムの規制当局に直接相談し、パイロット・プログラムや特別免除という形で外資規制の例外を求める外国人投資家もいます。これは、取引構造に創造性を発揮するよりもはるかに安全な選択肢です。しかし、このような外国人投資家は、多くの場合、規模が非常に大きく、政府高官との交流が可能で強い影響力を持っています。したがって、投資家によっては、この選択肢は現実的ではないかもしれません。

2020年投資法によって導入されたM&A承認制度において留意すべき変更点の一つに、外国人投資家が特定の地域(島、国境および沿岸部の村、ならびに国防および安全保障に影響する地域を含みます)で土地使用権を持つベトナム企業の株式を取得する場合、投資当局の承認が必要となることが挙げられます。この要件により、現実的な問題が2つ生じます。まず、対象企業は土地使用権を申告し、投資当局が評価を実施するための裏付け書類を提出しなければなりません。次に、M&A承認プロセスには、投資当局が承認に先立って、安全保障と国防に関する条件について国防省と公安省と協議するという不透明なプロセスが含まれているため、承認が否認されたり遅滞したりする可能性があります。

Nguyen Khoi Le, Tilleke & Gibbins
Nguyen Khoi Le
アソシエイト
Tilleke & Gibbins
ホーチミン市
電話: +84 24 3772 6688
Eメール: nguyen.l@tilleke.com

2015年以前には、ベトナムには、間接移転、すなわち、ベトナムに所在する直接の対象企業ではなく、海外の持株会社で実施される移転を伴う取引について、法人所得税に関する個別の法律はありませんでした。この問題に対処するため、ベトナムでは2015年に政令12/2015/ND-CPが施行され、ベトナム企業が関与する資本移転および投資プロジェクトのすべてに対する課税の法的枠組みが確立されました。

2018年、ベトナムは新たな競争法を公布し、2019年7月に施行されました。同法により、合併、統合、買収、合弁、その他、法律で規定される活動による経済的集中が一定の基準値に達した場合に、届出が義務付けられました。この基準には、経済的集中に関与する当事者の総資産額、総収益、市場シェアの合計、および総取引額が含まれます。信用機関と保険・証券会社のM&A取引には異なる基準値が適用されます。この制度の重要な点として、オンショアとオフショアの取引が対象に含まれることが挙げられます。

2022年以降、ベトナムの電子商取引規制では、電子商取引の総訪問数、販売者数、総取引数、総取引額における上位5社のうち1社以上を支配することになる外国投資について、公安省の承認が必要とされています。しかし、このリストはまだ産業貿易省から公表されていません。

プロジェクトを含むM&A取引では、プロジェクトや土地に、所有者が慎重に検討する必要のある重要な価値がある場合、プロジェクト企業、土地、プロジェクト開発権の所有権移転が制限されることがあります。一旦プロジェクトの投資家が基本的な承認を受けると、他の投資家が同じ審査プロセスを経ずにプロジェクトに参加するのは難しいかもしれません。このような規制があるため、外国人投資家には、より厳しい審査と多くの承認や要件が適用されます。この条件を満たすことができるのは、ベトナムで魅力的なビジネスチャンスを追い求める真剣な投資家だけであり、その結果、投資家の質が向上するとともに、ターゲット企業の洗練度も上がります。

2019年、ベトナムは世界経済フォーラムの世界競争力指標が10ランク上昇し、67位になりました。また、ベトナムはASEANで唯一、「グローバル・ソフトパワー・インデックス2021」で順位を上げ(3ランク上昇)、60カ国中47位となりました。

M&Aに関する紛争

M&A取引に関する紛争では、コストと解決に要する時間の観点から、当事者双方が仲裁を選択する傾向があります。なぜなら、ベトナムの訴訟手続きは依然として煩雑であり、投資家が利用するのは容易ではなく、特に現地の当事者に有利なバイアスが懸念される場合には、仲裁が選択される傾向が高くなります。

M&A取引の多くでは、紛争解決の場としてシンガポール国際仲裁センターが選択されています。しかし、ベトナムの民法典では、外国の要素が含まれる民事事件がベトナムの不動産に対する権利に関するものである場合、ベトナムの裁判所の排他的管轄権に服すると規定されています。

一例を挙げると、ホーチミン市高級人民法院の決定28/2020/QDKDTM-PTでは、対象企業が不動産に対する財産権を有するM&A案件について、裁判所が排他的管轄権を適用しました。この事案において、裁判所は違法なプロジェクトの譲渡を目的とする出資契約を無効にしました。したがって、当事者が外国の仲裁所で紛争を解決したものの、それがベトナムの裁判所の排他的管轄権に服する場合、ベトナムで判決を執行できないリスクがあります。

動向と課題

中国と同様、ベトナムも債券や海外融資に対する規制を強化しており、その結果、多数のベトナム企業が流動性の問題に直面しています。そして、金利上昇により、この問題は一層悪化しています。経営が悪化し、資金難に陥る企業の増加を受け、資産や不動産、さらには事業全体の売却でさえ近年は一般的になっています。

全般的な傾向として、M&Aの取引額が減少しています(東南アジアのエグジット額は46%減と大きく落ち込んでいます)。また、不動産セクターや銀行の債権売却など、売り手側が流動性を必要としている状況が推進要因となる傾向があります。

中国からベトナムに移転する企業が増加しています。外国人投資家が、通常の会社設立の手続きを経るよりも早くベトナム市場に参入する方法として、とりわけ、事業のために新規に許認可を取得するための煩雑な手続きを回避する目的で、M&Aを選択する場合もあります。

また、ベトナムでは、環境・社会・ガバナンスに関する報告やコンプライアンスの重要性が一層高まっています。

投資法には、環境に有害な時代遅れの技術を使用するプロジェクトの延長を認めない規定が含まれています。2022年に公布された政令では、今後、温室効果ガス排出削減の要件が規定され、数年間で国内炭素クレジット市場が試験的に創設されることになっています。こうしたなか、持続可能性に取り組む企業が、収益と価値を創出する機会を手にすることになるでしょう。

Tilleke & Gibbins

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