台湾における紛争対処

By 高志明 と 陳文智 と 洪邦桓, 萬國法律事務所(台北)
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台湾でビジネスを行う際、紛争が発生した後の対処より、未然に防ぐ対策を講じることが重要になる。特に、事業展開に関わる契約を締結するに当たって以下の要点に注意していただきたい。

紛争になり得る事項、法的リスクの予想:予防法務の観点から、契約を締結する前に、相手方の契約履行の能力、かつて類似の取引で起きたトラブルなどの調査により、将来発生し得る紛争を事前に予測し、その対応方法を契約に盛り込んでおけば、たとえ紛争が発生することは考えにくくても、紛争の発生や、将来起こり得る混乱による損害の影響を回避することができる。

Albert Kao, Formosa Transnational
高志明
パートナー弁護士
萬國法律事務所(台北)
Eメール: albert.kao@taiwanlaw.com

例えば、2020年以前に世界規模のパンデミック、米中貿易戦争およびそれらのグローバルサプライチェーンに対するインパクトを予想した人は少ないだろう。従来は契約書のテンプレートとしてのみ存在していた不可抗力条項も、今の世界情勢ではそれを適用する可能性が高くなっているため、もっと現実に合った、緻密な内容が要求される。

また、紛争が生じる場合、裁判所または仲裁人がどういう実体法(準拠法)の基準で紛争を判断するか、その基準を満たすためにどういう契約条項が必要か、事実の認定に必要な証拠は何かなど、紛争を解決する時の視点から、予め契約内容の完全性、妥当性、現実性を検証する必要がある。よって、紛争解決の経験のある専門家に助言を求めることは、リスクや紛争管理にとって重要なポイントである。

紛争が発生した際の対処方法を予め検討し、契約書に盛り込む:例えば、契約不履行が発生し、契約両当事者の権利義務の調整が契約に明記されていない場合、その紛争が強行規定に抵触するか、それとも適用すべき法律(例えば台湾民法)のデフォルトルールに沿って解決すべきかを確認する必要がある。そのため、予め契約内容を詳細に把握しておかねばならない。

契約不履行ではなくても(例えば合弁会社の株主間のデッドロックなど)、どのように調整して紛争を解決できるか?  紛争解決に関わる条項の注意点を、いくつか次に挙げる。

Chen Wen-Chih, Formosa Transnational
陳文智
パートナー弁護士
萬國法律事務所(台北)
Eメール: wenchih.chen@taiwanlaw.com

契約の準拠法を設定する:契約が台湾以外の当事者、履行地等に関わるなら、渉外的な要素があり、契約条項を解釈する際、または契約の履行につき紛争が生じる際、どの管轄の法律を適用すべきかという準拠法の問題が出てくる。台湾法で許容される範囲内で、当事者間の合意で準拠法を約束することができる。

一方、準拠法を選択する際、当事者間の権利義務関係が契約で緻密に約束されず、準拠法のデフォルトルールに委ねるところが多いなら、異なる法律の適用により当事者間の権利義務関係に生じる影響に、注意する必要がある。例えば、日本の法律と比べると、台湾の法律は代理店の地位またはその権利に対する保護が比較的乏しい。

一般的に言うと、契約条項にある用語、特に法律用語は、準拠法の法制度に使われる用語を採用した方が、解釈上の相違が生じる可能性も低くなる。同じ理由で、契約の言語は準拠法の言語と一致させる方が望ましい。

紛争解決の手段と管轄地を設定する:台湾での訴訟、仲裁、調停等手続きのそれぞれの特色とメリット・デメリットを事前に把握し、適切に選択する必要がある。この場合、起こり得る紛争を想定し(どちらが紛争解決手段を利用する可能性が高いかの想定を含む)、自社に有利な紛争解決方法(必ずしも便利な方がよいとは言い切れない)を約束するのが望ましい。

例えば、一般的に言うと、台湾裁判所での訴訟より、仲裁の方が原告に有利である。その理由はいくつか挙げられる。仲裁は原告の仲裁申立てにより初めて成立できるので、仲裁の利用を促すため、仲裁人が原告に有利な判断を下す傾向がある。例えば、原告の主張、証拠が民事裁判の観点からはそれほど強くなくても、仲裁人が原告の主張を一部認めることがある。

第二に、原告は、原則としてその主張する事実に対し立証責任を負うが、証拠の証拠能力と証明力を判断する際、仲裁人より裁判官の方が要求が厳しいので、原告が裁判所でその主張を通すことは比較的難しい。

Hung Pang-Heng, Formosa Transnational
洪邦桓
パートナー弁護士
萬國法律事務所(台北)
Eメール: pang-heng.hung@taiwanlaw.com

また、紛争解決地(フォーラム)の選択について、準拠法が外国法である場合、台湾の裁判所が外国の法律を適用して判断することはあり得るが、その判断は裁判官の外国法に対する理解に左右され、また、外国法の証明にも手間がかかるので、一般的に言うと避けた方がよいだろう。

強制執行の実効性を考慮する:台湾の裁判所の確定判決または台湾の仲裁機関の仲裁判断を以て外国で強制執行を申立てる場合(または逆に、外国の判決を以て台湾で強制執行を申立てる場合)、判決・仲裁判断の承認の可能性と承認手続きを必ず考慮すべきである。

例えば、外交関係がないため、台湾裁判所による海外当事者への訴訟文書の送達は、合法的な送達だと外国裁判所に認められず、台湾裁判所の確定判決(特に欠席判決)も承認されない可能性がある。一方、台湾はニューヨーク条約(外国仲裁判断の承認と執行に関する条約)に加盟していないが、原則として台湾と外国の仲裁判断は互いの裁判所に承認される。

上記の事前対策を検討する際、台湾法と当該ビジネスを熟知している弁護士等の専門家(トランザクションだけではなく、紛争解決の経験のある専門家)に相談するのが望ましい。

契約履行の管理

契約書には、「契約条項の修正は書面に限る」、「契約上の権利の不行使は権利の放棄と解釈されない」というような条項がよく見られるが、長期にわたって契約に従って履行していない事実は黙示の合意である、と解釈されてしまうリスクがないとは言い切れないので、紛争を防ぐため、契約履行の管理が重要である。

また、時間の経過や担当者の変更により、契約条項の趣旨と解釈があいまいになることもよく見られるので、契約締結後に紛争が発生した際の解釈の材料として、締結前の重要な交渉過程も文書として保存する方がよい。

紛争発生時の対応

社内に法務部門、または法務担当者がいない場合でも、内部調査の実施、経営陣への報告、外部弁護士との連絡など多岐にわたる事項を一本化して対応するため、当該紛争事件につき専任の社内担当者を指定する必要がある。また、法務部門と営業部門の意見の相違もよく見られるので、経営陣の信頼を得られ、社内の違う立場を統合できるポジションも必要である。

事実を確認し裁判に使える証拠を収集するため、弁護士等の専門家からの助言に沿って、関係者へのインタビュー実施やフォレンジック調査を合法的かつ効率的に実施することが重要である。

紛争自体への対処の他、風評被害対策やメディア戦略(PR代理店を起用するか)も行い、再発防止策を実施する必要がある。特に、上場企業の場合、公表義務などコンプライアンスの遵守にも注意しなければならない。

紛争相手の事情、立場をよく理解した上で、契約の紛争解決条項に限らず紛争解決に一番有効な方法を検討するのが重要である。

例えば、利害関係より人情味を重視する相手もいれば、譲歩の責任を恐れて和解による解決に消極的な組織もある。弁護士や企業顧問の意見を聞くか、または両企業を当初繋いだ紹介者による調停も考えられる。

結論

時間と労力を費やし、多額の費用をかけて紛争が解決したら、油断して再発防止の検討を怠ってしまうこともよく見られる。それでは高い学費が無駄になる。紛争発生の原因とそこに至った背景を真摯に探り出して、再発防止の具体策を経営陣に提出し、採用される必要がある。

また、コンプライアンス強化と再発防止のため、自社に実際に起こった紛争の経緯と防止策を整理し、関連の業務担当者に対し社内教育を実施することも、再発防止に有効であろう。

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