限定的ではなく長期的な外貨流入措置の必要性

By Sawant Singh、Aditya BhargavaのSristi Yadav、Phoenix Legal
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2022年7月6日、インド準備銀行(RBI)は、「景気後退リスク」が意識される中、金融市場に浸透していた「ハイリスク回避」に起因する「ボラティリティを緩和し、世界的な波及効果を抑制する」ために、RBIが導入を提案する措置を示すプレスリリースを発表しました。本プレスリリースは、金融政策金利の引き締めが実施され、インフレが進行する中、通貨を防衛するために、何カ月にもわたってRBIが終わりなき努力を重ねた末に発表されました。

今回提案された措置の目的は、外貨資金調達源のさらなる多様化と拡充です。特に、本プレスリリースでは、対外商業借入(External Commercial Borrowing:ECB)や、外国ポートフォリオ投資家(Foreign Portfolio Investor:FPI)への企業の債務証券発行による海外金融機関からの借入に対して、一定期間、規制の枠組みをさまざまな点で緩和することを提案しています。

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Sawant Singh
パートナー
Phoenix Legal

現在、FPIに関しては、「一般的なルート」の下で、残余期間が1年以上の企業の債務証券への投資のみが許可されています。さらに、FPIの投資のうち、残余期間が1年未満のものは30%以下でなければなりません。本プレスリリースでは、2022年10月31日までに実施されたFPIによる企業の債務証券への投資を、この制限から除外することを提案しています。よって、こうした投資については、投資の償還、あるいはFPIによる売却まで、30%の制限の算定から外されます。さらに、当初の満期期間が1年以下のコマーシャルペーパーや非転換債券に対して、FPIが投資できるようにすることも提案しています。

このような投資も、基準値の算定に関して考慮されません。ただし、当初の満期期間が1年以下のコマーシャルペーパーや非転換債券の発行も、発行者の最低資本勘定や有形純資産、証券の最低格付け、またその他の一定の開示および文書化に関する要件など、RBIの追加規制の対象となります。当初の満期期間が1年以下の証券へのFPIの投資に対する緩和案を全面的に実施するためには、追加的な規制上の変更が導入されなければなりませんが、それについては、本プレスリリースでは一切検討されていませんでした。

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Aditya Bhargava
パートナー
Phoenix Legal

本プレスリリースでは、ECBの枠組みに基づき、再度一定期間において、一部の制限や上限を緩和することが提案されています。現在のECBの枠組みの下では、あらゆる適格債務者は、各事業年度に、自動ルートでのECBを合計7億5000万米ドルまで、あるいは同等額まで増額することができます。本プレスリリースでは、2022年12月31まで、ECBの上限を7億5000万米ドルから15億米ドルに引き上げることを提案しました。現在のECBの枠組みでは、ECBの全て込み費用の上限(all-in cost ceiling)が定められていますが、本プレスリリースでは、投資適格格付けを取得している債務者を対象として、2022年12月31日までこの上限を100 bp引き上げることを提案しました。

ただし、結局のところ、本プレスリリースでは、変更導入のお膳立てをしたにすぎず、変更そのものを実施するわけではありません。このような変更については、RBIが監督権を行使する際に、RBIによる具体的な指示に従って実施される必要があります。本プレスリリースで示されたFPIへの緩和や除外を実施するために、RBIは2022年7月7日に単独で通達を発出し、FPIへの緩和期間を2022年7月8日から2022年10月31日(両日とも含む)とすることを明らかにしました。本プレスリリースで提案されたその他の措置は、RBIが別途発出した通達によって実施されてきましたが、ECBの制限緩和については未だに通達によって実施されていないことに、幾分の疑問が残ります。

本プレスリリースで提案された変更は、一時的な猶予を導入するものであり、長期的な構造改革をもたらすものではありません。よって、本プレスリリースで示された期間以降にインドへの外貨流入が増加することは期待できません。長期にわたるインドへの安定した外貨流入源を確保するために、RBIが、必要な構造改革につながる追加措置を提案することが望まれます。

Sawant SinghとAditya Bhargavaは、Phoenix LegalのパートナーですシニアアソシエイトであるSristi Yadavも本稿執筆に協力しました。

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