日本企業のインド投資に向けた見通し

By Gaurav Dani、Saurav KumarとSwathi Sreenath、IndusLaw(ニューデリー)
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インドと日本は、文化、経済両面で歴史的に深い関係を築いてきた。両国は長年にわたり、経済関係を維持し強化するために努力してきた。日本は現在、インドから見て最大の投資国のひとつであり、2022年9月時点の対印投資額は累積で381億3000万ドルに達し、合計して約1455社の日本企業がインドで操業している。

本稿では、日印関係の強化につながる昨今の展開に重点を置きつつ、インドへの投資機会を探る日本の投資家向けに簡単な指針を示す。

投資の仕組み

Gaurav Dani
Gaurav Dani
創設パートナー兼シニア・パートナー
IndusLaw(ニューデリー)
Eメール:gaurav.dani@induslaw.com

インドへの外国直接投資(FDI)は、1999年外国為替管理法(および関連規制・規則)ならびに2020年統合版FDIポリシーによって規制され、これらが業種別の投資上限、価格ガイドライン、報告要件、その他の投資条件を定めている。

大部分の業種において、自動ルートで最大100%のFDIが認められているが、製薬、金融、保険などの規制が厳しく慎重な対応が求められるいくつかの業種は、規定の上限を超える投資を行う場合、政府の承認が必要となる。相当量の株式または「支配権」の取得には、独占禁止法・証券取引法などの他のインド法に基づく追加的な義務が課される場合もある。推奨されるFDIの形態には、以下が含まれる。

  • 合弁事業: この形態では、複数の企業が共同で特定のプロジェクトまたは事業活動を遂行する。経営権や統治権(取締役会の適切な構成、拒否権、株式譲渡権、第三者への売却権など)および事業経営上の問題(事業計画の調整、役割
  • 責任、当事者の競業禁止・勧誘禁止義務、想定される目的など)に十分に配慮すべきである。合弁事業契約として、あらかじめこれらに合意する必要がある。
  • M&A:国境を越えた合併またはインド企業の完全買収もしくは部分的な買収を通じて、外国投資家がインドに投資することもできる。この仕組みは、市場統合、低い参入障壁、効率的な技術移転などの点で投資家に様々なメリットをもたらす。投資家は、価格調整やクロージング時の構成に関する条件を交渉しつつ、対価の後払いや株式交換の形で安全域を確保することもできる。何よりも、有利な税制優遇措置を受けられるため、基本的にこのM&Aという形態が推奨される。
  • 有限責任組合:組合と企業両方の特徴を備えているため、便利な投資手段である場合がある。だが大口投資家は通常、企業形態を採用したがる。企業の方が所有権に柔軟性があり、その事業に特有のニーズに応じた経営構造を取れて、資金を調達しやすいためである。
  • 外国ポートフォリオ投資家(FPI):ポートフォリオを多様化し、多様なリスクリターン特性を持つ市場にアクセスできる。インド証券取引委員会(SEBI)に登録された投資家は、合計払込資本の10%未満の投資、債券投資、上場企業または上場予定企業の新株引受権、国内投資信託ユニット、カテゴリーIII代替投資ファンド(AIF)または一定の条件に基づくオフショアファンド、SEBIが規定する条件に従う不動産投資信託ユニットを介して、FPIを通じた投資を行える。FDI投資額の合計は、前述のFDIポリシーに定める該当する業種別上限を超えてはならない。FDIが禁止されている業種のインド企業へのFPI合計額の上限は、24%である。
  • 外国ベンチャーキャピタル投資家 (FVCI):指定の業種(ナノテクノロジー、インフラ、バイオテクノロジーなど)の非上場企業の株式、ベンチャーキャピタルファンドユニット、カテゴリーI代替投資ファンドおよび株式、スタートアップ企業(業種は問わない)が発行する債務証券への投資を認められる。株式へのFVCIは、業種別の上限およびFDIポリシーが定める付随条件に従わねばならない。
Saurav Kumar
Saurav Kumar
パートナー
IndusLaw(ニューデリー)
Eメール:saurav.kumar@induslaw.com

外国投資家は、任意転換、部分転換、または無転換債券に投資することもでき、これらは対外商業借入れ(ECB)として扱われ、これらの資金は、自動ルートまたは政府承認ルートで調達することができる。ECBは、最低限の平均償還期間を経過後に株式に転換することができる。投資家は、平均償還期間が過ぎるまでコールおよびプットオプションを行使できない。この最低限の償還期間は通常3年だが、ECBのカテゴリーによって異なる。ECBの株式転換は、価格ガイドライン、報告要件、貸手の同意、業種別の適用される規範などの条件にも従う。

外国投資家は、インドのスタートアップ企業が発行する1回のトランシェの金額が3万ドル以上の転換社債も購入することができる。株式への転換を含むこの種の投資には、FDIポリシーに基づく参入ルート、業種別上限、価格ガイドライン、他の付随条件が適用される。

利用可能な政策イニシアチブ

日本は、インドに専用の工業団地を設置した初めての国である。日本企業が日本工業団地で操業を開始できるよう、インド政府が最新のインフラを整備してきた。日本工業団地には、特別経済区や国家投資製造区域と同等の投資インセンティブが付与されている。

日本企業がこの工業団地に工場を設置すれば、財政投資、土地関連の使用料、税金、関税、雇用創出に関連する補助金や還付金など、一連のインセンティブが与えられる。

例えば、ラジャスタン州ニムラナ工業団地は、最大7万ドルを上限として、工場と機械に対する投資額の25%の補助金を提供している。いすゞ自動車、ヤマハミュージック、ダイキンなどの日本の有名企業が、この団地に製造部門を設置している。

「ジャパン・プラス」は、インドへの日本の投資の促進・振興・継続を目指す、日印間のもうひとつの戦略的な取り組みである。「ジャパン・プラス」を通じて、投資家は戦略的なビジネス・アドバイス、政策ガイダンス、用地の評価、課題の解決、展開支援などを受けられる。またこの取り組みは、日本からの投資提案の推進と迅速な審査を目

的とし、日本の投資家が直面する問題を速やかに解決するワンストップ・ショップとなるものでもある。

日本企業の関心を引く業種

Swathi Sreenath
Swathi Sreenath
プリンシパル・アソシエート
IndusLaw(ニューデリー)
Eメール: swathi.sreenath@induslaw.com

自動車・電気自動車(EV)、再生可能エネルギー、電子機器、半導体など、インドには日本企業が注目できる幅広い業種が存在する。

EV革命が大きな存在感を持つなか、政府は現在、電気自動車の生産・普及促進政策〔Faster Adoption and Manufacturing of Hybrid and Electric Vehicles (FAME II) Scheme〕などの消費者向けの補助金を通じて需要を拡大しており、FAME IIは、2024年3月31日まで延長された。

また政府はEVへの移行を進めるために、2021年廃車政策(Vehicle Scrappage Policy)、2022年電池廃棄物管理規則(Battery Waste Management Rules)も導入した。トヨタ、スズキ、ホンダなどの日本の大手企業もインドで事業を展開しており、EV産業の繁栄は間違いない。

再生可能エネルギーでは、政府は先日、太陽光パネルに使用する光電池を生産するため、約23億8000万ドルを投じた生産連動型インセンティブ(PLI)スキームを発足させた。また約24億1000万ドルを投じた国家グリーン水素ミッション(National Green Hydrogen Mission)の導入により、インドをグリーン水素生産のグローバル拠点にすることも目指している。

このミッションは段階的に進められ、まずは電解槽の国内生産拡大に注力する。以後の段階では、幅広い経済部門へのグリーン水素の産業利用の探究に重点を置き、脱炭素化を徐々に進めていく。

多くの日本企業が排出量実質ゼロに取り組んでいるため、インドは重要な投資先となっている。日本の三菱UFJ銀行は先日、太陽光発電所の設置のためタタ・パワーに5500万ドルのサステナブル・ファイナンスを供与した。三井物産も、リニュ・パワーの再生可能エネルギー事業などの再エネ案件に投資している。

電子機器部門では、生産連動型インセンティブスキーム、共有インフラの製造クラスタースキーム、関税免除などのインセンティブを提供している。

グジャラート州政府は先日、グジャラート州エレクトロニクス政策2022(Gujarat Electronics Policy, 2022)を発表した。これは、資本的支出額の20%までの補助、印紙税・登録税の還付、物流補助金、規制当局による迅速承認、コンプライアンスの緩和などを認めるものだ。

半導体では、93億ドルを投じて、国内の半導体・ディスプレイ製造エコシステム開発のための包括的プログラムを発足させた。このプログラムには、半導体製造という高度に資本・資源集約的な事業を営む技術と能力を備えた適格投資家に、事業費用または資本支出の50%の財政支援などの大きな便益を提供する、多様なスキームが盛り込まれている。タミールナドゥ、グジャラートなど様々な州も、半導体を対象とする州の政策を開始し、資金援助、土地取得補助金、印紙税・電気料の免除などのインセンティブを提供している。

上記の業種に加えて、日本の投資家は、食品加工(カゴメ、イセ食品)、衣料(ユニクロ)、医療機器(ニプロ)などの業種に関心を示してきたが、これはインド政府が、こうした業種に役立つインフラ整備のために実施した取り組みを反映したものである。

結論

日本からの投資は、インドが受け入れる外国投資の大きな部分を占めている。だが、インドの産業への投資の可能性にはまだ探究の余地がある。

日本に特化した魅力的な投資環境の整備がこうした動向に変化を起こし、再生可能エネルギー、医療、デジタル技術などの新たな業種にも投資が流れ込み始めている。

参入手法の総合的な評価――社会的、政治的、経済的要因などの重要な影響因子に留意しつつ――を通じて、日本の投資家がインドに堅固な基盤を築くため、さらなる支援を行えるだろう。

IndusLaw-2021

INDUSLAW
101, 1st Floor, Embassy Classic
11 Vittal Mallya Road
Bengaluru – 560 001, India
電話: +91 80 4072 6600
Eメール:bangalore@induslaw.com
www.induslaw.com

Japan Outbound Investment Guide

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