加速するタイの自律走行車規制

    By Suriyong Tungsuwa、Bulin Sanooj そして Varutt Kittichungchit、Baker McKenzie
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    速な技術進歩の時代にあって、自律システムの普及がさまざまな領域で進んでいます。タイでは近年、自動運転や自動運転車の利用も顕在化してきました。ADAS(先進運転支援システム)の進化により、「ハンズオフ」車両とも呼ばれるレベル2以上の自律走行車(AV)が国道を走るシーンが増加しています。

    さらに、港湾などの特定の場所での貨物の荷降ろしに、完全自動運転車両が使われる例もあります。

    米国や多くの欧州諸国では、急速に進化する自律走行システムの技術動向に合わせて政策や法整備が進められていますが、それに比べるとタイでは、AVを規制する自国の法的枠組みについては、まだ幼年期の段階にあります。

    Suriyong Tungsuwan
    Suriyong Tungsuwan
    パートナー、産業・製造・運輸業界グループ(自動車)部門ヘッド
    Baker McKenzie
    バンコク
    電話番号: +66 2 666 2824 (ext. 4112)
    Eメール: suriyong.tungsuwan@bakermckenzie.com

    しかし、関連分野の政策立案者が、この分野において定評のある規制コンセプトの採用を、より積極的に検討するようになっているという兆しはあります。

    AVを規制する必要性は、主に安全性と消費者保護にあります。本稿では、ハードウェアとソフトウェアという2つの重要な要素からなる、自律走行を可能にする主な実現手段に関する規制の枠組みの現状について論じます。

    ハードウェアについては、他の車両、道路標識、信号機、障害物などを識別して危険解析を行うために、AVに搭載されるセンサー装置や機器、例えば、無線機器とみなされる光検出と測距を行う「LiDAR」やミリ波レーダーなどは、国家放送通信委員会(NBTC)が発行する関連通達の下で規制されています。

    これらの通達は、無線設備の技術基準や自動車用のレーダーシステム無線設備の使用許可基準などを定めたもので、NBTCが定める無線設備の技術基準を満たすことなどを求めています。すでに自動車に搭載されているものを含み、無線機器を製造または輸入するには、NBTCから、それぞれの目的に応じた個別の免許を取得しなければなりません。NBTCの通達は通常、センサー技術の仕様の急速な進歩に対応するため、随時見直され、更新されます。

    現在、タイの法律ではAV駆動システムに適用される特定の規格はありませんが、2024年初頭、工業製品規格法(1968年)に基づき、AV関連の工業製品規格が発表されました。工業省のこの最新の通達は、都市部や地方での運転をサポートするインテリジェント交通システムやインフラ設備のための、低速自動運転システム(LSADS)サービスの役割と機能モデルに関する基本的な規格を定めています。

    それは、自動運転システムの分類、LSADSサービスのインフラサポート、運用コンセプトなどのトピックを網羅しています。この規格は運転監視、緊急対応、運行管理など、自動運転システムを支援するプラットフォームを含む、LSADS搭載車両を利用したサービスのみを対象としており、車載制御システムは入っていません。

    Bulin Sanooj
    Bulin Sanooj
    パートナー
    Baker McKenzie
    バンコク
    電話番号: +66 2 666 2824 (ext. 4051)
    Eメール: bulin.sanooj@bakermckenzie.com

    これは強制的なものではありませんが、この規格の導入により、タイ法の下におけるAV関連規格の採用に、もう一歩近づいたと見ることができます。また、タイにおけるAVの早期導入が、低速のAVから始まり、モノとヒトの新しい公共交通手段に貢献する可能性もあります。

    ソフトウェアについては、自律走行システムは一般的に特定のタスクの人工知能(Al)システム上で動作し、多数のセンサーからの信号入力を処理して、AVの走行システムを制御します。

    タイにおけるAl制度は初期段階にあり、2022年にいくつかの法案が提出されています。注目すべきは、人工知能システムを使用する事業運営に関する勅令案において、AV向けAlは、所管政府規制当局への事前登録、リスク制御措置およびリスク管理措置の遵守を含む一定の義務が課されると考えられる、高リスク型Alに分類される可能性があることです。

    この勅令案は、欧州委員会が提案したEU Al法のリスクベースアプローチに基づいています。

    しかし、タイにおけるAlの法的枠組みが、AV規制にどの程度影響するかは未知数です。Al法がAVメーカーに直接影響しないとしても、AV用Alのサプライヤーが影響を受ける可能性は高いでしょう。

    この種の規制で一般的になりつつある域外適用性についても、注意深く監視する価値があります。他方、タイにおいてAIイノベーションの促進と支援に関する法案が提出されており、これに関連する通達案が、2023年開催の公聴会に向けて発行されました。しかし、AVに関する具体的な規定はその内容に含まれていません。

    Al規制体制が確立された際には、AVシステムのすべての側面を網羅することはできないとしても、Alに関する重要なルールを分野横断的に確立することになります。

    Varutt Kittichungchit
    Varutt Kittichungchit
    アソシエイト
    Baker McKenzie
    バンコク
    電話番号: +66 2666 2824 (ext. 4127)
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    これらの規則には、データガバナンス、データの共有と取引、リスクの評価と管理、技術的堅牢性、安全性、説明責任などが含まれ、タイにおけるAVの導入に一定の影響を与える可能性があります。

    言うまでもなく、サイバーセキュリティやデータプライバシー関連の規制も重要な関心事です。これらの法律は過去10年間に導入されたもので、法的枠組みをさらに完成させるため、より詳細な規制が策定されつつあります。

    現在のところ、AVに特化した法律がないため、タイにおけるAVとその運用は、交通法、運輸法、自動車法、消費者保護法、製造物責任法、民商法(CCC)に基づく不法行為法、刑法などの一般法に準拠することになります。

    これらの伝統的な法律はAVを考慮していないため、AVの使用から生じる責任を決定する際に、困難が生じる可能性もあります。例えば、CCC第437条の第1項は、「自己の所有または管理下にあるメカニズムによって推進される車両によって引き起こされた傷害については、その傷害が不可抗力または傷害を受けた者の過失によるものであることを証明しない限り、その者は責任を負わなければならない」と規定しています。

    この規定の意図は、負傷者が歩行者などで車両を使用していない場合、立証責任を運転者側に転嫁することで、運転者に厳格な責任を課すことにあります。

    しかし、運転者が常時運転を監視する必要がなく、あるいはAVを全く制御しないため、適切な注意を払ってもこのような傷害を防ぐことができないような高度なAVについては、不可抗力として裁判所が判断できるかどうか疑問が生じます。

    さらに、AVメーカーやAVシステム開発者など、他の当事者にも責任が課せられるかどうかという問題も生じます。自動運転モードのAVと非自律走行車の事故、あるいは両者がAVの事故のシナリオを考えると、過失の立証はより難しい問題となるでしょう。

    他の既存の賠償責任法も、元来こうした課題に対処するために設計されてはいません。したがって、これらのギャップを埋め、AVに関連する責任をより正確に決定し、裁判所に対してより実用的で有益な証拠を提供するために、(1)自動運転システム使用中、常に要求されるべき運転管理記録、または(2)自動運転使用中、人間の介入を必要とする潜在的なリスクをドライバーに知らせる通知または警告、などの要件を備えた、AV固有の規制の枠組みを開発する必要があります。

    Al規制と同様に、AVの法的枠組みは、その利用、革新、さらなる発展を妨げるようであってはなりません。例えば、適用される交通法および自動車関連法を完全に遵守し、リスクを最小限にするための関連基準を満たし、そして自律走行システムの適用要素(すなわちハードウェアおよびソフトウェア)が規制機関に承認されていれば、AVの運用は一般的に認められるべきです。

    タイのAV規制は、自動運転システムが作動できる状況の指定や、自動運転装置とシステムの性能がセキュリティ基準に適合していることの保証などについて、すでに法整備が整っている国の法的枠組みに倣うべきです。

    また、他の国にはない歩行者の行動や車両の種類、特定の交通条件や場所、地域に適用される特別な法律や規制など、タイ特有の課題も考慮する必要があります。さらに、AVが広く普及し、最終的には車両に乗るのは乗客だけになる可能性があるため、交通法の調整も必要になるでしょう。

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