タイでビジネスチャンスをつかむ: M&A

    By Warot Wanakankowit, Warot Advisory Services
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    外国投資

    デジタル経済

    国境が再び開かれ、ビジネスが通常の状態に戻るとともに、企業の合併・買収(M&A)に向けての動きが活発化しています。企業は規模の大小を問わず、業績を押し上げ、目標を達成する機会を求めてM&Aに注目しています。これは特に、有機的な成長を通じてそのような目的を達成することが、期待できない場合に当てはまります。

    そのような状況では、M&Aは魅力的な選択肢になり得ます。企業にとっては、適切なターゲットの買収または合併により、シナジー効果、規模と範囲の経済性、市場支配力の増大、コスト削減、顧客基盤の拡大、人材と経営の統合などの恩恵が期待できる可能性があります。世界的なパンデミック以降、中小規模の企業が事業を継続するために、大手企業に身売りする事例が複数見られました。

    パンデミック後のタイの経済状況や、バーツ安に着目した大企業によるタイ企業へのインバウンド投資を中心に、2023年も引き続き、M&A活動が活発化すると予想されます。

    最近の動向

    タイ政府は2018年末に合併に関する規制を発令しました。企業や弁護士、ビジネスコンサルタントは、M&Aを行う際にこれらを考慮する必要があります。2022年、タイではいくつかの案件が合併規制の対象になりました。最近の注目すべき案件に、タイの携帯電話事業者、トゥルー・コーポレーションとトータル・アクセス・コミュニケーションの合併が挙げられます。

    M&Aの手法

    Warot Wanakankowit, Warot Advisory Services
    Warot Wanakankowit
    Warot Advisory Services(バンコク)、創業パートナー
    電話: +66 8 1802 5698
    Eメール: warot@warotadvisoryservices.com

    タイで最も一般的な買収の手法は、対象企業の株式の取得と事業・資産の買収の2つです。株式取得は、企業が対象企業を買収する場合に最も多く用いられる方法です。他の方法に比べて容易ですが、対象企業のリスクを特定するためにデューデリジェンスを実施する必要があります。どのような株式売買契約であっても、免責および保証に関する規定を組み込むべきです。

    なお、タイでは株式譲渡の際、譲渡価額と額面価額のいずれか高い方の0.1%の印紙税が課される点に留意が必要です。

    事業や資産の買収は、買収者がターゲット企業の隠された法的・税務的責任を抱えるリスクを負いたくない場合に行われます。この方法が採用されるのは、法的・税務的責任は通常は対象企業に残り、事業や資産とともに移転されないためです。

    しかし、タイの外国人事業法により、外国企業が事業や資産を直接保有することが制限される場合があります。このような場合、タイで事業や資産を保有するためにタイ法人を設立する必要があります。ただし、次の点に注意が必要です。

    • 他の法的要件も満たさなければなりません。
    • タイでは、資産の譲渡は通常付加価値税の対象となり、一部の取引書類には印紙税の納付が必要で、他の手数料も課されます。

    双方の知識やノウハウが必要とされる可能性のある事業をタイで行うために、企業同士(タイ企業と外国企業、外国企業同士、タイ企業同士)が合弁企業を設立する場合もあります。外国企業がタイで、外国企業向けには規制の対象である事業を行いたいと考える場合に、外国人事業法の要件を満たすために合弁企業を設立するケースもあります。

    関連法規制

    外国企業がタイでM&Aを行う場合に、考慮するべき最も重要な法規制は外国人事業法です。この法律は、外国籍の人や企業が、国内のサービス業の大半を含む一定の事業を行うことを制限または禁止しています。

    同法による規制において、外国人とは、外国人個人、タイ国外で設立された企業、または外国人個人または外国企業が過半数を所有する、タイで設立された企業に該当するものです。そのため、場合によっては、外国企業はタイ企業の株式の過半数を保有することができなくなります。外国人事業法の管轄官庁は、商務省の外国事業局です。

    タイの貿易競争法は2018年に施行されて以降、M&A取引において重要な役割を果たしてきました。同法の要件に合致するM&A取引は、事前承認または事後通知を取得する必要があります。つまり、M&A取引によって独占状態が生じる場合には事前承認が、M&A取引によって市場の競争が低下する場合は事後通知が必要となります。

    取引競争委員会事務局が、外国競争法を管轄する政府機関です。

    株式を買収する取引では、法律上は雇用主に変更はないため、従業員から事前に同意を得る必要はありません。ただし、従業員の移転を伴う事業や資産の買収については、労働者保護法により、従業員のすべての権利、義務、特権を新しい雇用主が承継し、従業員は雇用契約の譲渡に同意しなければならないと規定されています。

    従業員が同意しない、または新しい雇用主のもとで働くことを望まない場合で、従来の雇用主が業務を停止したときは、雇用契約は終了したものとみなされます。この場合、従業員に従来の雇用主から退職金を受け取る権利が与えられます。

    労働保護法を管轄する政府機関は、労働保護福祉省です。

    その他の法令

    M&A取引のいずれかの当事者が公開有限会社や上場会社の場合、公開有限会社法や証券取引法による規制についても考慮することが重要です。

    また、土地を含む資産を持つ企業の買収を計画しているのであれば、外国人事業法と併せて土地法も考慮する必要があります。

    また、各業界で異なる固有の規制がM&A取引に適用される可能性があることにも、留意する必要があります。

    資金調達方法の選択

    企業買収では、買い手は買収資金を借入と資本のどちらで調達するか、あるいは借入と資本の特徴を組み合わせたハイブリッドな手法で調達するかを、決定する必要があります。

    借入を利用する利点は、税法上、利息の損金算入が可能であることと、元本の返済という形で投資収を容易に本国へ送金できることです。一方、配当金の支払いは損金に算入できず、また、資本金の返還は、煩雑で時間のかかる手続きが必要になる可能性があります。

    タイには過小資本税制がありません。この規制は、企業が借入による資金調達や、国際的な債務移転を用いた税務対策を行うことを防ぐことを目的としており、企業が債務の支払利息を損金に算入できる額を決定します。

    また、買い手は、株式を用いて買収資金を調達することもできます。しかし、タイの税法上、配当金を損金に算入することはできず、また、会社が利益を上げない限り配当を実施できないため、株式による資金調達は魅力的ではないかもしれません。また、資本(持分)の返還は、融資の返還よりも難しいでしょう。

    ただし、合弁事業やスタートアップ企業への投資の場合は、借入ではなく株式による資金調達が一般的です。

    譲渡・合併

    タイ国歳入法では、全事業譲渡が認められています。これは、ある企業の事業と負債を株式交換によって別の企業に移転するものです。すべての条件を充足すれば、事業譲渡全体が非課税取引になります。

    タイには、2つの企業が合併して新しい企業を設立する、新設合併という手法もあります。この取引では法人税が課税されることはないはずですが、合併前の企業に税務上の損失があった場合、それは消失します。新設合併の過程で、合併前の企業の双方が消滅します。

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