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外国投資

タイは依然として外国人投資家にとって重要な市場であり続けています。2022年、タイ投資委員会(BOI)は2000件を越えるプロジェクトを承認しました。その総額は195億米ドル相当に上り、多くは外国直接投資(FDI)によるものです。

本稿では、企業内弁護士がタイへの投資形態を検討する際に考慮すべき主要な法律分野を取り上げ、法律問題のいくつかを明らかにします。具体的には、外国投資に関連する法令や規制、採用されることの多い投資構造、利用可能な投資インセンティブ、土地所有権、過小資本税制と所定の負債資本比率、外国為替管理、配当と資金の本国への送金を中心に説明していきます。

適切な構造の選択

Peter Burke, Axis Legal
Peter Burke
Axis Legal(バンコク)、クライアントディレクター
電話: +66 2670 0140 1
Eメール: peter.burke@axis-legal.com

企業内弁護士が最初に検討する必要があるのは、タイにおける事業にどのような法的構造を採用するべきかという点でしょう。この点について考慮されることが多いのは、現地で行う事業活動の性質、税制上の優遇措置、実施に必要な投資の最低限度額、親会社から独立して法的責任を負うことが望ましいかどうか、ビジネスのしやすさなどです。

種々の検討の後、現地法人や非公開有限会社 (private limited company)の設立が選択されることが多いようです。タイの非公開有限会社は、米国の有限責任会社や他の多くの国の非公開会社と非常に類似しており、株主が所有し、経営は取締役が行います。例えば、タイ法人の各株主の責任は、その出資額に限定されます。

非公開有限会社は大半の種類の投資に適した法人形態ですが、生命保険や損害保険、銀行など、特定の種類の事業は、公開有限会社を通じて行う必要があります。しかし、現地駐在員事務所が設立されるケースは、あまり多くありません。現地駐在員事務所は事業所得を計上できず、機能が極めて限定されるため、大半の企業に適していないからです。

外国企業に対する規制

最も適切な投資形態、所有および経営の構造を決定するためには、タイの外国投資関連法規、特に外国人事業法の適用範囲を詳細に理解する必要があります。この法律には、実施可能な活動に対する制限が規定されています。この制限は、外国人として分類される個人または法人が、以下のリストのいずれかに該当する活動を行うことを望む場合に適用されます。

リスト1:特定の理由により外国人が認められない事業として指定されている活動(土地取引、農業、林業、畜産業、漁業、出版、ラジオ放送など)
リスト2:国家安全保障、芸術、文化、地域の慣習、天然資源、環境に関する活動で、内閣の承認を受けた上での、商務省(MOC)の特別な許可を必要とするもの(国内輸送、銃器・火薬類に関する事業、鉱業、タイシルクの生産など)
リスト3:タイ国民が外国人と競争する準備が整っていないと考えられるため、外国人が従事することを禁止されている活動(小売、卸売、リスト1および2に記載されているもの以外のあらゆる種類のサービスの提供、代理店や仲介業者としての活動など)

「外国人」には、外国で設立された法人や外国の国民、タイ国民またはタイ国法人以外の個人または法人が株式の半分以上を所有するタイの事業体が含まれます。同法では、上記の3リストに記載されていない活動に外国人が参加することは制限されていませんが、他の特定の規制によって制限される場合があります。

適用除外

Nalinee Wichittakul, Axis Legal
Nalinee Wichittakul
Axis Legal(バンコク)、シニアアソシエイト
電話: +66 2670 0140 1
Eメール: nalinee.wichittakul@axis-legal.com

ただし、外国人は、外国人事業許可証または外国人事業証明書の取得によりMOCの事業開発局局長から許可を得た後、リスト2および3の活動に従事することができます。
また、外国人は、当該活動において最低資本金規制の適用免除要件を満たしている場合、または当該活動を行うタイ法人が当該活動についてBOIの投資優遇措置を認められている場合、制限された活動に従事することができます。外国人事業許可証は事案ごとに、裁量のみに基づき発行されます。その際MOCが考慮する種々の要因には、その事業がタイにない特殊な技術や専門知識を必要とするか、提案された事業が地元住民と競合するか、提案された事業を許可することでタイが利益を得られるか(国家の発展と雇用・タイへの技術移転の両面から)などが含まれます。許可された場合、許可証の文言は、許可された活動の範囲を反映させて個別に作成されます。

対照的に、投資奨励恩典は、その活動がBOIの推進する特定の業種に該当し、申請者が必要な基準を満たしていれば、BOIから当然のように付与されます。一部のBOIの投資奨励恩典は、地理的な区域や地域に限定されています。

この他にも、タイと他国との間の条約や貿易協定に基づき、投資家の国籍に応じて外国人事業法の適用が除外される場合があります。

不動産の所有

外国人が不動産を取得する権利については、外国人および外資系企業には、一定の条件に従いコンドミニアムを所有すること、および農地以外の土地の借地権を持つことが認められています。一般的に、外国人が自由保有地を所有することは禁止されています。

重要な点として、BOIはMOCとは異なり、外資系企業に対してBOIが奨励する事業のために自由保有地の所有許可を付与できるので、BOIの優遇措置を受けることにより、自由保有地の所有が許可される場合があります。また、外国人は特定の認定工業団地の自由保有地を所有することができます。

過小資本税制

現地法人が出資や融資を通じて柔軟に資金調達できるようにするため、タイの法令では過小資本税制が定められていません。

外国人事業法では、外国人の定義に該当する非公開有限会社の最低登録資本金は、事業が同法で規制される活動を行っていない場合は200万バーツ(5万8000米ドル)以上、上記リスト記載の規制されている活動を行っている場合は300万バーツ以上でなければならないと規定されています。

BOIから投資奨励恩典を受けるプロジェクトには、業種や投資規模によって異なりますが、通常、3:1の負債資本比率(D/Eレシオ)が適用されます。MOCから外国人事業許可証を付与された企業には、D/Eレシオが7:1を超えないことが義務付けられています。適用される限度を超過すると、基本的な優遇措置または許可が取り消される可能性があります。

構造と経営に関する問題

タイの法令では、非公開有限会社の設立に関して比較的制限が少なく、現地のベンチャー企業は株式発行や融資により資金を調達することができます。タイの非公開会社は、議決権や配当の権利が異なるさまざまな種類の株式(普通株式と優先株式)を持つ資本構造をとることが可能です。

このような構造は実際に利用されており、特に現地パートナーとの合弁事業において、同法の目的上、持ち分の半分未満の保有しか認められない外国人投資家の立場を保護するために用いられます。

タイの非公開有限会社の日々の経営は、株主に任命された取締役会によって行われるのが一般的です。定款に別段の定めがない限り、取締役会の意思決定は、通常、多数決で行われます。タイの有限会社の特徴として、取締役は自分の代わりに取締役会に出席する代理人や代替取締役を任命することができない(ただし、株主は代理人を株主総会に出席させることができます)という点が挙げられます。

定款に別段の定めがない限り、株主の意思決定は多数決で行われますが、法令で定められた特定の事項については、出席株主の議決権の4分の3以上の賛成による株主特別決議が必要となります。特別決議を必要とするのは、登録資本金の変更、新株の発行、基本定款または定款の変更、企業の解散、合併の承認に関わる事項です。

為替管理

為替管理については、公認の金融機関を通じてタイに外貨を送金することに実質的な制限はありませんが、送金元の性質や受領者の地位によっては、外貨を一定期間内にタイバーツに交換しなければならない場合があります。一方、タイ国外への送金には規制があります。タイバーツの国外への送金は原則禁止されています。タイ国外への外貨送金(および、タイバーツによる外貨購入)には、投資資金の本国送金と初期投資の送金という目的を示して、タイ商業銀行の承認を得る必要があります。その際、多くの場合、適切な証明書類の提出を求められます。

結論

投資を適切な構造で行うために、タイの法規制に精通した信頼できる現地弁護士を、早い段階で選任することを強くお勧めします。助言を受けることなく締結された数多くのMoU、基本合意書、拘束力のある契約書が想定されたとおりに履行されず、多くの場合、商業的に困難な再交渉が必要になるのを私たちは見てきました。

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M&A

国境が再び開かれ、ビジネスが通常の状態に戻るとともに、企業の合併・買収(M&A)に向けての動きが活発化しています。企業は規模の大小を問わず、業績を押し上げ、目標を達成する機会を求めてM&Aに注目しています。これは特に、有機的な成長を通じてそのような目的を達成することが、期待できない場合に当てはまります。

そのような状況では、M&Aは魅力的な選択肢になり得ます。企業にとっては、適切なターゲットの買収または合併により、シナジー効果、規模と範囲の経済性、市場支配力の増大、コスト削減、顧客基盤の拡大、人材と経営の統合などの恩恵が期待できる可能性があります。世界的なパンデミック以降、中小規模の企業が事業を継続するために、大手企業に身売りする事例が複数見られました。

パンデミック後のタイの経済状況や、バーツ安に着目した大企業によるタイ企業へのインバウンド投資を中心に、2023年も引き続き、M&A活動が活発化すると予想されます。

最近の動向

タイ政府は2018年末に合併に関する規制を発令しました。企業や弁護士、ビジネスコンサルタントは、M&Aを行う際にこれらを考慮する必要があります。2022年、タイではいくつかの案件が合併規制の対象になりました。最近の注目すべき案件に、タイの携帯電話事業者、トゥルー・コーポレーションとトータル・アクセス・コミュニケーションの合併が挙げられます。

M&Aの手法

Warot Wanakankowit, Warot Advisory Services
Warot Wanakankowit
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タイで最も一般的な買収の手法は、対象企業の株式の取得と事業・資産の買収の2つです。株式取得は、企業が対象企業を買収する場合に最も多く用いられる方法です。他の方法に比べて容易ですが、対象企業のリスクを特定するためにデューデリジェンスを実施する必要があります。どのような株式売買契約であっても、免責および保証に関する規定を組み込むべきです。

なお、タイでは株式譲渡の際、譲渡価額と額面価額のいずれか高い方の0.1%の印紙税が課される点に留意が必要です。

事業や資産の買収は、買収者がターゲット企業の隠された法的・税務的責任を抱えるリスクを負いたくない場合に行われます。この方法が採用されるのは、法的・税務的責任は通常は対象企業に残り、事業や資産とともに移転されないためです。

しかし、タイの外国人事業法により、外国企業が事業や資産を直接保有することが制限される場合があります。このような場合、タイで事業や資産を保有するためにタイ法人を設立する必要があります。ただし、次の点に注意が必要です。

  • 他の法的要件も満たさなければなりません。
  • タイでは、資産の譲渡は通常付加価値税の対象となり、一部の取引書類には印紙税の納付が必要で、他の手数料も課されます。

双方の知識やノウハウが必要とされる可能性のある事業をタイで行うために、企業同士(タイ企業と外国企業、外国企業同士、タイ企業同士)が合弁企業を設立する場合もあります。外国企業がタイで、外国企業向けには規制の対象である事業を行いたいと考える場合に、外国人事業法の要件を満たすために合弁企業を設立するケースもあります。

関連法規制

外国企業がタイでM&Aを行う場合に、考慮するべき最も重要な法規制は外国人事業法です。この法律は、外国籍の人や企業が、国内のサービス業の大半を含む一定の事業を行うことを制限または禁止しています。

同法による規制において、外国人とは、外国人個人、タイ国外で設立された企業、または外国人個人または外国企業が過半数を所有する、タイで設立された企業に該当するものです。そのため、場合によっては、外国企業はタイ企業の株式の過半数を保有することができなくなります。外国人事業法の管轄官庁は、商務省の外国事業局です。

タイの貿易競争法は2018年に施行されて以降、M&A取引において重要な役割を果たしてきました。同法の要件に合致するM&A取引は、事前承認または事後通知を取得する必要があります。つまり、M&A取引によって独占状態が生じる場合には事前承認が、M&A取引によって市場の競争が低下する場合は事後通知が必要となります。

取引競争委員会事務局が、外国競争法を管轄する政府機関です。

株式を買収する取引では、法律上は雇用主に変更はないため、従業員から事前に同意を得る必要はありません。ただし、従業員の移転を伴う事業や資産の買収については、労働者保護法により、従業員のすべての権利、義務、特権を新しい雇用主が承継し、従業員は雇用契約の譲渡に同意しなければならないと規定されています。

従業員が同意しない、または新しい雇用主のもとで働くことを望まない場合で、従来の雇用主が業務を停止したときは、雇用契約は終了したものとみなされます。この場合、従業員に従来の雇用主から退職金を受け取る権利が与えられます。

労働保護法を管轄する政府機関は、労働保護福祉省です。

その他の法令

M&A取引のいずれかの当事者が公開有限会社や上場会社の場合、公開有限会社法や証券取引法による規制についても考慮することが重要です。

また、土地を含む資産を持つ企業の買収を計画しているのであれば、外国人事業法と併せて土地法も考慮する必要があります。

また、各業界で異なる固有の規制がM&A取引に適用される可能性があることにも留意する必要があります。

資金調達方法の選択

企業買収では、買い手は買収資金を借入と資本のどちらで調達するか、あるいは借入と資本の特徴を組み合わせたハイブリッドな手法で調達するかを決定する必要があります。

借入を利用する利点は、税法上、利息の損金算入が可能であることと、元本の返済という形で投資収を容易に本国へ送金できることです。一方、配当金の支払いは損金に算入できず、また、資本金の返還は、煩雑で時間のかかる手続きが必要になる可能性があります。

タイには過小資本税制がありません。この規制は、企業が借入による資金調達や、国際的な債務移転を用いた税務対策を行うことを防ぐことを目的としており、企業が債務の支払利息を損金に算入できる額を決定します。

また、買い手は、株式を用いて買収資金を調達することもできます。しかし、タイの税法上、配当金を損金に算入することはできず、また、会社が利益を上げない限り配当を実施できないため、株式による資金調達は魅力的ではないかもしれません。また、資本(持分)の返還は、融資の返還よりも難しいでしょう。

ただし、合弁事業やスタートアップ企業への投資の場合は、借入ではなく株式による資金調達が一般的です。

譲渡・合併

タイ国歳入法では、全事業譲渡が認められています。これは、ある企業の事業と負債を株式交換によって別の企業に移転するものです。すべての条件を充足すれば、事業譲渡全体が非課税取引になります。

タイには、2つの企業が合併して新しい企業を設立する、新設合併という手法もあります。この取引では法人税が課税されることはないはずですが、合併前の企業に税務上の損失があった場合、それは消失します。新設合併の過程で、合併前の企業の双方が消滅します。

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Silom Road Silom, Bangrak
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デジタル経済

タイでは新たな技術革新の導入が進み、スタートアップ企業や投資家にとっての機会が生まれています。それに伴い、タイのデジタル経済は、近年、飛躍的に成長しています。政府は、さまざまな政策やインフラ整備を通じて、デジタル経済の発展を積極的に推進しています。その結果、デジタルビジネスやスタートアップ企業が増加し、オンラインを利用する消費者も拡大しています。

本稿では、フィンテック、モノのインターネット、ブロックチェーン、サイバーセキュリティなど、タイのデジタル経済のエコシステムの最新動向を取り上げます。

フィンテックの動き

フィンテック市場にとって重要な一歩となったのは、タイ中央銀行(BOT)が2022年に発表した、同国の金融状況に関するコンサルテーションペーパー「Repositioning Thailand’s Financial Sector for a Sustainable Digital Economy(持続可能なデジタル経済に向けて、タイの金融セクターの位置付けの見直し)」です。BOTはこのペーパーを通じて、中央銀行が今後進む道を3つの戦略的方向性で示し、テクノロジーとデータの活用、環境と家計の持続可能性、レジリエントな監督アプローチに関する今後の方針を説明しています。

Panupan Udomsuvannakul, Chandler MHM
Panupan Udomsuvannakul
Chandler MHM(バンコク)
パートナー
電話: +66 2009 5152
Eメール: panupan.u@mhm-global.com

BOTは、預金受入機関市場における金融イノベーションと競争の促進を目的として、仮想銀行という新たな形態の商業銀行を許可する予定です。2023年1月、「仮想銀行ライセンス・フレームワーク」がパブリックヒアリングのために公表されました。このフレームワークでは、仮想銀行は従来の商業銀行と同じ範囲のサービスの提供を認められますが、実店舗やオンライン支店を持たずに、デジタルチャネルを通じて事業を運営しなければなりません。

最初の3年〜5年の限定的運用段階では、仮想銀行は中央銀行によって注意深く監視されます。すべての業務を実施できる段階に仮想銀行が進むには、一定の評価基準(たとえば、デジタル化が進んでいない金融環境では、利用可能なアクセスやアウトリーチが限定され、十分なサービスが受けられない消費者や中小企業に、金融サービスを提供できることなど)を充足する必要があります。

このフレームワークは2023年の第2四半期を目途に法制化され、その後、6カ月間の初回の申請期間を経て、最大3件の仮想銀行ライセンスが認められます。2024年第2四半期前後に第1世代の仮想銀行のリストが発表され、2025年第2四半期までに事業を開始する予定です。

また、オープンバンキングについては、BOTはタイ銀行協会および政府系金融機関協会と共同で、2022年1月に「dStatement」プロジェクトを開始し、融資申請のデジタル化のため、商業銀行が取引明細書のデジタルデータを交換できるようにしました。dStatementを利用するオープンバンキングの取り組みは、先駆的なプロジェクトだと言われています。

また、BOTが2023年2月に発表した「Directional Paper on Sustainable Solutions to Thailand’s Structural Debt Overhang Problems(タイの構造的債務超過問題の持続可能な解決に向けての指針)」には、データ活用に関する取り組みの詳細が2023年前半までに公表されると記載されています。データ交換の範囲は、商業銀行以外の金融事業者、公共事業や保険会社などの、他のセクターの事業者にも拡大される予定です。中央銀行は、3年以内に現金使用量の減少率を2倍にし、5年以内に紙の小切手使用量を半減させる計画です。

現金利用の減少が続く過渡期には、現金管理に要するリソースの削減のため、銀行代理店やホワイトラベルのスマートマシン(すべての銀行が発行するカードに対応する各行共通のATM)を通じて、現金を流通させる予定です。

モノのインターネット

Nonthagorn Rojaunwong, Chandler MHM
Nonthagorn Rojaunwong
Chandler MHM(バンコク)
シニアアソシエイト
電話: +66 -2 009 5193
Eメール: nonthagorn.r@mhm-global.com

タイでは、官民両セクターにおいて、モノのインターネット(IoT)に対する受容性が高まっています。2019年初め、国家放送通信委員会はチュラロンコン大学と共同で、より円滑で効率的なIoT体験をもたらす5Gのテストのため、5G人工知能(AI)・IoTイノベーションセンターを設立しました。一方、2019年12月に5G周波数オークションに関する規則が発表され、2020年2月にオークションは順調に終了しました。

2022年10月24日に発表された、第13次国家経済社会開発計画(2023年~2027年)においても、5Gとインターネット全般の利用促進について種々言及されており、国内のインターネットアクセス拡大に向けた次のステップとともに、重要性が強調されています。

民間セクターの2022年のIoT支出額予測では、製造工場の支出額が23億7000万バーツ(6900万米ドル)と最も高く、次いで都市管理システム、輸送・物流、小売、車両、家計管理システム、公衆衛生システム、建設・作業現場、オフィス管理システムとなっています。

ブロックチェーンの活用

オンライン本人確認(eKYC)普及のため、官民両セクターの連携により、国家デジタルID(NDID)システムが開発されました。このデジタル本人確認システムは、BOTの規制サンドボックスにおいて開発されたもので、ブロックチェーン技術を通じて公開鍵インフラストラクチャで情報を暗号化し、分散して保管するという分散型コンセプトにより設計されています。

このシステムは、国際的な基準に沿った電子取引の効率性、透明性、安全性を保証するために、「データのセキュリティとプライバシーを設計に組み込む」という原則のもとに運用されています。NDIDシステムの開発は、デジタル経済の発展に向けたタイ政府の政策に沿ったものです。NDIDプラットフォームは、認証や情報交換を目的とする参加者間の通信の安全性と信頼性の向上を目的とするエコシステムです。このプラットフォームは3つの主要な参加者を結び付けます。

1) 利用企業:ID提供者のeKYCサービスを利用して顧客の本人確認をすることを望む、直接顧客と接するサービス提供者(たとえば、証券会社や保険会社など)
2) IDプロバイダ:NDIDプラットフォームを介した利用企業の要望に応じて、顧客のIDを証明し、顧客に認証コードを発行する(たとえば、銀行など)
3) 公的な情報源:信頼できる情報を提供し、IDプロバイダによる認証が完了した場合にのみ、利用企業への顧客データの公開を許可する(たとえば、公的記録を保持する国家信用報告機関または他の公的登録機関など)

このような仕組みにより、個人情報はNDIDプラットフォーム外の公開鍵インフラストラクチャを通じて二者間に限って移転されるため、プライバシーとセキュリティが強化されます。

デジタル通貨ブリッジ

Prang Prakobvaitayakij, Chandler MHM
Prang Prakobvaitayakij
Chandler MHM(バンコク)、アソシエイト
電話: +66 2009 5119
Eメール: prang.p@mhm-global.com

プロジェクト・インタノンの成功を受けて、BOTを中心とする共同パートナーシップは、次のステップである分散型台帳技術の利用について調査を開始し、プロジェクトの名称は「多国間中央銀行デジタル通貨ブリッジ(プロジェクトmBridge)」に改められました。

プロジェクトmBridgeは、分散型台帳技術とホールセール型中央銀行デジタル通貨(CBDC)を通じて、効率的で低コストの国際貿易取引の促進する国際決済プラットフォームです。中央銀行が中央銀行のために設計したこのプラットフォームでは、モジュール機能、拡張性、コンプライアンスに重点が置かれ、各国・地域に固有の政策や法的要件に対応可能です。6週間の試験期間中、香港、中国本土、UAE、タイの商業銀行20行が、mBridgeプラットフォームで発行されたCBDCを使って、総額2200万米ドルを超える取引を実際に行いました。このパイロット版では、政策、法律、規制に関して検討が必要な事項が明らかにされました。今後、実用最小限のプロダクト、そして最終的にはリリース可能なシステムの完成に向けて開発が続けられます。

このパイロット版では、国際貿易で使用されることが多く、現地通貨でのクロスボーダー決済が可能だと考えられる、以下のような取引類型を対象にしています。

1) 同一国内での中央銀行・商業銀行間のCBDCの発行と償還
2) UAE企業が中国本土の企業にプラットフォーム上の参加商業銀行を通じてデジタル人民元で支払いをするなど、現地CBDCによる商業銀行間のクロスボーダー決済
3) タイの銀行が香港の銀行と、プラットフォーム上でデジタル・タイバーツとデジタル香港ドルを交換するなど、商業銀行間の現地CBDCによる外国為替取引

サイバーセキュリティの監督

現在施行されている「2019年サイバーセキュリティ法」は、サイバーセキュリティ活動の監督と、サイバー脅威と闘うための仕組みの策定を目的としています。最近の動向には、2022年末に国家サイバーセキュリティ委員会が「政策・行動計画(2022年~2027年)」を公表し、サイバーセキュリティ法に基づくサイバーセキュリティの枠組みを定めたことが挙げられます。これを受け、今後、サイバーセキュリティに関する規制や取り組みが増加すると見られます。

フィンテックの普及や事業プロセスのデジタル化が進む中、サイバーセキュリティの規制を主導する当局とともにBOTも、金融市場におけるサイバー脅威に強い関心を寄せています。タイでは近年、オンラインバンク詐欺により深刻な被害が発生しています。これを受けBOTは、金融事業者に対し、従来の厳しいサイバーセキュリティ対策に加え、2023年3月9日に新たな詐欺防止策の実施を義務付けました。

これには、銀行が送信するSMSやメールにリンクを貼ることの禁止や、各銀行に対して詐欺や不正行為についての24時間対応ホットラインの個別設置を義務付けることなどが含まれます。また、立法機関は現在、「サイバー犯罪の防止と抑制に関する緊急政令」の草案を検討しています。この政令により、サイバーセキュリティの脅威に対し、より組織的な対処が可能になると期待されています。

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