アジアの商標法の比較:インド

    By サフィール・アナンドとトゥインキー・ランパル,Anand and Anand(ノイダ)
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    インドでは、外国直接投資の誘致、富の形成における無形資産の評価の推進、中小企業の成長にもつながるデジタル経済の促進への取り組みを進めるなか、知的財産の管理、運用、理解に大きな変化が起きている。

    疑いなくインドは、知的財産制度の強化に向けて大きく前進している。知識主導型経済においてイノベーションを推進するために、新たなマイルストーンが設定された。重要な進展として、インドの知的財産所割官庁の管理改善とインフラ強化が挙げられる。

    サフィール・アナンド
    シニアパートナー兼商標・知的財産担当ヘッド
    Anand and Anand(ノイダ)
    電話: +91 120 4059 300
    Eメール: safir@anandandanand.com

    揺るぎない司法制度が、知的財産の飛躍的な発展に大きく貢献した。商標、著作権、特許をめぐる訴訟が過去最高の件数に達し、インドの裁判所は、知的財産権を確実に保護し侵害を防ぐために、国際的な原則と先例を採用している。これまでの進展は重要なものだが、今後も知的財産に関する新たなマイルストーンの達成を期待できる。

    確実に進歩してはいるが、企業は長年、自社の知的財産権の保護と執行に主たる重点を置いてきた。それも当然のことではあるが、現代の世界や先進的な企業のニーズはそれをはるかにしのぐ。知的財産権の保護と執行以外にも、知的財産の創出と無形資産の活用に欠かせない領域が存在する。

    現代のビジネス界では、ブランド創出、リスク軽減、ライセンス供与とフランチャイジング、ブランド希釈化の防止、商用化、収益化などの課題が検討されている。法曹界は今、問題が起きてから対応するのではなく、一歩先を見据えて行動することを求められている。

    様々な要素が企業の検討対象となることから、多面的な解決策を追求する必要があると思われる。こうした状況を踏まえつつも、解決策は法律と慣行に基づき、法的に認められるものでなければならない。そのために法曹界は、企業を理解し楽観的な姿勢で臨むとともに、既存の法的手段の範囲内で戦略的視点からリスクを予測する必要がある。

    現在、知的財産権は侵害された場合の保険だけでなく、違反を完全に防ぎ、企業とブランドを守る盾の役割も果たしている。従って世界の経営者は、知的財産が会社とその評価額、ブランド、投資収益にどれほど大きな影響を及ぼすかに関して、認識と理解を深める必要があるだろう。

    そのためには、各業界の理解にも重点を移さねばならない。製薬業界のクライアントと変化の激しい消費者業界のクライアントでは、対応する際に求められる知識が大きく異なり、後者ではマーケティングと顧客体験が最優先される。ビジネスモデルを保護したいが資金繰りが苦しいスタートアップ企業に対する場合、経験は全く違ったものになる。

    トゥインキー・ランパル
    パートナー
    Anand and Anand(ノイダ)
    電話:+91 120 4059 300
    Eメール: twinky@anandandanand.com

    知的財産の商用化、保険、担保をめぐる新たな課題、クリエイティブ経済におけるその意義、およびこれらがGDP、ブランド価値、ブランド評価、コーポレートガバナンスの課題、担保、保険、エコシステム横断的な連携に与える影響などは、いずれも今まさに対処が求められる現代的な概念である。

    新時代の発明により経済活動が飛躍的に活発化するなか、投資家の権利と利益の保護が極めて重要になっている。インド政府は、独自の知財取引所(IP Exchange)の発足など、政策や制度を通じて正しい方向に進む数々の措置をとっている。ちなみに知財取引所は、10年ほど前に筆者の頭にも浮かんだアイデアであり、正しい方向への一歩である。

    知的財産分野を扱う業界団体の議論の焦点となる分野も、イノベーションが知的財産に与える影響、メタバースにおけるライセンス供与、営業機密の問題、イノベーションを事業の焦点とした経営計画の策定方法、金融市場が知的財産に与える影響、知的財産を最も効果的に商用化する方法などに移っている。

    企業自体が新たな世界秩序を積極的に吸収しようとするなか、こうした課題が論点になっており、国際的な競争に駆り立てられた企業はこれらの課題を認識し受け入れている。景気停滞に直面する多くの企業が、こうした課題から得られる強みを活用する必要性を理解し、多くの場合、ベストプラクティスとして実践している。その課題の一部を、以下で論じる。

    ソーシャルメディアとデジタルメディアの登場で、世界は小さくなり、新たな地域や新たな顧客にブランドを広めることが、これまで以上に容易になった。インドには既に周知商標という概念があるが、周知商標の宣言に関する制度を強化している。

    インドの裁判所は、保有者が周知商標を宣言する権利を認め、この宣言を申請する権利を行使するよう命じ、商標局に申請を認定するよう指示を発出した。多くの商用保有者が既にこの制度を利用しており、今後、認定を受ける者がさらに増えるだろう。

    インド証券取引委員会(SEBI)は、プロモーターに対し、新規株式公開(IPO)や追加株式公開時に知的財産の状況を開示し、商標一覧、商標の保護(または保護の欠如)が与える影響、ブランド価値や企業価値に影響し得る紛争や課題の影響を示すことを義務づけている。

    アームズレングスルールに沿った支配関係、関連当事者取引、移転価格、コーポレートガバナンスの問題、ロイヤリティ、子会社や関連会社一覧、それらが無形資産に与える実質的な影響とともに、ライセンスや技術移転の状態も宣言しなければならない。

    現在進行中の特許や商標権の取得手続き、訴訟、ロイヤリティの変更に関する開示とともに、これらの購入、売却または担保設定の決議も、公表する必要がある。コーポレートガバナンスや監査報告書は現在、知的財産権の付与や侵害が収益に与える影響の評価を含めて、知的財産に関わるリスクと機会に注目している。

    実際、コーポレートガバナンスと知的財産は発展途上の刺激的な分野である。知的財産とロイヤリティに影響する決定を含めて、企業が下すあらゆる決定は株主に影響を及ぼす。

    SEBIによる上述の義務化に伴い、生み出された知的財産を確実に保護するために、知的財産の定期的な監査が不可欠である。それどころか多くの場合、監査は、社内に存在するが保護を受けていない可能性がある知的財産の特定に役立つ。

    ブランド価値の評価も、契約違反に対する裁判での損害賠償から、取引に関わる性質のものに進化している。当事者間の取引において、適切なタイミングで知的財産評価に関する条項を設けることは、企業が検討すべき重要なポイントである。ブランド評価は、キャッシュフローの算出のみならず資金調達にも関係してくる。事実、多くの業界報告書によると、企業の価値評価の90%以上が社内の知的財産を対象としており、評価基準の設定が欠かせなくなっている。例えば知財保険は、価値評価基準なしには困難である。

    SEBIは、知的財産と課税の重複を生み出す関係者間取引にも、厳しい目を光らせている。知的財産エコシステムを社内で教え込み確立することも、重要な領域である。

    経営幹部が知的財産重視の姿勢を、社員に普段から説いて聞かせることも大切になる。そうすれば関係者全員が、知的財産の漏洩や隠れた知的財産の活用に対して敏感になるからだ。

    社内のイノベーション推進に向けたもうひとつの手段は、研究開発の枠組みと方針を確実に定めることだ。すなわち、創造に関わる社内全部門が、作成中の著作物を記録し、保護を受けるために法務部門に報告しなければならない。効果的な資金配置に対する株主の利益を踏まえると、イノベーションと実用新案・特許出願の相関関係について、さらに包括的な議論を行う必要がある。

    インドは、人工知能(AI)を活用したブランド保護環境の大幅な改善も目指している。AIは、知的財産法に必ず大きな影響を及ぼす革新的な技術だからである。

    インド広告基準評議会は、昨年数多くの苦情が寄せられたのを受け、広告による不正表示、誇張表示、中傷からブランドを保護する独自の措置を開始した。法的助言を求めれば風評管理も改善するため、こうした動きが加速している。

    広告は企業の資産であり、法律を遵守するだけでなく、マーケター、広告主、弁護士間に調和のとれた対話を生み出し、価値主導のキャンペーンを実現することが重要である。セレブやインフルエンサー、暗号通貨業界、ゲーム業界を対象に、より厳格な指針が策定された。例えばソーシャルメディア広告は、ルーチンフィードバックではなく、有料プロモーションとみなされて規制の対象となっている。

    イノベーションの進展やビジネスと法律の融合に伴い、企業は最もリスクが低く、ガバナンスに優れ、最善または最適な解決策にたどり着けるよう、多くの解決法を用意しておくことが、かつてなく必要とされている。

    法務専門職には、ビジネスに関するこれまで以上の知識と高い独創性が求められる。そのために、最新技術、リスクリワードレシオ、リスク軽減措置、および成功の可能性を高めるか、少なくとも損失やリスクの可能性を減らす他の戦略的な対策について学んでおかねばならない。

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    Anand and Anand
    First Channel Building Plot No. 17 A
    Sector 16 A, Film City
    Noida 201301, India
    電話: +91 120 4059 300
    Eメール:email@anandandanand.com

    www.anandandanand.com

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