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インド

M&A活動は、魅力的なバリュエーションとリターンの長期投資を求める企業の動向によって、2022年にはパンデミック前の水準に戻りました。その結果、企業の効率性を高めて先進的な改革を実施しようとする政府の努力に後押しされ、またインド企業が投資や買収による成長可能なレベルに達したことから、インドは望ましいM&A投資先国となりました。

Raghubir Menon
Raghubir Menon
パートナー兼M&A・プライベートエクイティ部門リージョナルヘッド
Shardul Amarchand Mangaldas & Co
ムンバイ
Eメール: raghubir.menon@amsshardul.com

インドの魅力は2022年、M&A取引件数と取引額がこれまでのすべての記録を上回る結果を導きましたが、これは拡大、統合、そしてインド市場への新規参入に牽引されたためです。記録的な水準のキャッシュが市場に投入され、優良資産も利用可能になったことから、取引組成が活発化し、取引額は139%増加しました。

同国の規制の枠組は、利用する投資手段のタイプによって、さまざまな分類を伴う多様な投資経路を提供しています。これにより、国内外の投資家は、仕組取引を通してインドの急速に拡大するセクターを活用することができます。

インドにおけるM&Aは、主として2013年会社法、1999年外国為替法とそれに付随した外国直接投資政策方針並びにインド準備銀行が発行した通達・通知・マスターディレクション、1992年インド証券取引委員会法とそれに伴ってインド証券取引委員会(SEBI)が発行した通達・通知・ガイドライン・ディレクション、2022年競争法、並びに上記法律に基づくさまざまな規則によって管理されています。

重点分野

ネット・ゼロ・エミッションを達成するために不可欠な手段として、インド経済ではグリーン・ファイナンスが注目を集めています。より環境に優しい経済への移行は、サステイナブルな投資手法、再生可能エネルギー資産、炭素税回避などの取り組みによって進められています。

グリーン・ファイナンスの機会への関心の高まりは、銀行、ノンバンク金融機関、ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティファンドなどに見られます。

銀行、金融サービス、保険、ヘルスケア、エネルギー、製造業などの伝統的セクター(への投資)は、50%増の280億米ドルとなりました。

環境・社会・ガバナンス(ESG)投資は、2022年にブレイクアウト・テーマとして浮上し、クリーン・エネルギーと電気自動車への投資が先導役となって、約79億米ドルに達しました。

ESG 投資

Jeel Panchal, Shardul Amarchand Mangaldas & Co in Mumbai
Jeel Panchal
シニア・アソシエイト
Shardul Amarchand Mangaldas & Co
ムンバイ
Eメール: jeel.panchal@amsshardul.com

2022年の省エネルギー(改正)法の告示と共に、規制当局はESGへのフォーカスを強めています。その対策には、再生可能エネルギーの発電・配電プロジェクトに対する100%外国直接投資の認可、投資信託のESGカテゴリー導入、グリーン・エネルギーへの転換を促進するための3500億インドルピー(43億米ドル)の支出、「国家グリーン水素ミッション」の承認、SEBI並びに2013年会社法に定める事業責任とサステイナビリティに関する報告の枠組みに基づいた、ESG関連開示の義務化などがあります。

インドにはまた、多くのESG注力型のファンドが参入しており、明らかな牽引力があることを示しています。一例として、Aavishkaar Group のインパクト投資部門で、ムンバイに本社を構える Aavishkaar Capital は、ドイツの投資・開発銀行KfWと共同で、2億5000万米ドルのESG優先ファンドを立ち上げると発表しました。同ファンドは、アジアとアフリカへの投資に重点を置いて中堅企業のESG活動を強化し、成長資金を提供します。

企業側もまた、ESGへの取り組みを進めています。例えば、JSWセメントは、MUFGバンク・インディアと40億インドルピー(5000万米ドル)の初のサステイナビリティ連動ローンの契約を締結しました。同社はサステイナビリティへのフォーカスを一層強めつつ、この資金を投入して年間2500万トンの生産能力目標を達成する計画です。

保険

プライベートエクイティ投資の増加とともに、カスタマイズされたリスク商品の出現や、経験豊富なアンダーライターのエコシステムの発展、そしてソリューション志向のカウンセリングを提供するアドバイザーなどが、保証・賠償保険への道を開く重要な指標の一部を成しています。

保証・賠償保険市場とコンフォート保険事業者の発展に伴い、「免責金額」(タイトルリスクの免責額ゼロを含む)の削減、保険料の引き下げ、および被保険者側に有利な条件が、保険商品の価値提案の説得力を増しています。

バリュエーション

安定と低金利と右肩上がりのバリュエーションが10年間続いた後、M&A業界の主な懸念は、膨張したバリュエーションと、投資家の期待と投資企業または売手からの希望価額との大きなギャップでした。流動性が世界中で逼迫する中、バリュエーションは健全な数値に戻りつつあります。投資家は、フィンテック・セクターのみならず、エドテック(教育xテクノロジー)や、動きの速い消費財セクターにおいても、デューデリジェンスを適時に実行し、バリュエーション指標を見直すようになっています。

取引組成における課題

Ketayun Mistry, Shardul Amarchand Mangaldas & Co in Mumbai
Ketayun Mistry
アソシエイト
Shardul Amarchand Mangaldas & Co
ムンバイ
Eメール: ketayun.mistry@amsshardul.com

インドはESGセクターへの資金流入を徐々に増加させていますが、依然として課題に直面しています。多くのセクターは、単に製品の特性や使用している技法が原因で、ESGに貢献することができないのです。企業は、意識的にESGに向かって移行し、より環境に優しいエネルギー源や、再生可能エネルギーを利用したビジネスモデルに資本を投資する必要があります。2023年競争法(改正)も、クロスボーダー市場に影響を与える重要な規制の先駆けとなりました。

AmazonやGoogleに代表されるような、コンプライアンスに違反したコングロマリットに対して、その取引を精査したり多額の罰金を課したりすることになるため、ディールメーカー達の間には、厳格な規制の遵守や進行中の取引への影響に関して、不確実感やさらなる懸念が広がっています。

データ保護に関しては、現在インドには独立した法律がなく、個人データの使用は2000年情報技術法によって規制されています。2022年のデジタル個人データ保護法案の導入に伴い、規制当局は、国内外における限定的な目的でのデジタル個人データの処理に対して監視を強化しています。

データ保護への注目度が高まることにより、買収者は対象企業のビジネスモデルを調査し、保有・移転するデータ量を確認するようになるでしょう。

成長の傾向

受託製造、再生可能エネルギー、製薬、ヘルスケアなどの業界におけるM&Aには、プライベートエクイティ投資会社、コングロマリット、ユニコーンが資産を買収し、それらを組み合わせてプラットフォームを構築するというシフトが起きており、それが追い風となっています。例を挙げると、インドのコングロマリットITCは、健康食品ブランドのYogabar への戦略的投資によってその地位を強化し、栄養志向のヘルシーフード市場のシェアを急速に拡大しました。Zomato は、デリバリーサービスの Blinkit を買収したことによってライバル Swiggy との競争を有利にし、即時デリバリー市場に浸透しました。

企業買収が急増する中、HDFC銀行と Housing Development Finance Corp の株式交換による、待望かつ前例のない合併が完了間近となり、純資産約1,680億米ドルのインドで5番目の企業価値となる銀行が誕生するなど、大型案件も見られます。また、Reliance Venture がドイツの小売会社 Metro AG のキャッシュ・アンド・キャリー事業であるMetro Cash & Carry India を買収し、Reliance Industries の小売帝国を拡大したことも、注目に値します。

企業の経営陣や投資家もまた、資本コストの上昇に対応して、資本配分のハードルを上げており、グループ組織の一員として利益拡大の可能性に確信が持てないような不採算会社や非中核事業を売却しています。債務削減は、事業売却の重要な理由の一つです。例えば Citibank はクレジットカード事業で勢いを失い、その支出率は2018年の11% から 2021年の6%へと低下しました。2021年、Citibank はリテールバンキング事業を、クレジットカード発行会社として第4位の Axis Bank に売却することを決定しました。Axis Bank は、Citibank のコンシューマー事業とノンバンク金融資産事業を約1160億インドルピーで買収し、クレジットカード・メンバーが約250万人増加して、インドにおけるトップ3に入るカード事業者となりました。

一方、インド準備銀行は、2022年外国為替管理(外国投資)規則、2022年外国為替管理(外国投資)規制法、2022年外国為替管理(外国投資)ダイレクション(これらを総称して「OI(外国投資)ガイドライン」)を導入し、より広範な経済活動を対象とし、承認の必要性を軽減するなど、既存の規制構造の合理化と自由化を行いました。これらの「OIガイドライン」の強化は、今後数十年に渡っての取引組成を容易にしようという政府の目標に対する、国内外のプレーヤーの信頼を高めるでしょう。

要点

インドは今や世界経済における重要なプレーヤーの一国であり、その経済規模は2025年までに5兆米ドルになると予想されます。このため同国は投資や買収の対象として魅力的な市場となっており、取引価額で見ても市場は一貫して成長し続けています。筆者は現在、マクロ経済要因が今年の成り行きを左右すると予想しております。PwC のインド案件に関する報告書は、エネルギーおよびインフラ部門、製造業、ESGが好調な年となると示唆しています。

さらに、金融サービス、テクノロジー、ヘルスケア、エネルギーと電力、および資本財が、価値創出と市場シェアの両面で引き続き活発な動きを見せると予想されます。インド企業とのM&A案件を組成する際には、グローバルプレーヤーも国内プレーヤーも、法律や規制の変化に合わせると同時に、インドにおける取引組成の過去の例との関係も重視する必要があります。

Shardul Amarchand Mangaldas & Co

Express Towers, 23rd Floor

Nariman Point, Mumbai

Maharashtra – 400 021, India

お問い合わせ:
電話: +91 22 4933 5555
Eメール: Connect@AMSShardul.com

www.amsshardul.com


日本

パンデミックと地政学的緊張の高まりを契機として、世界各国のM&Aに関する法規制は大きく進展しており、日本も例外ではありません。日本への投資を検討している投資家にとって特に最近の規制動向に注意を払う必要がある主要な領域としては、対内直接投資規制(FDI)と買収防衛策が挙げられます。

対内直接投資規制

Kazuaki Tobioka, Anderson Mori & Tomotsune
飛岡 和明
パートナー
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
東京
電話: +81 3 6775 1165
Eメール: kazuaki.tobioka@amt-law.com

日本における対内直接投資を規制する重要な法律である外国為替及び外国貿易法(外為法)は、国際的な規制動向に対応するために改正がされています。外為法が規制する対内直接投資には、以下の具体例のほか(「投資」と明確に表現されていないものも含め)幅広い行為がカバーされています。

  • 日本の上場会社の株式の1%以上を取得すること
  • 外国投資家以外の者から日本の非上場会社の株式を取得すること
  • 日本企業の特定の意思決定事項(事業の大幅な変更、取締役や監査役の選任など)について、所定の条件を充足する場合に、賛成票を投じること
  • 法定の基準を超えて日本企業に融資すること
  • 日本国内に支店、工場、その他の事業所を設立すること

外為法は、日本に投資する外国投資家に対し、原則として、日本銀行を通じて関係省庁に事後報告書を提出するよう義務付けています。ただし、対象企業(またはその子会社)が外為法および関連政令で定める一定の業種(指定業種)を営んでいる場合は事前届出が必要です。

なお、指定業種には、国家安全保障に関連する伝統的な業種(電気通信、原子力など)だけでなく、ソフトウェアの開発受託や情報処理などのテクノロジー関連業種も含まれます。また、指定業種のリストは、国家・経済安全保障を巡るグローバルな動向を踏まえて、継続的に更新されていることにも留意する必要があります。

指定業種のリストに最近追加された項目としては、2020年に医薬品・医療機器関連事業(世界的なパンデミックの影響を受けて追加)、2021年にレアアース関連事業(レアアースの安定供給確保のために追加)、2023年に半導体、産業用ロボットなどの重要物資・製品のサプライチェーンに関する事業(サプライチェーンを巡る懸念の拡大と民間技術の軍事目的への無許可転用等に対処するために追加)が挙げられます。

Yusuke Sahashi, Anderson Mori & Tomotsune
佐橋 雄介
パートナー
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
東京
電話: +81 3 6775 1183
Eメール: yusuke.sahashi@amt-law.com

日本では、経済安全保障を強化することを目的として新たに経済安全保障推進法(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)が制定されました。経済安全保障推進法は、日本における対内直接投資を直接規制するものではないものの、直近の指定業種の追加は同法と対内直接投資規制を整合させるためのものであると一般に理解されています。

外為法は事前届出の免除制度についても規定していますが、免除制度が適用されるか否かを判断するには、相当に複雑で技術的な分析とプロセスが求められます。たとえば、特に重要かつ国の安全を損なうおそれが大きいコア業種への対内直接投資については、原則として事前届出は免除されません。また、コア業種については、関係省庁も通常よりも強い関心を持ち、より厳しく審査をする傾向にあるため、コア業種への投資に関しての見通しは不透明にならざるを得ません。

また、日本の規制当局は、仮に事前届出が免除されたとしても、国家の安全保障に影響し得る投資に対する監視を継続する可能性もあります。たとえば、テンセント・ホールディングスが携帯電話事業等を営む楽天グループに出資した際、外為法上の事前届出が免除される形で出資が実施されましたが、日本政府は当該出資を継続的に監視する意向を表明しています。

事前届出が必要な場合、該当する指定業種の所管大臣による法定の審査機関は、届出が正式に受理されてから30日間とされています。この法定期間の間は事前届出の対象となった取引を実行することはできません。国家安全保障、公序良俗や治安等の観点から問題があると判断された事案については、取引の中止や変更が勧告されることがあります。

直近数年間において、指定業種の拡大が続いていることも踏まえると、外国投資家が検討中の対内直接投資が事前届出の要件に該当するか否かを判断する際には、十分な助言を受ける必要があります。たとえば、テクノロジー関連のスタートアップへの投資の相当数が、外為法に基づく事前届出及び審査の対象になっています。また、事前届出の対象となる対内直接投資には、対象企業の外国人株主による同意の議決権行使が該当する可能性がある点も、見過ごされがちなため注意が必要です。

外国投資家が日本への対内直接投資に関する規制に対応し、不注意による事前届出義務の違反を防止し、また投資プロセスを合理化するためには、日本の経験豊富な弁護士と協力して事前に慎重な確認を行うとともに、体系的なアプローチを検討することが肝要と言えるでしょう。

買収防衛策

Ryoichi Kaneko, Anderson Mori & Tomotsune
金子 涼一
パートナー
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
東京
電話: +81 3 6775 1249
Eメール: ryoichi.kaneko@amt-law.com

日本における買収防衛策は近年大きな変化を遂げています。2000年代半ば以降、数百もの上場会社がいわゆる「事前警告型」の買収防衛策を導入してきました。この買収防衛策では、多くの場合、敵対的買収を行おうとする買収者のみを差別的に扱う行使条件で、すべての株主に新株予約権を無償で割り当てる権限が対象企業の取締役会に事前に付与されます。

この買収防衛策は、将来起こり得る敵対的買収に備え、前もって株主の承認を取得するものです。しかし、機関投資家や、その議決権行使に求められるスチュワードシップ責任の厳格化も一因となって、このような買収防衛策を採用する上場企業は減少しつつあります。2023年4月現在、日本の全上場企業のうち、起こり得る買収に備えて事前警告型の買収防衛策を導入しているのはわずか269社、つまり6.8%にすぎません。

このような状況を背景として、新しい形態の買収防衛策が登場しました。これは「有事導入型」と呼ばれるもので、企業が予期せぬ敵対的買収に直面した場合にのみ実施されます。一部の敵対的買収では、このような買収防衛策に対して差止仮処分が申し立てられ、その結果、2021年と2022年には重要な司法判断が蓄積されました。現在までの裁判例によると、裁判所が認めた有事導入型買収防衛策はすべて株主の承認を得て実施されており、司法は一般的に株主の意思を尊重しているように見受けられます。しかし、有事導入型買収防衛策に対する裁判所の態度に関して、明確ではない点もいくつか残っています。これは最近の対照的な2件の事案から見て取れます。

1つ目は、2021年の東京機械製作所(TKS)の買収防衛策に関するものです。この事案では、市場取引を通じてTKSの株式の約40%を取得した買収側が、買収防衛策の差止仮処分を裁判所に申し立てました。東京高等裁判所は買収側の申立てを却下し、最高裁判所もその判断を支持しました。東京高裁は、かかる買収防衛策が「マジョリティー・オブ・マイノリティー」による決議(株主総会において、買収側と企業側経営陣を除く、買収に利害関係をもたない出席株主の過半数の賛成により決議すること)の方法がとられたにもかかわらず、TKSの株主によって承認されたことを重視しました。

2つ目は、2022年の三ッ星の買収防衛策に関するものです。この事案では、市場取引を通じて、同調者と合わせて同社の株式の約22%を取得した買収側が、買収防衛策の差止仮処分を裁判所に申し立てました。大阪高等裁判所は買収側の申立てを認め、最高裁判所もその判断を支持しました。三ッ星は、買収側と同調者だけでなく、以前の株主総会で三ッ星の取締役解任に賛成した株主に対しても対抗措置を行使するための議案を株主総会に提出し、承認を得ていました。

この2件の類似した事案について、裁判所は異なる判断を下したようにみえますが、三ッ星とTKSの事案には異なる点があることに留意するべきです。

具体的には、三ッ星事件に関して裁判所は以下の点を指摘しています。 すなわち、三ッ星は、以前の株主総会において取締役解任に賛成票を投じた株主にも対抗措置が適用されると宣言していたため、株主は今回の対抗措置に賛成するよう強要されたと感じた可能性があることから、対抗措置に対する株主の承認の有効性について疑義が生じたこと、買収側とその同調者が対抗措置の適用から免れるための三ッ星の提案は現実的なものではなく、また、株主の権利を過剰に制限するものであること、対抗措置は、三ッ星の現在の取締役の留任を可能にするものであり、経営支配権維持のためのものであることを指摘しています。

一般的な司法判断と同様に、各事案の具体的な事実関係と状況が、その結果に直接影響することになります。そのため、上述の2件の事案を含め、公表されている裁判例を踏まえても、敵対的買収に対する司法の態度には依然として不明確さが残ります。

日本の経済産業省は、2023年6月に「企業買収における行動指針(案)」を公表しました。2023年8月に終了するパブリックコメント手続を経て、最終化される予定です。本指針は、ベストプラクティスの提示と予見可能性の向上とともに、社会にとって経済的に望ましい買収の促進と公正で適切に機能するM&A市場の発展を目的としています。このような目的に向けた取組みの一環として、本指針には買収に対する対抗措置に関する章も含まれています。

Anderson Mori & Tomotsune

Anderson Mori & Tomotsune

Otemachi Park Building

1-1-1 Otemachi, Chiyoda-ku

Tokyo 100 8136, Japan

お問い合わせ:
電話: +81 3 6775 1000
Eメール: info@amt-law.com

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フィリピン

フィリピンは、国民からの強い負託に後押しされ、M&Aに影響する重要な改革を実施しています。

再生可能エネルギー

Maria Elizabeth Peralta Loriega, Sarmiento Loriega Law Office
Maria Elizabeth Peralta Loriega
創業パートナー
Sarmiento Loriega Law Office
メトロマニラ
Eメール : meploriega@sl-lawoffice.com

フィリピンの太陽光、風力、水力発電プロジェクトは現在、外国(法)人による100%所有が認められています。2022年9月、司法省(DOJ)は、太陽光、風力、水力、海洋または潮汐エネルギーは1987年憲法に定める「天然資源」ではない、との意見書第21号を発表しました。

この意見書に従い、エネルギー省(DOE)は2022年11月に、再生可能エネルギー業界における外国人所有規制を解除するDOE通達、DC 2022-11-0034号を発行しました。司法省の意見書以前は、1987年憲法第12条第2項に基づく外国資本規制が、再生可能エネルギー分野に適用されていました。

天然資源に関する厳しい憲法上の規制は、フィリピンで切望されている外国からの投資を妨げると見なされがちでした。当初、司法省の意見書は、1987年憲法下の「天然資源」という用語を無許可に再解釈したものであるとの見方もあり、懐疑的に受け止められたこともありました。それでも、DOJとDOEの発表に異議を唱える人はありませんでした。実際の訴訟や論争において最高裁が最終決定を下すまで、投資家は、これらの発表が有効で合憲と推定されるという法的原則に依拠することができます。

公益事業

フィリピンの通信事業は、以前は公益事業と見なされていたいくつかの事業を含めて、現在、外国人による100%所有が認められています。2022年3月、フィリピン議会は共和国法第11659号を制定し、公益事業を定義する旧態依然とした連邦法第146号を改正しました。この改正により、公益事業の定義は、以下のいずれかを公共用に運営、管理または統制する公共サービスに限定されました。

  • 配電
  • 送電
  • パイプラインと送油システムを含む、石油および石油製品
  • 排水管システムを含む、上下水道システム
  • 港湾
  • 公益交通車両
Bryan San Juan, Sarmiento Loriega Law Office
Bryan San Juan
シニア・パートナー
Sarmiento Loriega Law Office
メトロマニラ
Eメール : basanjuan@sl-lawoffice.com

共和国法第11659号は、公益事業の定義を上記の排他的リストに限定することで、空港事業、鉄道事業、通信事業など、従来は公益事業に分類されていた多くの事業を、外国人持ち株比率の上限を40%に制限する1987年憲法第12条第11項から除外しています。

証券取引委員会やその他の政府機関からは、公益事業の定義を空港でのハンドリング業務にまで拡大するよう求める意見が多数出されていましたが、改正法によって限定された定義は、これらの意見を事実上覆すものでした。

上記の進展を踏まえ、第12次外国投資ネガティブリスト (FINL) には、一例として、通信産業は公益事業ではないため、外国資本の上限を40%とする規制の対象外であることが反映されています。そのため通信事業会社は100%外国人所有が可能になりましたが、重要なインフラが関係する場合には、その外国人投資家の自国に互恵主義を要求するなどの特別な条件が前提となっています。

ただし、共和国法第11659号は、外国政府または外国の国有企業が支配権を有しているか、もしくは外国政府の代理として行動する事業体に対して、公益事業または重要インフラに分類される公共サービスの資本所有を禁止しているので、これに留意することが重要です。この法律において重要インフラとは、物理的か仮想的かを問わず、フィリピンにとって極めて重要なシステムや資産を所有、使用、運用する公共サービスのことであり、そのようなシステムや資産が機能不全に陥ったり、破壊されたりすると、大統領により示される通信及びその他の重要サービスを含む、国家安全保障に有害な影響を及ぼすようなものを意味します。

公共サービスが重要インフラである場合、同法は、その外国人の自国が外国法、条約または国際協定に基づいてフィリピン国民に対する互恵主義を認めない限り、外国人が当該重要インフラの運営と管理に従事する事業体の資本の50%超を所有することを禁止しています。互恵主義は、外国投資家の自国が別の経済セクターにおいて同様の価値の権利を認める場合でも、充足される可能性があります。

天然資源の利用に対する憲法上の制限が緩和された場合と同様に、公益事業の定義の改正も、当初は、公益事業の定義を単なる法令上ではなく、より重要な憲法上のものとみなす保守的な憲法学者らの批判にさらされました。憲法上の概念である以上、これを単なる法令で変更することはできないと主張されてきたのです。それでも、然るべき裁判所によって破棄されない限り、この法律は有効とみなされます。

小売業、防衛資材

Recolito Ferdinand N Cantre Jr, Sarmiento Loriega Law Office
Recolito Ferdinand N Cantre Jr
シニア・パートナー
Sarmiento Loriega Law Office
メトロマニラ
Eメール : rncantre@sl-lawoffice.com

FINL はまた、小売業自由化法の改正を反映し、小売業会社の払込資本金を250万米ドルから2500万フィリピンペソ(45万8000米ドル)に引き下げました。従って、小売業に従事する外国企業は、より容に事業を設立することができます。

国防省の許可を必要とする製品の製造や流通は、第12次FINLから削除され、事実上、外国資本規制は撤廃されました。これより以前、戦争用の銃や弾薬、兵器、誘導ミサイル、戦術機、宇宙船、軍事通信機器の製造については、外国資本が40%までに制限されていました。

新合併規制

M&Aの当事者は、フィリピン競争委員会 (PCC) が定めた新しい合併届出基準値(当事者規模テスト、取引規模テスト)も考慮しなくてはなりません。

2023年3月1日以降、M&A当事者は、当事者規模が70億フィリピンペソを超え、取引規模が29億フィリピンペソを超える場合、PCCに届け出ることが義務づけられています。

合併届出を遵守しなかった場合、当事者には取引額の1% から 5% という多額の罰金が課されます。フィリピン競争法では、M&Aが関連市場における競争状況の大幅な低下につながる場合、当該M&Aは禁止であるというPCCの認定を損なうことなく、M&A契約も無効となります。M&Aが合併規制要件に準拠していないとして無効であると宣言された場合、当事者の将来の取引は、より厳しい規制当局の監視を受けることになります。

税制改革

TRAIN法(「税制改革法」)とCREATE法(「企業復興税制優遇措置法」)という二つの税制改革パッケージにより、フィリピンの税法に大きな変更が導入されました。2020年7月1日以降の法人税率は25%になります(従前は30%)。純利益が500万フィリピンペソ以下で、資産(事業所の所在地の土地を除く)が1億フィリピンペソ以下の法人については、法人税率はさらに引き下げられて20%になりました。

特筆すべき変更点は、不当留保金課税(IAET)に関する税法規定の廃止です。不当留保金とは、株主への配当や正当な事業目的に充当されていない、企業の内部留保を指します。この廃止により、投資家はIAET評価のリスクを負うことなく、資金を他の事業目的の国内子会社レベルで、無期限に預け置くことができるようになりました。

印紙税(DST)については、TRAIN法によってほとんどの税率が100%引き上げられましたが、債券の印紙税引き上げは50%にとどまり、現行のとおり債券発行価額の0.75% となりました。財産(損害)保険契約、信用保険その他の保険、補償債券、売却証書、および不動産の譲渡・寄付に関する印紙税は、変更されませんでした。

TRAIN法では、内国歳入庁(BIR)による非課税交換の確認裁定が不要となり、非課税交換に関するBIR の裁定にのみ見られた従来の解釈を、税法の条文に盛り込むこともなくなりました。これらの改正により、これまでフィリピンにおいて、非課税交換として組成されるM&Aの妨げとなっていた問題の大半が取り除かれました。

もう一つの注目すべき改正点は、適切かつ充分な対価に満たない財産の譲渡にも贈与税を課すという、税法上の「みなし贈与」規定を明確に除外したことです。TRAIN法では、通常のビジネスプロセスで、互いに独立した立場で行われた、善意による財産の売買・交換、その他の形態による譲渡は、「みなし贈与」の規定から除外され、その結果、贈与者に対する課税の対象ではなくなりました。このような取引は、寄付行為の意図がなく、したがって金銭または金銭に相当する十分で完全な対価で行われる場合、善意かつ対等な取引とみなされます。

CREATE法は、所得税免除、法人税の特別税率、控除の拡大、関税の免除、および付加価値税の免除などの税制優遇措置を導入しました。これらの税制優遇措置は、戦略的投資優先計画 (SIPP) に規定されている、農業、漁業、林業、代替エネルギー、大衆住宅、グリーン・エコシステムなどにおける、特定の活動や登録事業および企業に適用されます。SIPP のもとでは、産業は三つの階層に分類され、それぞれの階層によって、その活動や企業が利用できる税制優遇措置の期間や種類が決められています。

Sarmiento Loriega

Sarmiento Loriega Law Office

29/F, Joy Nostalg Center, 17 ADB Ave. Ortigas

Pasig City, Metro Manila – 1600, the Philippines

お問い合わせ:
電話: +63 2 7 798 8115
Eメール: info@sl-lawoffice.com

www.sl-lawoffice.com


台湾

台湾の対外取引は、パンデミック、渡航制限、サプライチェーンの混乱に関連して世界の情勢が不確実になるなか、過去2年間にわたり減少していました。地域開発への注目の高まりを受け、風力発電所や太陽光発電所などのグリーンエネルギー開発に振り向けられる資金が増加しています。

James Hsiao, Dentons
James Hsiao
シニアパートナー
デントンズ
台北
電話: + 886 2 2702 0208 Ext. 206
Eメール: james.hsiao@dentons.com.tw

経済部投資審議委員会(MoEA)が発表した統計からも明らかなように、また執筆者も同じ認識を持っていますが、海運、倉庫業、卸売業、小売業などの業種で企業活動が増加しています。これは、台湾の企業が渡航制限の解除に向けて準備を整えており、対外取引が再び活発化すると予想していることを示しています。

また、企業が新たな機会を模索し始める一方で、メーカー、サプライヤー、ビジネスパートナーがアジア太平洋地域への影響力と存在感を増していることから、現地のM&A市場が新たな盛り上がりを見せることが期待されます。

重要法令

M&Aに関連する主な法令には、以下のようなものがあります。

  • 会社法(所管:MoEA)
  • 企業合併及び買収法(所管:MoEA)
  • 証券取引法(所管:金融監督委員会)
  • 外国人投資条例(所管:MoEA)

各M&Aの対象企業の業種や取引の構造によっては、他の法令や規制が適用される可能性があることに留意するべきです。

たとえば、海外投資家が風力発電所や太陽光発電所などの再生可能エネルギー業界でM&Aを実施しようとする場合、再生可能エネルギー開発法が適用されます。M&A取引が現従業員の雇用関係の大きな変更を伴う場合には、労働基準法(所管:労働省)が適用される可能性があります。

規制についての最新情報

台湾のM&A市場への関心の高まりを受けて、2023年4月21日に証券取引法の改正が公布されました。改正前は、公開会社の発行済み株式総数の10%を超える株式を取得する個人または法人は、その取得を主管官庁に報告するとともに、公告する必要がありました。また、証券取引所や店頭市場を介さずに公開会社の有価証券の購入を行う公開買付は、主管官庁に報告した後でなければ実施できませんでした。

改正後、報告基準は公開会社の発行済み株式総数の5%に引き下げられました。

Lori Hung, Dentons
Lori Hung
アソシエイト
デントンズ
台北
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行政院が公表した企業合併及び買収法の改正案は、2022年5月24日に可決されました。この改正により、現取締役に対して、合併に関する重大な利害関係や合併への賛否の理由の公表が義務付けられました。その結果、会社と株主の間の情報の透明性が向上し、株主は合併に関してより詳細な情報に基づいて判断できるようになりました。

また、株主総会の承認を必要とする事項についての制限も緩和されました。合併の対価が企業の純資産価値の20%を越えない場合、取締役会の決議のみで合併を決定することができるようになり、合併プロセスが簡素化し、要する時間の短縮につながりました。さらに、合併により取得した無形資産の費用を一定期間内に償却できるようになり、また、スタートアップ企業の起業家は、スタートアップ企業を売却する際に受け取る対価に課される所得税を、売却後3年の期間内に納付することができるようになりました。

上記の改正は、企業のM&Aにとって望ましい環境の形成を目的としており、渡航制限が解除され、対外商取引が再び活発化するなかで、M&Aの件数は増加するとみられます。

この改正に先立つ2020年1月、司法院は商事事件審理法を公布しました。従来、商事訴訟事件は通常複雑で、他の事件が生じる傾向があり、多くの場合、短期間で解決することはできませんでした。その結果、関連企業の操業が制限され、市場の投資意欲に水を差し、さらには台湾の経済的競争力に影響したり損害を与えたりする可能性もあります。

商事事件審理法は、訴訟開始前の調停の義務化により、訴訟手続きを簡素化しています。また、経験豊富な金融の専門家や、関連する経歴のある者を調停人へ任命することについて規定しています。

さらに、調停で解決できなかった事件については、商事裁判所は当事者自身による弁護を禁止し、資格のある弁護士の選任を義務付けています。これにより、プロセスがさらに簡素化・迅速化され、潜在的な商事紛争に企業が対処しやすい環境の形成につながっています。

投資に対する障壁

体内投資誘致を目的とする複数の立法措置にもかかわらず、外国人投資家は状況に応じて、いくつかの障壁を乗り越えなければなりません。

まず、外国人投資家が業界を理解し、規制を遵守するよう図るため、投資委員会が対内投資と対外投資の双方について基準を設定し、審査を行います。外国人投資家は事前に投資委員会に申請し、承認を受ける必要があります。外国人投資条例および関連施行規則に従い、申請の認否は委員会の裁量に委ねられています。

申請が承認された場合でも、投資委員会がさらに書類の提出を求めることもあります。審査プロセスは厳格で詳細にわたるため、最終的に承認されるまでに数カ月を要することも珍しくありません。

次に、大陸資本の企業・個人による台湾への投資は、台湾の大陸委員会が所管する両岸法およびその施行規則により規制されています。状況によっては、多額の資本を持つ中国本土の企業が特定の規制産業に投資することは難しいかもしれません。

さらに、最近の米中間の貿易摩擦に関連して世界的に不確実性が高まっているため、国際企業は、この2つの大国の企業と取引する際には全体的な構成と取引態様を再考する必要があるかもしれません。

したがって投資家は、現在の貿易摩擦だけではなく、地域的なビジネスへの影響についても慎重に考え、戦略を練る必要があります。

最後に、米連邦準備制度理事会(FRB)は、2022年だけでも7回の利上げを発表しました。利上げは2023年も継続されています。これを受けて、台湾中央銀行も利上げを発表し、地元銀行もこれに追随しました。金融機関からの融資を必要とする企業にとって、これがさらさなる障壁になるかもしれません。M&Aのオファーを判断する際には、将来の金利上昇の可能性を考慮に入れる必要があります。

M&Aの展望

上述したような課題はあるものの、私たちは台湾のM&A市場の2023年の見通しについて引き続き楽観的な見方を維持しています。パンデミックは数々の産業に影響を及ぼし、損害を与えましたが、これは、影響を受けた産業において企業統合が進む契機になり得るとも考えられます。

M&Aの促進につながる法令の施行と商事紛争を専門に担当する裁判所の設置を背景として、2023年以降もM&A市場の継続的な成長が期待されます。

Dentons Law Firm

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タイ

タイにおける非公開有限会社および公開有限会社のM&Aの実施方法にはさまざまなものがあり、それには、有限会社の既存株主からの株式取得、有限会社が発行する新株の引き受け、有限会社同士の新設合併、有限会社の資産または事業の全部または一部の取得、非公開有限会社同士の吸収合併などが含まれます。

Charunun Sathitsuksomboon, Tilleke & Gibbins
Charunun Sathitsuksomboon
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非公開有限会社を規制する主な法令は民商法典です。一香港方、公開有限会社に対しては、タイ証券取引所(SET)に上場している場合を除き、主に1992年改正公開有限会社法が適用され、加えて、1992年証券取引法、証券取引委員会(SEC)規則、資本市場監督委員会(CMSB)規則、SET規則も適用されます。タイの有限会社が関与するM&A取引の大部分の法的枠組みは、民商法典と公開有限会社法の双方により規定されています。

新しい類型の組み合わせ

2023年2月7日、民商法典改正法が施行され、非公開有限会社の企業結合に対する別のアプローチとして、新たな合併スキームが導入されました。改正民商法典における合併とは、2社以上の会社が合併し、合併後の法人がすべて消滅して新会社が設立されるか、1社が存続し、他のすべての会社が法人としての存在を消滅させるかのどちらかです。

改正前の法典の規定における「新設合併(amalgamation)」という言葉は合併(amalgamation)という言葉に変更されました。改正前には、法的枠組みや合併の意味は規定されていましたが、資産や事業の取得に関する具体的な法的枠組みは明らかではありませんでした。

上述の2類型のうち前者は、改正前の法典で規定されていた合併と同一であることはほぼ間違いないと考えられます。一方、後者の合併の最終的な形は、合併後も一方の会社が存続する事業全体の譲渡に類似しています。改正前との違いは、改正により、双方の類型の合併が同じ法的手続きで実施されるようになったことです。手続きには以下が含まれます。

  • 株主総会の承認決議
  • 公的登録機関への決議の登記
  • 反対株主からの株式購入の取り決め
  • 異議申し立てに関する債権者への通知
  • すべての合併会社の株主による合同株主総会の開催
  • 公的登録機関への合併の登記

合併後(いずれの類型においても)、新会社または存続会社は、改正民商法典に基づき、消滅する会社のすべての資産、負債、権利、義務、および責任を引き受けます。

上場会社については、公開会社法、証券取引法、SEC規則、CMSB規則、SET規則に基づく要件や手続きについても考慮する必要があります。

一般的なM&Aの構造

Wanwanuch Pornlert
アソシエイト
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タイではM&A取引をさまざまな態様で組成できますが、もっとも一般的なのは、既存の有限会社の株式の取得です。この方法は資産買収や事業買収に比べて複雑ではなく、必要な法的手続きが少なく、株式の全部または大部分を取得する場合には、事業所有権の移転が円滑です。既存の有限会社(多くの場合ターゲットと呼ばれます)の株式の取得は、ターゲットの既存株主からの株式取得、またはターゲットが発行する新株の引き受け(またはこれらの組み合わせ)によって行われます。以下では、これらの2つの方法について説明します。

既存株主からの株式取得では、売り手の株主との間で、売却される株式の数量、取引完了日、売却価格、取引完了前の条件、保証、補償などの商業的条件を定めた株式売買契約を締結することにより、非公開会社または非上場公開会社の株式を取得することができます。非公開会社の株式取得は、売り手の株主が、民商法典に定められた事項を明記した単純な株式譲渡証書を交付し、ターゲット会社の株主名簿に取引を記録することによって実行できます。非上場公開会社の株式譲渡は、公開有限会社法に基づき、株券の裏書と買主への交付をもって当事者間で有効となります。

上場会社の既存株主からの株式取得は、売買契約が伴う場合と伴わない場合があり、また、義務的公開買付または任意公開買付により実施することができます。買収において売り手株主が1人以上いる場合は、発動基準であるターゲットの総議決権の25%、50%、75%に達する株式取得など、一定の条件に該当する場合、残りの株式に対して義務的公開買付の実施が求められる可能性があります。上場企業の株式取得する他の手段としては、ターゲットの全株式、または25%以上、50%未満の株式を対象とする任意公開買付も考えられます。

買収側は、未公開会社や非上場公開会社の新規発行株式を引き受けることもできます。この場合、割当・引受株式数、引受価格、取引完了前の条件、保証、補償などの商業的条件についての規定が含まれた株式引受契約に基づき、手続きを進めることができます。この取引構造では、ターゲット企業は、民商法典または公開会社法に定められた法的手続きに従って、登録資本金を増加させる必要があります。この法的手続きには、株主総会で株主が所有する総株式の4分の3以上による承認決議を得ることや、公的登録機関への増資の登録が含まれます。

外国人の所有権の制限

タイで外国人投資家がクロスボーダーM&A取引を検討する際に、外国人の所有権に関する法的制限が注意を要する問題となる場合があります。これらの制限は、M&Aの構造の選択や、ターゲット企業に対する外国人投資家の支配力に影響を及ぼす可能性があります。

1999年外国人事業法が、タイにおける外国人の事業所有権を規定する主要な法律です。外国人事業法では、海外で登記された会社、または国内で登記されタイ人以外が50%以上の株式を保有する会社は、外国籍であるとみなされます。外国企業は、外国人事業法の3つのリストで指定されている事業の実施に関して、制限を課されます。つまり、制限の対象である事業を営む企業に対する外国投資は、外国事業免許が付与されない場合、または外国人事業法、省令、投資促進法、工業団地法、タイと特定の国との間の条約の規定により事業に条件付き免除が認められない場合、株式の50%未満に制限されます。

さらに、特定の法律により外国人の参入が厳しく禁じられている業種については、外国人が過半数を所有する会社が事業を行うことはできません。そのような業種の一例が、改正1979年陸上運送法に基づく陸上運送事業です。これに従事できるのは、タイ人が株式の51%以上を保有する有限会社のみです。他にも、1954年土地法では、投資促進法や工業団地法により認められる場合を除き、外国人がタイで土地を所有することが一般的に禁止されています。

タイにおける外国人の所有権に対する制限の影響などの法的な検討を要する事項は、法務デューデリジェンスを確実に実施することによって明らかになる問題の一つに過ぎません。法務デューデリジェンスは、タイの法律に詳しくない外国人当事者などにとって特に重要です。法務デューデリジェンスでは、ターゲット企業の企業構造、事業運営、規制遵守、必要なライセンス、雇用、資産、その他の関連する事項を綿密に調査し、ターゲット企業や投資提案に関する外国人の所有権が制限されるかどうかを明確にします。税務や財務のデューデリジェンスなどの他の包括的なデューデリジェンスも並行して実施することができます。このようなデューデリジェンスは、投資家がタイでターゲット企業を通じて事業を行う際に合法性を確保し、もっとも効率的なM&Aの構造と手法を決定する一助となります。

Tilleke & Gibbins

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ベトナム

ベトナムへの外国投資は引き続き有望です。外国投資庁による2023年の直近の報告では、1月1日から3月20日の期間に外国人投資家が新たに登録した資本金、株式購入のための調整後拠出資本金および資本拠出の総計は54億5000万米ドル近くとなり、外国投資プロジェクトからの実現資本金は43億米ドルを超えると推定されています。

Tram Ngoc Bich Nguyen, Tilleke & Gibbins
Tram Ngoc Bich Nguyen
パートナー
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これらの統計は、投資先としてのベトナムの魅力が高まっていることを浮き彫りにし、また、その経済が力強く成長していることを反映しています。テクノロジー、メディア、通信などのセクターでは、急速なデジタル化を受けてM&A件数が増加すると予想されます。自動車産業と工業製造業では、持続可能性に関連して事業売却が実施されるとみられます。

2015年以降、ベトナムでは法的枠組みの強化と市場統制の効率化に向けてさまざまな施策が実施されてきました。その結果、税制、投資、競争、電子商取引の各分野において政府による監督が改善されました。間接移転に関する課税の抜け穴がふさがれ、投資と競争に関する規則の強化により競争条件が平準化され、電子商取引のための明確な枠組みが確立されました。

重要な法律問題

事業活動はベトナム標準産業分類に従って分類されます。この分類に基づき事業運営に必要な認可、許可、規制が決定されるとともに、特定分野への投資を検討する外国人投資家に向けたガイドラインが定められています。

外資規制は、事業活動に基づいて実施され、外国人の所有権の制限や、株式保有や事業要件などの外国人投資家に課される条件が含まれます。これらの制限は、ベトナムが締結した国際条約と国内法によって規定されます。

外資規制の例には、以下のようなものがあります。

  • 外国人投資家は広告事業の資本金の99.99%までしか所有できません。
  • 外国投資を受けた企業の建物購入は自社で使用する目的に限られ、他者に転貸することはできません。
  • 外国人が100%所有する銀行の所有者は、少なくとも100億米ドルの資産を保有していなければなりません。
  • 病院プロジェクトに投資する外国人投資家は、少なくとも2000万米ドルをプロジェクトに出資しなければなりません。
Duong Duy Nguyen, Tilleke & Gibbins
Duong Duy Nguyen
シニアアソシエイト
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このため、外国人投資家がM&Aを実施するにあたっては、現地投資家と同じように対象企業や資産を取得できないため、より多くの労力が必要になります。これにより、規模や大きさがグローバルなプレーヤーと競争できる水準に達していない地元企業が守られ、成長・発展するための時間を与えられることになります。

計画投資局、計画投資省、国家競争委員会などのベトナムの規制機関は門番の役割を果たし、M&Aの実施許可に先立って、外国人投資家の財務能力やM&A取引の市場への影響を評価します。また、銀行資金の移動や法的所有権の移転に関する承認も行います。

外国人投資家の中には、外資規制を回避して投資を実行するために、斬新な構造の取引の組成に多大な時間と資金を投入する者もいます。そのため、ベトナムの規制当局は学習し、適応しています。

2020年、ベトナムでは投資法が制定され、2021年に施行され、これにより重大な変化がもたらされました。同法には、投資家の「見せかけ」の取引に対してベトナムの投資登録当局が法廷で異議を申し立て、対象企業の事業の一部または全部を終了させることができるプロセスが規定されています。このリスクは外資規制の回避を意図する取引構造すべてに及びます。

また、ベトナムの規制当局に直接相談し、パイロット・プログラムや特別免除という形で外資規制の例外を求める外国人投資家もいます。これは、取引構造に創造性を発揮するよりもはるかに安全な選択肢です。しかし、このような外国人投資家は、多くの場合、規模が非常に大きく、政府高官との交流が可能で強い影響力を持っています。したがって、投資家によっては、この選択肢は現実的ではないかもしれません。

2020年投資法によって導入されたM&A承認制度において留意すべき変更点の一つに、外国人投資家が特定の地域(島、国境および沿岸部の村、ならびに国防および安全保障に影響する地域を含みます)で土地使用権を持つベトナム企業の株式を取得する場合、投資当局の承認が必要となることが挙げられます。この要件により、現実的な問題が2つ生じます。まず、対象企業は土地使用権を申告し、投資当局が評価を実施するための裏付け書類を提出しなければなりません。次に、M&A承認プロセスには、投資当局が承認に先立って、安全保障と国防に関する条件について国防省と公安省と協議するという不透明なプロセスが含まれているため、承認が否認されたり遅滞したりする可能性があります。

Nguyen Khoi Le, Tilleke & Gibbins
Nguyen Khoi Le
アソシエイト
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2015年以前には、ベトナムには、間接移転、すなわち、ベトナムに所在する直接の対象企業ではなく、海外の持株会社で実施される移転を伴う取引について、法人所得税に関する個別の法律はありませんでした。この問題に対処するため、ベトナムでは2015年に政令12/2015/ND-CPが施行され、ベトナム企業が関与する資本移転および投資プロジェクトのすべてに対する課税の法的枠組みが確立されました。

2018年、ベトナムは新たな競争法を公布し、2019年7月に施行されました。同法により、合併、統合、買収、合弁、その他、法律で規定される活動による経済的集中が一定の基準値に達した場合に、届出が義務付けられました。この基準には、経済的集中に関与する当事者の総資産額、総収益、市場シェアの合計、および総取引額が含まれます。信用機関と保険・証券会社のM&A取引には異なる基準値が適用されます。この制度の重要な点として、オンショアとオフショアの取引が対象に含まれることが挙げられます。

2022年以降、ベトナムの電子商取引規制では、電子商取引の総訪問数、販売者数、総取引数、総取引額における上位5社のうち1社以上を支配することになる外国投資について、公安省の承認が必要とされています。しかし、このリストはまだ産業貿易省から公表されていません。

プロジェクトを含むM&A取引では、プロジェクトや土地に、所有者が慎重に検討する必要のある重要な価値がある場合、プロジェクト企業、土地、プロジェクト開発権の所有権移転が制限されることがあります。一旦プロジェクトの投資家が基本的な承認を受けると、他の投資家が同じ審査プロセスを経ずにプロジェクトに参加するのは難しいかもしれません。このような規制があるため、外国人投資家には、より厳しい審査と多くの承認や要件が適用されます。この条件を満たすことができるのは、ベトナムで魅力的なビジネスチャンスを追い求める真剣な投資家だけであり、その結果、投資家の質が向上するとともに、ターゲット企業の洗練度も上がります。

2019年、ベトナムは世界経済フォーラムの世界競争力指標が10ランク上昇し、67位になりました。また、ベトナムはASEANで唯一、「グローバル・ソフトパワー・インデックス2021」で順位を上げ(3ランク上昇)、60カ国中47位となりました。

M&Aに関する紛争

M&A取引に関する紛争では、コストと解決に要する時間の観点から、当事者双方が仲裁を選択する傾向があります。なぜなら、ベトナムの訴訟手続きは依然として煩雑であり、投資家が利用するのは容易ではなく、特に現地の当事者に有利なバイアスが懸念される場合には、仲裁が選択される傾向が高くなります。

M&A取引の多くでは、紛争解決の場としてシンガポール国際仲裁センターが選択されています。しかし、ベトナムの民法典では、外国の要素が含まれる民事事件がベトナムの不動産に対する権利に関するものである場合、ベトナムの裁判所の排他的管轄権に服すると規定されています。

一例を挙げると、ホーチミン市高級人民法院の決定28/2020/QDKDTM-PTでは、対象企業が不動産に対する財産権を有するM&A案件について、裁判所が排他的管轄権を適用しました。この事案において、裁判所は違法なプロジェクトの譲渡を目的とする出資契約を無効にしました。したがって、当事者が外国の仲裁所で紛争を解決したものの、それがベトナムの裁判所の排他的管轄権に服する場合、ベトナムで判決を執行できないリスクがあります。

動向と課題

中国と同様、ベトナムも債券や海外融資に対する規制を強化しており、その結果、多数のベトナム企業が流動性の問題に直面しています。そして、金利上昇により、この問題は一層悪化しています。経営が悪化し、資金難に陥る企業の増加を受け、資産や不動産、さらには事業全体の売却でさえ近年は一般的になっています。

全般的な傾向として、M&Aの取引額が減少しています(東南アジアのエグジット額は46%減と大きく落ち込んでいます)。また、不動産セクターや銀行の債権売却など、売り手側が流動性を必要としている状況が推進要因となる傾向があります。

中国からベトナムに移転する企業が増加しています。外国人投資家が、通常の会社設立の手続きを経るよりも早くベトナム市場に参入する方法として、とりわけ、事業のために新規に許認可を取得するための煩雑な手続きを回避する目的で、M&Aを選択する場合もあります。

また、ベトナムでは、環境・社会・ガバナンスに関する報告やコンプライアンスの重要性が一層高まっています。

投資法には、環境に有害な時代遅れの技術を使用するプロジェクトの延長を認めない規定が含まれています。2022年に公布された政令では、今後、温室効果ガス排出削減の要件が規定され、数年間で国内炭素クレジット市場が試験的に創設されることになっています。こうしたなか、持続可能性に取り組む企業が、収益と価値を創出する機会を手にすることになるでしょう。

Tilleke & Gibbins

Tilleke & Gibbins

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Ho Chi Minh City, Vietnam

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香港

香港は中国の特別行政区であり、独自の法制度をもっています。国際的な取引の中心地であり、高度な金融・専門サービスを提供できる金融センターでもあります。大中華圏との強い経済的結びつきを維持し、国際的な企業や投資家が中国やその他の地域市場にアクセスするための貴重な足がかりとなっています。 香港での取引は、香港という場所の性質上、複数の司法管轄区域にわたって実施されることが多くあります。 したがって、コストと時間の点で効率よく、円滑に取引のプロセスを進めるには、現地で適用され得る法規制や異なる商慣習・市場慣行に適切に対応することが重要になります。 また、当事者の懸念を解消し、リスクを軽減できる形で適切に取引が構成されるよう図る必要もあります。

会社条例

Virginia Tam, K&L Gates
Virginia Tam
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香港
電話番: +852 2230 3535
電話番: Virginia.Tam@klgates.com

香港における株式の取得は主に、香港の制定法の一部である会社条例(Companies Ordinance)によって規定されています。会社条例は、香港で設立された企業および香港に事業所を置く海外企業の登録、記録管理および申請に関する要件について定めています。また、香港で設立された企業の所有権や経営権、およびそれらの企業と第三者との取引についても規定しています。

香港で設立された企業が買収の際に下記の行動を取る必要がある場合、同条例が定める一定の制限に従わなければなりません。

  • 減資。この場合、減資後に企業に支払能力があり、利害関係のない株主が特別決議で減資を承認する必要があります。
  • 自社株購入のための資金支援。この場合、支援実施後に企業が支払能力を有し、さらに次のいずれかの要件を満たす必要があります:支援額が法定限度額である5%以内であること、または、支援が定められた期間内に株主によって承認されること。
  • 配当宣告および配当実施。この場合、企業が十分な配当可能利益を有しており、配当額は所定の計算式を用いて単体ベースで計算される必要があります。
  • 法定の少数株主排除(スクイーズアウト)権の行使。この場合、買い手の株主は定められた期限内に権利を行使し、他の株主に対して買収提案を行い、90%以上の株式を取得しなければなりません。
  • スキーム・オブ・アレンジメント。この場合、裁判所が提案を承認し、スキームの影響を受ける利害関係者による投票が実施され、投票結果が法定要件を満たしている必要があります。
  • 他の企業との合併。この場合、双方の企業が同一グループに属しており、吸収される企業を含め、合併に関与するすべての企業が支払能力を有し、合併する企業それぞれの株主が特別決議により合併を承認しなければなりません。

テイクオーバー・コード

Beatrice Wun, K&L Gates
Beatrice Wun
アソシエイト
K&L Gates
香港
電話番: +852 2230 3553
電話番: Beatrice.Wun@klgates.com

香港の上場株式の買収は、主にテイクオーバー・コード(Takeovers Code)によって統制されますが、これは制定法ではなく、法的執行力をもたない一連の規範です。この規範に違反した市場参加者は、「cold shoulder(冷遇措置)」命令によって不利益を被る可能性があり、そうなると事実上、現地市場で事業を行うことができなくなります。

テイクオーバー・コードは、株式公開買付け、支配権変更取引(どのように支配権が取得される場合であっても)、自社株買い、株式の非公開化の実施を対象としています。この規範は、「公開会社」が買収される際にはすべての株主が平等かつ公平に扱われるべきだという原則に基づいています。

以下の状況では、香港内外の買収者にこの規範が適用されます。

  • 買収者が株主に対して株式売却を勧誘する任意公開買付けを行う場合、規範に定められた価格条件、時期、仕組みに従って募集を実施しなければなりません。
  • (1)買収者が最初に30%の株式保有の上限を超えた場合、または(2)買収者の株式保有率が30%から50%である場合に、任意の12カ月間に株式保有率が2%以上増加した場合(規制当局から免除を得た場合を除く)、買収者は、強制公開買付けを実施し、所定の計算式を用いて計算された金額と同じ対価で株式を売却する選択肢を他の株主に対し提供しなければなりません。
  • 買収者が企業を非公開化する場合、その取引は、規範の基準に基づき、存続株主の支持を得る必要があります。

上場規則

上場規則は、香港唯一の証券取引所を運営する香港証券取引所によって制定されています。香港証券取引所は、香港政府が単独の最大株主として支配権をもつ上場会社です。同証券取引所に上場している会社には継続的な義務があり、その取締役には上場規則に準拠する契約上の義務がありますが、規則には法的執行力はありません。

買収者には上場規則が適用されないとしても、上場規則が定める上場会社に対する要件のために、取引の進行が遅滞し、手続きに関する不確実性が増し、買収コストが増加する可能性があります。

証券先物条例

証券先物条例(Securities and Futures Ordinance)は、金融仲介業者などの資本市場・金融市場参加者の行為について規定しています。同条例は香港の制定法の一部であり、違反した場合、民事上および刑事上の責任を問われる可能性があります。買収にもっとも関連性のある条項には、以下のものがあります。

  • 香港の上場企業の取締役、最高経営責任者、大株主は、当該企業に対する議決権持分を開示しなければなりません。
  • 香港の上場企業は、重要な非公開情報を取り扱う際には所定の基準に従う義務があります。
  • インサイダー取引やその他の類型の市場不正行為は刑事犯罪に該当します。

印紙税条例

印紙税条例(Stamp Duty Ordinance)は、香港で設立された企業の株式、香港の上場株式、および香港に所在する不動産のあらゆる譲渡について、印紙税の支払いを義務付けています。株式譲渡には従価印紙税を支払う必要があり、その額は時価または支払対価のいずれか高い方の0.26%です。不動産譲渡の場合はより複雑で、印紙税は4種類あり、売主と買主の地位、および不動産の性質と用途に応じて支払います。

取引構造

香港には、会社条例に基づく同一グループ内の企業の合併を除き、裁判所が関与しない合併の制度はありません。香港企業の買収は、株式売却または資産売却を通じて行われます。

香港の上場株式の取得は、株式発行会社の設立地に関係なく、市場買付け、市場外取引および公開買付けの申し出に加えて、企業の本拠地の法律で認められているその他の手段により実施することができます。

外国投資

香港の「積極的不干渉主義」の原則は広く知られていますが、それにもかかわらず、香港政府は近年、経済の方向性により積極的に関与するようになっています。香港政府は、対内投資促進のための財務的インセンティブについては重要性の高いものを提供していませんが、ここ数年、海外の人材を積極的に誘致しようとしています。

一般原則として、香港では、外国人投資家は香港の投資家と同等に扱われます。以下にその例を挙げます。外国人投資家は香港で設立された企業を完全に所有・管理することができます。外国投資には政府の承認は必要ありません。住宅用不動産購入において非居住者に課される追加印紙税を除き、外国人投資家は香港の投資家と同様に土地を伴う不動産を所有することができます。

M&Aの主要な動向

特別目的買収会社(SPAC)。2022年、香港証券取引所はSPACを対象とする新たな上場プロセスを導入しました。SPACとは、過去の事業実績や収益を生み出す事業をもたない「空箱」企業です。SPACは、後日、実際に事業を行う他の企業と合併することを前提に、現時点で上場することができます。

香港のSPAC制度は、逆合併の対象である最小限の事業しか行っていない企業に対する警戒心と、香港の競争力を維持するために市場の資金調達の新たなトレンドを認める必要性との均衡を図ろうとする同証券取引所の努力を反映しています。しかし、香港のSPAC制度は、投資家の適格性、SPACのプロモーター/ディレクターの資格要件、de-SPAC(非上場企業との合併)ターゲット企業の適格性などの点で、ナスダックの制度に比較してはるかに厳格です。

セカンダリー上場制度。2018年以降、香港証券取引所は、上場規則に合致しない加重議決権構造や変動持分事業体のスキームをもち、米国に上場している「中国概念(China concept)」企業に対応するため、セカンダリー上場制度を大幅に変更してきました。変更後の制度では、加重議決権構造をもたず、プライマリー上場している大中華圏の非イノベーション関連企業は、時価総額や規制遵守の実績に関する要件に準拠の上、同証券取引所にセカンダリー上場を求めることができます。また、2017年12月15日以前に適格取引所に上場していた大中華圏に「重心(center of gravity)」を置く企業や、適格取引所に上場している非中国系企業は、同証券取引所への重複プライマリー上場を選択できるようになりました。

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