韓国のAI規制枠組みの分析

    By Hwan Kyoung Ko、Il Shin Lee そして Matt Younghoon Mok、Lee & Ko
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    ジタルイノベーションが私たちの世界を根本から変化させている時代には、人工知能(AI)は産業や社会構造を革新する極めて重要な力になります。近年、AI規制のアプローチの明確化を目指す動きが世界的に広がっています。韓国もこれに積極的に取り組んでおり、AIに関する政策と規制枠組み策定において重要な進展を遂げています。

    2019年12月の「人工知能国家戦略」の発表に始まり、2020年12月に「AIに関する法・制度・規制の改善のためのロードマップ」、そして2023年5月には「デジタル権利章典」が発表されており、政府はAI規制の整備を精力的に進めています。

    AIの規制は主に法律に基づき実施され、各業界の規制機関が策定するガイドラインによって補完されます。本稿では、AIに関する韓国の法制度の現状を検討し、個人情報の保護と知的財産権の保護を中心にAIに関連する重要な問題について考察します。これにより、AI規制の複雑さとダイナミクスに取り組むにあたっての韓国の戦略的アプローチが明らかになるでしょう。

    AI法

    Hwan Kyoung Ko, Lee & Ko
    Hwan Kyoung Ko
    パートナー
    Lee & Ko
    ソウル
    電話番号:+82 2 2191 3057 Eメール:khk@leeko.com

    現時点ではAIに関する特定の枠組み法はありませんが、2022年以降、複数のAI関連の法案が国会に提出されました。現在審議中の注目すべき法案は、「AI産業の振興および信頼されるAIの確立の枠組みに関する法律」(AI法)です。

    詳細はまだ確定していませんが、この法律はEUのAI法とは異なり、「まず技術を導入し、その後、規制する」という原則に基づき、AI技術の開発と産業活性化の支援を目的とするものになる、とみられています。また、利用者への事前通知の義務化、信頼性の確保、安全性の維持など、高リスクのAI分野を個別に対象とする義務も提案されています。

    しかし、議論の過程で生成AIやディープフェイクに関する規制を盛り込むことが提案されたほか、市民団体から規制アプローチに対する反対意見が出ており、最終的な法制化にはまだ時間を要する見込みです。

    他にも、韓国ではさまざまな法律に、AIに関連する事項を対象とする規定が含まれています。たとえば、信用情報利用・保護法には、信用情報の主体が、自動化された評価や決定に関して説明を求める権利が規定されており、これには有利な情報を提出する権利や基本情報の訂正や削除を要求する権利も含まれます。

    また、個人情報保護法(PIPA)は、データ主体に、自身の権利または義務に重大な影響を与える自動化された決定を拒否する権利、およびそのような決定について説

    明を求める権利を認めています。注目に値するのは、自動化された決定に関する説明を求める権利は、自動化された決定がデータ主体の権利または義務に重大な影響を与えない場合でも行使できることです。

    さらに、データ主体がこのような自動化された決定を拒否した場合、または説明を要求した場合、データ管理者は、やむを得ない理由がない限り、自動化された決定を適用してはならず、または人間が関与する再処理や説明の提供などの必要な措置を講じなければなりません。

    データ産業の振興およびデータ活用の促進に関する枠組み法は、AIだけを対象にしたものではありませんが、多大な人的・物的投資によって創出された「データ資産」の保護に重点が置かれており、AIの訓練におけるデータ利用に適用される可能性のある規定が含まれています。

    主要な政策と規制の進展

    Il Shin Lee, Lee & Ko
    Il Shin Lee
    パートナー
    Lee & Ko
    ソウル
    電話番号:+82 2 772 5982 Eメール:ilshin.lee@leeko.com

    (1)プライバシーの保護
    AI技術の発展により、個人情報に関して新たなプライバシー上の問題が生じています。このようなプライバシーリスクの出現に対処するため、プライバシーの問題に関する韓国の主要な執行機関である個人情報保護委員会(PIPC)は、2023年8月、「AI時代における個人情報の安全な利用」という政策方針を公表しました。 この方針では、原則に基づく規制アプローチに重点が置かれており、個人情報侵害のリスクを最小限に抑制するとともにAI産業の新興を図ることを目指しています。

    PIPCの方針には、計画、データ収集、訓練、提供などのAIモデル/サービスのライフサイクルの全段階について、包括的なデータ処理基準と保護措置が示されています。また、AIの質向上を目的とするオリジナル映像データの活用を提言し、AI技術の安全な開発と検証の促進に向けて「プライバシー安全地帯」制度を導入しています。

    さらに、AIを対象とする規制サンドボックス制度と事前適合性評価制度が開始されました。この事前適合性評価制度は、新サービスや技術進歩について、PIPAの遵守戦略を規制当局と事業者が協働を通じて考案するための協力の枠組みとして機能します。このようなコンプライアンス計画に準拠する事業者は、事業環境が変化しない限り、行政的措置の対象にはなりません。

    PIPCは2024年2月、AIのイノベーションをさらに推進するため、AI開発における非構造化データ活用支援を目的とする、非構造化データの匿名化に関するガイドラインを公表しました。PIPCは、AIに関する規制枠組みの強化に向けて、「公的個人情報の利用に関するガイドライン」を始め、複数の重要なガイドラインを年内に公表する予定です。

    これらの取り組みは、イノベーションとデータ主体の権利保護の均衡を図りつつ、AIをめぐる状況の進展へのプライバシー規制の適合を目指す韓国政府のコミットメントを示しています。

    (2)知的財産
    AIに関する知的財産の問題は、次の3つの領域に大別できます。

    1. AIモデルの訓練における知的財産保護

    2. AIの生成物による知的財産侵害

    3. AIの生成物の知的財産保護

    Matt Younghoon Mok, Lee & Ko
    Matt Younghoon Mok
    シニア外国弁護士(パートナー)
    Lee & Ko
    ソウル
    電話番号:+82 2 6386 1901 Eメール:younghoon.mok@leeko.com

    AIの訓練の領域では多くの場合、データ収集時、特にオンラインコンテンツからデータを収集するウェブスクレイピングのような手法が用いられる際に問題が生じます。このような行為は、画像、テキスト、プログラムなどのオリジナル作品の著作権を侵害する可能性があります。

    著作権法はAIの訓練への著作物の使用を明示的に認めていないため、著作者の正当な利益の不当な侵害を伴わない「公正な」使用を認める公正使用規定の適用の可否が、しばしば重要な論点になります。

    しかし、AIの訓練に使用されるデータに公正使用規定を適用するべきかについては法曹界でも意見が分かれており、現在も議論が続いています。この分野は今なお、法が形成される過程にあり、この点を直接論じた判例はまだ確立されていません。

    これと並行して、テキストデータマイニング(TDM)規制の導入に向けて、著作権法の改正が検討されています。改正案では、特定の条件下では著作権者の明示的な許諾がなくても、AIの訓練に著作物の使用を認めることが提案されています。この法案は、AI技術の進化に対する著作権法の適合に向けた取り組みを反映するものであり、現在国会で審議されています。

    AIが生成した作品に関して生じる可能性のある知的財産上の問題として、AIの創作物が商標や著名人の肖像権のような既存の知的財産権を、意図せずに侵害する事例が考えられます。しかし現状では、このような問題に対処するための明確な規制や判例はありません。

    AIが生成した作品が知的財産として保護されるかについては、韓国の法解釈ではAIのみが創作した生成物には著作権は認められません。しかし、文化体育観光部が韓国著作権委員会と共同で、2023年12月に「生成AIの著作権に関する指針」を発表したことは注目に値します。この指針において同部は、AIが生成した作品の修正、拡充、編集に人間の創造性が関与している場合、その関与は著作権保護の対象になり得るという見解を表明しました。

    この姿勢には、AIの能力が持つ意味合いと、伝統的な知的財産法の枠組みを調和させるために続けられている努力が反映されています。

    (3)AIの信頼性に関する団体工業規格(Collective Industrial Standard)の確立
    2023年12月、科学技術情報通信部は情報通信技術協会と共同で、団体工業規格として「AIシステムの信頼性向上のための要件」を制定しました。

    団体工業規格とは、工業標準化法に基づき、特定の専門分野に適用される記号、用語、性能、手順、方法、技術に関する規格を定めることにより、公共の安全確保、消費者の保護、および会員の利便性向上のために、政府および政府指定の団体が制定する規格です。

    この団体工業規格には、リスク管理の計画・実施からサービス範囲や対応の対象に関する説明の提供に至るまで、AIシステムの全ライフサイクルにおいて、関係者が遵守しなければならない15の要件が含まれています。これらの要件は、包括的な管理と透明性のある運用の確保により、AIシステムの信頼性を高めることを目的として規定されています。

    結論

    韓国は、AI分野の国際競争力を高めるとともに新たなリスクに対処するため、立法・規制環境を積極的に整備しています。近い将来、成立する見込みのAI法により規制枠組みが刷新され、その影響は広範囲に及ぶでしょう。

    2024年3月に施行される、改正PIPAに設けられる自動化された意思決定に関する規定は、AIを導入している業界に多大な影響を与えることでしょう。2024年のAI法の施行と業界向けガイドラインの導入に備え、状況の進展を注意深く見守り、分析することが極めて重要です。

    Lee & Ko

    LEE & KO
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