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オンライン医療はパンデミック下において急速な発展期を迎えました。ビッグデータ、クラウドストレージ、人工知能(AI)などのデジタル技術の進展を背景に、医療・ヘルスケア分野での製品・サービスの提供方法が大きく変化し、診察や医薬品購入の領域でも変革が加速しています。また、オンライン医療企業も、ヘルスケアと医療の結合に向けて徐々に歩みを進めています。

2022年には、「インターネット診断・治療監督細則(試験施行用)」および「医薬品インターネット販売に関する監督管理弁法」により、オンラインでの診断と治療および医薬品電子商取引をヘルスケアと医療の2つの側面から監督する規制が制定されました。本稿では、オンライン診断および治療、並びに医薬品電子商取引における要点と課題を概説します。

概要

Lang Yuanpeng
Lang Yuanpeng
パートナー
Jingtian & Gongcheng (北京)
電話番号: +86 10 5809 1189
Eメール: lang.yuanpeng@jingtian.com

近年、中国のオンライン診断・治療市場は、医薬品電子商取引との結合が徐々に進み、ワンストップの医療サービスを提供する完結したエコシステムを形成しています。オンライン診断・治療には、主に、インターネット企業が設立する診断プラットフォームと、病院が開設する、または第三者が実在の病院に依拠して開設するインターネット病院プラットフォームがあります。後者の例には、Ping An Healthグループの診断プラットフォームやNew Century Healthcare社のインターネット病院プラットフォームなどがあります。インターネット病院は、さらに、実在の医療機関の第二ブランドの役割をもつものと、実在の医療機関に依拠して独自に設立されるものに分類されます。

ヘルスケア業界におけるインターネット活用を通じた主要な収益化モデルとして、オンラインでのヘルスケアの提供とデジタル薬局が挙げられます。前者には、主に、JD HealthやAli Healthなどの医薬品電子商取引業者が含まれます。後者には、オンライン購入とオフライン配送による即時宅配サービスを提供するデジタル薬局のDingdang Healthなどがあります。たとえばDingdang HealthのDingdang Medicine Express Appでは、自社のオフライン薬局や医薬品企業からの直接調達、自前の物流チームを通じて完結したビジネスモデルを構築し、インターネット病院・医療チームが提供する、音雷雲診断・治療、投薬指導、慢性疾患管理を統合したオンラインサービスによって補完しています。

主要な監督

中国のインターネットインフラは比較的整備されていますが、オンライン診断・治療や医薬品の電子商取引に対する規制は、特に発展段階にある現時点では、まだ慎重に行われています。

業務上必要な資格。オンライン医療機関は、自身の業務モデルやサービスモデルに応じて、医療機関の開業許可証、および電子データ交換またはインターネットコンテンツプロバイダーのライセンス(該当する管轄電信局が付与する)を取得する必要があります。一般的に、インターネット病院が依拠する現実の病院に対して診断・治療サービスを提供するだけであれば、付加価値電信サービスではなく、販売チャネルの拡大と捉えることができるかもしれません。医薬品電子商取引企業は付加価値電信業務経営許可証とインターネット医薬品情報サービス資格証明書を取得する必要があります。他方、医薬品販売許可証保有者または事業許可証を取得した事業会社は医薬品オンライン販売事業を行うことができます。

Zhang Lu
Zhang Lu
パートナー
Jingtian & Gongcheng (北京)
電話番号: +86 10 5809 1150
Email: zhang.lu@jingtian.com

義務。 医薬品電子商取引プラットフォーム企業は上記の規定に従い、「プラットフォーム管理者」として、医薬品の品質安全管理機関の設立、医薬品の品質安全管理システムの構築・導入、薬剤師の配置、適用法規制に基づく現地の医薬品管轄当局への申請を行う必要があります。

また、プラットフォーム上に掲載されている医薬品情報の表示、処方審査、医薬品販売、取引企業からの配送などの管理に対する検査を強化するとともに、取引企業に対して法的義務を厳格に履行するよう求めなければなりません。プラットフォーム管理者は、医薬品の無資格販売などの重大な違反行為を発見した場合、直ちにサービスの提供や医薬品関連情報の表示を停止しなければなりません。

また、医薬品小売業者は、処方箋管理、規則体系の構築、情報報告、情報公開、配送品質・安全性保証、記録追跡、医薬品品質・安全性の維持・管理などに関する規制要件を遵守しなければなりません。

オンライン診療は、再診に限り許可(初診不可)。上記の規定により、「オンライン診断優先の禁止」というルールが確立されました。細則ではさらに、確定診断が記載された医療記録を患者に提供し、その記録が後続の診断の条件を充足しているかどうかについて判断することが求められています。患者の状態がオンライン診断・診療に適さない場合、主治医は直ちに診断・診療を中止し、患者が適切に診断を受けられるよう、現実の医療機関の受診を勧める必要があります。

医師と患者は実名登録制度に従う必要がある。医師は診断に先立ち、実名で認証を受ける必要があります。本人以外や人工知能などが医師の代わりに、あるいは医師になりすまして、診断や治療を行うことは禁じられています。患者は、医療機関に対して、真正な身分証明書や基本情報を提供する義務があり、他人になりすまして治療を受けてはなりません。

オンライン診断と治療プロセスの追跡が可能。オンライン医療機関は診断と治療の全過程を追跡可能にし、省の規制プラットフォーム上で当該データにアクセスできるようにしなければなりません。オンライン医療機関の電子医療記録は、依拠する現実の医療機関がオンラインとオフラインを統合して品質管理を行えるよう、現実の医療機関のものと整合している(同一フォーマットで作成され、システム上で共有される)必要があります。

Shi Qing
Shi Qing
アソシエイト
Jingtian & Gongcheng (北京)
Eメール: shi.qing@jingtian.com

処方箋医薬品のオンライン販売に対する規制の強化。オンラインとオフラインを統合するという原則に従わなければなりません。

  • オンライン医療機関の処方箋は主治医が作成すべきであり、人工知能を利用しての処方箋の自動生成は厳しく禁止されています。処方箋のリフィル使用の防止のため、効果的な手段を講じる必要があります。
  • 医薬品情報の表示や販売管理のレベルでは、処方箋医薬品とそれ以外の医薬品の区別や、処方箋審査前に服薬指示を表示しないことなど、「医薬品の提供に先立つ処方」、「処方箋審査」の要件が重視されます。
  • 医薬品電子商取引プラットフォームと小売企業の責任の明確化。たとえば、薬剤師をプラットフォームに配置し、処方箋レビューや処方箋医薬品の実名購入を徹底する管理体制を整備しなければなりません。

新たな機会

先般、2022年12月15日に国家発展改革委員会は「第14次5カ年計画実現のための内需拡大戦略の実施計画」を発表し、診断・治療の予約、電子処方箋回付、オンライン医薬品販売などの発展途上のサービスの秩序ある推進とともに、「インターネットプラス医療」サービス展開の積極化を提案しました。

これにより、適格オンライン医療サービスは、手続きに従って医療保険制度に加入することができます。これはカンフル剤となり、オンライン医療セクターの発展に向けて歴史的な機会をもたらしましたが、その効果を最大化するためには、さらなる支援策が必要です。なかでも、プラットフォームシステムのセキュリティや、医療・健康データを標準化する施策が求められます。

たとえば、医療分野では、技術革新やイノベーションは、より長期的に慎重に進められるでしょう。クラウドコンピューティング、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、人工知能、モバイルインターネットなどのデジタル技術と医療との結合が徐々に深まるにつれて、健康データの管理・活用と医療情報セキュリティは最重要課題となっています。

オンライン診断・治療や医薬品電子商取引に関与する企業は、サイバーセキュリティ法、データセキュリティ法、個人情報保護法などの一般法に加え、業界に適用される特別要件の遵守にも留意するべきです。たとえば、オンライン診断・治療を行う医療機関は、社会秩序や公共の利益を著しく損ない、国家の安全が害される被害を防ぐために、ネットワークやデータのセキュリティシステムを確立し、個人情報やプライバシーの保護を徹底し、レベル3以上の最も厳格な情報セキュリティ保護を導入しなければなりません。

同時に、患者の個人情報や医療データの漏洩などのセキュリティ事故が発生した場合には、速やかに管轄当l局に報告し、効果的な措置を講じる必要があります。

また、医薬品電子商取引プラットフォームや小売企業は、取引プロセス全体にわたり、医薬品情報の真正性、正確性、完全性、トレーサビリティを確保するために効果的な対策をとらなければなりません。プラットフォームは、医薬品表示、取引記録、苦情などの情報を少なくとも5年間、また医薬品使用期限到来後1年以上保管することが義務付けられています。規制政策が厳格化するなか、病院の中から外へ、また、モジュール化から統合へと医療サービスが進化する過程において、事業に関与する企業には、より高度なサービス要件と新たな課題が課されています。

Jingtian & Gongcheng

34/F, Tower 3, China Central Place
77 Jianguo Road, Chaoyang District
Beijing 100025, China

電話番号: +86 10 5809 1000
Eメール: jingtianbj@jingtian.com

www.jingtian.com


インド

知的財産(IP)と知的資本(IC)は、企業が雇用を創出し、市場優位性を確立し、さらにはイノベーションを推進する原動力となります。インドでは、収益化、および最終的には十分な評価を取得するために、知的財産権を適切に保護することが重要な目標となっています。

複数のIPを組み合わせることで、ブランドは独自の世界観を構築し、高度に発展したエコシステムに加わるよう顧客に訴求することができます。このような理由から、IPを多層に重ねるという独特なトレンドが生まれました。しかし、すべてのIPが法令により保護されているわけではありません。戦略的に保護する必要のあるIPも多いのです。本稿では、インドの競争力の高いヘルステックセクターに影響を与え、さらなる発展を可能にする、IPに関する広範なテーマについて考察します。

eファーマシー(オンライン薬局)

Safir Anand
Safir Anand
シニアパートナー、商標、契約・商業IP責任者
Anand and Anand(ニューデリー)
電話番号: +91 120 405 9300
Eメール: safir@anandandanand.com

テクノロジーの進歩に伴い電子小売り事業は急成長しており、今後も急速な成長が期待されています。Markets N Researchは、世界のeファーマシー業界の規模について、2021年の505億米ドルから2028年には1,427億米ドルへと、3倍近く成長すると予測しています。なかでも、インドは、アジア太平洋地域で最も急速に成長している市場です。eファーマシーの台頭に大きく寄与しているのは、低価格化、宅配サービス、24時間対応、利便性などです。

インド商工会議所連合会は、多くの新興企業がeファーマシー業界に参入していると指摘しています。パンデミック当時、eファーマシーは業況が好調だった数少ない事業の1つで、流通取引総額は50%〜60%の勢いで成長していました。このセクターには、海外直接投資の誘致に関し、大きな可能性があることは明らかです。

eファーマシーによる医薬品の販売は、1940年医薬品・化粧品法および2000年情報技術法の適用対象です。しかし、医薬品・化粧品法では、オンラインとオフラインの薬局が区別されていません。したがって、現時点では、インドには、保健・家庭福祉省の「eファーマシーを介する医薬品販売規制のための規則案」以外には、eファーマシー業界を規制する具体的な法令や規則はありません。同規則案は、「2018年医薬品・化粧品(修正)規則案」の施行とともに承認されており、セクター別に電子商取引に対する規制を規定しています。この規則案では、すべてのeファーマシー所有者は、インドの医薬品規制の最高機関であり中央認可機関でもある、中央医薬品標準管理機構への登録が義務付けられています。この規則の通達以降は、eファーマシーによる医薬品の流通・販売に関する手続きに加えて、規制により、eファーマシーが所定の方法でライセンスを取得することが義務付けられます。発行されたライセンスの有効期間は3年で、登録は更新することができます。

遠隔医療ガイドライン

政府は2020年に「遠隔医療実施ガイドライン」を公表し、専門家によるバーチャル診療を合法化しました。この動きは、特にコロナ危機の際には、医療サービスを安定的に確保できるため、肯定的に受け止められました。公共政策シンクタンクNITI Aayogが策定したこのガイドラインは、インド医学評議会規則(2002年専門家としての行為、作法、および倫理規則)に基づき通知され、保健家族福祉省が発行しました。このガイドラインの際立った特徴には以下のようなものがあります。

  • 遠隔診療を行うことができるのは、登録医師(RMP)に限られます。
  • RMPには、コンサルテーションにテキスト、動画、またはオーディオ対応のソリューションの使用が認めらます。
  • 患者の状況の複雑さに照らして、遠隔診療で十分であるか、それとも対面診療が必要かを判断する責任は医師にあります。
  • RMPは、氏名、年齢、住所、電子メール、電話番号、登録身分証明書などにより、患者の本人確認を行わなければなりません。
  • RMPは、薬剤を処方する前に、患者の年齢を確認する必要があります。疑義がある場合、医師は患者に年齢に関する証明を求めることができます。
  • 患者が遠隔診療を開始した場合、患者の同意があることは暗黙の了解事項となります。
  • 身体所見診察による情報が診療に不可欠な場合、RMPは身体所見診察が実施できるまで遠隔診療を進めてはなりません。
  • すべてのRMPは、ガイドラインの公開から3年以内に必須研修を修了する必要があります。
  • 遠隔診療では処方できない医薬品について、リストが作成されています。
  • 医師は、インド医学評議会規則、情報技術法、および今後制定されるデータ保護法やプライバシー法に基づく倫理および秘密保持に関する規制に従わなければなりません。個人情報保護法案では、医療データを個人の機密情報と解釈し、データの移動と利用に制限を設けています。

媒介者か災いの種か?

さまざまな偽造品が蔓延していますが、最も被害を受けているのが医薬品業界です。効果的な偽造医薬品対策の1つとして、偽造品供給者の取り締まりに関して仲介業者に責任を問うことが考えられます。しかし、偽造者は通常、自身のサービスが違法行為に利用されているとは認識していない第三者を仲介します。このように第三者が関与することが多いため、仲介業者の責任は、知的財産法において世界的に最先端の問題になっています。仲介業者には、オンライン(電子商取引サイト)とオフライン双方の仲介業者の主要グループが含まれる可能性があります。

2019年、インド商工省産業国内取引促進局は、新たな電子商取引政策の草案を公表し、米国食品医薬品局(FDA)の規則や現地規制に沿ったデータローカライゼーションや電子商取引企業の業務効率化を提案しました。これは偽造品対策の一環でした。当時、フリップカートやアマゾンなど、複数の電子商取引企業がガイドラインに対して懸念を示していました。これを受け、同局は政府部局や関係省庁に政策の2022年草案を回付しました。

データ保護

2000年に制定された情報技術法は、技術の進歩に追いついていませんでした。監視・保護しなければならない機器が日々増大するにつれ、データ保護はさらに複雑さを増しています。

しかし、インドにはデータ保護に関する個別の法令はありません。データ漏洩の多くは、データ保護対策が不十分であるために発生しています。アマゾンのアレクサ機能による盗聴や、数百万人の医療情報にグーグルがアクセスしていたことが明らかになり、世間の懸念が強まっています。

2018年のEUの一般データ保護規則の施行後、インドではデジタル個人データ保護法案(2022年)がようやく国会に提出されました。同法案は、あらゆる形態の個人データについて遵守要件を規定し、個人の権利を拡大し、中央データ保護規制機関を設け、特定の形態の機密データについてデータローカライゼーションの要件を定めています。

ブランド

ブランドの商品名が保護されるだけではなく、医薬品の包装、ラベル、ロゴ、体裁(商品とその包装の外観)、レイアウト、色の組み合わせについても保護を受けることができます。また、錠剤の独自のデザインについては、たとえば、アルファベットの文字の形、固有の色の組み合わせ、特定の数字、容器やボトル、キットの特徴的な形状などを、3D商標として登録することができます。1999年商標法では、化学元素の名称や国際一般的名称の登録の禁止について具体的な規定が設けられています。

著作権

医薬品をさまざまな角度から保護するために、著作権に基づいて以下も保護対象とすることができます。

  • 医薬品の包装、ラベル、体裁、レイアウト、配色
  • 特定の雑誌、論文、医学書などに掲載された広文章および図表
  • 有効性、一般的な注意事項、副作用、重要な安全性情報などに関する記述

特許

インドでは、2005年に製品特許制度が導入されるまで、食品、医薬品、化学薬品に関する発明については、製法特許のみが認められていました。今や、医薬品企業にとって、自社が開発した製品やプロセスを特許権で保護し、不正な商業利用から守ることが不可欠になっています。

医薬品特許は、新規化学物、製剤または組成物、相乗的組み合わせ、既知物質の新形態、キット、プロダクト・バイ・プロセス、および製造プロセスまたは製造方法のカテゴリーに分類することができます。ただし、ヒトまたは動物に対する医薬、外科手術、治療、診断、療法その他の処置のためのプロセスについては、同法に基づく特許を取得することはできません。

ドメイン名

一部の企業は主力製品について、公式サイトへの掲載に加えて製品固有のサイトを設け、製品関連情報、使用方法、一般的注意事項、副作用、重要安全情報などを公表しています。

ドメインネームには出所識別の機能があるため、インドでは商標と同等に扱われます。したがって、ドメインネームの登録により、企業はそれに対する所有権を取得することになります。

周知標章

商標を周知とするために、2017年の改正商標規則に基づき、申立書または申請書を提出することができます。以前は、プロセスや時期が不透明でしたが、現在は委員会が申請について判断しており、プロセスは合理化されています。

また、インドの裁判所は、いくつかの事例において、ある商標に関連する商品が識別性を獲得する要件として、その商品が一定期間市販されていることは必要ではないと認めています。商標は極めて短期間に識別性を取得できる場合もあり、その判断は事例に応じてなされます。したがって、医薬品ブランドが高い人気、知名度、評判を得て、大きなマーケットシェアを取得している場合、このプロセスの適用対象となります。

Anand and Anand
B-41, Nizamuddin East,
New Delhi 110013, India

Contact details:
電話番号: +91 120 405 9300

www.anandandanand.com


日本

本稿では、日本で事業を行う医薬品企業や医療機器メーカー用に不正調査を実施してきた経験を踏まえ、ヘルスケア企業で生じることが多い特有の法的問題を明らかにし、慎重な配慮を要する調査を行うにあたって検討するべき点について概説しています。

事前注意事項

企業の電子メールの調査には、従業員の同意を必要としません。日本で実施される不正調査には、多くの場合、従業員の電子メールなどを対象とするフォレンジック調査が含まれます。不正調査が合理的な疑いに基づいており、正当だと考えられる場合、企業の調査チームは、従業員の同意を得ることなく、自社の電子メールアカウントや、貸与するコンピューターや携帯電話などの電子媒体に保存されている情報にアクセスすることができます。

ただし、従業員が所有する電子媒体および従業員の私用電子メールにアクセスする場合は、同意が必要です。

Kengo Nishigaki
西垣建剛
代表社員/パートナー
GI&T法律事務所(東京)
電話番号: +81 3 6206 3285
Eメール: kengo.nishigaki@giandt-law.com

弁護士と依頼人の間の秘匿特権。 日本の訴訟制度には、法廷で提出される証拠について当事者が情報交換する公判前開示制度がないため、弁護士と依頼人の間の秘匿特権という概念が存在しません。弁護士と依頼人の間の秘匿特権とは、弁護士とその依頼人の間の秘密の通信を保護する法的原則を指します。しかし、米国企業の日本法人で贈収賄事件を調査する場合、米国で海外腐敗行為防止法の適用の可否が問題となるため、日本での不正調査の結果は米国法の弁護士と依頼人の間の秘匿特権の対象になります。

弁護士と依頼人の間の秘匿特権を確保するため、近年では、米国企業の日本法人の従業員に聞き取り調査を実施する際に、「アップジョン警告」(弁護士は会社を代表しているが、従業員個人を代表していない旨の告知)を行うことが一般的になっています。この場合、弁護士と依頼人の間の秘匿特権の帰属という従業員には馴染みのない事項について、無用な警戒心を抱かせることなく、関係者にわかりやすく説明することが必要です。

従業員の解雇は難しい。日本の労働法は長期雇用を前提としているため、過去の判例に照らすと、解雇が可能な事例は極めて限られています。そのため、欧米企業の日本法人の従業員が何らかの不正を行ったことが調査で判明したとしても、日本の法令の下では、多くの場合、解雇は困難です。

医薬品医療機器等法や業界ルールに対する軽微な違反があったとしても、解雇事由に該当しない場合が多いでしょう。その場合の対応として、就業規則に基づき、解雇や降格などの懲戒処分を行う必要があります。

適応外使用の販売促進

Andrew Trost Griffin
Andrew Trost Griffin
弁護士
GI&T法律事務所(東京)
電話番号: +81 3 6206 3283
Eメール: andrew.griffin@giandt-law.com

適応外使用の販売促進は、医薬品医療機器等法による規制の対象です。誇大広告、または法律で認められていない製品の効能や効果についての広告を行った場合、違反者は違法広告の取り消しを命じられるとともに、違反期間中の製品の売上に対して4.5%の課徴金の支払いが銘じられます。

適応外使用の販売促進に対する規制は、従来、それほど厳格ではありませんでした。2013年、ノバルティスは、日本の5つの大学病院において医師の主導により血圧降下剤ディオバンの大規模臨床試験を行い、自社の社員を研究員として派遣しました。この社員がデータを改ざんし、この薬剤が高血圧だけでなく心血管合併症にも効果があるという旨の同社に有利な研究論文を発表したとして告発されました。この研究論文の影響もあり、公表によると、ディオバンは2000年に日本で発売されて以来、累計で1兆円の売上を記録しました。

この事件は刑事事件になりましたが、2021年、最高裁判所は、社員とノバルティスにデータ改ざんの罪はなく、研究論文も医薬品医療機器等法の広告に該当しないという判決を下しました。

この事件を受け、厚生労働省は、医薬品医療機器等法の改正(2021年8月1日施行)により、適応外使用の販売促進に対する規制を強化し、上記の課徴金制度を導入しました。また、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(販売情報提供ガイドライン)」を公表するとともに、医薬品企業による適応外使用の販売促進の防止に向けて制度を整備しました。

また、「広告活動監視モニター事業」を開始し、医薬品企業の疑わしい広告活動について、医療機関から情報を入手する制度を設けました。

ある製品が適応外使用に該当するか否かを判断するには、広告活動が規制上承認されている範囲で行われたかを検証しなければなりません。しかし、そのためには医学的・科学的検討が必要であり、また、規制上の承認の内容自体が不明確であることも多いのです。

さらに、販売情報提供ガイドラインでは、営業担当者が医療関係者の要請に応じて適応外使用に関する情報を提供することは禁止していませんが、要請がない場合の情報提供は禁止しています。そのため、場合によっては、医療関係者から情報提供の要請があったかどうかを調査する必要があります。

データ保護

Yuji Yamamoto
山本祐司
アソシエイト
GI&T法律事務所(東京)
電話番号: +81 3 6206 3927
Eメール: yuji.yamamoto@giandt-law.com

日本は、EUの一般データ保護規則(GDPR)により、EU域外のデータ保護が十分な水準にあることを示す「十分制認定」を受けています。また、個人情報保護法(APPI)に基づき、個人情報を厳格に保護しています。

患者情報は個人の機密情報とみなされており、その取得や第三者への提供は厳しく規制されています。ヘルスケア企業が、臨床試験や臨床研究、医療機関へのサービス提供のために、患者データを受け取ることは考えられることです。APPIで規定されているとおり、データ主体の同意に基づく個人データの取得や第三者への提供は、比較的広く認められています。

GDPRとは異なり、APPIにおける同意は明示的な同意に限定されておらず、黙示の同意も含まれます。しかし、ヘルスケア企業が販売促進の目的で医療機関から患者の個人情報を取得する場合、患者が販売促進を目的とする情報提供に「黙示的に同意している」とは考えられないでしょう。

したがって、医療機関やヘルスケア企業が明示的な同意を得ていない場合、そのような情報の取得や移転はAPPI違反となる可能性が高いとみられます。そのため、ヘルスケア企業が商業目的で市販後調査を実施する場合は注意する必要があります。

一方、2022年のAPPIの直近の改正では、仮名加工情報という概念が導入されました。仮名加工情報とは、他の情報と照合しない限り特定の個人を特定できないように識別子の全部または一部を置き換えて加工した個人に関する情報を指します。これにより、医療機関が患者の個人情報から個人を特定できる情報を取り除き、ヘルスケア企業との共同研究目的で利用できるようになりましたす。

ただし、このような利用は、政府が制定した「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に抵触する可能性があることに留意する必要があります。

独占禁止法

日本の独禁法は、EU、英国、米国と同様に、垂直的制限行為(再販売価格維持や抱き合わせ販売を含む)と水平的制限行為(カルテルを含む)を広範に規制しています。ヘルスケア業界は、独自性の高い処方薬や医療機器を製造・販売しているため、水平的制限行為が問題となる事例はわずかですが、2021年には、医薬品の卸売取引に関する大規模カルテルが発覚しています。

垂直的制限行為については、医薬品・医療機器メーカーは再販売価格維持行為の防止に向け、営業担当者が卸売業者に対して再販売価格維持行為を行わないよう社内教育を実施してきました。特に、医薬品企業が卸売業者に支払うリベートは、再販売価格を維持する手段として利用される場合があるので注意を要します。

医療機器メーカーが医療機器と消耗品を販売する場合、消耗品の継続販売により利益を挙げることが一般的なビジネスモデルになっています。この点に関して、医療機器が著しく低い価格で販売された場合、略奪的価格設定の問題が生じます。また、公正な市場価格を下回る価格で医療機器を提供した場合、公正競争規約への違反になる可能性があります。

本稿の執筆者は、Asia Business Law Journal2022年9月/10月号において、日本のヘルスケア業界に適用される贈収賄防止法令と業界自主規制について解説しています。

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