日本企業の南アフリカへの投資戦略

By Alan Keep, Bowmans(ヨハネスブルク)
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特に、アフリカ大陸における商機が急激に拡大している今、南アフリカは外国直接投資の大きなチャンスを提供している。大陸の南端に位置することからアフリカ内外の市場への玄関口となり、金、プラチナ、ダイアモンド、石炭などの豊富な天然資源が、南アフリカを重要な投資先にしている。

人口5900万人以上を擁するアフリカ第2位の経済大国は、製品やサービスを販売する企業に巨大な消費者市場も提供している。

発達したインフラ、金融サービス、通信、法律制度と、新興市場の困難な環境で事業経営を行った経験を持つ活力ある民間部門が相まって、南アフリカは投資家にとって魅力的な地域になっている。

いくつか課題はあるものの、民主的に選出された政府による安定した政治環境、独立した司法制度、憲法への人権の明記、良識ある財政・通貨政策、報道の自由を通じて、企業が事業を営みやすい環境が生まれている。

ガバナンス向上、腐敗撲滅、経済成長を妨げる障害の解消に向けた政府の取り組みに期待が持てることから、投資家の信頼が高まっている。とはいえ、大きな可能性を解き放つためには、投資家は南アフリカ特有のビジネス環境を慎重に見極めて進む必要があるだろう。

外国直接投資

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Ezra Davids
Bowmans(ヨハネスブルク)
チェアマン兼シニア・パートナー

南アフリカには外国資本の投資に対する制限がほとんどなく、零細企業や戦略的産業案件、輸出企業には税額控除や優遇措置が設けられている。貿易産業競争省(Department of Trade and Industry and Competition)は、競争力ある新たな企業の成長と持続可能な産業の創出を促すために、幅広い優遇制度を用意している。

南アフリカは、外国投資を援助する多くの国際機関や協力協定・条約の加盟国でもある。大陸内の貿易振興とアフリカ全土の投資の保護・促進・自由化を目指すアフリカ自由貿易圏設立議定書()の発効は、すでに投資家の関心を集めており、現在残る議定書の取りまとめが進められている。

投資促進・保護法は、外国投資家に国内投資家と同一の権利を認めている。外国投資家は、憲法が認める財産権に基づく法的保護も受けられる。

外国資本の所有を制限する包括的な法律はないが、エネルギー・鉱業・金融・通信・防衛などの特定の戦略的分野には外国資本の保有に影響を与える規制が存在する。先日の競争法(Competition Act)改正により、国際的な動向を受けて国家安全保障条項も導入され、国家安全保障上の利益リストの対象として届出義務がある合併については、政府の許可が必要とされる。だが、この規定はまだ施行されていない。

企業の形態

主な法人の種類は、公開会社、非公開会社、個人責任会社、閉鎖会社(である。海外法人は外国会社として登録して事業を運営することも可能だが、外国企業が最もよく使用する企業形態は非公開有限責任会社である。非公開有限責任会社は安い費用で簡単に設立でき、新規法人の設立と既存企業の買収いずれの形でもよい。

合併・買収

非公開会社が買収や合併を行う主な手法は、株式売却、事業売却、合併、株式の併合または発行である。上場公開会社の場合、取り決め(、株式公開買付、資産売却、合併という制度があるが、承認の限度額、課税、タイミングなどに関連してそれぞれ長所短所がある。敵対的買収は従来一般的でなかったが、それも変わりつつある。

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Charles Douglas
Bowmans(ヨハネスブルク)
M&A部門共同責任者

買付前に持株比率を増やすことは通常行われず、株主開示義務が法制化されている。強制的公開買付の上限は35%、スクイーズ・アウトの上限は90%である。基本的に交渉の初期段階は内密に行われ、株式の価格に重大な影響を及ぼす可能性がある情報を極秘に保てない場合は開示される。

スタンドスティル条項、独占交渉契約、勧誘禁止条項は、当事者のレバレッジに大きく左右されることはなく、規制上の制限によるが、ブレークアップ・フィーや追加提案権と併用されることが多い。対価は、現金、株式またはその両方の形をとることができる。

譲渡制限の期間を極力短くするために、一般的に公開買付の直前に取消不能の約束が交わされる。南アフリカの法律は、取締役に対し会社の最善の利益のために行動することを義務づけており、取締役会が正式な買収オファーを受理した後に取引を阻止することも制限されている。

株主アクティビズムは、従来大きな影響力を持たなかった、主にESG(環境・社会・ガバナンス)や報酬に関連して活動が増えてきている。デューディリジェンスの重要性が次第に高まりつつあり、その範囲は上記を含む他の要素にも広がっている。

規制

規定当局は、基本的にビジネス志向のプロフェッショナルである。公開会社の主な規制当局は、企業・知的財産委員会(Companies and Intellectual Property Commission)と企業裁判所(Companies Tribunal)である。公開会社や一定の基準を満たす会社は、買収や対象取引を規制する買収規制パネル(Takeover Regulation Panel)の監督も受ける。

上場企業の株式の取引は主にヨハネスブルク証券取引所(JSE)で行われ、JSEが証券サービス登録機関(Registrar of Securities Services)、金融サービス委員会(Financial Services Board)とともに、証券取引、証券集中保管機関、上場企業を規制する。

基本的には、会社法(Companies Act)およびコーポレートガバナンスに関するキング・コード(King Code on Corporate Governance)が適用される。合併に関する一定の基準を満たす場合、競争委員会(Competition Commission)および/または競争裁判所(Competition Tribunal)から、競争と独占禁止の観点に基づき承認を受ける必要がある。南アフリカ準備銀行金融監督局(Financial Surveillance Department of the South African Reserve Bank)が、国境を越えた取引の為替管理を監督する。業種別の関連する規制当局が一定の役割を果たす場合もある。

為替管理法

資本や資金を国外に移動するには、通常は公認ディーラーを通じて南アフリカ準備銀行の承認を得る必要がある。南アフリカの為替管理規制は通貨の安定促進と資本逃避の防止に重点を置いている。とはいえ、当該取引がアームズレングス・ルールに合致する適正価額のものだと示すことで、必要な承認を事前に取得しさえすればよいため、これを制限とみなすべきではない。

財務省は、投資を促すために要件をさらに緩和し、許可のない資本移動を一切認めない保守的アプローチから、リスクに基づく資本移動制限措置を定めた限定的なリストを除いて、投資を促すあらゆる資本移動を認める例外的アプローチに移行している。

経済改革

黒人経済力強化政策〔は、人種による所得格差の縮小を目指す南アフリカ独自の経済改革戦略の柱となる要素である。

B-BBEE法と調達関連法に基づき、あらゆる国家機関と公共団体は、ライセンス発行とサービス調達の判断基準としてコード(適正実施基準)を考慮し、可能な限り同コードを適用する法的義務を負う。

企業は、黒人の所有権、経営支配、調達、その他の指標に関連する目標の達成度に応じてスコアを付与される。鉱業・通信・ゲームなどの特定の戦略的部門を除いて、産業部門別の法律やライセンス条件には、民間企業に特定のB-BBEE目標の達成を求める「強制力ある規定」はない。

しかしながら、調達基準としてB-BBEEを重視する国内企業や政府機関と取引をする限りにおいて、あらゆる企業はB-BBEEスコアの改善に努めることが欠かせない。

競争法

競争と独占禁止に関する法律は競争法(Competition Act)によって規制されており、競争法は、価格固定、談合、市場分割、優越的地位の乱用などの競争を阻害するあらゆる行為を禁じている。競争法は合併・買収も規制し、市場の競争を大きく減少または阻害する取引を禁止している。競争委員会と競争裁判所は、競争法違反を調査し訴追する権限を持ち、その結果として罰金、事業分離、その他の罰が科される。

労働法

南アフリカには、特に金融・工学・テクノロジー分野で高い教育を受けた熟練した労働力があり、アフリカ大陸での事業の確立を目指す企業にとって魅力的な投資先になっている。厳しく規制された労働環境も整い、各種の法律と規則が労使関係に適用されている。

外国投資家は、南アフリカの労働法環境を知っておかねばならない。憲法および権利章典(Bill of Rights)が労働者の権利を保護し、社会正義、経済成長、雇用の創出を促すために労働法が制定されている。雇用条件基本法(Basic Conditions of Employment Act)、労働関係法(Labour Relations Act)、雇用均等法(Employment Equity Act)をはじめ、雇用契約を規定する様々な法律と規則が存在する。

特筆すべき点として、南アフリカでは組合運動が盛んであり、多くの労働者が、雇用主との団体交渉協定の交渉を行う職種別労働組合に加入している。ストライキや他の争議行為も一般的であり、労働法は、労使間で紛争が生じた際に従うべき手続きを定めている。労働法規の順守が厳格に実施され、違反に対し厳しい罰が科されることもある。

南アフリカに投資する際は、法律的な助言や支援を求めて投資の成功への道筋をつけることが重要である。南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領の言葉を借りれば、「皆さんに、南アフリカの成長の物語に参加していただきたい」。

ヨハネスブルグのBowmansのマネージングパートナーであるAlan Keep氏

BowmansBowmans

11 Alice Lane PO Box 785812, Sandton

Johannesburg, 2146 South Africa

電話: +27 11 669 9000
Eメール: info-jhb@bowmanslaw.com
www.bowmanslaw.com

Japan Outbound Investment Guide

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