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インドのライフサイエンス関連法には、医薬品、医療機器、バイオテクノロジー、ヘルスケアに関する規定が設けられており、患者や消費者の保護と製品の品質、有効性、安全性の確保が図られています。これらの規制は法的問題の防止と社会的信頼の維持を目的としており、規制の対象には、マーケティングと広告、知的財産権、価格と支払い、臨床試験のコンプライアンスが含まれます。
対象の分野では、医薬品製造施設の建設や購入、健康・美容製品用の特殊原料の輸入、健康食品・サプリメント・栄養補助食品の販売、生体利用・生物学的同等性・栄養補助食品の臨床試験の実施に関して、法律およびビジネスの面で独特な課題があります。
インドのヘルスケアセクターの規模は、2022年には約3700億米ドルでした。コンサルティング会社のNexdigmは、2026年までにヘルスケアセクターの収益は6100億米ドルに達すると予測しています。
保健家族福祉省(MoHFW)は、2023年~24年度連邦予算において、107億6000万米ドルを割り当てられました。政府はまた、医療機関のインフラ強化のため、60億米ドルの融資奨励プログラムを導入しています。
インドはまた、医薬品の価格設定、マーケティング、臨床試験、バイオ後続品の承認、医薬品・原料の輸出入、安全性と有効性、価格について、広範な規制を設けています。これらの規則は世界中の医薬品の経済的な価格での流通とへルスケアの進歩を支え、約14億5000万人のインド国民に貢献しています。
政策と規則
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インドのライフサイエンス業界は、1940年医薬品・化粧品法(D&C)による規制を受けており、輸入・製造・流通・販売される医薬品の品質の保証が図られています。
医薬品の価格設定は、2013年医薬品(価格統制)令〔Drugs (Prices Control) Order〕によって規制されています。また、1954年医薬・呪術的療法(奇異広告)法〔Drugs and Magic Remedies (Objectionable Advertisements) Act〕は治療に関する請求について規定しています。
2002年競争法では、サプライヤー、メーカー、利害関係者の反競争的行為が規制されています。消費者保護法(CPA)は、差別的商慣行の禁止や製造上の欠陥に対する製造物責任について規定しています。また、1970年特許法には常緑化(既存の特許に改良を加えて特許による独占を長引かせること)を禁止する規定が、1999年商標法には商号保護に関する規定が設けられています。
環境関連の法令には、環境影響評価の義務付け、産業の拡大の制限、固形廃棄物や有害廃棄物の管理に関する規制が定められています。
ビジネスチャンス
医療機器、デジタルヘルスケア、医療機関インフラは、ライフサイエンスと密接に関連しています。医療ツーリズム関連の輸入が増加しており、それによってヘルスケア業界には90億米ドル規模の市場が生まれています。政府は最近、投資と国内生産を促進し、このセクターの輸入を最小限に抑制するため、医療機器製造業界に生産連動型インセンティブ制度(PLI)を導入しました。
インドの一次・二次・三次医療は、公的医療機関と民間医療機関が担っています。民間医療機関による医療サービスは、毎年15%のペースで増加すると予想されています。専門家の予測によると、ヘルスケアセクターは2032年までに少なくとも5.75%成長し、その市場規模は1550億米ドルに達する見込みです。
バイオテクノロジーやバイオ医薬品業界が急速に成長する中、外資系企業に複数のビジネスチャンスが訪れています。インドのバイオテクノロジー業界には800社超の企業がひしめいており、その時価総額は世界全体で800億米ドルに上ります。
インドは委託研究、臨床試験、製造の中心地です。医療機器業界では多額の資金が必要であり、ラボ用器具・医療機器の再生品のベンダーには大きなビジネスチャンスがあります。高度医療施設では、これらの機器を補助的に使用しています。しかし、地元の病院や専門性の高くない医療施設では、再生品の方がコストが低いため優れていると考えられています。
2019年消費者保護法(CPA)では製造物責任に関する規定が設けられ、消費者にとって危険な欠陥製品・サービスについて、メーカー、小売業者、サービスプロバイダーが責任を課されることになり、消費者保護が厳格化・強化されました。これは、1872年インド契約法、1945年医薬品・化粧品法、1986年旧消費者保護法などに含まれる製造物責任に関する法規に置き換わるものです。
注目すべき変更点には、電子商取引に関する規定の拡充、虚偽広告に対する罰金の厳格化、著名人による推奨の制限などがあります。医療過誤の申し立てを防ぐためにも、企業はこれらの規定に準拠する必要があります。企業が加入を義務付けられている保険の補償内容の変更が予定されています。
規制を受けない医療機器が流通していることを受け、2018年に施行された医療機器規則(MDR)では一部の医療機器が「医薬品」に分類され、「警告」を発する権限が政府に与えられました。保健家族福祉省(MoHFW)はMDRにセクションIIIAを追加し、すべての医療機器をインド医薬品総局に2021年10月1日までにオンライン登録することを義務付けました。
パンデミック以降、デジタル医療と遠隔医療は急速に発展してきました。最新の医療技術に加え、患者と病院を隔てる障害をスマートに低減する手法が普及しています。学者や関係者の間には、遠隔医療とAIへの期待が広まっています。
MoHFWとインド政府の公共政策シンクタンクであるNITI Aayogは先般、遠隔医療ガイドラインを公表しました。国家医療委員会(旧インド医療審議会)は、資格を持つ医師による遠隔診療に対する規制を統括しています。
最近の法令
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2022年7月、MoHFWは、1940年医薬品・化粧品法に代わるものとして、ソフトウェア、体内埋め込み型機器、器具を含む医療機器管理の監督について規定する新医薬品・医療機器・化粧品法案(New Medication, Medical Devices and Cosmetics Bill)を公表しました。同法案では、これらの機器は「医薬品」に分類されます。その主な目的は、医療機器、医薬品、化粧品の安全性・有効性の向上と国際基準への適合です。
同法案が国会の承認を経た後、それに基づき医薬品、医療器具、化粧品に関する規制が実施されることになります。
2023年5月、インドは国家医療機器政策の実行を開始しました。その目的とは次のようなものです。
- 優れた医療機器への普遍的なアクセスを保証する
- 手の届く価格を実現するため、国内の製造能力を強化する
- 製品の品質と国際競争力を向上させる
- デバイスの活用拡大により、より健康的な生活様式を広める
- セクターのイノベーションを促進する
- 適時の検知と的確な治療により、臨床転帰を向上させる
簡明化された規制によってインフラ、研究開発、イノベーションへの投資が促され、セクターの成長につながると考えられます。
医療機器規則(MDR)は、国内における医療機器の臨床調査、製造、輸入、販売、流通について規定しています。2017年MDRでは、広範な種類の体内埋め込み型機器が規制の対象になっています。2022年1月、政府はすべての医療機器メーカーに対し、ISO13485認証の取得と中央医薬品標準管理機構への正式な製品登録を義務付ける命令を発出しました。
医療機器と体外診断用医薬品の製造と監督には、これらの基準の厳守が求められます。医療機器の登録は、以前は任意制でした。医療機器登録は、クラスAおよびクラスBの機器については2021年10月から、クラスCおよびクラスDの機器については2022年9月から義務付けられています。
2021年6月、インド医療機器産業協会とインド品質評議会は2016年インド医療機器認証制度を拡張し、インド認証プラス(2021年)による手法を追加しました。
この斬新な技術は、医療機器の品質、安全性、利点の検査に用いられ、政府機関による偽造品・偽造証明書の摘発に役立ちます。規則改正により、輸入および製造に関するライセンスの再承認制度は廃止されました。
心臓ステントと膝関節インプラントの価格は、2017年に最大70%制限されました。2020年には、医療、歯科、外科、動物用機器に5%の健康従価税が導入されました。
医薬品局は2022年2月、国内で製造されていない重要な医療技術製品を患者がより広く利用できるようにするため、2017年インド調達令(India’s Procurement Order)を改正しました。
国家医薬品価格局(NPPA)は2021年6月、6つの医療製品の価格に上限を設定しました。これには酸素濃縮器、血糖値モニター、血圧計、パルスオキシメーター、ネブライザー、デジタル体温計が含まれます。NPPAは価格制限を正当化するため、生産者のコストと患者への販売価格の差に着目した販売利益の合理化(trade margin rationalisation:TMR)というアプローチを取っています。
医療サービスの価格を引き下げ、患者が利用しやすくするため、NPPAは2018年に医療機器と医薬品に対してTMR政策を実施しました。
政府は、コスト削減と患者の利用可能性向上のため、特許製品を含む重要な医薬品の販売利益の削減に動いています。このTMRに基づく措置は、抗生物質、がん治療薬、慢性腎臓病治療薬を含む139品目を対象に開始されました。
2020年6月、産業・国内取引振興局は2017年公共調達令を改正し、現地調達率50%を達成しているインド企業の優遇を決定しました。政府の入札では、現地調達率が20%未満の「非現地サプライヤー」は除外されます。
2023年~24年度連邦予算では、知的財産権に15%の追加予算が割り当てられ、予算額は3840万米ドルから4010万米ドルに引き上げられました。
要点
規制政策や法令は、インドのライフサイエンスセクターに深く、複雑な影響を及ぼしています。
柔軟な規制や企業に有利な事業環境を作る戦略の実施は、イノベーションの促進や外国投資の誘致には有益であるものの、医薬品の入手しやすさ・購入しやすさという点では障壁になり得ます。
技術革新の促進、重要な医薬品の供給確保、国際貿易上の公約の遵守のバランスを取るよう常に努めることは、政策立案者にとって、挑み続けなければならない永遠の課題です。
インドが医薬品、バイオ後続品、バイオ医薬品の世界市場で競争力を維持するには、絶えず変化するライフサイエンスをめぐる状況やイノベーションに対応できるように、政策を修正していかなければなりません。
国民が必要とするものが進化し続ける中、これは特に重要になります。インドのライフサイエンス産業が進むべき道を決定するには、公衆衛生政策、イノベーション規制、知的財産権を通じた監視と保護、政府と産業界の協力の適切なバランスをとる必要があります。
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