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税制優遇措置は、シンガポールのデジタル資産運用会社が、ジャージー(英国王室属領)でファンドを組成する呼び水となっていることは知られていますが、最近の動向を背景に、メリットはさらに拡大しています。

最近、世界の暗号通貨市場で混乱が発生したにもかかわらず、投資家は従来の資産クラスよりも高いリターンを求めて、デジタル資産への投資を続けています。運用会社の大半は、投資家のポートフォリオの少なくとも5%を暗号通貨にすべきであると提案しています。

Chris Griffin, Carey Olsen
Chris Griffin
パートナー
Carey Olsen(ジャージー)電話: +44 1534 822256
メール: chris.griffin@careyolsen.com

こうした関心が高まる中、ジャージーは、多くのシンガポールの運用会社によって、ファンドの組成地として利用されてきました。ジャージーが選ばれるのには、いくつかの要因があります。

シンガポールにおけるデジタル資産への課税措置:デジタル資産は、シンガポール税法上の「指定投資」の定義に該当しません。つまり、シンガポールに籍を置くファンドは、シンガポールで課税対象となるため、こうした税金による利益損失は投資家にとって魅力があるとは言えません。

課税の中立性:ジャージーの法人として設立され、ジャージーの居住法人であるファンドについては、投資収益は非課税となります。また、ジャージーの居住法人である企業が、非居住者に支払う配当金や運用収益に対しても源泉徴収税が課されません。さらに、贈与税、相続税、債務義務、資本移転税も存在しません。

租税条約:ジャージーとシンガポールは租税条約(DTA)を締結しているため、ジャージーの居住法人であり、ジャージーに籍を置くデジタル資産ファンドは、シンガポールで暗号通貨を売却した場合、その売却益である利益への課税を軽減または免除される可能性があります。

ジャージー・シンガポール間のDTAの目的は以下の通りです。

  • 個人または企業が居住者/居住法人であるか否かの判断に利用
  • 同一所得に対してジャージーとシンガポールで課税される二重課税のリスクからの保護
  • 国境を越えた貿易と投資のための確実な取り扱いを提供

ジャージーまたはシンガポールのDTAに基づき救済措置を利用できるかどうかは、条件や濫用防止規定に左右されるため、専門的な税務アドバイスを受ける必要があります。

ジャージーは、UAE、カタール、ルクセンブルグ、香港など他の法域とも完全なDTAを締結していることに注目する必要があります。

規制の確実性:ジャージーは、国際金融センターとして確固たる地位を築いており、出資約束金が930億米ドルにのぼる世界最大のファンド、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」をはじめとするファンドの本籍地として知られています。ジャージーは、一部の法域とは異なり、暗号通貨に規制があります。従って、ジャージー金融サービス委員会(JFSC)が、ファンドプロモーターや、ファンドの組成・運用が信頼できるものであることを確認するために、デジタル資産に投資するファンドを慎重に精査します。

ジャージーのファンド制度

Tom Katsaros, Carey Olsen
Tom Katsaros
コンサルタント
Carey Olsen(シンガポール)Tel: +65 9031 4735
Email: tom.katsaros@careyolsen.com

ジャージーには、規制に関して2種類のファンド制度があり、1つはジャージー・プライベート・ファンドで、もう1つは規制対象のジャージー・エキスパート・ファンドです。この2つの主な違いは、ジャージー・プライベート・ファンドでは、投資家は50人以下、投資家への正式な募集口数も50口以下とされていることです(いわゆる「50人以下基準」)。

これに対して、ジャージー・エキスパート・ファンドは、募集口数や投資家の数に制限はありませんが、正式な規制当局の承認プロセスの対象となります。

アジアを拠点とするファンド運用会社がデジタル資産ファンドを立ち上げる場合、最も人気のあるファンド組成は、ジャージー・プライベート・ファンドです。実際に、最近の事例が示す通り、ジャージーでファンドを立ち上げようとするシンガポールの運用会社は、ジャージー・プライベート・ファンドとしてファンドの運用を開始し、運用会社がトラックレコードを積み上げた時点で、ジャージー・エキスパート・ファンドに格上げする必要があります。ジャージー・プライベート・ファンドの主な特徴は以下の通りです。

  • 投資家の上限は常に50人、当初募集口数は最大50です。
  • 証券取引所に上場することは禁じられています。投資家による償還のためにオープンエンドまたはクローズドエンドとなる場合があります。
  • 投資家は、プロの投資家としての資格があり、さらに最低25万英ポンド(30万米ドル)の価値のある持分を引き受けるか、またそのいずれかの条件を満たさなければなりません。
  • ファンドの規模に制限はなく、投資や借入の制限もありません(ただし、投資家との合意がある場合を除きます)。
  • 現地の法律に基づき、JFSCから簡単な承認を得る必要があります。
  • ジャージー以外の地域のアドミニストレーターを指名することができます。
  • ジャージーが指定するサービス提供者(DSP)として、ジャージーで規制対象となるアドミニストレーターを指名する必要があります。
  • 監査要件はありません(ただし、デジタル資産ファンドについては通常、監査要件を満たすことが期待されます)。
  • カストディアン要件はありません(ただし、デジタル資産ファンドについては通常、カストディアン要件を満たすことが期待されています)。
  • ジャージーでは、ファンドの管理担当者(例えば、投資運用会社やアドバイザーなど)を規制する要件はありません。

当該ファンドがEUや欧州経済領域(EEA)で積極的に販売される場合は、いくつかの追加要件が適用されますが、ジャージー・プライベート・ファンドを「格上げ」して、後にEUやEEAに販売することは可能であり、そのプロセスは比較的簡単でよく行われている方法です。

これまでに得られた教訓

昨年7月に、ジャージーがシンガポールのファンド運用会社の本籍地として初めて認められて以来、多くのデジタル資産ファンドが立ち上げられ、非常に貴重な教訓がいくつか得られました。それらを以下にまとめます。

組成:ジャージーの会社をファンドビークルとして利用すれば、柔軟に対応することができます。シンガポールの運営会社のために最近組成されたファンドは以下の通りです。

  • ジャージーの独立会社としてのファンド
  • ジャージーのマスターファンドまたはフィーダーファンド(従来のヘッジファンドの組成に類似)
  • シンガポールの変動資本会社(VCC)のサブファンドであるジャージーの会社(VCC経由で投資する必要のある特定の投資家に対応)
  • ケイマン諸島の分離ポートフォリオ会社の支配下にあるジャージーの会社

管理の仕組み:ジャージー・プライベート・ファンド制度では、ファンドがジャージーの規制対象であるアドミニストレーターをDSPとして指名することが義務付けられています。DSPの役割は、プロモーターの資格をJFSCに確認し、ファンドがジャージー・プライベート・ファンドの要件(すべての投資家がジャージー法に準拠したマネーロンダリング防止チェックを受けているなど)を満たしていることを確認することです。

当然のことながら、多くのシンガポールのファンド運用会社は、ファンドの実際の管理(純資産額の計算、応募と償還の処理、資金会計など)が、ファンド運用会社と同じタイムゾーンで実施されることを望んでいます。

従って、ジャージーに籍を置くデジタル資産ファンドの立ち上げを希望するシンガポールの運用会社は、ジャージーのDSPとシンガポールのアドミニストレーターの役割と責任を慎重に定義し、重複がないようにすると同時に、運用と規制の両面から抜けがないことを確認しなければなりません。

JFSCとのやりとりおよび承認時期:暗号通貨はJFSCにとって機密性の高い取引であるため、通常の48時間の承認時間枠は適用されません。よって、シンガポールの運用会社は、規制当局の承認の取得には、ジャージー・プライベート・ファンドの申請書の提出日から8~10週間を要すると考えておかなければなりません。

ファンドの目論見書のコピーと、プロモーターとその当事者に関する経歴の一部をJFSCに提出することが望ましいとされています。JFSCは今後、ファンドの管理体制を特に重視し、過去にハッキングや資産の不正流用の影響を受けたことのある資産クラスに投資する場合、投資家が適切に保護されるように努めます。

投資家の数:上述の「50人以下基準」は、「ルックスルー」ベースで適用されるため、運用会社はジャージー・プライベート・ファンドに多数の異なるフィーダーファンドを組み込むことができず、またジャージー・ファンドの投資家の総数が50人を超えないようにしなければなりません。一般投資家に代わって投資を行う任意の投資運用会社にとっては有用なカーブアウトがあり、この場合、任意の投資運用会社は1人の投資家とみなされます。

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