フィリピンに投資する外国企業の戦略

By Sylvette Tankiang、Franchette AcostaとMaria Carla Mapalo、Villaraza & Angangco(マニラ)
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ィリピンは今年、パンデミックの影響からゆっくりと着実な回復を続けるなか、停滞した経済の活性化を正面から目指す重要な法制・規制改革に支えられつつ、経済活動を拡大してきた。これらの措置は、海外投資家の資本と技術の誘致を目的としたもので、緩和された規制環境のなかでフィリピンへの外国直接投資(FDI)を拡大する準備が整えられている。

再生可能エネルギー

2022年12月8日に発効したエネルギー省(DOE)の回状第 2022-11-0034 号により、フィリピンにおける再生可能エネルギーの探査・開発・利用事業への外資の参入に関する一定の制限が撤廃された。この回状が発効する前は、フィリピン国籍を有する者またはフィリピン国籍保持者が60%以上を所有する企業しか、再生可能エネルギーのサービス契約や事業運営契約を締結できなかった。DOEの回状は、太陽光や風力などの一部の再生可能エネルギー部門で100%外国資本による出資を認めている。

Sylvette Tankiang
Sylvette Tankiang
最高財務責任者
Villaraza & Angangco(マニラ)
電話: +63 918 826 1957
Eメール: sy.tankiang@thefirmva.com

だが水力発電は今も国籍による制限があり、土地所有権など事業の一部の面では、外国人による所有が今も制限されている。とはいえ、事業に影響するそれ以外の国籍制限は、適切な事業構成をとることで解決できる。

この法改正は、電源ミックスに占める再生可能エネルギーの比率を2030年までに35%、2040年までに50%にするという、フィリピンの意欲的な目標の達成を促す歓迎すべき展開である。こうした資本集約的な事業の着工前から運転開始に必要となる膨大な時間を考慮して、フィリピンは再生可能エネルギーへの多額の投資流入に期待しており、同国が持続可能なクリーンエネルギーを基盤とした未来を築くには、こうした投資が不可欠だと判明するだろう。

注目すべき点として、先日実施された税制改革である企業復興税制優遇法〔Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprise Act (CREATE Act)〕は、適格企業に期間限定で一律的な優遇措置を付与するものだが、同法に基づく既存の優遇措置の合理化(廃止)は、再生可能エネルギー部門の税務上・非税務上の優遇措置には適用されない。そのため、再生可能エネルギー開発企業には、再生可能エネルギー法の下で、法人所得税を7年間免除し、免除期間終了後は法人所得税率を10%とするなど、従来通りの優遇措置が保証される。

公共サービスの自由化

Franchette Acosta
Franchette Acosta
シニア・パートナー
Villaraza & Angangco(マニラ) 電話: +63 917 857 7575
Eメール: fm.acosta@thefirmva.com

フィリピン政府は共和国法第11659号(Republic Act No. 11659)の可決により、86年続いた公共サービス法〔Public Service Act (PSA)〕に基づく外国資本に対する厳しい制限を2022年4月9日から緩和した。PSA改正は、従来、憲法が定める公共事業への制限の対象とされてきた特定の業種または活動に対する国籍要件を緩和するものである。

フィリピン憲法は特に、公共事業の所有と運営を、フィリピン国民および資本の60%以上をフィリピン国民が所有する企業に制限している。しかし、改正PSAの発効に伴い、現在は以下の事業のみが公共事業とされる。

  • 電力流通
  • 送電
  • 石油・石油製品パイプライン輸送システム
  • 上水道パイプライン配水システム、下水道パイプラインシステムを含む廃水パイプラインシステム
  • 海港
  • 公共事業用車両

従って、他のすべての公共事業は、憲法に基づきこれまで適用された外国資本40%の制限が廃止された。公共事業への出資制限が自由化された業種には、以下が含まれる。

  • 空港
  • 鉄道・地下鉄
  • 通信
  • 物流・貨物輸送
  • 海運業
  • 航空輸送
  • 高速道路・有料道路
  • 輸送ネットワーク企業

ただし、重要インフラとみなされる企業には今も外国資本の制限が適用される。重要インフラとは、政府にとって極めて重要なシステムと資産を所有または運用し、その機能不全や破壊が国家の安全保障に有害な影響を及ぼす公共サービスを指す。

通信は明確に重要インフラと分類され、改正PSAは、対象国が外国法、条約または国際協定の規定による相互主義をフィリピンに認めていない限り、外国人が重要インフラの運用・管理に関わる事業体の資本の50%以上を所有できないと定めている。従って、相互主義が確立されていない場合、重要インフラとされる企業には、国籍による制限が引き続き適用される。

障壁の軽減

Maria Carla Mapalo
Maria Carla Mapalo
パートナー
Villaraza & Angangco(マニラ) 電話: +63 998 968 2507
Eメール: mp.mapalo@thefirmva.com

議会は先日、共和国法第11595号(RA No. 11595)を可決した。この法律は、小売自由化法〔Retail Trade Liberalisation Act(RTLA)〕を改正し、外国小売業者のフィリピンの小売業への参入の基本要件を緩和するものである。改正前は、払込資本金額が250万ドル以上の場合のみ、外国資本が小売業に参入す共和国法第11595号の可決により、外国資本の最低払込資本金額 は2500万フィリピンペソ(約50万ドル)に引き下げられた。加えて、実店舗を2つ以上所有する外国資本の場合、1店舗当たりの最低投資額が(25万ドルから)約20万ドルに引き下げられた。

同様に外国投資法〔Foreign Investments Act (FIA)〕に基づき、払込資本金額20万ドル未満の国内市場向け零細・中小企業に出資できるのは、基本的にフィリピン国民および資本の60%以上をフィリピン国民が保有する企業に制限されている。このFIAが先日、2022年3月17日に発効した共和国法第11647号(RA No. 11647)を通じて改正され、次の要件のいずれかに該当する場合、外国企業は、払込資本金額10万ドル以上の零細企業に出資できることになった。

  • 科学技術省の判断による先端技術を含む
  • 共和国法第11337号(RA No. 11337)〔通称イノベーティブ・スタートアップ法(Innovative Startup Act)〕に基づく主務官庁によって、スタートアップ企業またはスタートアップイネーブラーとして承認された、または
  • フィリピン国民が直接雇用の過半数を占め、その人数が15人以上である

投資優先計画

ロドリゴ・ドゥテルテ大統領(当時)が承認した2022年5月24日付の覚書司令第61号(Memorandum Order No. 61)に基づき、2022年6月14日に、戦略的投資優先計画〔Strategic Investment Priority Plan (SIPP)〕が発効した。SIPPは、事業活動をティアに分類することで、政府がフィリピンの経済的技術的発展に重要と指定した産業を対象として、要件を満たす事業に携わる企業に、CREATE法に基づく優遇措置の利用を認めるものである。利用できる財務上・非財務上の優遇措置は事業の性格、立地、登録先の政府省庁によって異なる。

CREATE法は、SIPPに基づき承認された登録済の事業または活動を対象範囲として、企業に画一的な税制優遇措置制度を付与する。財政優遇措置審査委員会(Fiscal Incentives Review Board)、または同審査会から権限を委任された投資促進機関(IPA)が、適切な税制優遇措置の評価と付与を担当する。

IPAは、法律、大統領令、法令または他の発布により設置される政府機関を指すもので、投資促進、税務上・非税務上の優遇措置の付与および管理、各特別法に沿った多様な経済特区と自由港の運営の管理に責任を負う。

SIPPに含まれるすべての活動または事業は、いずれかのIPAに登録できる。対象となる活動に携わる事業体は、特に所得税免除、資本設備・原材料・予備部品・付属品の輸入に伴う関税の免除、追加控除、法人所得税率5%の優遇税率などの形で、SIPPに定める優遇措置を利用できる。優遇措置を受けられる期間は、事業活動がどのティアに属するかによって決まるため、ティアが高ければ優遇措置を受けられる期間も長くなる。

SIPPの対象となる活動には、グリーンエコシステム、保健医療関連、防衛関連、研究開発、革新的製品・サービスの高度な技術による製造・生産が含まれるが、これらに限定されない。

結論

要約すると、フィリピンで昨今実施された法的枠組みの改正は、外国投資の誘致と経済成長の推進に向けた同国の取り組みの大きな節目となるものだ。こうした新たな変化を受けて、外国企業は現在、フィリピンで一層自由に事業を営み、幅広い経済活動に携わることができる。

これらの改革が、様々な経済部門で競争とイノベーションの推進や雇用機会の拡大を生むと想定される。外国投資家は、投資先としてのフィリピンの可能性を探求し、こうした改革がもたらす好機を捉えるべきである。

Villaraza & Angangco (V&A Law)
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