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世界各国で景気後退が現実の脅威として認識されるにつれ、企業の投資先や投資方法に関する判断がこれまでになく難しくなっています。こうした状況の中、チャンスを獲得するための鍵となるのが法律事務所であり、的確なアドバイスを提供する存在として、これまで以上に信頼性が高まっています。明るい兆候が多くあるとはいえ、不安定な世界で最も重要となるのが、市場に関する知識です。Putro Harnowoが、主な動向を取り上げ考察します。

活況を呈するM&A市場や国際プロジェクトファイナンスの急成長により、昨年は大幅な回復を遂げましたが、国連貿易開発会議(UNCTAD)の「世界投資報告書2022」では、ウクライナにおける戦争やパンデミックの長引く影響が、多くの国々で食糧、燃料、金融に関するトリプル危機を引き起こしていることが指摘されています。

6月に公表されたこの報告書は、2022年の世界の外国直接投資(FDI)額は減少傾向になるか、せいぜい横ばいにとどまると予測していますが、先進国間のFDI審査は増加傾向になると示唆しています。こうした審査を実施している国は、世界のFDI流入額の63%を占めています。

また同報告書では、昨年は回復によってあらゆる地域で成長が促されましたが、それに大きく寄与したのは、M&A取引と多国籍企業の高水準の内部留保であったことが指摘されています。2021年における先進国の多国籍企業によって、海外投資額は1兆3000億米ドルに達し、前年の4080億米ドルから2倍以上増加しました。

海外に投資しているか、投資を検討している企業の社内弁護士にとっては、こうした動向は歓迎すべきことでもあり、同時に警戒すべきことでもあります。主権と安全保障関連の政策に伴う規制の進展について、法務チームは常に警戒を怠ってはならず、また、アウトバウンドとインバウンドの動向は、このような緊張した情勢を反映しています。

「企業は、レジリエントなサプライチェーンを構築しなければならないことを認識しており、そのためには海外への投資が必要です」と語るのは、APAC Advisorsの創設者兼CEOであり、シンガポールのAmChams of Asia-Pacificの議長も務めるスティーブン・オクン(Steven Okun)氏です。

同氏は次のようにも述べました。「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの貿易協定によって、この地域における柔軟性が大幅に向上し、サプライチェーンの多様化が進みます。企業はこうした協定を活用し始めたばかりです」

米国主導による14カ国のインド太平洋経済枠組み(IPEF)は、サプライチェーンのレジリエンス強化、強靭化、十分な統合化に全力で取り組んでいます。それには、情報共有と危機対応メカニズムの構築、サプライチェーンの物流と透明性の強化、熟練労働者を十分に確保するための研修や開発への投資なども含まれています。

「こうした取り組みが行われれば、アジア企業の海外への投資意欲をさらに高めることになるでしょう」とオクン氏は語ります。

この地域の大国である日本は、引き続き海外に事業展開し、投資対象を探し求めることが予想されます。ベーカー&マッケンジー東京事務所のパートナーである末冨純子氏は、「日本国内での経済成長率が低いため、日本企業は海外に投資する必要があります」と述べています。

「アジア全体では、ライフサイエンス、人工知能(AI)、IT産業、半導体産業、さらにエネルギー分野などに対して、投資の増加が見込まれます」

日本の対外直接投資は53%増の1470億米ドルとなり、2021年には第3位の投資国となりました。日本のクロスボーダーM&Aは、情報通信や化学製品分野を中心に、180億米ドルから600億米ドルに増加しました。2021年における韓国からの流出額は、前年比2倍の610億米ドルとなりました。

日本への投資に関心を持つ企業は、外国為替及び外国貿易法(外為法)に留意しなければなりません。同法によって、外国人投資家は、株式の取得、組織再編における株主の変更、その他特定の法人活動を行う前に、日本銀行を通じて取引事前届出を提出することが義務付けられています。また、2019年の外為法改正によって、国家安全保障上重要であると見なされる企業への外国投資承認に関する株式取得の閾値が、10%から1%に引き下げられました。

香港にある東アジアコーポレート・カウンセル協会(Association of Corporate Counsel:ACC)のシニアディレクターであるイアン・ロバートソン(Ian Robertson)氏によると、米国は依然として世界最大の市場であり、外国投資の観点から比較的分かりやすいとされています。米国は2021年に、世界最大のFDI受入国となりましたが、日本は、カナダ、英国、ドイツを抜いてその最大の投資元となっています。

また、ロバートソン氏は次のように語っています。「一般的に、日本やアジアの投資家を引き付けるのは、米国市場の規模です。3億3390万人の人口を有し、23兆米ドルのGDPを誇る米国は、依然として世界最大の最も豊かな市場です。アジアの投資家全般にとってさらに魅力的な点は、米国内に研究開発拠点を設立できることです。中国についてどれほど美辞麗句を並べ立てたとしても、世界のイノベーションの大半は依然として米国で生まれているのです」

UNCTADのデータによると、2021年における米国へのFDI流入額は2倍以上増えて3670億米ドルとなり、2015年、2016年に次いで3番目に高い水準を記録し、最大の受入国としての地位を確かなものにしました。

東南アジアの繁栄

UNCTADの報告書によると、東南アジアは、2021年の流入額が前年比44%増となり、FDI成長の原動力として歓迎されています。アジアの途上国へのFDI流入額は全体で19%増加し、過去最高の6190億米ドルに達しましたが、その主な原動力となったのが東アジアと東南アジアでした。東南アジアの繁栄は、製造業、デジタル経済、インフラへの旺盛な投資意欲によって支えられています。

2021年における世界のFDI流入額および流出額は改善を示しました。東南アジアでは、シンガポールとマレーシアからの流出額のみが増加しました。活力に満ちた多様な地域であるアジア各地の過去5年間の投資額は、以下のグラフに記載されています。

香港城市大学法学部のジュリアン・チェイス(Julien Chaisse)教授によると、アジアの多国籍企業は、対外直接投資の大半を占め、北米、EU、アジア域内の利益を多く生む市場に今後も引き続き参入するため、アジアの途上国からの投資の割合は増え続け、来年にはさらに増加するだろうということです。

また、同教授は「製造業、サービス業、デジタル経済のようなハイテク分野、インフラといった3〜4つの主要分野が、最も多くのFDIを呼び込むことを示唆する多くの指標があります。衰退している分野としては、採掘業と運輸業の2部門が考えられます」と指摘しています。

インバウンド投資に関しては、東南アジア、特にマレーシアが過去3年間で大幅な増加を示した、と同教授は考えています。代表的な例としては、中国のライセン・ソーラー・テクノロジー(Risen Solar Technology)による100億米ドル、米国のインテルによる70億米ドル、オーストリアのAT&Sによる21億米ドルの投資などが挙げられます。

「マレーシアは、ベトナムやシンガポール同様、大量のFDIを呼び込みましたが、半導体へのFDIを呼び込む可能性も高いでしょう。半導体は今後重要性が高くなるため、拡大する可能性が極めて高いでしょう」とチェイス教授は述べています。

モリソン・フォースターのシンガポール事務所のパートナーであるAng Lip Kian氏も、東南アジアにおけるテクノロジー、決済、データセンター分野の買収や投資取引に強い関心が集まっていることを認めています。しかし、同氏は、流動性の引き締めや広範なマクロ経済状況を理由に、買収企業や投資家が警戒感を一段と高めているため、取引が成立するまでに以前より時間がかかっていると指摘しています。

「資金力のある企業は、魅力的な評価額の恩恵にあずかり、自社の成長と事業計画を促進するために資産の獲得を検討しています。その一方で、事業の他の側面を支えるために、非中核資産を売却して資金調達を検討している企業もあります」と同氏は述べています。

同氏によると、プライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルの分野では、転換社債や将来株式取得略式契約スキームなどの転換金融商品を利用した投資が、ますます増加しているようです。それは、投資家も企業も同様に、評価額が低下していることを考慮し、プライスドラウンド(株価を決定した上での株式による資金調達)に同意することを躊躇しているためです。

東南アジアは異質市場であり、各法域にはそれぞれの政治的、市場的、法的な特徴があり、その全てが急速かつ継続的に変化し続けているため、買収企業や投資家は、現地に精通した法律顧問に連絡を取り、関連市場における現地の状況を把握することを、Ang氏は提案しています。

現在の先行き不透明な市況の中で、買収企業や投資家はより適切な選択を行い、取引を安全に実施するために、対象企業をより慎重に評価するようになる、とAng氏は予想しています。例えば、対象企業の事業計画や財務モデルの前提が、さらに保守的なものになる可能性が高く、また、対象企業は、ランウェイやさらに不利な市場シナリオに対する準備体制などについて、多くの質問を受ける可能性があります。

Ang氏は次のように語ります。「現在の市況が継続するか、あるいは悪化すれば、取引条件は買い手に有利になる可能性があります。例えば、投資家がより強気に残余財産優先分配権を要求したり、転換社債による資金調達の場合には、情報請求権やガバナンス権の強化や、転換時の割引率の引き上げを求めたりすることがありました」

マニラにあるフィリピン投資委員会(BOI)の副委員長兼マネージングヘッドのセフェリノ・ロドルフォ(Ceferino Rodolfo)氏は、フィリピンは今年、パンデミック前のFDI流入額を超えるだろう、と楽観的な見通しを立てています。その主な推進力となっているのは、小売自由化法、公共サービス法、外国投資法の改正による最近の自由化改革に加え、一貫して堅調なフィリピンのマクロ経済のファンダメンタルズと社会経済の回復です。

フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas)は先日、2021年におけるフィリピンへのFDI最終流入額を発表しましたが、その額は、2020年の68億米ドルから82%以上増加し、124億1,000万米ドルに達しました。この額は、パンデミック前の2017年に記録した前回の最高額を大幅に上回っています。

「2022年における株式資本の大部分は、シンガポール、日本、米国、香港、ドイツから提供されました。こうした資本は、主に製造業、電力、ガス、蒸気および空調供給、金融および保険、不動産などの産業に配分されました」とロドルフォ氏は説明します。

今年の1月から7月までの投資承認額は、フィリピンBOIだけで、2021年同期の2343億9000万フィリピンペソ(39億7000万米ドル)から3433億5000万フィリピンペソへと46%増加しました。過去5年間における、BOI承認外国投資の上位提供国は、シンガポール、中国、マレーシア、オランダ、韓国でした。

BOIは、企業復興税優遇法(CREATE法)に基づき、優遇措置の適用対象となる対内投資向けの複数分野および認可プロジェクトを推進しています。現地製造品の価値創造を高めるために、現地サプライチェーンのギャップを埋めるための投資や、ハイテクや革新的なソリューションの国内への導入を加速する分野への投資を呼び込むため、優先市場への投資促進活動が組織化されつつあります。

フィリピンは、「Make it happen in the Philippines(フィリピンで実現)」キャンペーンを掲げ、フィリピンに戦略的優位性をもたらす3つの新しい優先産業群、すなわち工業・製造・輸送、テクノロジー・メディア・通信、健康・ライフサイエンスをキャンペーンの対象としています。

ロドルフォ氏は、「こうした取り組みには、パンデミックなどの世界規模、国家規模の混乱の結果生じた、需要パターンの変化と供給上の課題が考慮されました」と述べました。

米国の魅力

バイデン政権は、5月に待望のIPEFを発足させた後、世界貿易に対して米国中心のアプローチを推進する意向を示しました。韓国は、特に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が韓国企業に対して米国への投資を奨励した後、それに応えようと躍起になっているようだ、とソウルにあるYoon & Yang(法務法人和友)のマネージング・パートナーであるイ・ジュンサン(Lee Junsang)氏は考えています。

「他の多くの国々と同様、韓国においても政治と経済は密接に関係しており、新政権は経済活動を重視した親米路線であることを明確に打ち出しています」とイ氏は述べています。

韓国の大手電池メーカーのLGエナジーソリューションは、米国でバッテリー工場を設立するために、日本の本田技研工業と合弁事業契約を締結しました。建設以外では、次世代ネットワーク、スマートシティ分野、製薬・バイオ企業などが、韓国企業にとって魅力的な分野です。

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