再生可能エネルギー関連法の比較: フィリピン

    By Patricia A O Bunye, Rafael Raymundo A Evangelista, そして Leigh O Nufuar, Cruz Marcelo & Tenefrancia
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    司法省は先般、太陽光、風力、水力、海洋・潮流エネルギーの探査、開発、利用は、国内の天然資源開発に適用される、外国資本を40%以内に制限するというフィリピン憲法に基づく規制の対象ではないことを明確にしました。これは、エネルギー省の要請を受け司法省が2022年9月29日に公表した司法省意見書第21号によるものです。

    ご参考までに記載すると、憲法第12条第2項では次のように規定されています。「公有地、水域、鉱物、石炭、石油その他の鉱物油、エネルギーになる可能性のあるすべての力、漁業、森林または木材、野生生物、動植物、その他の天然資源はすべて国の所有物である。

    Patricia A O Bunye
    Patricia A O Bunye
    シニアパートナー
    Cruz Marcelo & Tenefrancia(マニラ)
    電話番号: +632 8810 5858
    Eメール: po.bunye@cruzmarcelo.com

    農地を除き、その他のすべての天然資源は、譲渡されてはならない。天然資源の探査、開発、利用は、国の全面的な統制と監督の下におかれる。

    国は、このような活動を直接実施すること、または、フィリピン国民、またはフィリピン国民が資本の60%以上を所有する企業または団体と共同生産、合弁事業または生産共有の契約を締結することができる。このような契約については25年を超えない契約期間を定めることができ、25年を超えない期間にわたり更新することができる。また、…水力発電の開発以外の灌漑、給水、漁業、産業利用のための水利権の場合、利用の有益性を許可の基準および制限とすることができる。」

    直近の意見書では、太陽光、風力、水力、海洋・潮流エネルギーは、憲法の規定で想定されている「天然資源」や「エネルギーになる可能性のあるすべての力」の範疇に収まらないため、憲法に基づく外国資本の40%規制の対象にはならないとしています。

    背景

    2008年、バイオマス、太陽光、風力、水力、地熱、海洋エネルギーなどの再生可能エネルギーの開発、利用、商業化の促進を図る「再生可能エネルギー法」が制定されました。2009年には、エネルギー省が再生可能エネルギー法の施行規則を公表しました。その際、エネルギーになる可能性のあるすべての力を国の所有とする憲法の規定が、水、海洋、海流、風力による運動エネルギー、および、太陽、海洋、地熱、バイオマスによる熱エネルギーも含むと解釈されました。

    水資源法(Water Code)は、フィリピンにおける水資源の収用と管理に関する具体的な枠組みを規定しています。水資源法では、水力および海洋・潮流エネルギー源から直接エネルギーを取得する場合、それらのエネルギー源のフィリピン国民による私有を制限しています。

    直近の状況

    Rafael Raymundo A Evangelista
    Rafael Raymundo A Evangelista
    シニアアソシエイト
    Cruz Marcelo & Tenefrancia(マニラ)
    電話番号: +632 8810 5858
    Eメール: ra.evangelista@cruzmarcelo.com

    司法省意見書第21号によると、憲法で言及されている「天然資源」は、領有権に基づき国が所有し取得できる資産と、原則としてすべてての土地を国が所有するという国有制度(Regalian Doctrine)に基づいて国家に帰属する、土地、漁場、森林・原野などの公有地のすべてに関連します。しかし、これには太陽や風や海洋は含まれず、収用の対象にはなりません。

    司法省は、司法省意見書第21号は、以下を踏まえて理解しなければならないことを明確にしました。

    • 憲法第12条第2項に記載されている「無尽蔵の天然資源」を対象に含む再生可能エネルギー法の施行規則。施行規則は、水、海流、風による運動エネルギー、および太陽光、海洋、地熱、バイオマスによる熱エネルギーを、「エネルギーになる可能性のあるすべての力」という観点から対象に含めています。
    • 水力および海洋・潮流エネルギー源から直接エネルギーを取得する場合、それらのエネルギー源のフィリピン国民による私有を制限する水資源法および適用される法令。

    意見書21号では、再生可能エネルギー法の施行規則が改正されない限り、および、水資源法および適用される法令が廃止または撤回されない限り、現行の外国資本規制は有効であるとされています。

    10月24日、司法省はこの点に関してさらに2通の意見書を公表しました。

    • 司法省意見書第23号。これは、再生可能かつ無尽蔵の資源による発電への外国資本の100%出資を支持する貿易産業省からの、経済開発センターの2022年決議第01シリーズの修正を求める提案に対応したものです。
    • 司法省意見書第24号。これは、財務省の要請により公表されたもので、太陽、風力、潮力のエネルギーは憲法による禁止の対象ではないため、規制を完全に緩和できることを確認した提言に関連するものです。

    両意見書において、司法省は、太陽光、風力、水力、海洋・潮流というエネルギー源は、憲法の「天然資源」という用語の範疇に含まれず、「エネルギーになる可能性のあるすべての力」という用語は技術的な意味で理解されるべきであり、必然的に運動エネルギーは除外されるという見解を再度明確にしました。したがって、太陽光、風力、水力、海洋・潮流エネルギーの探査、開発、利用は、外国資本の40%規制の対象にはならないはずです。

    ただし、司法省は、水力エネルギーや水力発電エネルギーに関しては、水資源法および適用される法令が廃止または撤回されない限り、これらが引き続き優先されることを明確にしています。これに関し、司法省は、水力発電エネルギーの生成では、ダムや用水路を利用して河川や内陸の水流の経路を変更し、ダムを通って下流に流れる水の勢いにより運動エネルギーが取得されることを理由に挙げています。

    Leigh O Nufuar
    Leigh O Nufuar
    アソシエイト
    Cruz Marcelo & Tenefrancia(マニラ)
    電話番号: +632 8810 5858
    Eメール: lo.nufuar@cruzmarcelo.com

    水資源法では、フィリピンの国民や団体のみが、発電目的のダムの使用などを通じて、水資源を直接利用することができると規定されています。さらに司法省は、河川や湖、小川などの内陸の水域は、異常気象や気候変動のために枯渇すでる可能性があり、(海や海洋とは異なり)無尽蔵ではない資源であると考えられるため、この国籍要件は妥当であるという見解を表明しています。

    しかし、一旦水がダムを通過して下流に流れ出ると、それによって生じるエネルギーは運動エネルギーであると考えられるので、憲法で用いらている「天然資源」の範疇には含まれないことになります。したがって、発電を目的とするこのような運動エネルギーの探査、開発、利用は、外国資本の出資に関する憲法上の制限の対象になりません。これらの司法省の発表を受けて、エネルギー省は2022年11月15日、再生可能エネルギー法の施行規則第19条の改正についての通知を発行し、改正は2022年12月8日に発効しました。

    第19条(b)では、以下のように明記されています。「国は、再生可能エネルギー資源の探査・開発・生産・利用を直接行うことができる。または、国は、フィリピン国民および/または外国人、またはフィリピン人および/または外国人が所有する企業もしくは団体と再生可能エネルギーサービスまたは運営契約を締結することができる。」

    制限事項

    再生可能エネルギー源の規制緩和は一歩前進しましたが、再生可能エネルギーに関連する以下の行為は、引き続き、フィリピン国民、またはフィリピン国民が資本の60%以上を所有する企業または団体のみが行うことができます。

    自然水源から直接水を取得すること。

    地熱資源の探査、開発、利用。ただし、大規模な地熱資源の探査、開発、利用を対象とする資金援助または技術援助に関する合意は除かれます。

    材木・木材の収集、伐採、加工が許可されている公有地および私有地に由来する材木および材木以外の林産物の利用、または公有地で自然に発生している植物の利用。

    今後明確化が進む可能性のある領域

    フィリピンの再生可能エネルギー源の外国人投資家への100%開放に向けて、司法省の最近の取り組みが進展しているにもかかわらず、エネルギーに関して行政府の他の部局が明確化を望んでいる領域が依然として残っています。その一例が、地熱エネルギーです。再生可能エネルギー法とそれに付随する規則や規制、ガイドラインの制定以降、さまざまな地域で開発事業者に多数の地熱再生可能エネルギーサービス契約が発注されています。

    しかし、フィリピンにおける地熱エネルギーの開発には、まだ種々の障害が残っています。たとえば、1992年国家統合保護地域制度法や1997年先住民族権利法の規定を、より包括的に環境と社会文化的な懸念に対応するための関連エネルギー政策やプログラムと調整しなければなりません。エネルギー省が認めているように、調整は地熱資源の探査と開発、特に保護地域内での開発の重要な要素です。

    今後の動向

    2022年10月上旬、エネルギー省長官は、一部の水力発電所が電力を供給できない見込みであることを踏まえると、2023年の電力供給が難しい状況に陥る可能性が高いと警告しました。

    フィリピンは依然として電力供給を化石燃料に頼っているため、司法省の意見書第21号が契機となり、再生可能エネルギープロジェクト、特に海外投資によるプロジェクトが増加することが期待されています。これは、エネルギー省の2023年~2040年の行動計画にも沿っており、発電形態の柔軟性を高めるものです。

    その意味では、再生可能エネルギー法施行規則の改正は、再生可能エネルギー発電プロジェクトへの海外投資の拡大に向けての一歩前進だといえるでしょう。もっとも、あくまでも第一歩に過ぎません。

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