経済改革がインドの知的財産環境を変革

    By Safir Anand、Anand and Anand
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    一国の経済改革は、ブランド創造、協業、技術移転、M&Aなどの分野において、必ず知的財産(IP)の変革を呼び寄せます。このような経済改革は、多くの場合、資本調達の引き金となるイノベーション主導の成長の結果であり、それによって経済全体のブランド指数が強化されます。

    一方では偽造者や違反者の存在があり得ますが、もう一方では、正しい方法でブランドを創造することを目指し、イノベーション主導の成長を求め、そこから生まれる信用や評判を活用することを選ぶというのも、社会の一面です。

    イノベーションと創造性を促進するためには、知的財産法の厳格な実施と施行も不可欠です。それは、侵害、詐称通用、海賊行為、偽造を減少させ、海外ブランドが自信を高め、不正流用を恐れることなく、保護された新しい技術に投資できるようにして、ビジネスをより円滑に、効果的に機能させることにつながります。

    Safir Anand, Anand and Anand
    Safir Anand
    シニアパートナー
    Anand and Anand
    ニューデリー
    電話番号: + 91 12 0 405 9300 Eメール: safir@anandandanand.com

    過去10年間に、インドではIPを包含する環境に向けて、多くの重要な進展がありました。以下にその一部を説明します。

    • 高額紙幣廃止は、デジタル取引の促進につながりました。2016年、インド決済公社は、特許で保護された即時決済システムである統合決済インターフェース(UPI)を立ち上げ、それが金融包摂を強化し、国全体のデジタル化に大きく貢献しました。UPI決済は、スリランカ、モーリシャス、フランス、アラブ首長国連邦、シンガポール、ブータン、ネパールでも利用可能です。UPIの導入により、PAYTMのようなブランドが急速に台頭し、かつてない成長を遂げました。
    • 政府は、より多くの外資を誘致し、最新技術を活用して経済を発展させるため、防衛、保険、小売、電子商取引、そして最近では宇宙など、さまざまなセクターでFDI政策の自由化を定期的に進めてきました。以前は外国企業との協業が盛んでしたが、この分野が国内企業に開放されたことにより、Hindustan Aeronauticsのような生え抜きのインド・ブランドや、その分野のスタートアップ・ブランドがスーパー・ブランドになる可能性が出てきました。その一例は、Central Railway社のVande Bharat列車で、2019年に運行を開始して以来、旅行者に好まれる選択肢として浮上してきました。
    • インド・インターネット・モバイル協会の2023年版レポートによると、インドの農村部では都市部よりもインターネット利用者が多いとされています。技術移転は、依然としてこの産業の主要な部分となっています。インドのインターネット利用が拡大するにつれ、サービス・プロバイダーや仲介業者の責任に関する法的問題が顕在化してきました。また、ディープフェイクやネット上での大規模な偽造、虚偽表示など、新時代のIP関連の問題も発生しています。しかし、技術が成熟するにつれ、進化する技術を規制するための法改正も見られています。
    • 農家向けのアグリテック・ソリューションは、クラウド・コンピューティング、特殊センサー、ドローン、インテリジェント予測、その他に用いる予測AIなどを駆使するもので、これらの迅速な開発も、重点分野の一つです。多くの場合、これらの技術はIPで保護されており、最適な活用のために収益化が必要とされています。
    • 「REN21自然エネルギー世界白書 2023」によると、インドは再生可能エネルギーの設置容量で世界第4位、風力発電容量で第4位、太陽光発電容量で第5位です。この業界におけるIPの収益化は、技術の進歩と公共の利益のために不可欠です。
    • インフラストラクチャー開発:高速道路、空港、都市開発など、いくつかのプロジェクトが開始されました。インフラストラクチャー企業は、次なる成長に向けてIPポートフォリオの構築と強化に取り組んでいることが多いです。
    • スタートアップ・エコシステム:インドのスタートアップ・エコシステムは、政府がStartup IndiaやMake in Indiaのような取り組みを支援していることにより、大きく成長してきました。スタートアップ企業にとってIPは競争力の高いツールであり続けており、IPを保護することは競争力維持のために極めて重要です。一例として、AIスタートアップのKrutrimは、資金調達ラウンドで5000万米ドル(41億7000万インドルピー)を調達し、2024年においてインド初のユニコーン企業となりました。
    • 半導体業界へのフォーカス:インド政府は、同国をチップ製造の世界的な拠点とするため、インドに半導体製造施設を設立することを承認しました。これにより、技術移転、イノベーション、協業、研究開発、そしてもちろん新しいIPの創造にも弾みがつきました。
    • 手工芸主導の輸出へのフォーカス:インドの手工芸セクター、特にカーペット部門は驚異的な成長を遂げています。このことは、同セクターが経済的に存続可能であり、インドの世界貿易に大きく貢献していることを裏付けています。導入された主な制度の一つは、「一地区一製品」(ODOP)の取り組みで、これはさまざまな手工芸品、衣料品、皮革製品、その他の国内生産を奨励し、地区単位で独自のIPを活用し、収益化するものです。

    インドのIP環境では、知的財産権と執行メカニズムを強化し、国際基準に合致させ、経済成長をより効果的に後押しすることを目的とした、さまざまな法律や規制の変更も行われています。法律・規制改革のうち顕著なものは、以下のとおりです。

    • 2015年商事裁判所法(2018年改正):IP紛争を審理する独立した商事法廷による裁定を通じて、IP関連の司法手続きを迅速化するために導入
    • 2018年知的財産権(輸入品)施行規則の改正:商標、意匠、著作権の模倣品対策を強化
    • 2023年シネマトグラフ(改正)法:罰則を強化し、映画海賊版の抑制を目指す
    • 2023年生物多様性(改正)法:インド以外の事業体や生物資源の法律上の取り扱いを変更し、生物資源に関する知的財産権出願に影響を与えるもの
    • 2023年Jan Vishwas法(条項改正):知的財産法のもとでの特定の犯罪の非犯罪化を提案し、罰則の軽減と禁固刑規定の撤廃に重点を置いたもの
    • 23年前の「2000年情報技術法(IT Act)」を置き換えることを目的とした「2023年デジタル個人情報保護法」および「デジタル・インディア法(Digital India Act)草案」
    • 2021年に知的財産審判部(IPAB)が廃止され、IPの審判が高等法院に移管された。これは裁定の合理化を目的としているが、IP事件の処理に不確実性が生じている
    • 消費者庁とインド広告基準審議会は、不正行為を抑制し、オンライン市場の透明性を促進することを主な目的として、「ダークパターンの防止と規制のためのガイドライン」を導入
    • インド食品安全基準局(FSSAI)は、進化する食品環境を注視しており、栄養補助食品や加工食品に関するガイドラインを導入し、航空会社や未組織セクターの食品・飲料にまで視野を広げて、企業に責任を負わせ、消費者の健康を保護
    • 持続可能性に対する消費者の関心が高まる中、インド広告基準審議会は、広告における虚偽の環境関連主張を取り締まるガイドラインを発表

    IPライセンシングとIP評価も、ブランド・エクイティ(ブランドの評判の価値)に影響 IPバリュエーションは、IPの価値を正確に評価し、ライセンシング、売却、分離独立、さらには安全な資金調達に向けた知識ある行動を導く手段として、認識度が高まっています。IP債券は、企業がIPを担保に資本を調達するもう一つの方法です。国家知的財産権政策とインド証券取引委員会の規制措置により、その環境はさらに強化されています。

    経済改革とIPの直接的関係 上述のような全般および産業別の経済改革は、国内におけるIP主導によるイノベーションや創造性、成長の進展と、直接的に関連しています。この傾向を裏付けるように、最近発表された2022-23年の特許意匠商標総局(CGPDTM)の年次報告書によると、各種知的財産権全体の出願・処理件数は前年を上回りました。

    この報告書の驚くべきデータの一つは、2022~23年の特許出願の52%、商標出願の97%がインドの出願人によるものであったということです。これは政府のさまざまな取り組みを通じてIPを重視する文化や考え方が促進され、一般市民にも浸透していることを明確に示しています。

    とはいえ、インド商標庁(TMO)は第1段階の異議申立よりも、受理件数を多くすることのほうに適応すべきです。いずれにせよ、受理された出願は第三者による異議申立を募る形で公表されるため、公衆に対して異議/反対を申し立てる公正な機会を提供することができるからです。

    また、異議申立があった場合、TMOは1年以内に結論を出すことを目指すべきであり、それによって、企業は保留状態で待つばかりではなく、ブランドを築き、保護を拡大することに動き出せるようになります。訴訟を起こさないブランドに対する報奨制度も、その優れたブランド選択とデューデリジェンスの一環として考慮されるべきです。

    当事者らが友好的な解決を選んだ場合に、それを肯定的に評価することも、迅速な紛争解決に資する可能性があります。このようなアプローチは、より多くの人々がIPの価値を尊重し、保護を求める方向に前進することに役立つでしょう。

    ANAND AND ANAND

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