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Asia Business Law Journalが国内トップクラスの法律事務所を選出。Lim MiranおよびElverina Hidayatiがレポートします。

調な輸出と底堅い国内経済に支えられ、日本はここ数年にわたる世界的な嵐の影響を乗り越えてきました。世界経済や国際貿易の不確実性が短期・中期的に金融市場に影響を及ぼすでしょうが、日本は度重なる災害を乗り越え、着実に未来に向けて進んでいます。こうしたなか、弁護士の役割はこれまで以上に重要になっています。

他の多くの国々と同様に、日本も燃料・エネルギー価格の急騰によるインフレ圧力と無縁ではありません。これは食料輸入コストに直接影響し、インフレ率を、日銀が想定する2%を大幅に上回る2.5%に押し上げました。政府は、2022年の経済成長率は前年比2%にとどまると予測しています。

しかし、国連貿易開発会議が発表した「世界投資報告書2022年版」によると、日本の2021年の海外直接投資額は前年比53%増の1470億米ドルで、日本は世界第3位の投資国となっています。一方で、このアジアの経済大国は、電気自動車、半導体、エレクトロニクス、エネルギーなどの急成長分野で熾烈な競争に直面しています。

政府が6月に発表した「経済財政運営と改革の基本方針」では、スタートアップ企業への投資を5つの重点投資分野の一つに挙げており、今後5年以内にスタートアップ企業の資金調達総額を、現在の10倍にすることを目標にしています。

これらのマクロ経済要因すべてが、日本の企業に影響を及ぼしています。また、世界経済は、近年、目覚ましい速度で変化しています。こうしたなか、日本企業はアジリティをもって対応することが不可欠です。企業が備えるべき俊敏性の核となるのが、日本の精緻な規制に効果的に対処することを可能にする、信頼できる法的手続きの実行と助言です。

日本企業と同様、法律事務所も海外での業務を拡張しています。多くの法律事務所が、東南アジアにおいて着実にネットワークを拡大しており、さらに、ヨーロッパや北米にも進出しています。

Asia Business Law Journalでは、このたび、Japan Law Firm Awardsを創設し、このような法律事務所の功績を称え、この国の最も重要な法律事務所を選出して表彰します。日本の法律事務所を対象に、総合評価において最も優れた4事務所を選出しました。さらに、各カテゴリーのトップになった24事務所をご紹介します。

Law firm awards

LAW FIRM OF THE YEAR

西村あさひ法律事務所

西村あさひ法律事務所は、国内の大型合併案件およびクロスボーダー・オフショアのM&A案件の合併申請について、定評のある総合法律事務所です。当事務所の前身である西村法律事務所は、1966年、西村利郎弁護士により設立され、以降、日本全国のクライアントとともに長い歴史を築いてきました。2007年、あさひ法律事務所の国際部門と統合し、西村あさひ法律事務所となりました。

執行パートナーの中山龍太郎弁護士を中心に、銀行や金融機関が日本の法制度の中で直面する問題の解決を支援しています。西村あさひ法律事務所は、日本全国および中国、香港、台湾、東南アジア、ドバイ、ニューヨーク、フランクフルトの海外拠点にわたり、日本人弁護士と外国人弁護士の双方を拡充しており、700名超の弁護士を擁するに至りました。

最近では、西村あさひ法律事務所は、ホンダが韓国のLGエナジーソリューションと合意した、北米市場向けのホンダとアキュラの電気自動車用リチウムイオン電池を生産する、米国の合弁会社の設立について助言しました。また、米国の民間投資会社ベインキャピタルが、オリンパス株式会社の子会社で精密機械・機器の製造・販売を行う株式会社エビデントを買収した際にも助言しました。

昨年は、一般株主が保有する日立金属株式の公開買付けを含む、72億7000万米ドルのM&Aにおいて、日立金属のアドバイザーを務めました。これは、プライベート・エクイティ・ファンドによる日本企業の買収案件としては、最大規模のものとなりました。

新日本製鐵株式会社(東京)の法務部長である原田剛氏は、「西村あさひ法律事務所は、疑いなく、幅広い分野でトップクラスの法的助言とサポートを提供する、日本で最も優れた法律事務所です」と述べています。

プライベート・エクイティ・ファームのカーライル・グループ(東京)のマネージング・ディレクター兼日本代表の山田和広氏は、西村あさひ法律事務所、特にパートナーの内間裕弁護士を高く評価しています。

「内間弁護士と彼のチームは、常に質の高い法的アドバイスと深い知見に基づいた有益な提案を提供してくれます」と山田氏は述べています。「西村あさひ法律事務所は、法的アドバイスだけでなく、私たちの案件のためのソリューションも提供してくれます。この事務所には、多様なバックグラウンドを持つ経験豊富な卓越した人材が揃っています」

  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • 森・濱田松本法律事務所
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所

アンダーソン・毛利・友常法律事務所の前身は、アンダーソン・毛利法律事務所および友常木村法律事務所です。アンダーソン・毛利法律事務所は1952年に設立され、日本で事業展開する海外企業にサービスを提供する法律事務所として評価を確立しました。一方、友常法律事務所は1967年に設立され、国際金融取引において高い評価を得ていました。2005年に両事務所が合併し、現在のアンダーソン・毛利・友常法律事務所が誕生しました。また、2007年には、国際倒産・事業再生、危機管理を専門とするビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所と統合しました。

東京の主たる事務所のほか、大阪、名古屋に加え、北京、上海、シンガポール、ホーチミン、バンコクにもオフィスを置き、香港、ジャカルタ、シンガポールでは現地の法律事務所と提携しています。また、アンダーソン・毛利・友常法律事務所は、2022年9月上旬に、欧州初のオフィスをロンドンに開設し、シンガポールオフィスの共同代表を務めていたパートナーの前田敦利弁護士が代表となりました。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所は、先般、セールスフォースがスラック・テクノロジーズを277億米ドル相当の現金および株式で買収した際に、スラック・テクノロジーズのアドバイザーを務めました。この他、大きな注目を集めた案件として、日本でメガソーラープロジェクトの開発、資産管理、運営を行うソネディックス・ジャパン株式会社が出資者となったメガソーラープロジェクトに関する242億米ドルの買収およびリファイナンスが挙げられます。この案件の資金調達において、当事務所は銀行団のアドバイザーを務めました。

長島・大野・常松法律事務所は、2000年、長島・大野法律事務所と常松簗瀬関根法律事務所の統合により誕生しました。その後、日本以外のさまざまな国・地域出身の弁護士40名を含む500名超の弁護士が所属する、国内最大規模の法律事務所に成長しました。また、ニューヨーク、上海、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイにもオフィスを設け、国際的にも事業を展開しています。

東京に主事務所を置き、マネージング・パートナーの杉本文秀弁護士と井上広樹弁護士を中心に、国内で最も重大で複雑な案件を含め、国内およびクロスボーダーの多様な案件に対応しています。

長島・大野・常松法律事務所は、銀行規制分野での業務に定評があり、特にストラクチャードファイナンスと不動産ファイナンスに重点を置いています。その他にも、過去20年にわたり、大型買収ファイナンス案件においてアドバイスを提供してきました。主なクライアントには、国内の金融機関や投資家に加え、三菱UFJ銀行、ローン・スター・ファンド、三井住友銀行などの国際金融機関が含まれています。

先般、当事務所は、香港の投資会社PAGがHISからハウステンボスを7億2000万米ドルで買収する際にアドバイスを提供しました。また、NTTによるNTTドコモの完全子会社化〔1兆5000億円(100億米ドル)の株式取得〕の際には、融資銀行である三菱UFJ銀行のアドバイザーを務めました。

森・濱田松本法律事務所は、2002年に森綜合法律事務所と濱田松本法律事務所が統合して開設されました。以来、国内外のクライアントのためにサービスを提供しています。その3年後、森・濱田松本法律事務所はマックス法律事務所と合併し、その後も順調に成長を遂げています。

森・濱田松本法律事務所は東京に主事務所を置き、北京、上海、シンガポールに海外拠点を有するほか、タイとミャンマーでは現地事務所のChandler MHM(バンコク)およびMyanmar Legal MHM(ヤンゴン)を通じてフルサービスの現地業務を展開し、強固な基盤を形成しています。

2018年にはホーチミン事務所を開設し、さらに2022年1月にはハノイ事務所を開設しました。現地弁護士を採用し、ベトナムでの業務拡充を図っています。また、先般、ジャカルタに新しく設立された法律事務所、ATD Lawと業務提携を開始することを決定しました。この業務提携は、2023年に開始される予定です。

現在、当事務所は、飯田耕一郎弁護士、石綿学弁護士、松村祐土弁護士の3名のマネージングパートナーを筆頭に、670名を超える弁護士と590名のスタッフを擁し、株式会社資生堂、草間彌生記念芸術財団、日本サッカー協会、ヤフー株式会社など、数多くの有名企業・団体にサービスを提供しています。

昨年には、Yahoo! JAPAN の親会社であり、東京を拠点とするZホールディングスとメッセージングアプリの運営者、LINEとの統合に関し、Zホールディングスを支援しました。Zホールディングスはこの統合により、日本最大の情報技術企業の創設を目指しています。

Law firm awards

BEST NEW LAW FIRM

GI&T法律事務所

GI&T法律事務所は、ベーカー&マッケンジー法律事務所の元パートナーで、不正調査を専門とする代表社員/パートナーの西垣建剛弁護士により2020年に設立されました。当事務所が専門とするのは、コンプライアンス、紛争解決、国際仲裁、雇用、ヘルスケア、不正調査です。

東京を本拠とするGI&T法律事務所は、3名のパートナーと3名のアソシエイトが、インドネシア、タイ、中国を中心に、増大する国際的なニーズに応えています。最近では、日本の上場企業3社のために、EUの一般データ保護規則(GDPR)など、30超の法域の規制へ準拠が求められる、グローバルな内部通報制度を構築しました。

「GI&T法律事務所は、厳格な規制下にあるヘルスケア業界と関連当局のガイダンスに関する深い専門知識を備えており、独自の地位を確立して他の法律事務所と差別化を図っています」と、フィリップス・ジャパンの法務・コンプライアンス部長、川水美穂子氏は述べています。「当社の事業は常に前例のない複雑な問題に直面しています。GI&T法律事務所との取り組みは、このような厳しい環境下で解決策を生み出す基盤となるものです」

米国医療機器・IVD工業会(AMDD)のリーガル・コンプライアンス委員会の小島克己委員長によると、AMDDは過去10年にわたり、西垣弁護士と密接に連携してコンプライアンス研修会を開催してきました。

「西垣建剛弁護士は、信頼できるプロフェッショナルな弁護士であり、汚職防止、特に日本市場における米国海外腐敗行為防止法のパイオニアです」と小島委員長は述べています。「彼が講師となる研修は参加者から好評で、医療分野の倫理的な事業環境の強化に多大な貢献をしてきました」

デル・テクノローズ株式会社(デルの日本法人)のグローバルファシリティおよびEHS(環境、健康、安全)の法務を担当するMelody Wang氏は、GI&T法律事務所と仕事をする機会が数多くあり、同事務所について次のように述べています。「建剛さんと彼のチームは、高度なスキルと機敏な対応力を兼ね備えたリーガルアドバイザーです。デルが複雑なビジネス環境において複数の不動産取引を成功させることができたのは、彼らのサポートがあったからです。心から感謝しています」

  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • 森・濱田松本法律事務所
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所
  • 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業
  • ベーカー&マッケンジー法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所
  • TMI総合法律事務所

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業は、1994年に渥美・臼井法律事務所として設立され、2003年に渥美総合法律事務所に改称されました。2年後、日本で初めて、外国系法律事務所との合弁ではない形で外国法共同事業を開始し、渥美総合法律事務所・外国法共同事業に改称しました。

シニアパートナーの渥美博夫弁護士は、バンキング、資本市場、アセットファイナンスの分野で豊富な経験を持ち、融資、ファイナンスの分野では日本を代表する弁護士の一人として知られています。もう一人のシニアパートナー、坂井豊弁護士は、証券化、プロジェクトファイナンス、船舶ファイナンス、航空機リース、シンジケート・ローン、および環境法の分野を専門としています。

2011年、当事務所はベトナムの法律事務所A-PAC International Law Firmと提携関係を結びました。その3年後にはヨーロッパに進出し、ベルリンに提携オフィスを開設しました。2015年には、このオフィスをフランクフルトに移転するとともに、ロンドンにもオフィスを開設しました。2021年2月には、ニューヨークに提携オフィスを開設しました。

当事務所は、航空機、航空機エンジン、船舶の日本型オペレーティングリースやコールオプション付日本型オペレーティングリースなど、様々なタイプの航空機・船舶ファイナンス案件で豊富な実績を重ねています。

国際的な法律事務所、Baker McKenzieの日本における歴史は、1972年に東京青山法律事務所が提携オフィスとして設立されたことに始まり、最も古くから日本に事務所を置く国際法律事務所の一つです。2012年9月、ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)に改称しました。

外国法共同事業とは、日本で法律業務を行う資格を持つ外国弁護士(外国法事務弁護士)と日本の弁護士または弁護士法人が、継続的な契約により、共同して運営する事業をいいます。

150人超の弁護士が所属する東京事務所の中心となっているのが、共同代表パートナーの高田昭英弁護士とギャビン・ラフテリー弁護士です。

当事務所は先般、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「持続可能な地球低軌道における 宇宙環境利用の実現に向けたシナリオ検討調査」のメンバーとして選定されました。本調査では、物資やクルーの輸送、宇宙環境利用、地球への帰還など、輸送におけるビジネスモデル全般を検討する予定です。

1990年の設立当初、TMI総合法律事務所の所属弁護士はわずか11名でした。その後大きな成長を遂げ、2022年には、570名を超える弁護士を擁するまでに至りました。代表の田中克郎パートナーが設立した当事務所は、上海、北京、ハノイ、ホーチミン、ヤンゴン、バンコク、プノンペン、シンガポール、シリコンバレー、ロンドンにオフィスを設け、国際的に事業を展開しています。また、ブラジル、フランス、インド、インドネシア、ケニア、マレーシア、フィリピンに現地デスクを設置しています。

TMI総合法律事務所は、航空機ポートフォリオ取引、リース条件変更、セール・アンド・リースバックなど、多様な航空関連案件を恒常的に手掛けるほか、日本の宇宙ビジネスの発展に貢献する案件に数多く携わってきました。

「TMIは優れた法律事務所です。パートナーの佐藤俊司弁護士と共に働けたのは素晴らしい経験でした」と台北のアイガー法律事務所のマネージングパートナー、ジョン・イーストウッド弁護士は述べています。

  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • 森・濱田松本法律事務所
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所
  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • 森・濱田松本法律事務所
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所
  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • 日比谷総合法律事務所
  • 森・濱田松本法律事務所
  • ホワイト&ケース法律事務所

日比谷総合法律事務所は、元裁判官・元公正取引委員会委員の入江一郎弁護士により、1960年、独占禁止法専門事務所として開設されました。以降、行政事件、刑事事件、民事事件、国際カルテル事件、米国反トラスト法、EU競争法などの分野で、多数のクライアントを支援してきました。

現在、独占禁止法に関する調査を専門とする中藤力パートナーが代表を務めています。また、当事務所には12名のパートナーと5名のアソシエイトが在籍しており、企業紛争、破産管財人、民事再生事件、一般民事紛争などに関する訴訟事件にも幅広く対応しています。

国際的な法律事務所、ホワイト&ケースは、1987年に東京オフィスを開設し、その後1995年に、日本の弁護士資格を持つ弁護士との共同事業を立ち上げました。当事務所は、企業法務、金融、独占禁止法、知的財産、不動産などの分野に定評があります。

東京オフィスでは、中堅企業の案件から大規模で複雑な案件まで、クロスボーダー業務で豊富な実績を持つ宇佐神順弁護士が、オフィス・エグゼクティブ・パートナー兼コーポレート/M&Aプラクティス共同代表を務めています。

2021年、当事務所は、ペイパル・ホールディングスが日本のオンライン決済プラットフォームPaidyを3000億円(27億米ドル)で買収した案件において、ペイパル・ホールディングスのアドバイザーを務めました。また、化粧品の製造・販売を主な事業とする日本の多国籍企業、資生堂のパーソナルケア事業買収のため、プライベート・エクイティ・ファームのCVCキャピタル・パートナーズが15億米ドルの資金調達を実施した際に、アドバイスを提供しました。

  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所
  • TMI総合法律事務所
  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • ベーカー&マッケンジー法律事務所
  • シティユーワ法律事務所
  • TMI総合法律事務所

シティユーワ法律事務所は、2003年、ユーワパートナーズ法律事務所と東京シティ法律税務事務所(法律部門)の統合により設立されました。M&A、民事・商事訴訟、倒産案件など、企業法務全般に対応しています。2005年には、特許訴訟を専門とする大場・尾崎・嶋末法律事務所と業務統合を行いました。

小林雅人弁護士、平田晴幸弁護士、栗林康幸弁護士、野本新弁護士、岡田美香弁護士、棚村友博弁護士、丸山裕一弁護士が代表を務める当事務所には、国内外の160名超の弁護士が在籍しています。当地域での事業展開を拡大するため、2023年1月、主に中国とベトナム法務を手掛ける、9名の弁護士からなるブティック型事務所、曾我法律事務所と統合する予定です。

シティユーワ法律事務所は、絶えず変化するテクノロジーやデジタルのビジネスにおいて、日本のクライアントとその海外法人に対し、個人情報保護に関する法的サポートを幅広く提供する一方で、多国籍企業に対しては、日本の個人情報保護法に関する支援を提供しています。

  • アレン・アンド・オーヴェリー外国法共同事業法律事務所
  • 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業
  • シティユーワ法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所

マジックサークル(ロンドンを拠点とする5大法律事務所)の1つであるアレン・アンド・オーヴェリー法律事務所は、1988年に東京オフィスを開設し、コーポレート・M&A、プロジェクト、エネルギー、天然資源・インフラ、銀行・金融に関連する案件を主に扱っています。日本では国際的プロジェクトに強いことで知られており、日本の大企業をクライアントとして、エネルギー、インフラ、ファイナンスに関するクロスボーダー案件を幅広く取り扱っています。

東京オフィスおよびソウルオフィスのマネージング・パートナー、マティアス・フォス弁護士は、当事務所の水素関連グループの共同設立者でもあります。フォス弁護士は、日本、台湾、英国、南アフリカ、中国を含む世界各地の多様なクリーンエネルギー事業や洋上風力発電事業に関してアドバイスを提供しています。

  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • ベーカー&マッケンジー法律事務所
  • 森・濱田松本法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所
  • シティユーワ法律事務所
  • 大野総合法律事務所
  • 弁理士法人 太陽国際特許事務所
  • TMI総合法律事務所

大野総合法律事務所は、2000年に代表パートナーの大野聖二弁護士により、知的財産法の専門事務所として東京に設立されました。当事務所は、情報技術、半導体、バイオテクノロジー、バイオインフォマティクス、ナノテクノロジー、環境技術、異業種融合技術などに関する複雑な案件を数多く手掛けています。

当事務所は、設立以来、クライアントと密接に連携し、特許審査・出願から特許管理、特許訴訟、契約書のレビューに至るまで、知的財産権に関するトータルソリューションを提供しています。また、過去12カ月間に、弁理士2名および弁護士1名を新規に採用しました。

太陽国際特許事務所は、1981年に中島淳弁理士が、わずか3名のスタッフと共に東京に設立した特許事務所です。その後の40年間で規模は3倍に拡大、200名のスタッフを擁し、横浜、ソウル、米国バージニア州に拠点を置くに至りました。現在は、シニアパートナーの中島崇晴弁理士が所長を務めています。

米国、中国、韓国に登録している弁理士を含め、80名の日本人弁理士により、年間で3500件を超える国内特許出願に対応しています。また、日本で技術移転を計画しているクライアントにも支援を提供しています。

  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • 第一芙蓉法律事務所
  • 森・濱田松本法律事務所
  • Vanguard Tokyo法律事務所

労働・雇用を専門とする第一芙蓉法律事務所は、1986年に故竹内桃太郎弁護士によって設立されました。設立当初の所属弁護士は6名でしたが、現在では10名のパートナーを含む19名の弁護士が所属する法律事務所に成長しました。

当事務所は、2014年より、日本労働法学会理事の木下潮音弁護士が代表を務めています。第一芙蓉法律事務所は、団体交渉、労務管理、ならびに地方裁判所から、高等裁判所、最高裁判所まで、あらゆるレベルの訴訟に関して、労務関連の問題を数多く手掛けています。

2017年に設立されたVanguard Tokyo法律事務所は、雇用法、紛争解決、金融規制問題、ライフサイエンス、企業法務を専門としています。シニア・アドバイザーの木南直樹弁護士とパートナーの中澤章弁護士が共同で設立した当事務所には、現在3名のパートナーと12名のアソシエイトが在籍しています。

パートナーそれぞれが、日本で事業を展開する多国籍企業の支援について、20年を超える経験を有しています。Vanguard Tokyo法律事務所では、米国、英国、欧州、香港、シンガポールの現地の企業内弁護士や人事担当者と恒常的な関係を築いています。

  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所
  • モリソン・フォースター法律事務所
  • 森・濱田松本法律事務所

モリソン・フォースター法律事務所は1987年に東京オフィスを開設し、現在、米国と日本の弁護士各60名を擁する、日本で最も多様性に富んだ国際法律事務所の一つとなっています。

ケネス・シーゲル外国法事務弁護士と志賀正浩弁護士が、東京オフィスのマネージングパートナーを務めるとともに、国内企業や多国籍企業に対し、不動産取得や資金調達の極めて複雑な案件についてアドバイスを提供しています。

この1年の間に、元裁判官の野中高広弁護士を事務所に迎え、訴訟部門を強化しました。野中弁護士は、クロスボーダーの商事訴訟、汚職防止や反トラストを含む不正調査やコンプライアンス問題を専門としています。

当事務所は、インバウンド、アウトバウンド双方の案件を数多く手掛けており、ソフトバンク、日立、富士通、東芝などのクライアントにアドバイスを提供しています。当事務所が独占禁止法に関する助言を提供した案件のうち、最近注目を集めたものには、東芝の完全子会社であるキオクシア(旧東芝メモリ)が、ベインキャピタルが率いる投資ファンドに180億米ドルで売却された案件などがあります。

Law firm awards

M&A

  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • 森・濱田松本法律事務所
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所
  • 森・濱田松本法律事務所
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所
  • サウスゲイト法律事務所・外国法共同事業

ブティック型法律事務所のサウスゲイト法律事務所・外国法共同事業は、2016年に設立され、クロスボーダーM&Aやベンチャーキャピタルを専門としています。米国で弁護士資格を持つエリック・マークス弁護士と、日本で弁護士資格を持つ木下万暁弁護士の2人の設立パートナーが、双方の経験を組み合わせ、日本法に関する業務能力を備えた国際法律事務所と同等のリーガルサービスを提供しています。

グローバルなネットワークや他の法律事務所との提携関係に縛られることなく、独自に事業を運営し、現在では4名のパートナーが、大企業のクロスボーダーM&A案件のみならず、現在の日本のリーガルマーケットでは見過ごされている中小企業のクロスボーダー案件についても、国際水準のリーガルサービスを提供しています。

ニューデリーのIkigai Law法律事務所のマネージングパートナー、Anirudh Rastogi弁護士は、「サウスゲイトとは、さまざまなクロスボーダーの案件で仕事をしてきましたが、毎回、素晴らしい経験を得られます。彼らのプロジェクト管理、タイムリーな対応、プロフェッショナリズムは卓越しています」と賞賛の言葉を述べています。

  • アレン・アンド・オーヴェリー外国法共同事業法律事務所
  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業
  • 西村あさひ法律事務所
  • GT東京法律事務所
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所
  • Withers LLP

アメリカの多国籍法律事務所グリーンバーグ・トラウリグは、日本に対する国際的なビジネス社会の関心の高まりに応え、2015年に東京事務所を開設しました。当事務所は、クロスボーダー取引やベンチャーに関し、さまざまな業界にまたがる総合的な法務戦略を提供しています。

東京オフィスでは、石川耕治弁護士がマネージングパートナーを務め、パートナーの荻原雄二弁護士と大橋宏一郎弁護士が日本業務の共同代表となっています。2021年初めに不動産を専門とする稲田森弁護士をパートナーとして迎えるなど、この2年間、日本での不動産に関するサービスを拡充しています。

先般、グリーンバーグ・トラウリグは、資産管理会社GIキャピタル・マネジメントに対し、京都の新しい最高級ホテルの開発について助言しました。このホテルは、日本で初のリージェントブランドのホテルとなる予定で、1億3500万米ドル以上の価値があるとされています。

Withers LLPは、2015年に、東京オフィスとなるウィザーズ・ジャパン税理士法人を開設し、海外クライアントへの税務アドバイスの提供に注力しています。2018年に資産運用や不動産の取り扱いを拡大したことを受け、税理士法人を関連法人として維持しつつ、ウィザーズ外国法事務弁護士法人(登録外国弁護士の法人)とウィザーズ弁護士法人(日本の弁護士法人)による外国法共同事業に運営形態を変更しました。

パートナーのエリック・ルース弁護士が代表を務め、8名のパートナーを擁する当事務所では、投資ファンド、不動産、税務に関するアドバイスを提供し、インバウンド・アウトバウンドの不動産投資の全段階においてクライアントをサポートしています。

最近では、不動産運用会社ヌビーン・リアル・エステートが、不動産投資会社Bouwinvestおよびヌビーンの親会社である米国教職員年金保険組合(TIAA)からの投資により、ジャパン・オルタナティブ住宅戦略(Japan Alternative Living Strategy)ファンドを新設した際に代理人を務めました。このファンドは、主に高齢者向け住宅を対象としていますが、学生寮、シェアハウス、一戸建て住宅など、オルタナティブな住宅分野への投資も視野に入れて、首都圏、大阪、名古屋での投資を計画しています。

  • 阿部・井窪・片山法律事務所
  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所

阿部・井窪・片山法律事務所は、1959年、パートナーの阿部昭吾弁護士により、銀座法律事務所という名称で設立されました。井窪保彦弁護士、片山英二弁護士が事務所に加わった後、1991年に阿部・井窪・片山法律事務所に改称し、以来、この3名が代表兼マネージングパートナーを務めています。

創立者の阿部弁護士は倒産・事業再生の分野でよく知られており、他方、井窪弁護士と片山弁護士は、知的財産権と倒産法を中心に、国際的な案件や企業法務に対応しています。2000年には知的財産部門を設け、特許・商標出願業務を拡充しました。

  • 有泉・平塚法律事務所
  • マックス法律事務所
  • ノートン・ローズ・フルブライト外国法事務弁護士事務所
  • 小川総合法律事務所

有泉・平塚法律事務所は、海事法を専門とするシニアパートナー、平塚眞弁護士により、1976年に設立されました。海事、保険・再保険、国際商取引、国際仲裁を中心に、総合法律事務所として、あらゆる分野の法律サービスを提供しています。

海事分野では、衝突、座礁、油濁、曳船、施設損壊、船荷証券、海上運送状、傭船契約書、船舶管理、造船、船舶売買、海上保険、船舶アレスト・解放など、注目を集めた様々な案件に対応してきました。2021年、当事務所は、ディープウォーター・ホライズンのメキシコ湾原油流出事故に関する再保険紛争において、再保険会社を代理して控訴棄却判決を取得しました。

マックス法律事務所は海事法を専門としており、船会社や荷主責任相互保険組合のためにリーガルサービスを提供しています。また、貿易や信用状に関する紛争、商品取引、および航空に関し、海事法や裁判・仲裁の地域選択について助言やリーガルサービスを提供しています。

当事務所は、パートナーの松井孝之弁護士と秋葉理恵弁護士を中心に、世界的な国際ネットワークを通じてクライアントをサポートします。松井弁護士は当事務所に参加して以降25年を超える年月にわたり、衝突事故、カーゴクレーム、人身事故、逮捕、海事紛争を専門としてきました。

国際的な法律事務所、ノートン・ローズ・フルブライトの東京オフィスは2008年に開設されました。以降、銀行、エネルギー、インフラ、運輸などの分野で幅広くリーガルサービスを提供しています。ジョージ・ギブソン東京オフィス代表は、インフラやエネルギー関連プロジェクトの開発、資金調達、買収、処分を専門としており、なかでも新興国市場に力を注いでいます。

グローバルなネットワークを通じて、複雑極まりないストラクチャードファイナンスから競争法違反、船舶改造紛争、オフショア紛争に至るまで、いかなる海事案件についても、全面的なリーガルサービスを提供します。

小川総合法律事務所の前身は、海事案件を専門としていた故吉田精三弁護士が1924年に神戸で設立した吉田精三法律事務所です。1969年には故小川洋一弁護士がパートナーとして入所しました。以降、特に海難事故の分野で目覚ましい発展をとげ、日本の船主や保険会社の代理人として数々の重要な案件に関与してきました。

当事務所は、主に船主、傭船者、保険会社の代理人として、海運、貿易、商取引など、国内外の海事・商事案件を専門に取り扱っています。弁護士7名、海事補佐人2名、顧問1名を擁し、外国・多国籍船主、海運事業者、商社、金融機関にリーガルサービスを提供しています。

  • クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業
  • 外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所

クリフォードチャンス法律事務所の東京事務所は1987年に開設されました。現在は、日本法の弁護士と外国法事務弁護士が一体となって、インバウンド・アウトバウンド双方の取引において、クライアントにリーガルサービスを提供しています。キャピタルマーケット、コーポレート、ファイナンス、訴訟、紛争解決の各分野において、トップクラスのチームを擁しています。

﨑村令子弁護士とレン フォン・ライ弁護士が当事務所の共同マネージングパートナーを務めています。クライアントへの積極的な対応を通じて、クリフォードチャンスは日本の企業、銀行、機関投資家と長年にわたり関係を築いてきました。

今年代理人を務めた代表的な案件には、国際協力銀行が、最大300MWの発電能力を持つ小型原発炉のメーカー、ニュースケール・パワー社の株式1億1000万米ドル相当を取得した案件などがあります。

  • ベーカー&マッケンジー法律事務所
  • ジョーンズ・デイ
  • 西村あさひ法律事務所
  • Withers LLP

1989年に東京事務所を開設して以来、米国を本拠とする多国籍法律事務所、ジョーンズ・デイは、日本国内の資産のアウトバウンド買収やグローバルな取引において、数多くのクライアントにサービスを提供してきました。

2002年1月、ジョーンズ・デイは日本の尚和法律事務所と業務統合し、商事・知的財産権訴訟、独占禁止法、政府規制、税制に関する多様な法的ニーズに応えるため、着実に業務を拡大してきました。東京事務所では、クリス・アハーン弁護士、宮川裕光弁護士、マックスウェル・フォックス弁護士、白井勝己弁護士がパートナーを務めています。

当事務所の税務担当弁護士は国際的な知見を備え、監査から不服申し立て、訴訟に至るまで、クライアントの税務問題の解決向けて、包括的かつ総合的なアドバイスを提供します。

最近では、IMCDジャパン(オランダの特殊化学品・食品成分の専門商社IMCD N.V.の子会社)が化成品産業資材の専門商社クニ・ケミカルを買収した案件において、IMCD NVのアドバイザーを務めました。

リンクレーターズは1987年に東京事務所を設立し、M&A、プライベートエクイティ、バンキング、金融市場規制、プロジェクト・インフラ、不動産の分野において、数々の大型案件に取り組んできました。国内および複数の国にわたる証券化やデリバティブの取引において、当事務所が革新的なソリューションを創出してきたことは広く知られています。

マネージング・パートナーのピーター・フロスト弁護士は、LINE株式会社、ソニー株式会社、株式会社アシックス、静岡銀行、コスモエネルギーホールディングス株式会社の転換社債発行など、数多くの大型資本市場取引において重要な役割を果たしてきました。

当事務所では、税務に精通したチームが一体となって、企業取引におけるアドバイスを提供しています。当事務所は、ファンドや金融投資家などのクライアントに、国内・クロスボーダー投資の組成の鍵となる税務問題について、日々、アドバイスを行っています。

最近の主要案件には、金精錬会社Asahi Refining USA Inc.による2026年満期ゼロクーポン保証型転換社債発行があります。この案件では、モルガン・スタンレー・インターナショナルのアドバイザーを務めました。

  • 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 西村あさひ法律事務所
  • TMI総合法律事務所

選考プロセス

Asia Business Law JournalのJapan Law Firm Awards 2022の受賞者の選考は、日本ならびに世界各地の社内弁護士などの法務専門家から得た投票や推薦、定性的情報に基づいて実施されました。

投票フォームは当社のウェブサイトに掲載され、数千人に及ぶ社内弁護士や国際的な法律事務所の弁護士、日本に関係の深い専門家に投票を依頼しました。同時に、日本の法律事務所には、立候補の根拠となる文書の提出を依頼しました。これらの提出された文書、ならびにAsia Business Law Journal編集チームの調査は、選考プロセスをサポートする材料となりました。

日本の法律事務所すべてが、自動的に受賞選考プロセスの対象となりました。従来通り、エントリーに際し、費用およびその他の要件は必要ありませんでした。


日本のヘルスケア業界に適用される贈収賄防止法令と業界自主規制

日本はアジアで最も腐敗行為(贈収賄、汚職)の少ない国の一つであると言われています。トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数(公務員と政治家がどの程度腐敗していると認識できるかを数値化し、国際比較したもの)において、昨年、日本は世界18位となっています。アジアの中で日本よりも順位が上の国はシンガポールと香港のみです。しかし、ヘルスケア業界は例外です。医薬品・医療機器メーカーと医療従事者の間の「不透明な関わり合い」に対する監視の目が厳しさを増しています。

私たちは10年以上にわたり、日本で事業を展開する国際的な医薬品・医療機器メーカーに対し、コンプライアンス・プログラムの確立と内部調査の実施を支援してきました。本稿では、これらの経験を踏まえ、日本で事業を行うヘルスケア企業が直面する主要な法的リスクおよびコンプライアンス上のリスクについて概説します。

社会の注目を集めた事件

Kengo Nishigaki, GI&T Law Office
西垣健剛
GIT法律事務所(東京オフィス)代表社員/パートナー
電話: +81 3 6206 3285
Eメール: kengo.nishigaki@giandt-law.com

スター・ジャパン合同会社は、米国の白内障手術用眼内レンズメーカーであるStaar Surgicalの日本子会社です。2022年5月、同社が複数の眼科医から自社のレンズを使った手術の動画の提供を受け、謝礼を支払っていたことが明らかになりました。自社製品の販売促進を目的として販売担当者1人につき40万円(2,700米ドル)の予算を与え、国公立病院の医師を含め合計75人の医師に総額2,145万円の謝礼を支払っていたのです。中には、7本の動画を提供し、220万円を受け取っていた医師もいました。スター・ジャパンは、医師が50枚~100枚のレンズの使用を約束した場合に、このような謝礼を支払っていました。

報道によれば、スター・ジャパンは大手の医療機器メーカーと競合するために、同社のヘルスケア製品の安全性と有効性を確認する目的で撮影される「市販後調査」動画を名目として、医師に金銭的利益を供与せざるを得なかったということです。そのために同社は、内部研修のために動画データを使用するという「ビデオキャンペーン」を設定していました。

この問題に関し、医療機器業公正取引協議会(JFTC-MDI)は、医療従事者や医療機関に対する不当な景品類の支払いを禁じる公正取引自主規制ルール(公正競争規約)にスター・ジャパンが違反したとして、同社を「厳重警告」処分としました。

同協議会は、違反企業名を公表することは稀ですが、この事件では企業名を公表しただけではなく、YouTubeで事件の詳細を公開しました。本稿においては、米国海外腐敗行為防止法(FCPA)などの海外の法令には触れず、ヘルスケア業界に影響を及ぼす日本の贈収賄防止法と業界の自主規制ルールを概説します。

関連する贈収賄防止法

Andrew Trost Griffin, GI&T Law Office
Andrew Trost Griffin
GIT法律事務所(東京オフィス)カウンセル(外国法事務弁護士)
電話: +81 3 6206 3283
Eメール: andrew.griffin@giandt-law.com

日本の刑法は、第25章(第197条から第198条まで)で贈収賄について規定しており、賄賂の提供者と受領者の双方に刑罰が科されます。刑法の対象になるのは公務員に関する贈収賄のみです。

商取引に関連する賄賂については、背任(第247条。他人のためにその事務を処理する者が自己若しくは第三者の利益を図る場合、またはその他人に損害を加える場合)または取締役による賄賂の受領(会社法第967条)などの他の法令違反が生じていない限り、犯罪にはなりません。

日本の法令では、公務員について明確に定義されています。一部の法令では、公共機関で働く人や公務に従事している人を「みなし公務員」と規定しています。これには、通常、国公立病院・大学で働く医療従事者も含まれます。

刑法の規定では、公務員がその職務に関連して何らかの利益を要求、収受、または約束した場合に犯罪が成立し、その公務員の作為または不作為との請託(対価性)は求められていません。

しかし、賄賂が公務員ではなく第三者に供与された場合は、検察官は請託(対価性)を立証しなければなりません。一例を挙げると、2021年、小野薬品工業の社員2名が、三重大学病院(国立大学付属病院)に、同社の治療薬オノアクトの処方量を増加させる見返りに2百万円の寄附金を提供したとして、逮捕、起訴されました。「奨学寄附金」と呼ばれる研究等の奨学を目的とする寄附金が大学病院の医療従事者に提供されることは多くあるため、この事件は業界に委縮的な影響を与えることになりました。

不正競争防止法第18条は、同法が域外適用される外国公務員贈収賄罪について規定しています。1997年、日本は経済協力開発機構(OECD)の国際的な商取引における外国公務員贈賄防止条約に署名しました。しかし、日本では、外国公務員贈収賄の摘発は積極的に行われてきませんでした。20年の間に摘発されたのはわずか10件程度であり、罰金の最大額は、日本交通技術が2015年にベトナム、インドネシア、ウズベキスタンで行った贈賄に対して科された9千万円です。

OECDは日本の経済産業省に対し、法令の改正、罰金の増額(現在の罰金の最大額は3億円(2百万米ドル強)です)、懲役刑の期間の延長(現在は5年)、域外適用範囲の拡大(現在は外国人・外国企業には適用されません)を要請してきました。

しかし、域外適用の範囲を外国人や外国企業に拡大するためには、域外適用に関する刑法の規定を改正する必要があり、刑法は経済産業省ではなく法務省の管轄であるため、実現は難しいでしょう。

Yuji Yamamoto, GI&T Law Office
山本祐司 
GIT法律事務所(東京オフィス)アソシエイト
電話: +81 3 6206 3927
Eメール: yuji.yamamoto@giandt-law.com

世界で最も詳細な倫理規定の1つである国家公務員倫理法・倫理規程では、国家公務員が接待や金銭・物品の贈与を受けることを禁止しています。しかし、これらの倫理法・倫理規程の適用対象は国家公務員(国会議員・大臣を除く)のみであり、地方公務員や「みなし公務員」には適用されません。もっとも、地方自治体と国公立病院の多くは、上述の倫理法・倫理規程と同様の倫理規程を定めています。

国家公務員を接待することも、これらの規制により禁止されています。国家公務員と飲食を共にした場合には、各自で費用を負担しなければなりません。さらに、各人の飲食費が1万円を超える場合には、国家公務員は倫理監督官に事前に届出を行う必要があります。

ただし、国家公務員が、出席者20名以上の立食パーティーに参加することは認められています。通常の昼食時間帯に、3千円以内の昼食を提供することも認められます。従って、ヘルスケア企業は、学会の立食パーティーに医療従事者を招待すること、また自社の製品の製品説明会において昼食を提供することはできます。しかし、国家公務員は、たとえ費用を自己負担したとしても、利害関係者とゴルフや旅行をすることはできません。ただ、興味深いことに、テニス、野球、囲碁、チェスは認められています。

業界の自主規制ルール

JFTC-MDIと医療用医薬品製造販売業公正取引協議会は、医療従事者との交流を規制する公正競争規約(FCC)を定めています。これらの規約は、不公正な景品類の提供を規制する法律である、不当景品類及び不当表示防止法に基づき策定されています。FCCは、医療従事者・医療機関への不当な景品類の提供を禁じる業界の自主規制ルールです。規制の対象には、食事、贈答品、寄附、ダイレクトスポンサーシップ、市販後調査、非金銭的支援の提供、手術室での立会などが含まれます。

JFTC-MDIは300ページにも及ぶ解説書を出版しています。しかし、コンプライアンス担当者がそれを読み解くには、業界に対する深い理解が必要となるでしょう。留意すべきFCCの規制には以下のようなものがあります。

飲食費の上限 医療機器メーカーは商談の際に、1名につき1万円までの食事を提供することができます。他方、医薬品業界の協議会のFCCでは、費用の上限は1名当たり5千円であり、事前に食事の予約をすることはできません。つまり、医薬品メーカーの販売担当者は、医療従事者を飲食店に誘う前に、まず、商談を始めなければなりません。医療機器メーカーの販売担当者が医療従事者を食事に招くことは珍しくありませんが、医薬品メーカーの販売担当者にとっては稀なことです。

どちらの業界のFCCにおいても、講演に対する謝意を示す場合などの特別な場合には、医療従事者に2万円以内の食事を提供することができます。しかし、医療従事者に対し、当初の懇親会に続いて別の場所で飲食を提供すること(二次会)は禁止されています。医師向けの説明会などでは、簡素な弁当などの、3千円以内の食事を提供しても構いません。

奨学寄附金 奨学寄附とは、大学病院や学術団体への研究目的の寄付です。慈善目的の寄付とは異なり、医療従事者が行う研究を奨励するためのものです。FCCでは特定の研究テーマは要件となっておらず、がんの研究といった一般的な目的の研究も許容されています。しかし、メーカーが大学病院での販売を促進するために奨学寄附を悪用する事例は少なくありません。また、医療従事者がメーカーに対して、病院の処方箋リストに製品を含める見返りに奨学寄附の提供を要求することも稀ではないのです。

公表された事例として、三重大学病院臨床麻酔部元部長の教授が小野薬品工業に対し、処方を増やす見返りに奨学寄附を求めた事件が挙げられます。

この事件以降、一部のヘルスケアメーカーは、奨学寄附の廃止や、独立した寄附委員会の設立を実施しています。しかし、医師の認識は変わっていません。大学病院は依然として、研究費用に充てるために奨学寄附を必要としています。そのため、メーカーは、奨学寄附リスクを低減するために奮闘しています。

GI&T LAW OFFICE
8/F Shin-Yurakucho Building
1-12-1 Yurakucho, Chiyoda-ku
Tokyo – 100-0006, Japan
電話: +81 3 6206 3283

www.giandt-law.com/english

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