NFT関連法の最新の動向: 台湾

By Eddie HsiungとAbe Sung、理律法律事務所
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台湾では、NFT(非代替トークン)と呼ばれる暗号通貨やブロックチェーンの技術を応用した新しい仕組みが注目を集めています。しかし、現在のところ、NFTの出現と発展に具体的に対処する規制はなく、規制当局はこうした動向についての、いかなる公式見解も示していないようです。

現地の状況から考えると、NFTや、関連する活動あるいは取引の分類については、既存の法律や規制のみに照らし合わせながら、臨機応変に決定しなければなりません。

証券・金融法

Abe Sung, Lee and Li
Abe Sung
パートナー
理律法律事務所(台北)

NFTの代表例として挙げられるのが、デジタルアート作品、音楽作品、収集品、スポーツカード、写真集などであり、その分類は、特にその仕組み、および関連する資産または利益などの要因によって決まります。

金融監督管理委員会(FSC)の黄天牧(HUANG Tien-mu)委員長は、2021年11月および2022年3月に、NFTは芸術作品であると考えられるため、その販売提供は、仮想通貨と見なされるべきではない、と述べました。また、黄委員長は、NFTを将来的に規制する必要があるかどうかは、NFTが金融の安定性に与える影響をはじめ、さまざまな要因によって決まるだろうと語りました。

従って、NFTが「芸術作品」であるならば、既存の金融法や金融規制によって規制されるべきではないと思われます。

NFTは、独自の原資産と関連があり(あるいは独自の原資産を表し)、同一資産に関連する、あるいは同一資産を表すNFTが複数存在しない限り、NFTが現行の金融商品規制の対象となる有価証券や、その他の金融商品と見なされる可能性は低いと考えられます。

しかしながら、NFTへの投資が可能であるため、金融法や証券規制が適用される可能性もまだ完全には排除できません。

興味深いことに、金融監督管理委員会は7月に、現地の承継銀行に対して、仮想資産の決済方法として現地のクレジットカードの使用を明確に禁止しました。それに伴い、現地の承継銀行は、クレジットカード決済の目的で、仮想資産サービスプロバイダーを契約業者として承認してはいけないことになりました。次に、仮想資産にNFTを含めると解釈すべきか否か、という問題が発生しました。

ブロックチェーンや暗号通貨業界の関係者と、金融監督管理委員会と現地銀行によって組織された協会との間で、この点についてある程度の議論がなされたものと理解しています。しかし、たとえ金融監督管理委員会が、あたかもNFTは単なる芸術作品やクーポンのようなものであり、投資的な性質は持ち合わせていないとして、仮想資産禁止の対象とすべきではないという意見を述べたとしても、実際のところ、現地の承継銀行が、NFTに投資的な性質があるかどうかを確かめることは、容易ではないでしょう。

よって、現地の承継銀行が、NFT関連のサービスプロバイダーを、クレジットカード決済の契約業者として認めるかどうかは、依然として個々のケースごとに行われる各銀行内部の評価や判断に委ねなければなりません。

NFT所有者の権利および利益

Eddie Hsiung, Lee and Li
Eddie Hsiung
アソシエイトパートナー
理律法律事務所(台北)

NFTの所有権は、その仕組みや原資産によって異なります。例えば、デジタルアート作品のNFTを購入者に移転した後、NFT所有者となった購入者は、原資産を入手することができます。しかし、これは、原資産であるデジタルアート作品のコンテンツの所有権を、自動的に取得できるということではありません。

条件にもよりますが、NFTの購入者は、該当のデジタルアート作品を鑑賞する権利を得ただけであり、例えば電子ファイルなどの形式で、アート作品の所有権を取得したわけではありません。

例えば、スニーカーなどの有形資産を表すことを目的として、またそれを意図して作られたNFTに関しては、当該NFTの移転が、譲受人へのスニーカーの引き渡しと同等であると見なされるかどうかが問題となるでしょう。もし同等と見なされるのであれば、台湾の民法では、そうした移転が、スニーカーが保管されている倉庫業者に対する請求権と同等と見なされることになります。NFTの購入者は、購入の決断をする前に、NFTと、それに関連する資産や利益の観点から、当該NFTのあらゆる法律上の権利、所有権、利益について慎重に評価および理解したほうがよいでしょう。

NFTの作成者または発行者は、商品の説明や保証についての正確さを重視するとともに、過剰な宣伝を回避することに重点を置き、提供条件(あるいはそれと同等のもの)に、所有者が取得できる権利を明記するのがよいでしょう。

例えば、所有者に当該資産を鑑賞する権利だけがあり、コンテンツの所有はできない場合、その提供条件の中に、NFTのデジタル所有権の提供を含めるべきではありません。さもなければ、民事上の紛争や消費者紛争、さらには刑事責任にまで発展する可能性があります。

実際には、NFTを上場し取引できるマーケットプレイス、プラットフォーム、あるいは取引所が今後出現することも予想されます。一般的な電子商取引プラットフォームと同様に、こうしたマーケットプレイスの標準的な条件には、登録ユーザーやメンバーの権利や義務を明記する必要があります。

マーケットプレイス事業者は、NFTの発行または上場の許可を行う前に、NFTの作成者または発行者による法律違反、または第三者請求による潜在的な責任を回避するために、商業上および法律上必要なデューデリジェンス調査を実施する必要があります。マーケットプレイス事業者と、NFTの作成者または発行者との間の契約書には、発生する可能性のある負債の分担について明記する必要があるでしょう。

NFTの提供や原資産の入手が、セキュリティ侵害、ハッカーによる不正侵入、サービスの中断や関連ネットワークの技術的な不具合などの、技術リスクにさらされる恐れもあり、その結果、提供自体が不可能になる場合すらあります。NFTの作成者やマーケットプレイス事業者は、適用法で認められている範囲内で、適切な免責事項を組み入れることによって、リスクに対処するのがよいでしょう。

知的所有権

原資産に、アート作品、写真作品、音楽作品、また録音・録画が含まれている場合、著作権をはじめとする知的所有権が、NFTにとって重要な問題となることがあります。NFTの作成者または発行者は、NFTを発行する前に、知的財産所有者から必要なライセンスや許可を取得する必要があるでしょう。

NFTのマーケットプレイス事業者は、関連するリスクを軽減するために、適切な調査を行う必要があるかもしれません。NFT所有者が、NFTに関連する権利や使用権のみを所有・行使し、知的所有権をはじめとする第三者のいかなる権利も侵害しないよう、マーケットプレイスの条件に従って保証することが重要です。

メタバースおよびNFT

「超越」という意味を表す接頭辞である「メタ」と、「ユニバース(宇宙)」の混成語であるメタバースとは、一般に、拡張現実(AR)または仮想現実(VR)などの技術や、VRヘッドセット、ARグラスなどの専用デバイスによってアクセスされる、非常にインタラクティブな仮想世界、あるいはデジタル空間のことを意味します。NFTは、このメタバースに不可欠な要素と考えられています。例えば、従来のゲームでは、プレイヤーはゲーム内の資産を購入するために支払いを行いますが、ゲーム内の資産の大半は、プレイヤーに対してその使用を認めているにすぎず、ゲームソフトメーカーによって無効にされることすらあります。こうした状況は、資産をトークン化し、ゲーミングNFTを作成することで対処することができる、と考える業界関係者もいます。そうすることで、ゲーム内の資産をゲーム外に持ち出したり、複数のプラットフォーム間で移転できたりするので、移動可能なゲーム資産の概念を実現することができます。

もし、これがゲームソフトメーカーの真意であるならば、法律的な観点から考えると、ゲームソフトメーカーはまず、NFTの購入者が、NFTの仕組み次第で、ゲームの原資産を「所有」できるように、ゲームに適用される条件を修正する必要があるかもしれません。また、当初のゲーム資産は、ゲームソフトメーカーによって提供された適用条件やライセンスの対象であるため、ゲーム資産を異なるプラットフォーム間やゲーム間で持ち出したり移転したりできるように、ゲームソフトメーカー間で合意を図ることが必要でしょう。

マネーロンダリング防止

デジタル通貨プラットフォームの運営業者および取引に関しては、最新の改正マネーロンダリング防止(AML)法によって、仮想通貨プラットフォームおよび取引ビジネスが台湾の規制制度に組み込まれるため、それに基づいて、指定範囲に該当する事業者は、金融機関に適用される関連規則の対象となります。

行政院(内閣)は4月、AMLについての通達を公布し、仮想通貨のプラットフォームおよび取引業務における事業者の範囲を説明しました。金融監督管理委員会は、仮想通貨プラットフォームおよび取引業務を取り扱う事業者に対して、法律を規定し、テロへの資金供与対策を講じるAML規制を公布することによって、同通達に従いました。同規制に基づき、暗号通貨資産プラットフォームや取引業務を取り扱う指定事業者は、特に、内部統制や監査機構、疑わしい取引の報告手続き、さらに顧客の本人確認手続きなどを確立する必要があります。本通達および規制はどちらも2021年7月に施行されました。

NFTマーケットの関係者が、AMLについての通達で説明された指定範囲に該当するかどうかは不明です。本通達に基づく「仮想通貨」という言葉がNFTも含むと解釈されるかどうかが重要な問題です。仮想通貨がNFTを含む場合、マーケットプレイス事業者およびNFT管理関連サービスを提供する事業者をはじめとする市場関係者は、AML規制に従い、上記の義務を履行することが義務付けられます。

これによって、関連するNFT市場関係者のコンプライアンスコストが大幅に増加することになると考えられます。実際のNFT取引には莫大な資金が関わる可能性があり、このことがAMLに関する義務をある程度正当化する可能性があります、こうした状況を考慮すると、業界関係者は、規制の動向をじっくりと見守ったほうがよいでしょう。

Lee and Li

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