台湾に投資する日本企業へのアドバイス

By 高志明 と 陳文智 と 洪邦桓, 萬國法律事務所(台北)
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日本では、従来より台湾への投資が盛んであり、2022年末の時点で投資件数は1万1654件、投資総額は約259億米ドルに上る。投資総額はアメリカとほぼ同額であるが、投資件数はアメリカの7694件をはるかに超えている。

日本の投資件数は香港とほぼ同じだが、投資総額は香港を大きく上回っている(香港の投資総額は約103億7000万米ドル)。件数で見ると、外国からの総投資件数の約17.5%(2位)、投資総額から見ると、外国からの投資総額の約12.4%(4位)を占めている。

Albert Kao, Formosa Transnational
高志明
パートナー弁護士
萬國法律事務所(台北)
Eメール: albert.kao@taiwanlaw.com

歴史的背景があるため、1952年の外国投資解禁以来、日本は積極的に台湾に投資し、それ以来、安定的に投資を続けてきた。バブル期の1980年代末期には桁違いの投資件数を実現し、毎年、総投資件数の40%を占めた。2000年代に入ると、毎年平均200~300件の投資が日本からあった。

2010年代には平均投資件数は400件に増え、ピークに達したのは2012年と2013年で、それぞれ619件と618件の投資を実行した。この勢いはコロナ禍で止まり、2020年以来、投資件数は200件台に戻り、投資件数・金額ともにかなりの衰退が窺える。

近年は衰退しているものの、質のよい労働力を提供できる台湾は、早い時期から日本の製造業にとって魅力的な進出先となってきた。工業用の電気料金と水道料金が比較的安価なため、半導体等の先端科学技術の生産基地として最適とみなされてもいる。

また歴史的・風土的な要因もあり、和食・日本文化が台湾では比較的受け入れられやすいため、飲食、小売、ホテル等のサービス業も台湾への進出を成功させやすい。もっとも、対中関係の緊張や米中貿易摩擦等の外部要因が、台湾への投資を躊躇させるかもしれないが、今後は日本による対台湾投資のV字回復を期待できるはずである。

わかりやすい会社法制

日本企業にとって、台湾の会社法制は理解しやすい。会社類型は従来の日本商法とほぼ一致しており、会社の機関も日本法と類似し、非公開の株式会社の場合、株主総会、取締役会(取締役1名または2名)、監査役(条件により設置しなくてもよい)により構成される。日本人は台湾の会社法制を理解しやすいとよく言われる。

実際、台湾では会社法改正後、会社機関の設計に、より柔軟性を与えており、より日本の会社法に近くなったと言われる。特に、日本企業が台湾でよく採用してきた法人株主一人の株式会社については、取締役会と監査役を設置せず、取締役1名を置くだけでよく、日本の取締役会非設置会社に相当する。これによって会社の維持コストを削減できる。

Chen Wen-Chih, Formosa Transnational
陳文智
パートナー弁護士
萬國法律事務所(台北)
Eメール: wenchih.chen@taiwanlaw.com

また、株主総会および取締役会の開催方法については、過去に、日本のクライアントを中心とする多くの外国企業からよく、書面決議の制度がなく手間がかかると指摘された。

確かに、過去の台湾では取締役会はテレビ会議の形で開催することしか認められなかった。しかしこの要件は次第に緩和されており、現在は、非公開会社の場合、定款の定めのある前提で、実際の取締役会を開催せず、書面決議の方式で議案を採択することができる。

他方、株主総会についても、従来テレビ会議による開催は認められなかったが、現在は、非公開会社の場合、定款の定めのある前提で、テレビ会議の開催が可能となっている。

天災、事変もしくはその他の不可抗力による事情のある場合、上場会社でもテレビ会議またはその他の主務官庁が許可する方式による開催が可能となっている。

台湾における取締役の役割は日本法に類似するが、選任方式については特徴がある。一般に累積投票制という制度で選任されるが、法人株主は複数の代表者(自然人)を指名し、取締役選挙に参加させることができる。

当該代表者が当選した場合、会社の取締役である一方、法人株主が指名する代表者という一面もあるので、法人株主はその任期中に理由なく、別の選任手続なしで、当該代表者の取締役を更迭させることができる。台湾投資先に対するコントロールという観点から、この制度は非常に便利だと評価されることが多い。

多元的な組織再編等の方式

Hung Pang-Heng, Formosa Transnational
洪邦桓
パートナー弁護士
萬國法律事務所(台北)
Eメール: pang-heng.hung@taiwanlaw.com

また、組織再編で台湾への投資を実施する場合、日本のような株式移転制度はないが、その他の再編手法は日本と一致する。再編に関する法規制について、会社法とは別に企業M&A法という特別法が2002年に制定されている。同法は特別法としてM&A事務を包括的に定めており、優先的に適用される。

組織再編の対価についてもかなり緩和されており、現金でも株式でも対価とすることが可能である。2022年に同法の改正があり、情報開示の強化、株式買取請求権の適用範囲拡大等により、少数株主に対する保護が強化された。

その他にも同改正においては、非対称式買収(一定条件の下で、株主総会の決議が不要、取締役会で議決可能)の適用範囲の拡大、税金の優遇措置等の、組織再編を促進できる措置も講じられている。

他方、上場会社への公開買付制度も台湾では成熟している。以前、公開買付成立後の買付中止があり、市場への影響が大きかったため、そうした事態を防ぐために買付資金に関する証明の提出が義務化されている点以外には、他国の制度と大きな相違はない。外国企業による公開買付の事例も多い。

新規企業にやさしい

台湾の会社法では、譲渡制限のかかった特別株の制度はあるものの、このような特別株を発行しない場合、会社は定款で株式の譲渡を制限することができないため、日本のような「株式譲渡制限会社」はもともと台湾法においては存在しなかった。

株式会社においても、株主人数が少なく、資本的な結びつきより人的な結びつきが強調されるものがあるという点に鑑み、2015年の改正で、閉鎖的会社という組織形態が創設された。このような会社においては、その多くが企業自治に委ねられている。新規起業・合弁企業は、従来の規制に束縛されない。

また、特別株に関する規定もはるかに充実しており、全部取得条項や取得条項(日本会社法108条)等の規定はないが、新規起業・合弁企業は、会社の内部経営、リスク分散と利益分配をより柔軟に取り決めることができる。

なお、台湾の会社法では、非公開会社における議決権拘束契約の効力が認められている。実務では、議決権拘束契約をはじめとする株主間契約に対して、その効力を認容する判例もしくは判断基準を提示する判例がいくつかある。これにより、従来効力が問題視された株主間契約について、その効力が一層予測可能となり、合弁企業において事前の取り決めがさらに容易となる。

外国人投資申請が必要

上述の説明の通り、完全子会社による新規起業、台湾現地他社との合弁会社の設立、組織再編方式による台湾会社の買収等、台湾上場会社に対する公開買付のいずれも、台湾の法制度において対応でき、日本企業の様々なニーズを満足できるはずである。自社のニーズを法律専門家に伝え、確実にリーガルオピニオンを得た上で実行に移すことを推奨する。

台湾の外国投資規則によると、上場会社でない会社への新規投資には、事前申請が必要である。その後の投資計画に関する修正(株数・投資金額の増減、定款改正等)は場合により、事前申請もしくは事後報告が必要となる。投資を検討する際には、上述の手続きを念頭に法律専門家に問い合わせていただきたい。

なお、投資対象の業種と市場状況によって、外国人の投資が禁止・制限され、もしくは公平取引法による結合届出が必要となる場合もある。これも事前に対応しておくべきである。

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