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漁電共生型太陽光発電プロジェクトは養殖業者と投資家に利益をもたらすことでしょう。しかしこの新しい取り組みの複雑さが、不測の問題を生じさせる可能性があります。

台湾政府は2016年以来、2025年までに現在稼働中の原子力発電所3箇所を段階的に廃炉にするための取り組みを進める一方で、新たな形態の持続可能エネルギー、特に風力発電と太陽光発電(PV)の開発を積極的に推進しています。

Billy MC Chen
Billy MC Chen
K&L Gates(台北オフィス)パートナー
電話: +886 2 2326 5171
Eメール: billy.chen@klgates.com

開発・建設期間が長期にわたり、必要資金が多額になる風力発電プロジェクトと比較して、太陽光発電プロジェクトは、建設の点では比較的容易であり、加えて、風力発電所建設中の代替エネルギー源にすることも可能です。

台湾政府はこの利点を踏まえて、2025年までにPVで20ギガワットを発電するという目標を設定しています。台湾の公営企業、台湾電力股份有限公司(台湾電力)が、この目標のうち2.5%を発電し、残りを民間開発業者が賄う計画です。

これらのプロジェクトの中で、政府は特定の地区を漁電共生型太陽光発電プロジェクトに積極的に割り当てています。これは、発電と養殖を同時に行うことにより土地利用を最適化し、農村地域の経済活性化と、グリーンエネルギーの安定供給を両立させることを目指すものです。

この漁電共生型太陽光発電プロジェクトは、固定価格買取制度のメリットを享受しつつ、大規模な太陽光発電プロジェクトを実施できる新たな機会となるため、開発業者にとって魅力的だと考えられます。

本稿では、漁電共生型太陽光発電プロジェクトの重要な特徴を紹介し、これから投資を行う方たちに向けて、主要なリスクを明らかにします。

プロジェクトのタイプ

開発業者は、屋内養魚場の屋上に屋上型太陽光発電システムを設置するか、屋外養魚場の上に地上設置型太陽光発電システムを設置するかのどちらかを選択できます。屋外型プロジェクトでは、通常、浮体式太陽光発電システムを利用します。これは、生け簀の底または養魚池の底や土手に固定された支柱に、システムを設置するものです。

開発プロセス

漁電共生型太陽光発電プロジェクトは、太陽光発電プロジェクトと養魚場を組み合わせたものです。そのため、一般的な開発プロセスには、養魚場としての特徴を加味した補足的なプロセスが必要となります。

他の太陽光発電プロジェクト(発電容量2メガワット未満の小規模プロジェクトを除く)同様、養魚場プロジェクトの開発に必要な一般的なプロセスには、地方自治体からの認可の取得、環境上の配慮を要する地域内にある場合には他の当局からの認可の取得、中央政府からの設立・建設許可の取得、台湾電力との電力購入・グリッド接続契約の締結、電力会社としての登録などが含まれます。

屋外型プロジェクトについては、下記の文書の提出が必要です。

  • 環境・社会に関する検査書(電力産業の登録に関する規定、第3条第1項第1号)。漁電共生型太陽光発電プロジェクトにおいては、先進地区、優先地区、要配慮・緩和地区の3段階の地区が規定されています。先進地区や優先地区では、環境や社会への配慮に関し、自己評価書を作成する必要があります。要配慮・緩和地区では、環境・社会問題への対策などを記載した、より詳細な検査書の作成が求められます。したがって、開発業者が事業用地を選択する際には、先進地区や優先地区にある用地の取得を望む傾向があります。
  • 農地使用許可書(農地における農業用施設の構造の調査申請に関する規定、第4条第2号第1項および第29条)。この許可書は、農地において屋外養魚場の上に地上設置型太陽光発電システムを設置する際に必要ですが、太陽光発電システムの専有面積は、当該農地の総面積の40%以下でなければなりません(40%制限)。

屋内型プロジェクトでは、農地使用許可書(農地における農業用施設の構造の調査申請に関する規定、第4条第2号第1項および第28条)を取得する必要があります。これは、屋内養魚場の屋上に、(グリーン電力発電施設として)屋上型太陽光発電システムを設置する際に必要となります。

屋内型プロジェクトのプロセスは、屋外型よりも簡潔だと考えられますが、それは、環境・社会に関する検査書が不要であり、40%制限が適用されないためです。しかし、プロジェクト用地に既存の屋内養魚場がない場合、開発業者は、発電施設の建設に先立ち、養魚場を作る必要があります。この場合、追加承認(建設許可や農地使用許可など)の取得が必要になるために生じるリスク、および建設や資金調達に関するリスク(担保権など)など、開発業者が負うリスクが増大する可能性があります。

投資家が留意すべき事項

Lillian Chen
Lillian Chen
K&L Gates(台北オフィス)アソシエイト
電話: +886 2 2326 5176
Eメール: lillian.chen@klgates.com

養殖業者の管理。魚介製品のトレーサビリティ、国際認証、水産養殖飼料供給報告、魚介製品取引などの養殖事業運営上の必要性からも明らかなように、漁電共生型太陽光発電プロジェクトでは、養殖業者が重要な役割を果たします。適切な証明書の提出を怠れば、許可が取り消される恐れがあります。

プロジェクト用地が私有地か公有地かによって、養魚場の経営構造は異なります。私有地の場合、養殖事業者は土地所有者か、もしくは土地所有者から養殖事業を請け負っている者になります。用地がプロジェクト事業者に賃貸された後も養殖事業者が事業を継続する場合、プロジェクト事業者は、通常、賃貸契約に基づき土地所有者を介して養殖事業者を管理します。

公有地の場合、養殖事業者は政府から雇われています。開発業者が太陽光発電システムの設置を許可されたプロジェクト用地で、既存の養殖事業者が事業を継続する場合、複合利用プロジェクトになるため、当局は養殖事業者の管理に関与せず、開発業者が別途、養殖事業者と契約を締結することになります。

養殖事業に関する専門知識が必要となるため、プロジェクト企業の大半は養殖管理会社と契約し、開発および事業運営段階の管理を委ねます。これには通常、飼料供給報告のサポート、生産量の管理、魚介製品の販売などが含まれます。ただし、養殖事業の一部の事業は、設計・調達・建設(EPC)の請負業者や運営・保守(O&M)サービス事業者の業務と重複する可能性があります。

農地使用許可の所持。農地使用許可の申請者は、当局の規定に従い特定の事業領域について登録されている漁師、水産養殖団体または企業でなければなりません。ただし、このような企業は外資規制の対象となり、申請者の持ち分の50%以上を現地企業が直接または間接的に保有している必要があります。したがって、海外投資家は別のプロジェクト構造を検討する必要があります。

EPC事業。開発段階の期間に、EPC請負業者が養魚場に太陽光発電システムを建設します。しかし、屋外型プロジェクトにおいてシステムが生け簀・養魚池の底または土手に固定される場合、EPC請負業者と養殖事業者は連携・協力して作業を進めなければならないでしょう。例えば、EPC請負業者は、太陽光発電システムの設置に先立ち、養魚池を補強する必要があるかもしれません。また、養殖事業者は、何らかの養殖設備を設置する必要があるかもしれません。

養殖管理会社の業務範囲には開発段階だけではなく事業運営段階も含まれるため、EPC請負業者、養殖事業者、および/または養殖管理会社の義務および責任を、適切な契約書において明確に割り当てる必要があります。

O&M業務。事業運営段階の期間は、O&Mサービス事業者が太陽光発電システムの運営と保守に責任を負います。ただし、屋外型プロジェクトでは、養殖管理会社とO&Mサービス事業者の管理責任の範囲が重複する可能性があります。例えば、双方がプロジェクト用地や養魚地への立ち入りを管理する責任を負っている場合があります。入場方法の管理について、養殖管理会社とO&Mサービス事業者の間で指示が異なっていると、紛争に発展しかねません。

したがって、適切な契約書によって、O&Mサービス事業者と養殖管理会社の互いの管理責任範囲を明確に規定するとともに、どのように継続的に協働していくかを明らかにしておくべきです。

変電所の利用。太陽光発電システムが設置される養魚場の用地には、通常、変電所シェア規則(共通変電所の設置や容量配分に関するガイドラインなど)や、今後公表される規則が適用されます。つまり、開発業者は自社の変電所の建設を自由に決定することはできず、変電所建設のために許可を得る必要があります。開発業者がそのような許可を付与された場合、他の開発業者とシェアできる余剰容量を備えた変電所を建設することができます(また、建設しなければなりません)。

しかし、これにより、自社のプロジェクトで必要とする以上に容量を拡大するなど、開発業者が想定していなかったかもしれない追加的なコストが生じます。

開発業者がこの建設許可を取得できなければ、グリッド接続のために、他のプロジェクト事業者の変電所を使用しなければなりません。この場合、商業運転が可能になるまでの期間を完全に管理することができないため、プロジェクトの資金調達に不利な影響を与える可能性があります。

Zhong Lun law Firm

K&L GATES
30/F, 95 Dun Hua S. Road, Sec. 2
Taipei, 106 Taiwan
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