台湾:“AIの精”を制御するために

    By Ken-Ying Tseng、Sam Huang、Lily KuoそしてChi Lee, Lee and Li
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    人工知能の急速な進歩は、世界中に法的な地雷原を作り出しています。本稿では、著作権、金融、政府の取り組み、データプライバシーの分野における台湾のAIに対するアプローチを考察します。

    AIと著作権

    AIは、著作権保護に関する懸念を引き起こしています。まず問題になるのは、AIが生成した作品に著作権が認められるかどうかという点です。2018年、台湾知的財産局(TIPO)は、台湾の著作権法は「人間」による創作物のみを保護の対象としているため、AIによる生成物に著作権は認められないという見解を表明しました。

    Ken-Ying Tseng, Lee and Li
    Ken-Ying Tseng
    パートナー
    理律法律事務所(台北)
    電話番号:+886 2 27638000 内線2179
    Eメール:kenying@leeandli.com

    ChatGPTの普及により、同じ問題が再び浮上しています。そして今回も、世界中の著作権保護機関が同じ姿勢を取っています。TIPOは米国特許商標庁と同様に、著作権が認められるかどうかは創作過程における人間の関与の度合いによって決まる、という見解を示しています。人間の創作者による関与の度合いが高いほど、その作品が著作権により保護される可能性が高くなります。

    創作者の寄与がAIシステムへの入力プロンプトの提供のみである場合、その作品は著作権により保護されない可能性があります。しかし、生成AIツールが飛躍的に進歩し、使用事例が大量に出現する中、創作プロセスにおいて求められる人間の関与の度合いを決定するのは難しくなる一方でしょう。

    また、AIモデルの訓練についても、使用される素材に著作物が含まれている可能性があるため、著作権侵害の懸念が伴います。著作権者が、AI開発者は適切な許諾を取得せずに自身の作品をAIモデルに学習させたと主張するかもしれません。これに対して、AI開発者は主に次の2点について主張することができます。

    • 生成AIに使用されたデータが著作権で保護されているか
    • 保護されている場合、アルゴリズム学習による生成物が公正な使用の要件を満たしているか

    台湾では、AIに関連する著作権をめぐる重要な訴訟はこれまで提起されていませんが、裁判所はいずれ、そのような訴訟に直面することになるでしょう。AI技術の進歩を促進するには、従来の公正使用理論を調整する必要があるかもしれません。AI技術の進歩に伴い、AIを創作に取り入れることで創作者もメリットが得られる可能性が生じています。利害関係者すべてが、AIの開発と著作権保護の均衡に努める必要があります。

    金融におけるAI

    Sam Huang, Lee and Li
    Sam Huang
    シニア弁護士
    理律法律事務所(台北)
    電話番号:+886 2 27638000 内線2360
    Eメール:samhuang@leeandli.com

    台湾の金融市場においてAI技術を利用する動きが拡大していることを受け、台湾金融監督管理委員会は昨年12月、金融業界におけるAI利用に関するガイドライン案を公表し、一般社会から意見を求めました。ガイドライン案は、同委員会の「金融業界におけるAI活用のための基本原則と関連方針」に基づいて作成されました。この基本原則の6つのポイントについて、以下で概説します。

    • ガバナンスと説明責任のメカニズムの確立 金融機関は、使用するAIシステムについて社内外に対して責任を果たす必要がある。これには、AI関連の活動の監督を担う上級経営幹部の任命や、内部統制の枠組みの確立が含まれる。
    • 公正の価値と人間中心のアプローチの重視 金融機関は、AIシステムの利用において、アルゴリズムのバイアスによって不公平が生じないよう努めなければならない。AIは人間中心の原則に基づいて活用されるべきであり、法の支配、民主的価値観、人間の統制が尊重されなければならない。
    • プライバシーと顧客の権利の保護 金融機関は、消費者のプライバシーを十分に尊重・保護し、顧客データを適切に管理・利用する必要がある。
    • システムの堅牢性と安全性の確保 金融機関は、消費者や金融システムへの危害を防ぐため、自社のAIシステムの堅牢性と安全性を確保しなければならない。
    • 透明性と解釈可能性の向上 金融機関は自社のAIシステムの透明性と解釈可能性を確保する必要がある。金融機関がAIを用いて消費者に直接対応する場合、適切に情報を開示するべきである。
    • 持続可能な開発の促進 金融機関は経済的・社会的不平等の軽減と、包摂的成長、持続可能な開発、社会福祉の促進に努めなければならない。また、AI導入プロセスにおいて従業員にトレーニングを提供するべきである。

    同委員会のガイドライン案は拘束力のない行政指導であり、リスクベースの評価枠組みとアプローチの導入を通じて、金融機関にAIの慎重な利用を促すためのベストプラクティスを示しています。金融機関は、リスクベースの評価の実施にあたって以下の点を検討するよう求められています。

    • AIシステムを顧客サービスに直接利用するのか、内部管理に利用するのか
    • 個人データの機微性
    • AIシステムの自律性のレベル
    • AIシステムの複雑さ
    • 利害関係者への影響
    • 救済措置が必要になる可能性

    金融機関は評価結果に基づき、記録の保持、承認プロセスの確立、監査または評価の実施などの適切なリスク管理策を決定する必要があります。委員会のガイドライン案では、AIシステムが第三者プロバイダーによって設計または運用される場合には、リスク評価、監督、責任分担の実施が重要であることも強調されています。

    政府

    Lily Kuo, Lee and Li
    Lily Kuo
    アソシエイト・パートナー
    理律法律事務所(台北)
    電話番号:+886 2 27638000 内線2190
    Eメール:lilykuo@leeandli.com

    多くの人が、最近のAIの進歩を第4次産業革命として歓迎しています。AIは人類の未来の生活や産業の発展に対して、過去の3つの産業革命よりも重大な影響を与えると予測されています。

    これを受け、台湾政府はAI台湾行動計画(2018年~21年)およびAI台湾行動計画2.0(2023年~26年)を策定しました。それぞれ、国内のAI産業の振興と産業の変革の推進を目的とする4カ年計画です。これらの計画は、経済を新たな次元へと飛躍させるために、来るべきAI革命における競争優位性を国内産業に与えています。

    AI台湾行動計画1.0と2.0の重点領域

    • AI人材の育成 大学や研究機関は、上級レベルのスマートテクノロジー研究者を育成してきました。毎年1万人超が資格を持つAI技術者やアプリケーション専門家になっています。
    • 法令面の自由化と検証の場の開設 陸上、海上、空中の自動運転車両の規制のため、無人車両技術革新実験法が制定されました。さらに、自律走行車のテストのための国内初のクローズフィールド試験場として台湾CARラボ(Connected, Autonomous, Road-test Laboratory)が開設されました。
    • AIによる産業の変革 AIの専門家は、産業界のニーズに沿って、イノベーションとデジタルトランスフォーメーションを加速させるソリューションを開発しています。一例として、台北市政府では、安全性と交通監視の強化を目的として、スマート照明、安全警報、AIによる車両認識などの機能を取り入れたスマート・スケール・プロジェクトが実施されました。
    • AIの影響への対処 行動計画では、社会の要望に応えるため、すべての人がAIの恩恵を受けられるように、労働力不足、高齢化社会、生活の質向上の必要性などの問題の解決にAIソリューションを活用する必要性が強調されています。

    この10年間の傾向として、台湾政府は、公共部門で政府主導のAIイニシアチブを積極的に実施するよりは、むしろ民間部門のAIソリューション開発を促すのための枠組みや支援の提供に重点を移しています。

    AI台湾行動計画2.0では、偽情報、プライバシー侵害、サイバーセキュリティなど、AIの普及拡大に伴うリスクに対する懸念の増大を踏まえ、信頼性のあるAI運用フレームワーク構築に向けて、AIの倫理に重点を置く規制の導入と国際的に認められた規範と基準の確立を目指しています。

    データプライバシー

    Chi Lee, Lee and Li
    Chi Lee
    アソシエイト・パートナー
    理律法律事務所(台北)
    電話番号:+886 2 27638000 内線2158
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    AIツールは自動化された決定を行うために、個人のデータや属性を頻繁に使用します。EU一般データ保護規則では、データ管理者に自動化された意思決定の存在の開示が義務付けられていることに加え、データ主体には自動化された意思決定のみの対象にされない権利が認められています。しかし、台湾個人データ保護法には、このような開示義務やデータ主体の権利は規定されていません。

    しかし、台湾政府はEUの十分性認定を取得するため、2018年から個人データ保護法の改正を準備してきました。改正案はまだ公表されていませんが、改正によりEUの法制度との類似性が強まり、おそらく透明性と解釈可能性の要件が盛り込まれると予想されます。

    一方、台湾の金融監督管理委員会のガイドライン案では、データ保護に関する以下の基本原則が詳細に説明されています。

    • 金融機関がAIシステムを利用する際には、次の措置を講ずることにより、アルゴリズムのバイアスによって不公平が生じないよう努めなければなりません。(1)データセットの潜在的なバイアスに常に注意を払う、(2)個人の属性に依拠してAIが行う決定に合理的な根拠があることを確認する。
    • 金融機関がAIシステムを用いて金融サービスを提供する場合には、顧客のプライバシーを保護し、AIを利用するサービスを利用しないという顧客の意思を尊重する必要があります。これには以下のものが含まれます。(1)「データ最小化」の原則を遵守する、(2)顧客にAIを利用するサービスに代わる選択肢を提供する。
    • 金融機関がAIシステムを用いて顧客に対応する場合には、透明性と解釈可能性を確保する必要があります。これには以下のものが含まれます。(1)顧客の権利や利益がどのように影響を受けるかを顧客に通知する、(2)AIアルゴリズムがどのように機能するかを説明する、(3)予測や意思決定のプロセスを開示する。

    台湾の政府当局は、現段階でAIを規制する法律を制定するよりは、原則として拘束力のない行政指導であるガイドラインの公表を通じて業界の自主的な規制に委ねる傾向があります。

    金融委員会のガイドライン案はまだ正式に発表されているわけではなく、金融機関の参考資料としてのみ提供されているだけですが、AIアルゴリズムの個人データ処理への利用と将来義務付けられる可能性のある要件に関する台湾政府の姿勢を、かなりの程度反映しているとみられます。

    Lee & Ko

    理律法律事務所
    8F, No 555, Sec 4, Zhongxiao E Rd,

    Taipei 11072, Taiwan, ROC

    電話番号:+886 2 2763 8000

    Eメール:attorneys@leeandli.com
    www.leeandli.com

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