日本企業のためのインドの知的財産保護

By Joginder SinghとRajeev Kumar,LexOrbis(ニューデリー)
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日本とインドがこれまで築いてきた関係は極めて強く、両国の人々は何世紀にもわたって文化交流やビジネス交流に取り組んできました。知的財産権制度の充実が企業の投資意欲に影響を与えることは広く知られていますが、知的財産権保護に関する両国のこれまでの協力は、非常に目覚ましいものでした。

事業上の利益の保護において、特に多額の投資を行った後には、知的財産権の取得および行使が重要であることに疑問の余地はありません。この点に関し、インドでは特許意匠商標総局(CGPDTM)を通じて知的財産権を容易に保護することができ、さらに複数のメリットが伴います。

Joginder Singh
Joginder Singh
パートナー
LexOrbis(ニューデリー)
電話:+ 91 97 1126 2818
Eメール: joginder@lexorbis.com

膨大な消費者を有する巨大な市場と、止まることのない生産力とインフラの向上を考慮すると、知的財産権の登録を怠るべきではありません。加えて、インドで知的財産権保護を受けるために要する費用は、米国やEUなどの先進国・地域に比べてはるかに低く、一方で、最近の調査によると、製造コストのランキングでは中国やベトナムよりも下位にランク付けされています。これらは、インドを世界の製造拠点にするために取り組んできた政府の努力の結果です。

また、インドは極めて競争が厳しい市場ですが、それにもかかわらず、知的財産権保護サービスのために専門家に支払う料金は手頃です。CGPDTMは英語の使用を認めているため、知的財産権の出願や審査の手続きのためにヒンディー語に翻訳する必要はありません。その結果、現地の言語への翻訳が求められる中国やブラジル、韓国などと比較して、非常に低コストで知的財産権の保護を得ることができます。

CGPDTMが発行した2021~2022年の事業年度の報告書では、知的財産権保護制度の強化と、世界標準との合致に向けての継続的な取り組みについて説明されています。手続きの簡素化とIT化、さらには技術担当人員の増加により、申請処理に要する時間が大幅に改善され、未処理案件数が減少しました。パンデミックの際には、知的財産権の出願審査に対する悪影響を最小限に抑えるため、オンラインへの移行を迅速に実施し、パンデミックの影響に適切に対処しました。

また、CGPDTMでは、効率的にオンライン業務を実施するための機能を復旧させる措置をとり、管理職や職員が安全にアクセスできる仮想プライベートネットワークを通じて、在宅勤務制度を導入しました。これにより、知的財産権出願についての審査、審理、付与、登録の手続きがオンライン上で支障なく継続できるようになりました。また、従来のデジタル署名機能に加え、特許出願プロセスのさらなる簡素化・合理化のために電子署名機能が導入されました。

Rajeev Kumar
Rajeev Kumar
パートナー
LexOrbis(ニューデリー)
電話:+ 91 99 1175 8776
Eメール: rajeev@lexorbis.com

CGPDTMは、意匠出願の促進の重要性と必要性についても理解しており、新興企業や小規模事業者の間で要望が強い迅速な処理を可能にするため、意匠規則の改正を2021年1月25日に通達しました。改正の結果、意匠はロカルノ分類の最新版の規則10(1)に従って分類されることになるため、インドの意匠登録制度は国際基準と同等になります。

CGPDTMは新しい取り組みのひとつとして、利害関係者からの苦情や異議申し立てを迅速に解決するため、新しい手続きを導入しました。これにより、利害関係者はオンラインフィードバック機能を利用してCGPDTMに提案したり、問題が生じた場合にサポートを求めたりすることができるようになりました。また、CGPDTMではオープンハウス形式で苦情や異議申し立てへの対応も行っており、利害関係者から高い評価を得ています。

2021~2022年の事業年度における特許出願件数は13.5%増加しました。インド国内の出願件数は前年度比2.8%、付与件数は同5.9%増加しましたが、特許処分件数は最高裁判所の指示による制限期間延長などにより、同31.8%減少しました。

商標については、出願件数が増加しているにもかかわらず、審査期間は1カ月未満で推移しました。商標出願の受理件数の増加は、規則の改正やプロセスの見直しによる手続きの改善によるものです。

意匠についても、新規出願の審査期間は1カ月未満で推移しました。意匠登録出願件数、審査件数、登録件数、処分件数は、それぞれ59.4%、59.7%、66.8%、68.7%となり、前年度に比べ顕著な改善が見られました。

著作権局(Copyright Office)でも、コンピュータ化とプロセスの見直しにより、目覚ましい改善が見られました。新規申請の審査は、新規出願に関する異議申し立て受付期間である1カ月の経過に続いて、直ちに開始されていました。著作権出願は、2020~2021年の事業年度に比較して26.7%増加し、著作権登録は26%増加しました。

インド特許庁は、国際機関としての役割についても、マドリッドプロトコル制度における国際調査機関および商標登録機関として、国際調査報告および国際予備審査報告のために付託されたほぼすべての出願において、特許協力条約(PCT)のスケジュールを遵守しつつ、実績を大きく向上させています。また、PCTの最小限資料に、伝統的知識のデジタルライブラリを含めることも提案されています。

知的財産権の認知度を向上させるという目標をさらに推進するために、インド特許庁は、将来この分野に従事する可能性のある学生に対する啓蒙活動に力を注ぎました。

2021年12月8日に始まった「 National Intellectual Property Awareness Mission(知的財産に対する認知度向上のための全国ミッション)」では、2022年8月15日までに、少なくとも100万人の学生に知的財産に関する知識を伝えるという目標に沿って、さまざまなプログラムが実施されました。2022年3月31日現在、インド全国の2300超の教育機関を通じて、60万人を越える学生や教職員に対して知的財産に関する啓発活動が行われました。

インドの知的財産のエコシステム全般を向上させるために、この数年間、幅広く取り組みが行われてきました。もっとも重要な改善点のひとつは、インド特許庁が通常ルートに基づく特許出願の審査時間を大幅に短縮したことです。

現在のところ、審査開始までの平均期間は審査請求日から1年未満で、多くの場合、6カ月未満です。最近まで、特許が付与されるまでに出願から7~8年を要していましたが、現在では、一般的に2~3年以内に付与されています。

同様に、他の形態の知的財産についても、継続的な人員増加、プロセスの改善、体系的な技術の導入により、未処理案件の滞留が解消されました。CGPDTMは、再び審査官の増員を検討しており、近い将来に審査スケジュールがさらに改善することが期待されています。

また、適格基準を満たしている場合、出願人が迅速な審査手続を利用すると、付与までの期間を出願日から1年程度に、さらに短縮することが可能です。特許庁は発明分野に特化した審査ガイドラインを発行するとともに、特許審査の質の向上を図っており、特にコンピュータ実装発明、医薬品、バイオテクノロジーの分野に注力しています。

また、インドと日本は、3年間の試行的な特許審査ハイウェイ(PPH)協定を締結しました。これに基づき、日本の出願人は、日本の特許庁が許可した特許に基づき、インドで迅速な特許審査を求めることができます。これまでのところ、このPPHの試行は成果を挙げています。今後、米国特許商標庁や欧州特許庁など、他の主要特許庁とのPPHが検討されると考えるのが妥当でしょう。

インド特許庁はまた、特許法と規則に関するさまざまな慣行や手続きを簡素化するためにマニュアルを改訂し、特許出願人が利用しやすい環境を整えました。特許庁では、さまざまな課題の特定と解決や異なる慣行の合理化のために、利害関係者との議論を重ねています。商標、意匠、著作権など、他の形態の知的財産も、同様のプロセスと改善の対象になっています。

最高裁判所は、2022年1月、2020年3月15日から2022年2月28日までの期間を、インドのあらゆる一般法および特別法に定められた期限に算入しないと判示しました。この判断は、パンデミックのために期限を遵守できなかった多くの出願者を救済するものであり、延長された期間が引き続き適用されます。

また、インドでは、知的財産に関する紛争の解決制度に大きな変化がありました。管理機関と登録機関の決定に基づき、上訴を審理する権限を持っていた知的財産上訴委員会は2021年4月4日に廃止され、その権限は現在、高等裁判所に帰属しています。

知的財産権に関する救済措置をさらに効率化するため、デリー高等裁判所に国内初となる知的財産部が設置され、知的財産権侵害の新規訴訟や係属中の訴訟、上訴委員会の廃止以前から係属していた案件など、知的財産権に関するあらゆる問題に対応することになりました。最近では、マドラス高等裁判所にも知的財産部門が設置されました。

ここ数年間の注目すべき傾向として、審査期間の短縮、知的財産出願処理の迅速化、知的財産出願数の着実な増加、継続的かつ進歩的な法改正、高等裁判所での専門部署の設置とそれが画期的な判決につながっていることが挙げられます。このような傾向すべてが、技術移転の促進と外国直接投資の加速を支える知的所有権制度が、インドで構築されていることを示しています。

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