Spotify事件に注目する

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Manoj K SinghとSamridh Ahujaが、インドの著作権体制における強制ライセンシングを調査します

インドで2019年2月28日に開始した待望の音楽ストリーミングアプリ、Spotifyは、音楽レーベルのワーナー・ミュージック・グループとSaregama Indiaが差止命令を申し立てたために、複数の紛争に陥っています。Saregamaは、申立てを認められました。

Manoj-K-Singh---Founding-Partner
Manoj K Singh

Spotifyは、インドにおけるサービスからSaregamaの全カタログを削除することに同意しました。この問題がどのように展開するかによって、放送事業者、レーベル、アーティスト、消費者を含む多数の利害関係者が影響を受けることになります。

Spotifyとワーナーは以前、ライセンシング契約の条件に関して長引く交渉を行いましたが、同意に達することができませんでした。自発的ライセンシングの手段をとる代わりに、Spotifyは、1957年著作権法の第31D条による法定ライセンスを取得することに決めました。

第31D条は、著作権法の2012年改正により導入されました。これは、放送事業者が、知的財産審判委員会 (IPAB) によって設定された使用料を支払った後に、すでに公表されている著作物を公衆に伝達することを可能にしました。インドの特許法と異なり、ライセンシーの側に、最初に著作権所有者から主題に関する自発的ライセンスを取得する必要はないことに注意しなければなりません。

Samridh-Ahuja---Associate
Samridh Ahuja

インターネットストリーミング

この改正が最初に導入されたとき、ラジオ放送事業者の利益は、第31D条を導入して考慮されましたが、2016年の産業促進国内貿易局 (旧産業政策促進局、DIPP) による内部メモでは、第31D条の範囲が、インターネット放送事業者を含めるように拡大されました。

インターネット放送事業者を放送事業者の範囲に含めることは、それ自体明らかに、当時のDIPPによる創作的な法解釈行為または準立法行為であったために、このメモの有効性は、繰り返し問題にされてきました。「放送」という語は第2条(ff)で定義されており、そこでは、これは「公衆への伝達」を指します。 一方、SpotifyやYouTubeのようなインターネットストリーミングサービスは、公衆が利用できるようにすることおよびダウンロードすること(複製)も行うことから、公衆への伝達の範囲を超えます。そのようなサービスはまた、著作権で保護された著作物をダウンロードおよび共有の形態で複製するという選択肢も得ています。

第31D条をそのまま読めば、これが、ラジオ放送事業者のみを念頭に置いて起草されたことは明らかです。例えば、同条は、「放送の期間および対象地域」について出版社に事前に通知することを必要としています。これを考えると、Spotifyのようなオンライン音楽ストリーミングアプリに関しては、最終消費者が音楽のアウトプットをコントロールすることから、第31D条を適用することができません。

2013年の音楽出版業界の収入(単位:百万米ドル)

現在まで、強制ライセンスの付与について双方向(Spotify)と非双方向(テレビやラジオのような従来の放送事業者)のメディアを区別する、立法機関による試みは行われていません。第31D条が、公衆への伝達の権利のみが法定ライセンスに含まれると規定していることから、今回Spotifyが勝訴すれば、Spotifyは、公衆が利用できるようにする権利に加え、複製権も受けることになります。2012年の立法の趣旨は、決してこのようなものではありませんでした。

市場力学の変化

2012年に改正が導入された際、インドのFMラジオ部門はまだ新しく、 音楽レーベルおよび出版社は、楽曲のライセンシングに法外な料金を課すことにより、支配的な役割を享受していました。その結果、立法機関は、著作権所有者の利益と消費者および放送事業者とのバランスをとるために、非自発的または強制的なライセンス制度を導入する必要性を感じました。

しかし、FM放送事業者を救済しようとして、立法機関は、ライセンスを求めて最初に著作権所有者にアプローチするというライセンシーの基本的な要件をおそらく見落としました。ライセンシーは、所有者による不合理な要求または拒絶の場合にのみ、強制ライセンスを認められます。例えば、米国では、最近施行された音楽近代化法 (MMA) も強制ライセンスを規定しています。しかし、第31D条と異なり、これは、権利として付与されるのではなく、申請者は、権利保有者が不合理に行為したこと、および相互の利益となる条件に関して交渉する明確な試みがあったことを証明する必要があります。

音楽部門は2012年から、とりわけ、コマーシャルおよびさまざまな収入源からの利益分配に関して、著しく変化を遂げています。添付のデロイトによる円グラフは、2013年と2017年のインドの音楽業界に関するものであり、音楽のデジタル消費への明確な移行を示しています。

オンライン音楽アプリ/プラットフォームは、現在、音楽業界の総収入の約78%に貢献しています。そのため、Spotifyは、この法定ライセンシング規定を発動することによって、音楽出版社が自らの主要な収入源のために料金を交渉することを阻止しました。音楽消費者を助けようとして、上記規定は、著作権法の大前提である音楽出版社、コンテンツ制作者、作曲家およびアーティスト―すなわち著作権所有者 ― の権利に、足かせをはめるように思われます。さらに、強制ライセンシング規定は、契約の相手方を選ぶ所有者の権利を制限します。

このような状況において、第31D条は、創作物をライセンスするための使用料またはコマーシャルについて交渉する著作権所有者の正当な権利を奪うツールとして、Spotifyのようなサービスプロバイダーによって誤使用される可能性が高くなります。

そのような排他的な規定は、注意深く検討される必要があります。なぜならそれらは、信じられないほど強力であり、著作権所有者の固有の権利に対する法の濫用につながる可能性があるからです。そのような場合には、立法機関は、著作権所有者の権利と公衆の全体としての利益とをうまく両立させるために、さらなる規定を制定するか、法定/強制ライセンシングの許可の条件を定めるために介入する必要があるかもしれません。

Manoj K SinghはSingh & Associatesのファウンディングパートナーであり、Samridh Ahuja はアソシエートです。

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