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パンデミックによる金融不安を背景に、国際企業は国境をまたいだ債務再編を余儀なくされていますが、最新の制度が整った外国・海外統治領(タックスヘイブン地域)では、現実的な選択肢が提供されています。

複雑に統合された多国籍構造や債務構造を有する大企業グループにとって、異なる法域で手続きを並行して進める国際的な事業再編は避けられません。英領バージン諸島(BVI)およびケイマン諸島の裁判所には、破産法や事業再編法の最先端の法環境が整っています。

BVIおよびケイマン諸島の事業再編法には、類似点と相違点がありますが、両法域の裁判所には、経営不振に陥った企業が現在の先行き不透明な経済情勢という課題を克服できるように支援する、独創性と強みがあります。

英領バージン諸島におけるソフトタッチ(仮清算)

英領バージン諸島(BVI)の債務再編法(debt restructuring law)の際立った特徴としては、有名なConstellation事案に続き、裁判所が、BVIの2003年破産法第170条に基づきその包括的権限を行使し、事業再編を目的とした「ソフトタッチ」仮清算を認定できる、という点です。

従来の清算と比較すると、「ソフトタッチ」仮清算では、BVIの会社を、その取締役が引き続き管理することができ、仮清算人の支援や監督により債務を再編することができます。ソフトタッチ仮清算によって、企業は採算のとれる継続企業として存続できることが見込まれ、また、債権者には、従来の清算で期待できる成果以上の結果が提供されます。

Debt restructuring in the BVI and Cayman Islands, Han Wenhao
Han Wenhao氏
パートナー
Harneys(上海)
電話: +86 21 2030 7817, +86 150 2172 5582
Eメール: wenhao.han@harneys.cn

仮清算人の任命は、自動的モラトリアムと同時には行われません。しかし裁判所は、会社からの申請に基づいて、請求に関する手続きを停止するために、法で定められた包括的なモラトリアムを許可することができます。モラトリアムが許可されると、債権者がそれに対して措置を講じることなく、企業には、事業再編を実施するために必要な時間的猶予が与えられます。

このように進展した結果、BVIは現在、他のコモンロー法域と足並みをそろえており、清算の代替案として債務の再編を推し進めています。

「ソフトタッチ」仮清算において、BVIの企業は、2004年BVI事業法(BVI Business Act, 2004)の第179条Aに基づくスキームオブ・アレンジメントによって、債務を再編することができます。これは、裁判所が認めた場合、所定の割合の債権者が承認した債務再編計画、つまり「債務に関する会社と債権者との間の取り決め」を実施することができる、法令に基づく手段です。本スキームは、裁判所から認可を受けるために、出席し議決権のあるスキーム債権者の金額ベースで75%を占める、過半数の承認が必要です。

最近のRongxinda Development(BVI)の事案では、問題となっているスキームが世界各地で実施されているかどうかは不明であったにもかかわらず、Adrian Jack判事は、国際的に認知されているかどうかという問題の重要性は低く、よって裁判所が本スキームを認可しない理由はないと判断しました。

完璧を期すために、BVIには「プラン・オブ・アレンジメント」の制度も導入されています。この制度では、BVIの裁判所への承認申請について、企業の取締役が承認できます。しかしながら、こうした申請は、反対する債権者によって異議を申し立てられる可能性があり、よって確実性に欠けます。

ケイマン諸島における事業再編

ケイマン諸島の事業再編制度で最も注目を浴びているのは、2021年会社(改正)法として知られる、ケイマン諸島会社法第5編の改正が最近発表されたことです。

本改正法により、債務の支払が不可能になる、あるいはその恐れがあることを理由に、企業が裁判所に再生担当官の任命を申請することができます。つまりその目的は、債権者に対して和解や調停を提示することです。

これによって既存の制度が近代化され、ケイマン諸島大法廷の監視の下、債務再編を求める企業に対して確実性と保護が強化されることが期待されます。

施行は2022年下半期になる可能性が高く、施行されれば、企業の取締役は清算の申し立てを提出せずに、企業を破綻させないように、再生担当官の任命を申請することができます。

これは、仮清算よりも、さらに利用しやすいプロセスです。現在の制度下では、企業は、仮清算人の任命を申請する前に、清算の申し立てを提出する必要があります。

訴訟において繰り返し問題となるのは、企業の取締役に、その株主や会社定款によって正当な権限が与えられていない場合、清算の申し立てを申請する権限があるかどうかということです。

一方で、新制度の下では、取締役は、会社の定款に基づき明確な権限があるかどうかにかかわらず、株主の決議なしに再生担当官の任命の申し立てを行う選択肢があります。

追加的なメリットとして、域外のモラトリアムは、再生担当官の任命を申請する際に、自動的に発生します。よって、企業は、ケイマン諸島またはその他の法域において、債権者が会社に対して措置を起こすことから守られ、債権者が企業清算を求める危険性を排除します。また、ケイマン諸島の裁判所の許可がない限り、企業が清算される決議を可決することはできません。

再生担当官が任命されると、現在の仮清算人と同じ役割が担えるようになり、スキームオブ・アレンジメントにより、規制による干渉やコストが少ない状態で、経営不振に陥った企業が、金融債務を交渉、再構築できるよう支援し、促すことができます。本改正法は、同法、外国法、または合意による事業再編に基づいて、和解および調停の両方に適用されます。

並行して進める手続き

香港で上場している中国本土の多くの企業グループは、ニューヨーク州法に準拠した関連債券により、米ドル建て債務を増やしています。債務再編のために、実際によく用いられるのは、会社が登記されているか、または主な利益が集中している外国・海外統治領にスキームを導入することで、こうした負債について折り合いをつけ解決する方法です。この後、米国連邦破産法第15章に基づき、米国での承認を求めた補助手続きにおいて申請が行われます。しかし、直近の判例法では、企業の状況によっては、これが、あらゆる企業に適切というわけではないことが示されています。

第15章に基づく承認により手続きに影響が生じ、債権者が米国内にある債務者の財産に対して講じる措置を妨げることになりますが、債務を免除することになりません。つまり、そうした承認は、米国に対してのみ限定的に有効となります。

企業が、ニューヨーク州法に準拠した債務を免除し、スキームに参加していない債権者が別の法域で企業を清算できないようにする必要がある場合、世界的に影響力があるとされる、米国連邦破産法第11章に基づき適切な手順が適用されなければなりません。

多くのコモンロー法域では、債務を生み出した金銭債務証書を管轄する法域の法律に従って和解による解決をした場合に限り、債務が免除されたと見なされる、英国の「ギブズの法則(rule in Gibbs)」を採択しています。従って、外国法、例えばニューヨーク州法あるいは香港法に準拠した債務について、和解による処理を行う外国・海外統治領の裁判所が認可したスキームは、外国法域に提出した債権者を拘束するものとして、扱われることになります。

しかし、これは、外国の法域において、スキームの手続きあるいはその他の関連する破産プロセスに参加しなかった債権者を、拘束しない可能性があります。よって、会社が登記されているか、あるいは資産所有事業体が法人化されているBVIまたはケイマン諸島におけるスキームに加えて、法律が債務に適用される法域において、並行してスキームを実施することや、不満を募らせた債権者がその外国法域で会社に対して申し立てを行うリスクを排除することも必要となる場合があります。

結論

現在の経済情勢では、流動性が重要です。債権者および経営不振に陥った会社にとっては、流動性が枯渇する前に、早い段階で債務再編について対話を始めることが得策です。

BVIでのソフトタッチ仮清算や、ケイマン諸島において近く導入される再生担当官制度によって、グループ債務を再編する海外事業体を有する企業に、追加の選択肢が提供され、そうした企業の事業再生が支援されることになります。

Luckin Coffee(瑞幸咖啡)の最近の成功例で実証されるように、こうした過程が、適切に展開された場合、略奪的な債権者および行き詰った投資家から、経営不振に陥った会社を守ることができるとともに、事業改善や破産回避のために時間的猶予が与えられることになります。ほとんどの場合、こうしたプロセスにより、債権者も、清算する場合より良い条件で回収を行うことができます。

日和見主義的な債権者が、場合によっては、他の債権者を出し抜くために、法人登記が行われたBVIやケイマン諸島の法域で、企業に対して付随する措置を一方的に講じる場合があります。そうした事態を防ぐために、外国で主な債務超過手続きを行う企業グループは、保護的な手続きを検討したいと考える可能性もあります。このようなことをすれば、債権者や出資者のために本来であれば会社が利用できる救済策に支障をきたすことになるでしょう。

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