北アジア地域のデジタルバンキングに関するガイド: 韓国

By Hwang Hyun-ilそしてHeo Junbeom、Shin & Kim(ソウル)
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韓国

韓国には、デジタルバンキングの正確な法的定義がありません。オンラインで提供される銀行業務という単純な捉え方では、この業務が国内でどのようにデジタル的に発展してきたかを完全に把握することはできないでしょう。

最近では、銀行サービスを機能別にモジュール化し、従来の銀行免許を持たないフィンテック企業でも利用できるようにするというシフトが見受けられます。バンキング・アズ・ア・サービス(BaaS)として知られるこのシフトは、主にフィンテックのアプリケーションにバンキング機能を統合することによって実現されるものです。

この枠組みでは、銀行は必要な金融インフラを提供しますが、必ずしも顧客との直接的なやり取りを行うわけではありません。その結果、この国のデジタルバンキングは、伝統的な銀行の排他的領域から、フィンテック企業のような新規参入者を歓迎する、より包括的な環境へと大きく移行するようになりました。

法規制システム

世界各国の銀行と同様に、韓国の銀行の中核業務は預金、融資、そして国内・外国為替取引です。韓国におけるデジタルバンキング規制の説明には、さまざまな形がありますが、ここでは、デジタル環境の中で伝統的なバンキング機能を提供する際に適用される法的・制度的ルールに焦点を当てます。

インターネット専業銀行

Hwang Hyun-il
Hwang Hyun-il
パートナー
Shin & Kim(ソウル)
電話: +82 2 316 4453
Eメール: hihwang@shinkim.com

韓国においてデジタルバンキング・サービスを提供する最も確実な方法は、インターネット専業銀行免許を取得することです。これにより、法人向け融資を除く一般的な銀行

業務を行うことができます。韓国では3社がインターネット専業銀行免許を持ち、デジタルバンキング業務を行っています。インターネット専業銀行免許を取得するための法的要件は以下の通りです。

(1)免許取得には、最低250億ウォン(1860万米ドル)の資本金が必要です。この免許付与の審査において、金融当局は申請された資金調達案が実行可能かどうか、また追加資本の調達が可能かどうかを評価します。

(2)銀行は、業務遂行のための適切な人員、業務施設、コンピューター・システムを備えていなければなりません。

(3)特に、外国金融会社または外国金融会社の持株会社がインターネット専業銀行免許を申請する場合、それぞれの母国の監督当局による合法的な同意が必要です。財務および経営状態が健全で、国際的に認められた信頼性を有していなくてはなりません。韓国の金融監督当局に対して、銀行事業の経営および業務活動に関する十分な情報を提供しなくてはなりません。

(4)上記の条件をすべて満たしている場合でも、韓国の金融当局は認可時に「増資計画の誠実な実施」などの追加条件を課すことができます。

インターネット専業銀行免許の取得は、韓国においてデジタルバンキング業務に従事するための最も直接的かつ決定版的な方法です。しかしながら、高い参入規制を遵守し、金融監督当局の精査を通過する必要があります。認可取得には金融監督当局との緊密なコミュニケーションが必要であり、関連する法規制上の問題を事前に徹底的に検討する必要があるため、専門家の支援が事実上不可欠です。

送金と決済

Heo Junbeom
Heo Junbeom
アソシエイト
Shin & Kim(ソウル)
電話: +82 2 316 4351
Eメル: jbheo@shinkim.com

かつて銀行の独占領域だった国内為替取引は、「単純送金」サービスの登場により、フィンテック企業がひしめく激戦市場へと変貌しました。これらのサービスを導入し、電子金融取引法で定義されている「プリペイド式電子決済手段」を活用し、オープンバンキングを実施することにより、国内の為替取引は銀行による独占から競争市場に移行したのです。

さらに、最近は外国為替取引法に基づく少額海外送金免許が創設されたことで、クロスボーダー送金に乗り出すフィンテック企業が急増しています。以下は、送金と決済に関する規制の入口要件の概要です。

(1)プリペイド式電子決済手段の発行および管理、ならびに決済ゲートウェイ・サービスは、韓国金融委員会(FSC)への登録の対象です。

(2)必要最低資本金は、プリペイド式電子決済手段の発行および管理に従事する者については20億ウォン、決済ゲートウェイ・サービスについては10億ウォンです。

(3)申請者は、負債比率など特定の財務健全性基準を満たし、電子金融事業を行うのに十分な専門知識と物理的設備を有していなければなりません。

(4)クロスボーダー送金に必要な少額海外送金業の免許は、FSCではなく、企画財政部に登録しなければなりません。小規模の海外送金事業を運営するために必要な最低資本金は10億ウォンであり、中央外国為替情報システムに接続されていなければなりません。

(5)同様に、クロスボーダー決済ゲートウェイ・サービスを行うには、企画財政部への外国為替業務の登録が必要です。クロスボーダー決済ゲートウェイ・サービスのために外国為替業務を登録する資格は、電子金融取引法に基づく決済ゲートウェイ・サービス免許を保有する事業者に限定されていますので、留意が重要です。

(6)韓国では、近年の電子金融取引法改正を受けて、「今すぐ買って、後で支払う」(BNPL)サービスを提供する法的基盤が確立されました。

預金

預金の受け入れ業務は、依然として銀行の独占的な領域です。従って、先に述べたように、インターネット専業銀行の免許を取得しないかぎり、預金商品を直接取り扱う手段はありません。しかし、FSC は最近、オンライン預金商品仲介サービスの試験運用を、参加企業を選定して行うと発表しました。

オンライン預金商品仲介サービスはまだ試験段階にあるため、既存の法的認可は存在しません。

韓国の金融革新支援特別法では、特定の基準を満たした企業は、「金融規制のサンドボックス」制度を介して、現行法では認められていない金融サービスの試験運用を申請することができます。このサンドボックスの対象となった企業は、2年間(最大4年間まで延長可能)にわたり、金融規制で認められていないさまざまなサービスを試すことができるのです。

サンドボックス指定を申請できるのは、韓国内の金融会社および韓国内に事務所を持つ企業に限定されています。FSCにサンドボックス指定申請書および同委員会所定の書式に従った裏付け書類を提出して、審査を通過すれば指定を受けることができます。

融資

銀行預金と同様に、融資は伝統的に銀行の中核的機能でした。しかし近年では、P2P方式でオンライン融資を仲介するプラットフォーム事業者の出現により、伝統的な融資市場にシフトが生じています。

さらに、さまざまな金融機関のローン商品を比較し、最適な商品を推薦する新しいオンライン・サービスも登場してきました。

(1)韓国は、「オンライン投資連動型金融および利用者保護に関する法律」を通じて、P2P融資事業を法的に規制しています。オンライン投資連動型金融事業を行うには、以下の条件を満たす必要があります。

(a)オンライン投資連動型金融事業にはFSCへの登録が必要
(b)融資の規模によりますが、最低5億ウォンの資本金が必要
(c)事業計画は実行可能で健全なものでなければならず、取締役は法律で定められた資格を満たしていなければなりません。大株主には、十分な投資能力、健全な財務状態、そして社会的信用が必須

(2)オンライン融資仲介サービスは、法的には金融消費者保護法に基づいたものです。オンライン融資仲介サービスを行うには、以下の法的条件を満たしていなくてはなりません。

(a)FSC への登録が必要
(b)法人の代表者または役員は、ローン商品に関する教育を修了していること
(c)標準作業を確立し、専門的な人材とコンピューター設備が提供されていること
(d)消費者被害補償のために、最低5,000万ウォンの保証金を預託するか、保険に加入すること
(e)アルゴリズムについて、利益相反防止証明書を取得すること

結論

デジタルバンキングは基本的に、従来の銀行業務プロセスを分離し、機能をモジュール化することを中心に展開しています。従って、それぞれの銀行業務の規制状況を十分に把握することは、法令遵守リスクを軽減する上で極めて重要です。韓国においてデジタルバンキング分野に進出しようとする企業は、各々の銀行業務や機能に適用される法的枠組みを理解し、慎重に戦略を練る必要があります。

SHIN & KIM
23F, D-Tower (D2), 17 Jongno 3-gil,
Jongno-gu, Seoul 03155, Korea
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