BVIにおけるデジタル資産ビジネス – 実務上の留意点

英領バージン諸島（BVI）は、デジタル資産分野の活動が活発な法域であり、暗号通貨投資ビークル、トークン発行者、仮想資産サービス・プロバイダー、その他のブロックチェーン企業に、費用対効果の高いソリューションを提供しています。信頼性の高い法制度、税務上の中立性、そして守秘義務のレベルの高さも、付加価値となっています。

ストラクチャリング、事業上の課題

ブロックチェーン企業が最初に検討すべきポイントの一つは、想定される法的構造です。通常、国内の税制や規制の問題分析が中心に進められますが、その他の要因も考慮に値します。本稿では、その一部を検討します。

バンキング・ソリューション BVI法人はBVI内に銀行口座を持つ必要はありませんが、開設する方がよい場合もあります。この状況においては、ストラクチャリングが重要になります。なぜなら、金融機関の多くは、特定の法域内に設立された法人に所属する、またはその法域内に居住する、あるいはその国籍を持つ株主や取締役を敬遠するためです。この場合、名義株主や名義取締役の任命が適切な手段となる可能性があり、それはさらなる機密保護対策としても有効です。

株主との関係 株主と、該当する会社との間で契約を締結することの利点は、両当事者間の関係が、両者で合意された事項によって規制されるということです。株主間契約の条項は、最終的には当事者にとっての事業上の問題ですが、典型的な条項としては、ドラッグ・アロング権とタグ・アロング権、先買権および先取特権、株式譲渡の制限、取締役会や株主の留保事項、競業避止条項などがあります。

市場慣行としては、条項間の抵触を回避し、当事者利益を保護するために、BVI法人の覚書や定款を修正して、株主間契約にある関連条項の組み入れが行われています。

インセンティブ ブロックチェーン企業は、主な利害関係者にインセンティブを与えて運用パフォーマンスを最適化する方法の検討が必要でしょう。例えば、ボーナス支給、持株奨励および／または個別インセンティブなどでしょうか？ 関連する事業上・税務上の考慮事項に従い、複数の株式クラスの創設、および／または受託者もしくは名義人の任命は、これらのインセンティブを容易に実施するために必要な場合があり、検討対象とするべきです。

利益の保護 複数の利害関係者が、ブロックチェーン企業へ助言する、および／または成長推進に関与する場合、重要な事業上の利益（知的財産を含む）を保護し、競業避止および勧誘禁止条項を含む制約の終了後も、当該利害関係者を拘束することが重要です。この種の規定は通常、利害関係者と企業との間の１件または複数の契約に含まれており、一つで万能というアプローチはありません。

BVIにおける知的財産の保護は、英国の法律に基づいています。BVIはパリ条約の締約国ではありませんが、知的財産権の保護が充実しています。

VASP法

最も重要な検討事項の一つは、会社をBVI金融サービス委員会に登録する必要性の有無です。これは主として、想定している活動が「2022年仮想資産サービス・プロバイダー法」（VASP法）、またはその他のBVI金融サービス法の範囲内であるかどうかによって決まります。

無許可で規制対象事業を行った場合の罰則の厳しさについては、注目すべきです。コンプライアンス違反から生じる可能性のある評判やその他の結果について懸念があることから、現在多くの金融機関が、未規制のブロックチェーン企業の合法性に関する法的見解を、新規参入の要件の一部として要求しています。

VASP法に基づいて、事業として「仮想資産サービス」を提供し、他者のため、または他者の代理として、以下の活動もしくは業務のうち一種以上を行う仮想資産サービス・プロバイダー（VASP）は、BVI金融サービス委員会にVASPとして登録する必要があります。

• 仮想資産と法定通貨の交換
• 一種または複数の形態の仮想資産間の交換
• 仮想資産を、そのアドレスまたはアカウントから別の仮想資産のアドレスまたはアカウントに移動させる取引を、当事者に代わって代行する
• 仮想資産またはその管理を可能にする手段の、保管もしくは管理
• ある発行者による仮想資産の提供や販売に関する金融サービスへの参入、もしくはそのサービスの提供

VASP法は、ある特定のサービスがこの法律の範囲に含まれるか除外となるかを明示している、有益な法律です。例えば、ウォレットのホスティングや、他者の仮想資産、ウォレット、あるいはプライベートキーなどの保管や管理はVASP法の範囲に含まれますが、商品やサービスの対価として仮想資産を受け入れることは範囲外となります。

本稿では、BVIに所在する、あるいは仮想資産分野でBVI法人を運営しようとしているブロックチェーン事業者の皆様に対し、法的助言を求めることで、想定する活動がどのような規制の対象となるかを明確にし、事業を適切に構造化し、事業上のリスクが及ばないようにすることを推奨・奨励します。