日本の外国投資の傾向と特徴

By 高畑正子,日本組織内弁護士協会
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国連貿易開発会議(UNCTAD)が作成した最新の「世界投資報告書」(2022年)によると、世界の外国直接投資(FDI)額は2021年以降にパンデミック前の水準へと回復し、異例の低水準にとどまった2020年から64%増となる1兆5800億ドルに達した。

パンデミックは、公衆衛生のみならず世界経済にも突如として多大な影響を及ぼした。ゆるやかながら着実な回復のなか、世界の多くの国が、ロシアとウクライナの紛争によって深刻化した食料危機・エネルギー危機に直面している。政治不安を受けた経済的混乱によって甚大な影響を受けた投資家は、投資戦略と投資先となる国の検討と見直しを迫られている。

他方で、世界に冠たる投資家のひとつである日本の多国籍企業は、今も、パンデミックがもたらした経済危機に喘ぎ、「世界投資報告書」によると、FDI流出額は2019年の2270億ドルから2020年には1160億ドルとほぼ半減し(49%減)、2021年のFDI残高は1兆9800億ドルとなった。

日本へのFDI流入額も、他の大半の先進国と比べ低い水準にとどまっている。同報告書は、日本へのFDI流入額は2020年には30%減の107億ドルとなった一方、2021年には246億5000万ドルに達したと指摘している。日本国内のFDI残高は、2020年は2320億ドル、2021年は2570億ドルと推計された。

責任ある持続可能なビジネス

Masako Takahata, Japan In-house Lawyers Association
高畑正子
理事兼国際委員長
日本組織内弁護士協会(東京)

人権に影響を及ぼすおそれがある国境を越えたビジネスの増大に伴う、世界的なFDIの増加に対応して、国連は2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則:国産連合「保護、尊重および救済」枠組実施のために」を提出した。日本政府は2020年、企業と組織に国際的な人権保護制度の尊重を求める「ビジネスと人権に関する行動計画」を発表した。また政府は2022年、「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン」も発表した。

日本の多国籍企業は、多様な法域で投資に力を入れる一方、企業の投資が人権に及ぼす多大な影響を次第に認識するようになっている。適切な人権デューディリジェンスを確保するために、国際的な法律事務所と協力している企業もある。

加えて、ほとんどの国が、国連持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、明確で効果的な投資方針の実施を義務づけている。日本の企業は、今後10年の投資戦略や新たなビジネスモデルを論じる好機となり得るSDGsに、関心を向けつつある。

エネルギー問題

ウクライナ情勢を受けて日本は、G7加盟国として、対ロシア経済制裁への参加を求められている。制裁の一部は、エネルギー安全保障問題に対処するものである。

ロシアは、世界のエネルギー市場の重要なプレイヤーであり、世界最大の原油生産国にして輸出国のひとつとして、石油・天然ガスから得られる収入に大きく頼っている。ロシア産原油の最大の輸入国は中国だが、ロシアは欧州と日本にも大量の輸出を行っていた。

資源エネルギー庁の最近のデータによると、天然資源に乏しい日本は、最大の一次エネルギー輸入国のひとつとして、原油の99.7%(一次エネルギー供給量の38%に相当)、石炭の99.6%(同25%)、液化天然ガスの97.7%(同24%)を輸入に頼っている。

制裁を実施する義務があることを踏まえると、こうした海外輸入への依存によって、エネルギー供給源を見直し多角化する必要も生じている。現在、原油の90%はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、他の中東諸国から輸入されており、ロシアは4%を占めるにすぎない。

石炭の90%はオーストラリア、インドネシア、ロシアから輸入され、輸入される液化天然ガスの73%は、オーストラリア、マレーシア、カタール、ロシア産となっている。

地政学的に不安定な現在の国際情勢下において、大部分の先進国――特にエネルギー安全保障に懸念を抱える先進国――と同様に、日本はエネルギー戦略と投資先を見直さねばならない。

組織内弁護士の役割

世界の法曹界を探求し、支援し、改革するためには、組織内弁護士が外部弁護士と良好な関係を保つことが欠かせない。SDGsを達成し、人権侵害を防ぎ減らすために、企業弁護士には、単に案件資料を評価するだけでなく、法務と人道の専門家の視点からビジネスの方式に価値を付加する役割も期待される。

SDGsの目標8「みんなの生活を良くする安定した経済成長を進め、誰もが人間らしく生産的な仕事ができる社会を作ろう」に関しても、関連する法規制に関する知識や法曹倫理を、企業戦略の策定に役立てられるだろう。

特に、主任顧問弁護士は、様々な情報・選択肢・助言の提供を通じて、CEOや取締役が正しい投資判断を下せるよう支援できる。

さらに、ビジネス課題や人権問題に国際的に本格的に関与するために、企業は、投資戦略と投資方針を明確かつ効果的に実施する必要がある。

法律・規制・手続き・制度に関する知識と経験に基づく包括的なアプローチの活用は、投資案件のライフサイクルの全段階に影響を及ぼすが、企業が、持続可能なFDIの拡大につながる競争力ある投資を実現するには、組織内弁護士と外部弁護士の十分な連携と協議が不可欠である。

Japan In-house Lawyers Association

Koishikawa Urban 4F 5-3-13 Otsuka

Bunkyo-ku, 1120012 Tokyo

電話: +81 3 5981 6080

www.jila.jp

Japan Outbound Investment Guide

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