ESG規制の地域比較:韓国

    By Kim Hongkyun, Kim Sangmin と Kim Yun Sung, Lee & Ko
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    韓国では、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する懸念に対処するための、包括的な規制枠組みが策定されています。気候危機の深刻な影響を軽減し、カーボンニュートラル社会への移行を促進するための法的基盤となるのが、気候変動危機に対処するためのカーボンニュートラルとグリーン成長に関する枠組み法です。社会法の主要な対象は労働者の権利、公正取引、消費者保護である一方、ガバナンスに関する法では透明性、説明責任、責任ある投資慣行に重点が置かれています。

    ESG問題に対する関心が世界的に高まっていることを受け、韓国ではフレームワークやガイドラインの策定を通じて、ESGに関する企業責任が拡大されています。企業は、これらのフレームワークを通じて、ESGに関して考慮すべき事項を、事業運営や意思決定プロセスに組み込んでいくことができます。透明性を高め、ステークホルダーが必要な情報を入手できるようにするため、情報開示を義務付ける規制も導入されています。また、国内で事業を展開する企業がデューデリジェンスを徹底し、サプライチェーンにおける人権侵害や環境リスクへの対処を図るために、立法措置も検討されています。

    環境法

    Kim Hongkyun
    Kim Hongkyun
    パートナー
    Lee & Ko(ソウル)
    電話: +82 2 6386 0899
    Eメール: hongkyun.kim@leeko.com

    韓国の環境規制の枠組みは、憲法的性格を持つ基本法として機能する環境政策に関する枠組み法と、種々の汚染源を対象とする70超の個別環境法により構成されています。この広範な枠組みには、ESG原則と密接に連携する重要な個別法がいくつか含まれており、それらについては詳細に論じる価値があります。

    大気、水、土壌。大気と水質は、大気汚染防止法、水管理に関する枠組み法、水環境保全法によって規制されています。土壌汚染防止法では土壌汚染に関する事項が規制されており、汚染物質の廃棄の禁止や土壌汚染についての責任の賦課が規定されています。

    廃棄物と資源循環。固形廃棄物および有害廃棄物の収集、運搬、保管、リサイクル、処分は、廃棄物管理法、資源の保全およびリサイクルの促進に関する法律、資源循環に関する枠組み法に基づき管理されています。

    化学物質。化学物質の上市は、化学物質の登録及び評価等に関する法律(K-REACH)により規制されています。化学物質管理法の規制対象は、国内市場で販売される化学物質の使用です。また、生活化学製品及び殺生物剤の安全管理に関する法律(K-BPR)により、特定の消費者向け化学製品に安全性基準と表示基準が課され、また、殺生物剤の製造業者と輸入業者に対し、その使用についての事前承認の取得が義務付けられています。

    気候変動とエネルギー利用。韓国では、温室効果ガス排出許容量の割当及び取引に関する法律に基づき、排出量取引制度(K-ETS)が設けられており、温室効果ガス排出量の価格設定と排出許容量の取引を可能にする、市場ベースのアプローチが導入されています。エネルギー利用合理化法は、エネルギー効率の向上とエネルギー消費が環境に与える影響の軽減を目的としています。

    その他。上記以外にも、生物多様性の保全及び利用に関する法律やグリーン製品購入促進に関する法律などの環境関連の法律が制定されています。

    社会法

    Kim Sangmin
    Kim Sangmin
    パートナー
    Lee & Ko(ソウル)
    電話: +82 2 772 5954
    Eメール: sangmin.kim2@leeko.com

    競争保護。違法なカルテル行為や不公正な取引慣行を規制する主要な法律は、独占規制及び公正取引に関する法律です。これに加えて、公正な競争と健全な事業慣行の促進を目的として、表示及び広告の公正化に関する法律、下請取引公正化法、代理店取引の公正化に関する法律、大規模流通業における取引の公正化に関する法律が制定されています。

    製品の安全性と消費者保護。製品の安全性に関する枠組み法、消費者に関する枠組み法、電気用品及び生活用品安全管理法、製造物責任法、食品衛生法が、製品の安全性と消費者保護の確保のための枠組みとなる主要な法律です。

    労働。労働関係の規制の基盤となるのは労働基準法です。他方、労働安全衛生法と重大災害処罰法には、職場における従業員の福利と安全を確保するための規制が定められています。

    人権。韓国刑法、国家人権委員会法、児童福祉法が、人権の擁護と保護に寄与する重要な法律です。国家人権基本計画の法的基盤を強化し、国際基準を国内の政策に取り入れるため、政府は2021年、「人権政策に関する枠組法」の草案を公表し、現在立法手続きが進行中です。

    データ保護。個人情報保護法は、個人情報の収集、利用、開示の規制を通じて個人のプライバシーと個人情報を保護することを目的とする法律です。「情報通信網利用促進及び情報保護に関する法律」では、情報通信ネットワークを通じて送信されるデータの保護に、焦点が当てられています。信用情報利用及び保護に関する法律は、信用情報の体系的な管理と不正利用の防止を通じてプライバシーを保護することを目的としています。

    ガバナンスに関する法

    Kim Yun Sung, Lee & Ko
    Kim Yun Sung
    アソシエイト
    Lee & Ko(ソウル)
    電話: +82 2 6386 7909
    Eメール: yunsung.kim@leeko.com

    代理人の義務。商法は、企業における取締役と監査役の職務について規定しています。また、刑法では、職務の遂行中になされた業務上横領や背任などの違法行為が規制されています。

    情報開示。財務報告その他の開示における透明性、説明責任、公正性について規定する主要な法規制は、金融投資サービス及び資本市場法、証券市場における開示に関する規則、株式会社の外部監査に関する法律などです。

    企業集団。一般に財閥と呼ばれるコングロマリットや大規模企業グループの活動は、独占規制及び公正取引に関する法律と金融会社のコーポレート・ガバナンスに関する法律によって規制されています。

    汚職防止。汚職防止ならびに汚職防止及び公民権委員会の設置及び運営に関する法律、不適切な勧誘及び接待に関する法律、国際商取引における外国公務員に対する贈収賄の防止に関する法律が、汚職を規制する主要な法律です。

    ESGに関する責任の拡大

    Kタクソノミーは、サステナブル投資の促進に向けて、環境技術及び環境産業支援法に基づいて策定された枠組みです。2021年12月の当初の草案公表に続き、2022年12月には原子力発電に関する追加事項を盛り込んだ改正案が公表されました。新たなグリーンボンド・ガイドラインは、グリーンウォッシュ債券の発行防止を通じて、グリーンボンド投資の信頼性を高め、グリーンボンド市場の活発な成長を促進することを目的として、2023年1月に導入されました。

    企業のESGに関する実績を過大表示するグリーンウォッシュ行為は、表示及び広告の公正化に関する法律や、環境技術及び環境産業支援法によって規制されていますが、実務において具体的な基準を判断することが難しいため、実際に罰金や罰則が科される事例は限られています。この問題を認識した公正取引委員会と環境部は、グリーンウォッシュ行為特定のための明確な基準の確立に向けて、規制改正とガイドライン策定に取り組んでいます。

    開示に関する規制。

    2021年、金融委員会は持続可能性報告に関する規則を導入しました。この規制は段階的に実施される予定です。2025年末までに、韓国総合株価指数(KOSPI)の対象企業のうち、資産が2兆ウォン(7,600億米ドル)を超える企業に適用され、2030年末までにはKOSPI企業すべてに適用が拡大される予定です。本年中にESG情報開示制度のロードマップが公表され、報告義務の対象となる企業の概要や開示基準の詳細が示される予定です。

    環境技術及び環境産業支援法では、企業は2022年以降、資源・エネルギーの保全と環境汚染物質の削減に関する環境管理システム、目標、実績の開示を義務付けられています。また韓国取引所は、上場企業を対象とするコーポレート・ガバナンス報告書に関するガイドラインを公表しました。2022年以降、総資産1兆ウォン以上のKOSPI上場企業に対して、コーポレート・ガバナンス報告書の作成および開示が義務付けられています。

    自主的開示

    韓国コーポレート・ガバナンスサービスは2021年、ESGベストプラクティスガイドラインの改訂版を公表しました。このガイドラインはESG評価に活用されてきました。また、国内の上場企業のESG管理基準や政府の各種政策が策定される際に参考にされています。

    EUの企業持続可能性デューデリジェンス指令などの、サプライチェーンの人権と環境のデューデリジェンスに関する法制定の進展を受け、韓国では2022年12月、サプライチェーン管理のためのK-ESGガイドラインが導入されました。サプライチェーンの持続可能性向上には、包括的システムの確立が重要であるという認識が広まっており、現在、これに関する立法案がさまざまなステークホルダーによって議論されています。

    Lee and Ko

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    Jung-gu, Seoul 04532 South Korea

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    www.leeko.com

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